『貞子(2019)』のココが見所!
粗筋 心療内科の女医、秋川には頭痛の種があった。唯一の肉親である弟和真がyoutuberデビューしドロップアウトするというのだ。そんな折、彼女の勤める医院に記憶喪失の少女が運び込まれる。少女には名前も戸籍もなく、アパートのクローゼットを座敷牢のようにして育てられてきたという。少女の母親祖父江が失火自殺を遂げ抜け出してきたとの報に只ならぬものを感じるが、和真がそのアパートに肝試しに行く動画をアップして失踪をしたことから、秋川は貞子の呪いに触れ始める…。

総評:あらゆるホラーの縮小劣化再生産。

 先ずこれだけ言わせて。何でダメな邦画は全部説明するの?事情を映像で見せようとせず台詞で説明、オウム返しで要約するかと思えばフラッシュバック回想で分かりやすーく由来や過去を提示する。5秒で内容分からなければチャンネル替えられるテレビじゃないんだよ。映画は皆集中して観てるんだから想像や思索の余地を観客に残せや!
 極めつけがネット描写ね。オカルトサイトはレイアウトや見た目で忌まわしさを出すべきなのに「これが5人死亡した放火アパートか…」とタイトルを丸読み。2chやニコ動のコメントは全部音声読み上げされる親切設計。バリアフリーかな?

 細かいところだけど、和真の肝試し動画も問題。美術さんは確かに良い仕事してます。垂れ下がる壁紙、焼け焦げが火ぶくれのように斑だった家具、什器やお札といった小物…。あの映像は確かに本物っぽさがあった。でもさ、何で「編集」されてるの?災禍に遭った人間が死亡直前まで撮っていた体の映像=ファウンドフッテージ形式に必要なのは、人為性の排除。「何でこんな加工がされてるんだ?」と違和感覚えたら最後なんすよ。だからこそ、「グレイブエンカウンターズ」では冒頭で「これは拾得した素材を、時系列順に編集し直したものだ」と告げる。
 で、今作。和真は貞子に気付いてマンションを走って逃げだし、以後失踪する。なら何で「問題の放火アパート」「容疑者祖父江某」ってテロップが出るのさ?お前呪われて半狂乱の割に動画編集する余裕はあるのな?ここでこそ普段のyoutuber動画との差を出すべきでしょ。平生はテロップ効果音カットバリバリ編集してるのに、この肝試し動画だけは環境音だけ、一度もカットされない映像が延々続く…。それでこそ「本物の心霊映像を見てる不吉さ」が出る。小中千昭の「ホラー映画の作法」、白石監督の「フェイクドキュメンタリーの教科書」を中田監督が読んでないワケないじゃん!

 主人公の行動原理も不明。こいつは呪い少女の謎を解きたいの?それとも弟を助けたいの?ストーリーの推進力がどちらにあるのか分からない。はっきり言って女医設定、貞子の生まれ変わりの名無し少女のシーン全部切っても話成り立ちますよ。「ブレアウィッチ(2016)」のように、肝試しで失踪した家族を探す話で良いじゃん。はるばる伊豆大島の洞窟まで弟助けに来た割に、呪い少女の幻影観た途端弟の傍離れてんじゃねえよ!さっさと逃げろや!お前が呪い少女にかまけて満月登ったせいで貞子に捕まって、弟が身代わりに死ぬとか何しに来たん?

 そして最悪なのが貞子の恐怖感を最後の一片まではぎ取ったところ。ハリウッドや3D以降、確かに貞子はモンスター化したよ。でもそういう演出の怖さ以前のお話。貞子と伽椰子が何故Jホラーで別格なのかと言えば、「理不尽で無敵」だから。
 今作、貞子が「良い奴」なんだよ。貞子も伽椰子もビデオを観る、家に関わると何気ないことで呪いが降りかかった。監督自身もインタビューで「貞子の怖さは不特定多数に平等に祟るところ」と語っている。その一方で、今作の貞子は呪い少女が虐められると超能力で手助けする。おまけに少女と貞子を繋ぐ理由が母親に捨てられたという同族意識とか…。子供を助ける因縁譚とかお前は京都高台寺の飴買い幽霊かよ!
 更に言えば、今作の貞子は「弱い」。女医秋川をストーカーするメンヘラ倉橋、弟和真は一旦貞子と対峙するのにその場では死なない。テレビから出てきてマジでキスする5秒前の位置まで来て「失神」で済ませるとか、貞子も丸くなりましたね。おまけに水底まで和真を引きずり込もうとして、秋川と引っ張り合いっこで苦戦するシーンまである。ギャグかな?

 
 いやー見応えのある映画でしたね。「アベンジャーズ:エンドゲーム」と同じ1800円出してこれに激怒しない日本の観客の映画リテラシーの高さ(低さ)が一番のホラーという結論で。

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