国内の酷評レビューが原作ありき論調ばかりだったので、完全門外漢の素人意見ですが、お一つ。
粗筋 特殊部隊員のアルテミス大尉は、消息を絶ったブラボーチームの捜索のため砂漠へ。彼女の率いるアルファチームは急速接近する砂嵐に巻き込まれ視界を失い、意識を取り戻すと辺り一面は別世界となっていた。焼き焦がされたブラボーチームの残骸を見つけ呆然とする彼らだが、砂の下から現れた巨獣によって隊は大混乱に…。
①作品概説
ゲーム「モンスターハンター」は2004年の1作目発売以降、派生タイトル49作、通算6千万本を売り上げる屈指の大ヒットシリーズ…らしいよ!以下のレビューでは映画本編とパンフ以上のゲーム情報は一切ないので、既プレイ勢はご寛恕下さい。
監督は通称「ダメな方のポールアンダーソン」こと、ポール・W・S・アンダーソン。ホラーリメイク・実写化やそこそこ佳作のSFを撮ってきた人だけど、日本で有名なのは何といっても「バイオシリーズ」「ミラジョボビッチの旦那」の2点だね。御蔭で「嫁を映画に出したいだけのクソ監督」呼ばわりをされる始末。今作に至っては娘も出演し、晴れて家族映画ってワケやな!
②序盤:サバイバルホラー
僕もね、バイオ3・4・5・6のクソっぷりをリアタイ劇場で目撃してるので、全く期待せず今作を見たんですよ。…ところが何と、序盤は結構面白かった。何故ならサバイバルホラーとしての側面を強く打ち出していたから。
物語の導入は、ざっくりした世界観と主人公の設定描写です。ここの世界跳躍で「日本では異世界転生が流行ってるから日本市場向けに作った」なんてパータレな意見を結構見るんですが…あのね。ロビンソンクルーソーはじめ、嵐に遭って彼岸に渡るのは海洋冒険小説の伝統だから!映画でもMGM版オズの魔法使い以降ずっとあるから!寧ろ、余計な人間ドラマを見せず開幕10分で次元渡りさせる割り切りっぷりは評価できるくらい。
さて、モンハン世界に飛ばされたアルファチームは巨大なドラゴン、ディアブロス亜種に襲われる。犠牲を出しながら洞窟に駆け込むも、今度は蜘蛛の群れネルスキュラに虐殺されていく。ここが素晴らしいのは、ファンタジーの割にリアリティレベルをかなり高く設定していると見せていること。
ファンタジー方面のゲーム実写化と言えば、「ウォークラフト」「名探偵ピカチュウ」など、リアリティーレベルが低いものが多い(一概に悪いワケじゃないですよ?)。一方今作は(たとえ巨大なモンスターが出るにしても)人間側の判定はシビアなんですよ。刺されてもブチ転がされても噛まれても死ぬ。背丈ほどの鈍器を振り回したり、大型バスサイズのモンスターにぶつかられても直ぐに起き上がるような「ゲーム的リアリティ」映画ではない、とはっきり示してくれる。
③過剰なグロサービス
そんなサバイバルホラー要素を後押しするのが、人間側の過剰なグロ演出。ディアブロスに串刺しにされるのは序の口、真の恐怖はネルスキュラ登場以後に始まります。人間を一本釣りしたり、頭からガブリンチョしたり。運よく巣に連れ去られたメンバーも、脱出の過程でエグい死に方をしていく。
アンダーソン監督って、ホラー・バイオレンス方面の実写化・リメイクを多く手掛けるからか、ジャンル作品の小ネタを無邪気にブチ込む癖が見られます。「バイオ6」では「ロボコップ」、「イベントホライズン」では「惑星ソラリス」+「ヘルレイザー」と言った感じでね。
今作も、ネルスキュラの巣脱出パートはピータージャクソンの過去作「キングコング」と「ホビット」2作目の蜘蛛わらわら描写ですね。こわごわと進む主人公をカメラがズームアウトしていって巣の広大さ、蜘蛛の多さを見せて絶望感を煽る。おまけに、黒人兵士の体に産み付けられた卵がブチュブチュ潰れて小蜘蛛がジャリジャリジャリッ!と湧き出すサービスシーンはダラボン監督の「ミスト」でしょ!
