貞子VS伽椰子が名作ホラーだった件【映画雑記】
2016年6月28日
※長文注意
①リング、呪怨、そして白石
貞子、伽椰子の説明は流石に蛇足でしょうか。Jホラー華やかなりし時代、「リング」「呪怨」という名作ホラー映画がありました。興行の数字で云えば「着信アリ」が上回るものの、この二体の悪霊のキャラクター性は絶大で両者長寿シリーズとなり、パチスロあり、始球式ありと多数媒体へと派生。もともとエイプリール企画だったVSですが、「呪怨ザファイナル」のエンドロール後に堂々の告知がなされスタートしたものの、ホラープロダクションオズが倒産。一時は危ぶまれた本作品でしたが、めでたく今夏全国封切と相成りました。
皆さんは白石晃士という監督をご存じでしょうか。大学生の頃に制作を開始した「暴力人間」が、「これは本物の暴力記録映像だ」と映画祭の審査員から苦言が出る程の迫真ぶりで話題に。キャリアを積み「ノロイ」にてメジャーデビューを飾り、以後も「グロテスク」「オカルト」「殺人ワークショップ」などショッキングな作品を作り続けているホラー監督の方です。
このタイトルだけに、中田英夫や清水崇を思った人も居るかと思います。しかし監督は白石氏になりました。(まあ監督自身が交渉して勝ち取ったものなんですケドネ)
中田監督は「女優霊」で話題を呼び、「リング」が大ヒット。「デスノート」や「インシテミル」などを挟むものの、近作の「クロユリ団地」「劇場霊」ではホラー回帰をしています。最近の中田監督作品は「古典趣味に行き過ぎている」と感じます。原色の強い光を当て、ドヨドヨと音楽を添える。これは鶴田法男や小中千昭の作り上げた「Jホラー」以前、「怪談」の時代の技術です。一概に「怖くない」と断じることはできませんが、ストーリーなりAKBの小娘なりの「現代ホラーっぽいルック」との乖離は否めません。
清水監督はビデオ作品の「呪怨1・2」が話題となり劇場版が大ヒット。ハリウッドに進出しプロデュース業を手掛けるなどの活躍も見せました。ですが近作を見て思うのは、その熱のなさ。特に5月に公開された4D専用映画「雨女」は酷すぎた。白石監督の「ボクソール☆ライドショー」と比べてみれば、4D技術にかける情熱、サービス精神の余りの差に愕然とします。
白石監督が今ホットなホラー監督だと判ってもらえたでしょうか。それではいい加減本作の話に移ります。
②ストーリー「化け物にはバケモノをぶつけんだよ!!」
https://www.youtube.com/watch?v=6YXCsXL0o34
レンタルショップでビデオデッキを買ったことから、偶然に呪いのビデオを見てしまった大学生。親の仕事の都合で呪いの家の隣に引っ越してきた高校生。二人の呪いを解くために霊能者が出した答えは、悪霊に悪霊をぶつけ相殺させるというものだった…!
③見所:白石ワールド
白石フリークなら先ず、今作は絶賛するでしょう。如何にメガバジェットの作品とはいえ、今作にも白石監督らしさが随所に出ています。例を挙げると
・超常現象に異常な執着を持つ奇人(「コワすぎ!」始めとしたカメラマンの立ち位置)
・恰好は堂に入っているものの咬ませ犬な霊能者(「カルト」「シロメ」)
・謎の呪いアイテム(「カルト」「コワすぎ!」)
・言行は奇天烈だが腕はピカイチの真の霊能者(「カルト」「コワすぎ!」)
そして何より
・序盤はじっくり怖がらせ、後半は雰囲気もテンポもガラッと変わる
これでしょう。
「コワすぎ!」のDVD特典や氏の著作「フェイクドキュメンタリーの教科書」でも触れられていますが、白石監督はホラーをふざけて作りません。怖いものを怖く、しっかり作ってきます。本作は「フレディVSジェイソン」をホラーではないもの=反面教師として参考にされていますし、低予算のビデオ作品でもPOV視点を活かし敢えてはっきり写さず俳優の演技やカメラワークで恐怖感を演出しています。況や天下の角川配給の本作は、贅沢な美術、撮影、効果できっちりとしたホラーに仕上がっています(失礼な話白石作品でこんなエンドロール長いんだ!と感動しました)。
前半はホラー映画として楽しみ、後半はキャラクターもの、アクションものとして楽しめる。これが白石作品の醍醐味であり、万人に共感を呼ぶエンターテイメントの形態ではないでしょうか。
付け加えるなら、本作は「バーサスもの」に対し真摯な解答を提示しています。「バットマンVSスーパーマン」が結局共闘に落ち着くという原作の「ダークナイトリターンズ」をバカにしてるとしか思えない下らない出来だったのに対して、「貞子VS伽椰子」では悪霊はきちんと殺し合い、「呪い」というテーマに相応しい結末を迎えます。ネタバレにならないぎりぎりの範囲で云うなら、「蟲毒」…でしょうか。
「Jホラーをぶち壊すがテーマ」の「貞子VS伽椰子」、是非劇場でご覧になってください。Jホラーの再生はここから始まります。
