秀作と傑作
 Alphaという映画を観た。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm31595383
 予告一目見た時から気になってて公開を待ちわびたものの、結局DVDスルー。(現在入手可能なものは輸入盤か海外itunes経由。日本語版は「アルファ 帰還(かえ)りし者たち」として6月リリース)。rotten tomatoでもメーター80%と相当の高評価なのでこの機会に鑑賞。
 ストーリーは2万年前の地球、長の跡取りケダが狩りの最中に崖から転落して始まる。仲間からはぐれ足を折り、途方に暮れる彼を狼の一群が襲う。近場の木に登り、食らいついてきた頭目に深手を負わすことで生き延びる。ケダは心優しい青年だったので取り残された狼を殺すに忍びず、洞窟で互いの傷が癒えるまで共に棲むことにする…というもの。
 「レヴェナント」を思わせる壮宏な景観と過酷な生存環境、人口言語や美術に見える(低予算映画としては)緻密な作品作りと見所は多いが、やっぱり一番は人間とわんこの絆の積み重ねだろう。
 
 インタビュー記事漁った感じ言及はなかったが、物語の下敷きはダンセイニ卿の「最初の番犬/The First Watchdog」という短編の筈だ。Alpha=first、人間と触れ合った最初の狼の話というだけでなく、細部に至るまで類似点が多いからだ。 始めは警戒し合い利用するにとどまる関係だった二人が、日々を重ねるにつれ絆を増すこと、そしてそれを決して当人の台詞に託さず(そりゃ片方は犬だからね)行動と情景によって観客に示すこと、狼は一旦仲間の姿を目にして人の許を離れるも、家族を連れて帰ってくること…。

 Alphaも大変良い映画だが、ダンセイニのこの短編は世界最高の動物小説だと思うので、是非一度読んで欲しい。最後の文に至るまで詩情に溢れた、不朽の名作だ。


…その小さな野営地の人々にとって、ワーはただワーだから重要であった。神秘の森からずっと前にやって来たワーだから。ワーが初めて焼いた肉の匂いを嗅いだ日から8年後に死んだとき、マアンの子供たちも多くはいろいろなことを知る年頃にはなっていたが、皆泣き崩れた。不思議で、野蛮で、激しく嘆き悲しむ涙を流した。今日では誰も流さないような涙である。」


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