暑気祓いにホラー紹介
2018年7月17日
①怪談実話:平山夢明
駄目な怪談噺には共通点がある。体験者の主観により添ったものは怖くないのだ。「頭痛が」「寒気が」「痛みが走って」「怖くなって」「鳥肌が立って」「耳鳴りがして」などは禁句。体験者が如何に心胆寒くなったとしても、読む者に追体験させるものではないからだ。
視覚・聴覚に訴える語りは怖い。講談師の稲川淳二は後者だ。小泉八雲は日本語の独自性を擬音の多様性にあると説いた。稲川先生の滔々とした語りを聴いていると、重さを持った「何か」が迫ってくるのを感じる。
https://www.youtube.com/watch?v=Rkl_P0BEj4U
さて、平山先生は視覚に訴える文章が上手い。彼が「グロテスクな作家」と呼ばれるのも、被害者側の痛覚を表現するのではなく、その惨劇の様をビビッドに描く故にだ。水死体の霊を「ふやけた肉まん」と簡明に形容する筆致の見事さは、「超怖い話」シリーズで確認してほしい。
②ホラー監督:黒沢清
鶴田法男、小中千昭らと共にJホラーの旗手として知られる黒沢監督。彼の幽霊表現の妙味は「そう言えば写ってる」という気づきの恐怖にある。
https://www.youtube.com/watch?v=-rzdcZVJQEI
ドラマではあるが、「降霊」は死ぬほど怖いので是非。
③小説:残穢
映像では難しいホラー表現として、「自己責任系怪談」をご存知だろうか?「鹿島さん」や「くねくね」のような「この話を読んだ人のところに、今晩お迎えが来る」で締めくくるものがそうだ。因縁由来を説明するのに、文章が適しているからだろうか。
さて、小野不由美著「残穢」も自己責任系に属する。呪いの伝播に関する話だが、謎解きも、成仏も、解決もないまま物語は終わる。ただ呪いに触れた者はすべからく感染し、周りに悪疫をまき散らしていく。となれば作者たる小野不由美も呪いに触れたことになり、取りも直さず読者にも呪いが伝わるのでは…。「手元に置いておきたくない」と評される、極上のホラー小説だ。
④ホラー漫画
押切蓮介の「サユリ」がここ数年でベストの幽霊漫画だが、趣向を変えて「シャトゥーン ヒグマの森」のコミカライズをお勧めする。吉村昭の名著「羆嵐」と一緒に読めば、肝が冷えること請け合いだ。
「腹破らんでくれ」
駄目な怪談噺には共通点がある。体験者の主観により添ったものは怖くないのだ。「頭痛が」「寒気が」「痛みが走って」「怖くなって」「鳥肌が立って」「耳鳴りがして」などは禁句。体験者が如何に心胆寒くなったとしても、読む者に追体験させるものではないからだ。
視覚・聴覚に訴える語りは怖い。講談師の稲川淳二は後者だ。小泉八雲は日本語の独自性を擬音の多様性にあると説いた。稲川先生の滔々とした語りを聴いていると、重さを持った「何か」が迫ってくるのを感じる。
https://www.youtube.com/watch?v=Rkl_P0BEj4U
さて、平山先生は視覚に訴える文章が上手い。彼が「グロテスクな作家」と呼ばれるのも、被害者側の痛覚を表現するのではなく、その惨劇の様をビビッドに描く故にだ。水死体の霊を「ふやけた肉まん」と簡明に形容する筆致の見事さは、「超怖い話」シリーズで確認してほしい。
②ホラー監督:黒沢清
鶴田法男、小中千昭らと共にJホラーの旗手として知られる黒沢監督。彼の幽霊表現の妙味は「そう言えば写ってる」という気づきの恐怖にある。
https://www.youtube.com/watch?v=-rzdcZVJQEI
ドラマではあるが、「降霊」は死ぬほど怖いので是非。
③小説:残穢
映像では難しいホラー表現として、「自己責任系怪談」をご存知だろうか?「鹿島さん」や「くねくね」のような「この話を読んだ人のところに、今晩お迎えが来る」で締めくくるものがそうだ。因縁由来を説明するのに、文章が適しているからだろうか。
さて、小野不由美著「残穢」も自己責任系に属する。呪いの伝播に関する話だが、謎解きも、成仏も、解決もないまま物語は終わる。ただ呪いに触れた者はすべからく感染し、周りに悪疫をまき散らしていく。となれば作者たる小野不由美も呪いに触れたことになり、取りも直さず読者にも呪いが伝わるのでは…。「手元に置いておきたくない」と評される、極上のホラー小説だ。
④ホラー漫画
押切蓮介の「サユリ」がここ数年でベストの幽霊漫画だが、趣向を変えて「シャトゥーン ヒグマの森」のコミカライズをお勧めする。吉村昭の名著「羆嵐」と一緒に読めば、肝が冷えること請け合いだ。
「腹破らんでくれ」
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