『チャイルド・プレイ(2019)』
『チャイルド・プレイ(2019)』
『チャイルド・プレイ(2019)』
粗筋 母子家庭で新居に移り立ての少年、アンディはふさぎ込みがち。それを見かねた母親は、勤め先の玩具店に返品されてきた最新会話型ロボット「バディ」をちょろまかし息子へのプレゼントとする。故障ぎみの人形は自らをチャッキーと名乗り、アンディとの生活が始まる。罵り言葉を復唱するなど子供向けらしからぬ人形に喜び、親友のように付き合うアンディ。だが母親の恋人シェーンと険悪な関係にあるのを見てとったチャッキーは、暴走を始める…。

 
「チャイルドプレイ」シリーズをざっくり一言で言うと、「殺人鬼苦労珍道中」。1作目はご存じの通り、警官に殺されて逆恨みした極悪人チャッキーの魂が人形に乗り移り、人形のオーナーになった少年アンディの肉体を乗っ取ろうと四苦八苦(勿論失敗)。その後も延々アンディを付け狙うわけです。焼かれ炉で溶かされても蘇り、恋人(人形)や息子(二重人格の人形)と家族ケンカしたりもする。チャッキーというキャラクターのアク(悪)の強さが魅力のシリーズだったわけです。

 ではリブート版はどうか。「純真」なんですね。楳図かずおの傑作「ねがい」をご存じでしょうか?内気で友達の居ない少年が、廃材で自作の人形をくみ上げる。彼は人形を「モクメ」と名付け友達として接するが、リアルで友人が出来ると人形遊びは疎遠となり、やがて周りで異変が起き始める…。昔遊んだ・捨ててしまった人形の怪談話ではメリーさんや西洋人形の呪いを挙げた方が伝わりやすいでしょうか?それらの行動原理は、友情と妬み。決して敵意や害意ではないのです。

 ままごとや人形遊びは、人付き合いの予行演習と言われます。イマジナリーフレンドとはつまり幼さを象徴している。今作の死人の中で、2人(と一匹)は間接的にアンディにも責任がある。アンディが周りへの理解や働きかけを拒絶し、不平をまき散らすだけだったがゆえに、曲解したチャッキーは彼らを殺めた。アンディが自分の責任を認識し、チャッキーと(己の幼さと)対峙することで初めて、彼は成長を迎えるのです。

 手塚治虫の「雨ふり小僧」、藤子F不二雄の「劇画オバQ」、或いは「トイストーリー3」。イマジナリーフレンドからの卒業には痛みや哀感がある。半端なく歪んではいたけれど、「また遊びたい」がために縋ってくるチャッキーとの最終対決はスリルよりも不憫さが勝るんですよね。ナイフを振り上げたチャッキーの手が、咄嗟の「親友の歌」で止まる。コアを破壊されたチャッキーが最期に遺す「僕たち親友だったろ?」の言葉を、アンディは否定はしない。
 先に挙げた「ねがい」という漫画はこう終わります。自分を捨てた少年が独りで留守番する夜、モクメは復讐にやって来る。取っ組み合いの末、謝った少年に対し攻撃を止め手を差し伸べるモクメ。すると少年はイスで殴り倒し、徹底的に破壊する。「ごめんね!許して!…でもお前がいると、友だちができないんだ!僕がねがいをかけてしまったから…!」と泣きながら首が落ちるまで…。


 とはいえ、湿っぽかったり説教臭い話でもない。ホラーとしてそつのない作りになってます。アンディの住むアパートの住人たちが主要キャラになるので、アンディの生活風景の中で彼らの人となりがテキパキと描写される。殺害シーンでは頭が耕運機で中身くり抜かれたり、電ノコで股間から肢切断などのぶっ飛んだゴアがある一方で、被害者がゲス不倫男だったり窃視趣味の変態だったりと溜飲は下がる。チャッキーがお土産に持ってきた生首を何とか処分しようとして、中身を知らない母親やご近所さんにバレるのではとヒヤヒヤするギャグ展開まで揃っている。

 チャッキーの性能自体にも時代性が取り入れられていたのは良かったですね。「バディ」を製造する大手カスランは、IOT家電のようにあらゆる商品をネットで連動させている。再起動してブチ切れモードになったチャッキーは、スマホや家電のシステムを乗っ取りアンディが孤立するよう仕向けます。人形の姦計で主人公が孤立するのは初代にもあった展開ですが、こちらはアンディのSAN値を削るような録画映像(周りの愚痴やチャッキーの殺害シーン)をスピーカーやテレビを操作して見せつける。極めつけが「バディ2」の発売カウントダウンパーティー。玩具店の照明・シャッターを掌握し、ハッキングしたドローンを空飛ぶチェーンソーにして虐殺…と逆ホームアローン状態。


 頭空っぽなホラーとして楽しめるし、少年冒険譚としても、勿論シリーズものとしても楽しめる佳作でした。「ハロウィン」と並んで、今年は往年ホラーの名リブートが続くね。

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