最近印象に残った漫画
2020年5月7日 Magic: The Gathering
完結・新連載中心。↑絶賛~↓酷評の位置づけで。
・東京城址女子高生 ジャンル:文化系ゆる部活もの
ハルタレーベルの少女って、「ヒナまつり」のキチガイや「煙と蜜」の聖女しかり、戯画化されたものが多い。対し今作の主人公はほんのり不快感を覚えさせるリアルさがある。ガサツだけどコミュ力はあって、時々意志を秘めた瞳や抜けのある笑みを顔に宿らせる。「未通女くない」んだよね。相方のリアルなアスペルガー描写も併せ、ハルタでこんな少女像に会うとは思っていなかった。
…とはいえ、志村貴子的なエグみは2巻から薄れ出し、純真子犬系後輩やゲス生徒会長を合わせたキャラ萌えカルテットへと移行していく。と、同時に3巻からは見開きを活かした一枚画で城のスケール感を打ち出しており、尽きせぬ魅力のある作品。
・戦争は女の顔をしていない ジャンル:戦争実録もの
エロ漫画の人(失礼)。
LO初出の「ひみつ基地で堀田と」辺りが分かり易いけれど、小梅けいと先生はディテールが凄いんだよね。建物の内外装、機械類、衣服や小物調度に甘さがない。
「戦争は~」は海外文学のコミカライズだけれど、日本人に馴染みの薄いヨーロッパ戦線、それも兵站部隊の話をこれだけリアリティーある物語として提示出来ているのはひとえに作者の世界観構築力(とそれに先立つ入念な下調べ)あってのものだと思う。
・めしあげ! ジャンル:ミリタリー雑学もの
ストーリー自体はふむふむ程度で読み終わったが、解説ページでの考証量にビビる。「新九郎、奔る!」「雪花の虎」のように本編内で解説に紙幅を費やして「ほら、入念な下調べ凄いでしょ~」とドヤられると辟易するが、本作は別。襟章、軍袴、ゲートル、そんな読み飛ばされていくページ背景にとんでもない情報量を詰め込む。アランムーアか何か?(畏怖)
・月花国奇医伝 ジャンル:ファンタジー×医術
ひむか先生の描くキャラは表情のレパートリーが乏しくて、少女漫画として辛いものがあった。でも話が面白きゃ関係ねえわな!
国を蝕む淫祠邪教に対し国盗りをし返す大計、その過程で集まる個性的な面々、一芸に秀でたケイパー要素…とエンタメのツボをきっちり抑えてる。それと作家的な引き出しが深いのも安心出来る点。対称的な作品を最後に酷評するけど、雑学ものはディティールの豊かさが醍醐味なわけでして。
・江戸城再建 ジャンル:巨大プロジェクトもの
「皇居に原寸大の江戸城をブッ建てる」と聞けばとんだ与太話だが、予算と経済効果・工法と耐久性・伝統と利便性…と一つづつ具体的な数字と細目を示されると実際可能なのでは…とワクワクしてくる。
ただそのアプローチが問題なのよね。主人公は基本「情熱と真摯さ」を前面に押し出し、その人柄を周りが慕いほだされていく。西〇武創業者を扱った「傷だらけの山河」で分かる通り、デベロッパー業が綺麗ごとで済む筈がない。ただでさえ江戸城再建という絵空事なのだから、その実現には説得力が必要だよね。空理を空論で動かすのは興ざめ。
おまけに部下が全員主人公のコバンザメ野郎なのもチームものとして薄い。ここ寧ろ、一人跳ねっかえりを配置する方が面白い筈。そいつがダーティープレイをするが、結局主人公の誠実アプローチが上手くいく…そうすればドラマになり、価値観の問い直しにもなる。
とはいえまだ2巻なので、今後に大いに期待。
五等分の花嫁 ジャンル:しっとりラブコメ
リアリティーラインの置き所が分からず、最後までノれなかった。五つ子求愛ハーレムとなればアップテンポ系になるものだが、繊細な画柄・心の機微を捉えた表情・徐々に高まる慕情、と「しっとりリアル路線」で好評を博したように思う。
…それにしては現実的な視座がなく「感情だけ微細でリアル」な感じにどうしても拒否反応が出た。地頭が良い人間に有能なカテキョが付いて結果が出ないなら先ず学習障害かディスクレシアだし、至極尤もなカテキョ解雇に対し家出で対抗するのは(いくら強権的とはいえ)親が可哀そう。そこで始めるバイトもケーキ屋さんとかファンシーなのも…(追い回しは超絶肉体労働やで?)
