年末の続きです。

・悪人伝
 悪徳刑事&最強ヤクザVS殺人鬼。予告の時点でクソ楽しそうだが、期待違わずアクションのてんこ盛りで話が進む。途中、ヤクザ抗争と潜伏先乗り込み、2地点で一瞬物語が停滞する…のだが、そこでのディティールがきちんと後半犯人を追い込む伏線になっていく脚本が見事。
 今作の特徴としては、「社会正義と個人倫理が両立されている」ところ。これはノワールジャンルとして嬉しい。最終的に殺人鬼は捕まるのだが、それに寄与したヤクザの親分も逮捕される。けれど、彼は大勢の子分が平伏する中を収監される。「メンツを何より重んじる」の信義通り、彼は王として君臨する。
 そして、刑事との取引で同じ獄に繋がれた殺人鬼を捉えたときの、あの凄絶な笑み。変に湿っぽくならず、最後までキレッキレ。



ここからベスト4。

・ジッラ 修羅のシマ
 演出が抜群。日本で劇場公開されるインド映画で言うと、今年の「サーホー」や「ジガルタンダ」のように、3時間級作品は冗長なシーンの連続で飽きが来る。一方、ジッラは主人公の成長とその圧倒的強さを外連味たっぷりの決め画+スロー演出で非常にコンパクトに済ませる。だらだらドラマで見せるのではなく、アクション+モンタージュ+ミュージカルによってストーリーテリングを短縮してるワケ。さながらかの大傑作「バーフバリ」のようにね。

 それでも45分~90分地点では、主人公がこの世の春を謳歌するシーンが結構のボリュームで挟まる。「悪党の癖に良い気なもんだよなー」と若干不快感が募って来るも、これきちんと演出的伏線になっていくのよね。
 80分での物語折り返し地点、警察上層で専横を利かせたことが遠因で悲惨な事故が起きる。それまでのコメディ演出から一転、どぎついハード描写でジッラは打ちのめされ、初めて正義の心に目覚める。ぬるま湯シーンが長つづきしたからこその、この懊悩と成長。
 そこの覚醒シーンがバチグソかっこいい。。宙に舞う悪漢が割った蛍光灯の火花に照らされ、あれほど嫌がっていた官服を身にまとい入場。
https://www.youtube.com/watch?v=L6dfjaPN-xQ&ab_channel=UIEMovies
ここで"Jilla Jilla Jilla"が掛かるのは絶頂もの。

 悪人伝と同じく、「社会正義と個人倫理の両立」が成立するエンドなのも好印象。マフィア組織は壊滅にまで追い込み、ジッラの父である親分も逮捕される。けれど、彼は最後に息子と共闘し(ここでの革靴=息子の足、サンダル履き=親父の足が踏みだすショットが最高にかっけーんだ)、息子手ずからのワッパで縛に付く。そこで幸せだった頃と同じ押し競まんじゅうでパトカーに向かうあの絵面だけで、彼の心は救われてるんだよ。
 どの画にも気配りと侠気が満ちた見事な大作活劇でした。


・キケンな誘拐
 コーエン兄弟の「ファーゴ」を思わす予測不能なストーリー展開と巧みな伏線、エドガーライトを思わすキレッキレの編集テンポとキャラクター性の強いコメディーセンス。身代金誘拐チームが主人公という、撮りようによっては非常に不快感を覚える題材ながら、パワーとユーモアで圧倒され2時間40分があっという間に過ぎていく。

 それでも、一番衝撃的だったのはラストだね。劇中最も性根の腐っている青年が棚からぼた餅で勝ち組となり、歯の根の浮くような偽善事業で社会の尊敬を集める。一方、金は失うも日常に戻れた誘拐犯は、本来コメディ要素の筈だった妄想癖がトリガーとなり、「二度と家に帰さない」であろう本当の誘拐へと乗り出す…。ここまでゲラゲラ笑っていた観客を、現実に戻してくれるような忌まわしい幕切れ。コメディよし、社会派よし、毒っけよし、の3拍子揃ったエンタメでした。


・透明人間
https://magiclazy.diarynote.jp/202007232210449599/
 ブラムハウスって、「ワンアイディアは良いけど、ジャンル映画的完成度は一歩足りない」ホラーが多いとちょくちょく語って来たよね。それとは対照的に、今作は非常に古典的な題材で突き抜けてフレッシュな要素はない。でも、全ての要素が非常に高品質。リーワネルがドチャクソ高学歴というのもあるけど、本当に基礎力のある監督じゃないと、こうも欠点のない映画は撮れないよ。
 昨年末にレンタル開始したので、正月休み中にでも観てみて。


・ウルフウォーカー
https://magiclazy.diarynote.jp/202011200036414147/
 すげぇ(一言)




 今年も長文映画評書く位には映画に粘着する一年を過ごしたいですね。

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