『ジュマンジ・ネクストレベル』
『ジュマンジ・ネクストレベル』
粗筋 ジュマンジの試練を生き残ったスペンサー、フリッジ、マーサ、ベサニーの4人は今では大学生に。マーサとの遠距離恋愛に悩むスペンサーは、ブレイブストーン博士になれば自信を取り戻せるのではと魔が差し、再びジュマンジを起動してしまう。
 ゲームに取り込まれた友人を救うべくフリッジとマーサも飛び込むが、家に居合わせたスペンサーの祖父エディとその旧友マイロもおまけで付いてきてしまい…。


 今年のワースト更新。

 先ずゲームという設定を活かせてない。前作では「残機3で始まり、1機失うごとに復活して空から降って来る」「各キャラに特技と弱点が割り振られ、弱点に触ると即死」「残機を全て失うとゲームオーバー」というビデオゲーム設定が取られた。ラストクエストでは、弱点で死亡し空中で復活することで「移動技として使う」という妙手をアクションに組み込んだのは賞賛に値します。
 今回、入れ替わりの泉という大変魅力的なアイテムが出ます。2人が同時に水に体を浸せば、互いの体が入れ替わるというもの。当然これが後々のキーになる筈…ジョブ盗賊で潜入して、いざ会敵すればマッチョのロック様とチェンジするとか…!全くないんだよ。展開されるのは1と同じ「とりかえばやギャップギャグ」だけ。確かにここは楽しい(特に「馬はベサニーだ」には大笑した)が、ステージクリアに関与することはない。物語上必然性がありません。

 それどころか、ラストステージの攻略論理が超雑。「馬がペガサスになって空を飛ぶ」「暴虐王ユルゲンの弱点は泉の木の実」の2つが鍵になるのだが、唐突に直前に真相が明かされてクリアに繋がる。あのさあ…。「自然な場面に見えて後々振り返ると2重の意味が出る」からこそ伏線であって、「流れぶった切った解決法を突然提示する」のはご都合主義だから!冒頭のベサニーインスタでパラセイリングなりの下りを入れておけば、馬=ベサニーの特技に飛行がつき、ジョブスワップしたマイロも継承するとの脈絡が繋げられる。酒場のシーンでフルーツを持ってきた手下をユルゲンが処刑し「食えるか」とキレさせれば、弱点:木の実にも納得がいったのに。


 テーマ的なものに目を向けても、若者←→老人の対比も全くうまく行っていない。前作はスクールカーストが取り上げられていた(現代の『ブレックファーストクラブ』と打ち出すのはどうなの、と個人的に酷評はしたが)。
 一方、今作ではスペンサーは未熟さから来る不安、エディとマイロは老境にさしかかった憂愁を抱いているのだが、この二つが全く交差しない。ああ、旅を通じて老人は経験を元に助言を送り、若い価値観によって好ましい変化も受けるのだな…との予想は裏切られる。スペンサーはマーサと対面した途端仲直りで万事解決、マイロに至っては後述の最悪の末路を迎える。
 そもそも、老人の扱いが酷い。老人会話あるあるギャグは許せる(特徴を的確に捉えられていて笑えるので)。けれど、老人が何の役にも立てていないのは冒険ものとして明らかに欠陥でしょう?中盤、マイロは自嘲したように言う「私の話がまだるっこしくて、遅いばっかりに足を引っ張った」。そうだよ、全く改善を見せないの!同じ言葉を復唱することで、NPCから重要な情報を(偶然にせよ)引き出せたとか、行動がスローなおかげでトラップを回避出来たとか…この老人コンビが居なければこの冒険は成功しなかったという必然性がない。1作目のラストクエストではケイパー展開によって、個性の多様性を肯定できる構成だったのにね。

 そしてマイロの取る最悪の決断。ユルゲンを倒し世界に秩序を取り戻し、一行が現実世界に戻る時が来る。するとマイロはこう切り出すのだ。「ワシ、馬になるのが気に入ったから、いつまでもこの世界で過ごすわ」。あのさあ!!バーチャル設定の映画で、こともあろうにファミリームービーで、この選択ってありますかね!!??マイロは旅の途中、満ち足りたような表情で語る。「年も取った、病気で先も長くない。だが良い人生だった」。枯淡とした老爺だったのに、最後で正反対のこと言い出すんですけど!!
 言うまでもなく、誰しも年老い、病を得て死ぬ。だがそれを忌避するばかりでは、人生の先には絶望しか残されていない。マイロは寧ろ逆の性格であるべきでしょう。ジュマンジの世界に入って健康な体を得たことに雀躍、残機が3あるにも関わらず一切のリスクを取らず冒険を終えるのを嫌がる因業爺に。そんなダメ人間が重要な局面でふっと悟る、ああ終わりは万人に訪れるのだと。(架空世界にせよ)死を受け入れた行動を取ることで憑きものが落ちた優しい顔になり、クエストクリアに繋がる…ありきたりですが、これなら大人も感動出来るお話になるでしょう。「僕も年取って癌になったら、ジュマンジの世界に行きたいな!」一緒に見に行った子供がこうほざいたら、親(祖父母)はどんな顔すれば良いんですかね??


 これを年末年始観るくらいなら、ブラッドベリの「瞬きよりも速く」をお勧めします。老いと死と思い出をほろ苦く、愛おしく捉えた名編が詰まった一冊ですので。

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