全員フ―くんLOVEを了承してからの争奪戦になる8巻目からが特にイヤ。ヤリたい盛りの高校生で周りを出し抜くのに性欲が絡まないのは、流石に非現実的過ぎない?(決してギスギス蹴落とし合いにはならず、寧ろ他姉妹のアプローチを応援するのがごとよめらしさではあるのだけれど…)
新井英樹作品を反証に挙げるのは極端にしても、「かぐや様は告らせたい!」が僕の好みです。こっちはもっとギャグ調でデフォルメされているけれど、シリアスなところでは性欲・人生の転機・決断・スクールカースト・エゴをきっちり扱っている。五等分~は冒頭から終着点たる結婚をぶつけてるのに、その道筋がヌルたくて受け付けませんでした。
結論としては佐原屋のエロ同人がお勧め。
忍ぶな!チヨちゃん ジャンル:忍者ラブコメ
存在感0の超人が求愛するという設定は面白かったが、最終巻の展開が残念。大事な人を守る手段が、その記憶を失くすこと…これ自体は良いですよ?でもロミオ&ジュリエットの変形版なのだから、その記憶を復活させるのは相手方に起因するものであるべきでは。
女性主導型コメディ元祖の留美子さんやジョージ秋山でも、基本チャランポランな男がシリアスな展開では男前を張るじゃないですか。だからこそ「流石ウ↑チのダーリンだっちゃー」になる訳で。記憶喪失のチヨにワタル殿が漢気を見せ、「記憶が戻らないままでチヨが惚れ直す」。その後で改めて記憶を取り戻したチヨが感涙に咽ぶとした方がドラマチックですよ。彼女が自己犠牲を独りで挽回したのでは竿役に魅力が勃たないし、内面のない男に惚れるチヨの恋心も薄いものになる。
面食いストーカーと据え膳キープマンの話に堕してしまったなあ、という印象。
ハーン -草と鉄と羊ー ジャンル:歴史ifもの
先ず義経=チンギスハンの設定が何も活きていない。古代・戦国タイムスリップにせよ異世界転生にせよ、来訪人がその特異性ゆえにのし上がるというのは「白人酋長」の変形なんですね。義経にあって遊牧民にはなかったもの、それは文字文化でしょ!口承では伝わらない太古の事績戦法の援用だったり、文盲にはバレない情報伝達や謀略といった「義経=インテリ稀人だからこそ勝つワンロジック」がない。鵯越えの逆落としが一回あるだけ。
更に言えば合戦で勝つロジックすらないのね。なし崩し的な一騎打ち展開→超人的身体能力による勝利の繰り返し。「達人伝」じゃあるめぇし気合で合戦が決まるかよ。
折角シルクロード経由で西域商人と繋がる展開を出した訳じゃん。バグダードは当時世界一の知恵の都だったんだよ?ならアラビア語翻訳で「東征記」を義経が読む→包囲殲滅をするなんてトンデモも可能だった筈。義経=ハンと初めに大嘘を付いているのに、司馬遼太郎的な「エンタメ性を増す嘘」を何一つ付いてくれないの!
伝記を諾々となぞるような空虚さだけがあった。なら打ち切りエンドもしょうがないよね。
・東京城址女子高生 ジャンル:文化系ゆる部活もの
ハルタレーベルの少女って、「ヒナまつり」のキチガイや「煙と蜜」の聖女しかり、戯画化されたものが多い。対し今作の主人公はほんのり不快感を覚えさせるリアルさがある。ガサツだけどコミュ力はあって、時々意志を秘めた瞳や抜けのある笑みを顔に宿らせる。「未通女くない」んだよね。相方のリアルなアスペルガー描写も併せ、ハルタでこんな少女像に会うとは思っていなかった。
…とはいえ、志村貴子的なエグみは2巻から薄れ出し、純真子犬系後輩やゲス生徒会長を合わせたキャラ萌えカルテットへと移行していく。と、同時に3巻からは見開きを活かした一枚画で城のスケール感を打ち出しており、尽きせぬ魅力のある作品。
・戦争は女の顔をしていない ジャンル:戦争実録もの
エロ漫画の人(失礼)。
LO初出の「ひみつ基地で堀田と」辺りが分かり易いけれど、小梅けいと先生はディテールが凄いんだよね。建物の内外装、機械類、衣服や小物調度に甘さがない。
「戦争は~」は海外文学のコミカライズだけれど、日本人に馴染みの薄いヨーロッパ戦線、それも兵站部隊の話をこれだけリアリティーある物語として提示出来ているのはひとえに作者の世界観構築力(とそれに先立つ入念な下調べ)あってのものだと思う。
・めしあげ! ジャンル:ミリタリー雑学もの
ストーリー自体はふむふむ程度で読み終わったが、解説ページでの考証量にビビる。「新九郎、奔る!」「雪花の虎」のように本編内で解説に紙幅を費やして「ほら、入念な下調べ凄いでしょ~」とドヤられると辟易するが、本作は別。襟章、軍袴、ゲートル、そんな読み飛ばされていくページ背景にとんでもない情報量を詰め込む。アランムーアか何か?(畏怖)
・月花国奇医伝 ジャンル:ファンタジー×医術
ひむか先生の描くキャラは表情のレパートリーが乏しくて、少女漫画として辛いものがあった。でも話が面白きゃ関係ねえわな!
