映画『カメラを止めるな!』は「一回性の怪物である」。
 舞台挨拶の回漸くチケット取れたので鑑賞。傑作でした。
 ディティールのネタは割らないけど、構造のネタバレは若干含むのでご注意を。

①カメラを止めるな!
 今、『カメラを止めるな!』が熱い。映画学校のワークショップで始まり、K’sシネマで1週レイトショーのみで上映予定だった本作。だが観客の口コミで評判が伝わり、現在では100館での公開にまで拡大しているとのこと。ミニシアター映画の拡散で言えば一昨年末の怪物『この世界の片隅で』が記憶に新しいが、無名の監督・役者陣の作品でここまでの広がりは類を見ない。

②ネタバレ厳禁の中での前情報
 SNS上でこの作品を拡散する人はこう言う。「とにかく前情報入れずに観に行け!絶対に面白いから!」。だが、最重要の前情報もそこに付随する。それは「低予算映画」ということ。制作陣の持ち出し(私費負担)で成り立った映画…成程美談だが、それ以上の機能が存在している。
 断言しよう。この映画はリメイク不可能だ。それはこの映画の伏線回収が、「低予算映画」という性質と不可分だからだ。
 
③宇田丸流映画論
 上田監督は、ライムスター宇多丸氏の映画評に多大な影響を受けたとのこと。なので、氏の映画伏線の論をここで借用しよう。曰く、「あからさまな伏線提示は不細工」
 作品では「キサラギ」「エイプリルフール」など、世間一般では伏線が凄いとされる邦画がこれに当たる。場面展開、話の流れをブツ切りするような描写がポンと放り出され、それを後で回収する。「フリのためのフリ、そんなの有難がるなんてバカじゃねえの」。尤もな話ではないだろうか?何気なく流した仕草、台詞が後で重要な意味を持ってくる。その気づきこそが伏線回収の感動なのだから。

④低予算という「許し」
↓↓↓ここからネタバレ↓↓↓
 今作『カメラを止めるな!』は、第一幕で配置された違和感の正体を、第二幕で全て奇麗に回収していく構造になっている。第一幕はポスターにあるような、ゾンビ映画をワンカットで撮ったものなのだが、ここで「低予算」が活きてくる。
 僕らは低予算ホラーに偏見を持っている。サムライミやジェームスガンのように、B級ホラーこそが映画監督の登竜門なのに。だからこそ、今作第一幕で変な描写、台詞があろうとも「まあ、低予算映画だからこんなものだよな」と傲慢にも「許す」ことが出来る。作り手の力量不足という思い込みは、第2部の精緻な伏線回収で思い知らされ、肉袒牽羊を申し出ることになるのだが。
 では仮に、これを大手資本でリメイクするとどうだろう?きっと「伏線」は粗目立ちするに違いない。ドラマで映画で、あんなに上手い俳優陣が突然意味不明な演技を挟む。その違和感は「ああ、これ前フリか」と観客に疑団を抱かせることとなる。それでは、伏線回収の快感は決して生まれないのだ。

⑤結びに
 ネタバレめいたことを書いたが、今作はロジックに至る帰納的な伏線回収ではなく、描写の端々を再確認していく演繹的な伏線回収だ。なので仮に1幕2幕の意味を知っても、絶対に映画は楽しめると請け合おう。
 今劇場に掛かっている中で一番面白い映画だと断言できる。ブリーチとか未来のミライ観たら後悔するに決まってんだ。なら『カメラを止めるな!』に行こうぜ!

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