デッドプール2

2018年6月11日
デッドプール2
デッドプール2
①粗筋
 Xメンの一員としてヒーロー業を始めたデッドプール。だが暴走したミュータント少年ラッセル確保の任務で人死にを出してしまい、ミュータント隔離施設<アイスボックス>に収容される。ラッセルの扱いに手を焼くデッドプール。そこに半身機械の男、ケーブルが未来から現れた。彼の目的は、ラッセルの抹殺。
 
②映画「デッドプール」の特徴
 罵り言葉と容赦ない残酷表現でR指定だった前作に続き、今作の過激さも衰えていない。開幕から自社映画「ローガン」のパロディをカマし、ブッシュ批判・キリスト教揶揄、人種問題、果ては人権団体(寧ろバーホ―ベン監督)から抗議が来そうな際どい障碍ネタまで持ち出す。サシャ・バロン・コーエンの映画なら兎も角、メジャー作品でここまでやってくれるのは楽しい。何せ、配給は20世紀FOXだが、FOXニュースがブッシュのイラク戦争をプロパガンダしていたのだから。
 ゴア表現は幾分大人しくなったが、今作の監督は「ジョンウィック」「アトミックブロンド」のデビッド・リーチ。アクションの見せ方は段違いに向上している。

③メタネタとシリアス
 とはいえ、前作から劣化した部分はある。それはギャグとシリアスの塩梅だ。冒頭、恋人のヴァネッサが襲撃者の凶弾に斃れるのだが、続くOPで007パロディーが即座に挟まるため、シリアスさが絶望的に削がれる。
 無論、ギャグとシリアスは同居して良い。だがそれは「当人は至って真剣なのが却ってシュール」であったり、シリアス担当とギャグ担当が別のキャラだったりした場合だ。第4の壁を自覚したネタを連発するウェイドが恋人の死に号したところで、受け手はどの程度その悲しみを真剣に取っていいか分からない。1作目が時間軸を行き来し、メタ語りが(ハッピーエンドを迎えた結末地点から見ての)コメンタリー形式が多かったのに対して、今作「デッドプール2」は現在進行形でフザけてばかり居るのも、その感を強める。
 第4の壁と言えば、1作目のメタ発言は「ヒーローとは何か」についての問いかけだった。従来のヒーロー像を茶化しながらも、最終的には高潔な目的のために捨身する。「場持ちとしてのギャグ」と「全体しての脱構築」、2つの機能を併せ持っていたことを考えれば、今回のメタギャグには深みが感じられない。

④映画ネタ
 だが、今作のギャグにも光るものがある。それは映画ネタだ。場持ちとしてのギャグであると同時に、その後の展開・成長を暗示させる妙味も併せ持っている。
 ドーピンダ—がキルステン・ダンストの名を挙げるシーンがある。あれは「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」に出て来る少女吸血鬼であり、彼女は血の味=殺しの愉悦を覚えたことで破滅へと突き進む。これはラッセルと重ね合わされる。
 寝室のコロッサスを戸外からラジカセで呼ぶシーンがあるが、あれは「セイ・エニシング」のパロディだ。「セイ・エニシング」ではあの後、恋仲の復縁と家族の再生が続く。デッドプール×コロッサスは復縁し、ケーブルの家族は救われることとなる。
 今作の設定・構造は「LOOPER」に酷似しているのだが、重要アイテムにコインがあしらわれているのも、ひょっとして「LOOPER」ネタなのでは…。そんな妄想が広がるのも楽しいところだ。

⑤結びに
 映画ネタの解説を続けよう。エンドクレジットで殺されるハゲ刺青男は「X-MEN ZERO」のデッドプール=ウェポンXIであり、ライアン・レイノルズが嬉しそうに握る台本は「グリーン・ランタン」だ。2本ともライアン・レイノルズの出演したアメコミ映画の大失敗作なのだが…。え?ネタバレだって?インフィニティ―・ウォーでアベンジャーズの半分死ぬほどのネタバレじゃないでしょ?

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