国を蝕む淫祠邪教に対し国盗りをし返す大計、その過程で集まる個性的な面々、一芸に秀でたケイパー要素…とエンタメのツボをきっちり抑えてる。それと作家的な引き出しが深いのも安心出来る点。対称的な作品を最後に酷評するけど、雑学ものはディティールの豊かさが醍醐味なわけでして。
・江戸城再建 ジャンル:巨大プロジェクトもの
「皇居に原寸大の江戸城をブッ建てる」と聞けばとんだ与太話だが、予算と経済効果・工法と耐久性・伝統と利便性…と一つづつ具体的な数字と細目を示されると実際可能なのでは…とワクワクしてくる。
ただそのアプローチが問題なのよね。主人公は基本「情熱と真摯さ」を前面に押し出し、その人柄を周りが慕いほだされていく。西〇武創業者を扱った「傷だらけの山河」で分かる通り、デベロッパー業が綺麗ごとで済む筈がない。ただでさえ江戸城再建という絵空事なのだから、その実現には説得力が必要だよね。空理を空論で動かすのは興ざめ。
おまけに部下が全員主人公のコバンザメ野郎なのもチームものとして薄い。ここ寧ろ、一人跳ねっかえりを配置する方が面白い筈。そいつがダーティープレイをするが、結局主人公の誠実アプローチが上手くいく…そうすればドラマになり、価値観の問い直しにもなる。
とはいえまだ2巻なので、今後に大いに期待。
五等分の花嫁 ジャンル:しっとりラブコメ
リアリティーラインの置き所が分からず、最後までノれなかった。五つ子求愛ハーレムとなればアップテンポ系になるものだが、繊細な画柄・心の機微を捉えた表情・徐々に高まる慕情、と「しっとりリアル路線」で好評を博したように思う。
…それにしては現実的な視座がなく「感情だけ微細でリアル」な感じにどうしても拒否反応が出た。地頭が良い人間に有能なカテキョが付いて結果が出ないなら先ず学習障害かディスクレシアだし、至極尤もなカテキョ解雇に対し家出で対抗するのは(いくら強権的とはいえ)親が可哀そう。そこで始めるバイトもケーキ屋さんとかファンシーなのも…(追い回しは超絶肉体労働やで?)
全員フ―くんLOVEを了承してからの争奪戦になる8巻目からが特にイヤ。ヤリたい盛りの高校生で周りを出し抜くのに性欲が絡まないのは、流石に非現実的過ぎない?(決してギスギス蹴落とし合いにはならず、寧ろ他姉妹のアプローチを応援するのがごとよめらしさではあるのだけれど…)
新井英樹作品を反証に挙げるのは極端にしても、「かぐや様は告らせたい!」が僕の好みです。こっちはもっとギャグ調でデフォルメされているけれど、シリアスなところでは性欲・人生の転機・決断・スクールカースト・エゴをきっちり扱っている。五等分~は冒頭から終着点たる結婚をぶつけてるのに、その道筋がヌルたくて受け付けませんでした。
結論としては佐原屋のエロ同人がお勧め。
忍ぶな!チヨちゃん ジャンル:忍者ラブコメ
存在感0の超人が求愛するという設定は面白かったが、最終巻の展開が残念。大事な人を守る手段が、その記憶を失くすこと…これ自体は良いですよ?でもロミオ&ジュリエットの変形版なのだから、その記憶を復活させるのは相手方に起因するものであるべきでは。
女性主導型コメディ元祖の留美子さんやジョージ秋山でも、基本チャランポランな男がシリアスな展開では男前を張るじゃないですか。だからこそ「流石ウ↑チのダーリンだっちゃー」になる訳で。記憶喪失のチヨにワタル殿が漢気を見せ、「記憶が戻らないままでチヨが惚れ直す」。その後で改めて記憶を取り戻したチヨが感涙に咽ぶとした方がドラマチックですよ。彼女が自己犠牲を独りで挽回したのでは竿役に魅力が勃たないし、内面のない男に惚れるチヨの恋心も薄いものになる。
面食いストーカーと据え膳キープマンの話に堕してしまったなあ、という印象。
ハーン -草と鉄と羊ー ジャンル:歴史ifもの
先ず義経=チンギスハンの設定が何も活きていない。古代・戦国タイムスリップにせよ異世界転生にせよ、来訪人がその特異性ゆえにのし上がるというのは「白人酋長」の変形なんですね。義経にあって遊牧民にはなかったもの、それは文字文化でしょ!口承では伝わらない太古の事績戦法の援用だったり、文盲にはバレない情報伝達や謀略といった「義経=インテリ稀人だからこそ勝つワンロジック」がない。鵯越えの逆落としが一回あるだけ。
更に言えば合戦で勝つロジックすらないのね。なし崩し的な一騎打ち展開→超人的身体能力による勝利の繰り返し。「達人伝」じゃあるめぇし気合で合戦が決まるかよ。
折角シルクロード経由で西域商人と繋がる展開を出した訳じゃん。バグダードは当時世界一の知恵の都だったんだよ?ならアラビア語翻訳で「東征記」を義経が読む→包囲殲滅をするなんてトンデモも可能だった筈。義経=ハンと初めに大嘘を付いているのに、司馬遼太郎的な「エンタメ性を増す嘘」を何一つ付いてくれないの!
伝記を諾々となぞるような空虚さだけがあった。なら打ち切りエンドもしょうがないよね。
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