①リング、呪怨、そして白石
貞子、伽椰子の説明は流石に蛇足でしょうか。Jホラー華やかなりし時代、「リング」「呪怨」という名作ホラー映画がありました。興行の数字で云えば「着信アリ」が上回るものの、この二体の悪霊のキャラクター性は絶大で両者長寿シリーズとなり、パチスロあり、始球式ありと多数媒体へと派生。もともとエイプリール企画だったVSですが、「呪怨ザファイナル」のエンドロール後に堂々の告知がなされスタートしたものの、ホラープロダクションオズが倒産。一時は危ぶまれた本作品でしたが、めでたく今夏全国封切と相成りました。
皆さんは白石晃士という監督をご存じでしょうか。大学生の頃に制作を開始した「暴力人間」が、「これは本物の暴力記録映像だ」と映画祭の審査員から苦言が出る程の迫真ぶりで話題に。キャリアを積み「ノロイ」にてメジャーデビューを飾り、以後も「グロテスク」「オカルト」「殺人ワークショップ」などショッキングな作品を作り続けているホラー監督の方です。
このタイトルだけに、中田英夫や清水崇を思った人も居るかと思います。しかし監督は白石氏になりました。(まあ監督自身が交渉して勝ち取ったものなんですケドネ)
中田監督は「女優霊」で話題を呼び、「リング」が大ヒット。「デスノート」や「インシテミル」などを挟むものの、近作の「クロユリ団地」「劇場霊」ではホラー回帰をしています。最近の中田監督作品は「古典趣味に行き過ぎている」と感じます。原色の強い光を当て、ドヨドヨと音楽を添える。これは鶴田法男や小中千昭の作り上げた「Jホラー」以前、「怪談」の時代の技術です。一概に「怖くない」と断じることはできませんが、ストーリーなりAKBの小娘なりの「現代ホラーっぽいルック」との乖離は否めません。
清水監督はビデオ作品の「呪怨1・2」が話題となり劇場版が大ヒット。ハリウッドに進出しプロデュース業を手掛けるなどの活躍も見せました。ですが近作を見て思うのは、その熱のなさ。特に5月に公開された4D専用映画「雨女」は酷すぎた。白石監督の「ボクソール☆ライドショー」と比べてみれば、4D技術にかける情熱、サービス精神の余りの差に愕然とします。
白石監督が今ホットなホラー監督だと判ってもらえたでしょうか。それではいい加減本作の話に移ります。
②ストーリー「化け物にはバケモノをぶつけんだよ!!」
https://www.youtube.com/watch?v=6YXCsXL0o34
レンタルショップでビデオデッキを買ったことから、偶然に呪いのビデオを見てしまった大学生。親の仕事の都合で呪いの家の隣に引っ越してきた高校生。二人の呪いを解くために霊能者が出した答えは、悪霊に悪霊をぶつけ相殺させるというものだった…!
③見所:白石ワールド
白石フリークなら先ず、今作は絶賛するでしょう。如何にメガバジェットの作品とはいえ、今作にも白石監督らしさが随所に出ています。例を挙げると
・超常現象に異常な執着を持つ奇人(「コワすぎ!」始めとしたカメラマンの立ち位置)
・恰好は堂に入っているものの咬ませ犬な霊能者(「カルト」「シロメ」)
・謎の呪いアイテム(「カルト」「コワすぎ!」)
・言行は奇天烈だが腕はピカイチの真の霊能者(「カルト」「コワすぎ!」)
そして何より
・序盤はじっくり怖がらせ、後半は雰囲気もテンポもガラッと変わる
これでしょう。
「コワすぎ!」のDVD特典や氏の著作「フェイクドキュメンタリーの教科書」でも触れられていますが、白石監督はホラーをふざけて作りません。怖いものを怖く、しっかり作ってきます。本作は「フレディVSジェイソン」をホラーではないもの=反面教師として参考にされていますし、低予算のビデオ作品でもPOV視点を活かし敢えてはっきり写さず俳優の演技やカメラワークで恐怖感を演出しています。況や天下の角川配給の本作は、贅沢な美術、撮影、効果できっちりとしたホラーに仕上がっています(失礼な話白石作品でこんなエンドロール長いんだ!と感動しました)。
前半はホラー映画として楽しみ、後半はキャラクターもの、アクションものとして楽しめる。これが白石作品の醍醐味であり、万人に共感を呼ぶエンターテイメントの形態ではないでしょうか。
付け加えるなら、本作は「バーサスもの」に対し真摯な解答を提示しています。「バットマンVSスーパーマン」が結局共闘に落ち着くという原作の「ダークナイトリターンズ」をバカにしてるとしか思えない下らない出来だったのに対して、「貞子VS伽椰子」では悪霊はきちんと殺し合い、「呪い」というテーマに相応しい結末を迎えます。ネタバレにならないぎりぎりの範囲で云うなら、「蟲毒」…でしょうか。
「Jホラーをぶち壊すがテーマ」の「貞子VS伽椰子」、是非劇場でご覧になってください。Jホラーの再生はここから始まります。
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