おまけに、命からがら逃げだした後は傷口にガンパウダー振りかけて焼灼止血する「ランボー3」っぽいシーンもあったり…。いやーボンクラオタクの僕は大好物だけど、カッコいいモンスターが暴れるシーンを見たい原作ファンはどういう顔して今観てんだろとも思いましたけどね。
④中ボス討伐ロジック
結局、巣を脱出した時点で生き残りはアルテミス一人。しかし彼女は謎のアジア人、「ハンター」に出会い助けられます。大して意味のない殴り合いを経験し仲良くなった二人は、砂漠地帯を脱出するべくディアブロス亜種の討伐を決意します。この下りの見所は、モンスターを倒すロジックがしっかりしているところ。
上述した通り、リアリティーレベルを高くした以上「根性で何とか倒す」展開は取れない。そのためちっぽけな人間が巨大なモンスターを倒すには何らかのロジックが必要になる。そこで二人は作戦を練り始めるんですね。音に反応するモンスターなので特定の場所に誘導しよう、毒で先ず弱らせよう、とどめを刺すための武器を調達しよう…、と。
この反撃開始展開の良さは2点。一つが映像的な伏線。音に反応する性質はディアブロスに最初に襲われるシーンで、トラップ敷設や武器調達の場所はアルテミスと「ハンター」が無駄に殴り合うシーンで、ネルスキュラの毒はアルテミスが刺されるシーンでそれぞれ前に出されているので、唐突さがない。
もう一つがハクスラ要素。ハクスラというのは「モンスターを狩って、それで武器を強化して、更に強い敵を討伐できるようになる」というRPGのシステム名称。ネルスキュラを狩って毒を得て、毒武器でディアブロスを狩り、ディアブロスから剥いだ装甲で沙漠の嵐をやり過ごす…と攻略ごとにやれることが増えていく。序盤の巣脱出パートではメディキットの酸素パック+発煙筒で即席火炎放射器を作る下りもあったりして、殺しべ長者マラソンは裸一貫になった時点で始まっていたご様子。
⑤リアリティレベル崩壊:ファンタジー要素
そんな訳で、門外漢の僕はディアブロス亜種討伐までは楽しく見れてました。50分時点までは良い…問題はここからだ!
砂漠を抜け、森林地帯に足を踏み入れた二人。しかし火を吐く巨竜、リオレウスに草食モンスターの群れが追いまくられ二人の方へ殺到する。あわや…という場面でハンター一行に助けられるのだが、ここから一気にリアリティーレベルが落ちていく。
船室で目を覚ましたアルテミスの前に先ず登場するのがデカい猫。身長1M半はあろうか…この足裏と股関節で二足歩行は無理に見えるがすたすた歩く。アイルーという種族らしく、知能は人間程度ある。
ネコ人間は何とか許すにしても、ファンタジー武器も沢山出てくる。ハンターのリーダー、大団長は身の丈ほどある斧を軽々振り回すうえ、地面に打ち付けると炎の波がぶわわっと広がる。何か強そう。
…繰り返すけどね、リアリティレベルが低い=即駄作じゃないんですよ。一貫させて!亜人出しても良い、エレメント装備を出しても良い、でもそれなら最初から荒唐無稽さやハイファンタジーの作り込みで面白さを追求しよ?途中までシビアなサバイバルホラーをやってきたのに、何で突然ファンタジーになるの?これってメタフィクションだったの?DQユアストーリー?
⑥リアリティレベル崩壊:バトルロジックの杜撰さ
映画のファンタジー転換によって、バトルロジックも無実化していきます。
と監督が語る通り、リオレウスには一切の現代武器が効きません。…良いよ、「この世の武器が効かない」のは呑み込むよ。でも「モンハン世界の武器が何故効くか」に説得力がないのよ。M1エイブラムスの対戦車榴弾は効かなくて、何でハンターの持つダイナマイト矢は効くの?
言葉で説明する必要はない。折角ネルスキュラ~ディアブロス討伐の下りでハクスラ要素を出してるのだから、リオレウス討伐へも脈絡を繋げれば良いじゃん!例えば、序盤にディアブロスとリオレウスの縄張り争いをさせる。ハンヴィーに積んだ重機関銃では傷つかなくとも、モンスター同士のぶつかり合いでは外皮に傷がつく描写を入れる。そうして後リオレウス討伐に向かう前にスラッシュアックスの斧頭にディアブロスから剥いだ外皮を付けたり、ダイナマイト矢に角の破片を仕込む画を入れる。そしたら「ディアブロスってツエ―からすげーリオレウスも狩れる」ってロジックになるじゃないですか。
一応ね、「リオレウスは炎を吐く直前に隙が出来る」という弱点ロジックもあるんです。ただこれも大団長が(明らかに巻きのペースで世界観設定を口頭説明しつつ)討伐直前に親切に教えてくるんですよ。これも美しくない。
折角主人公のアルテミスを、現実世界の特殊部隊員って設定にしたじゃないですか。なら、「彼女が弱点を見つけるべき」なんですよ。軍人だからこそ、危機的状況に遭っても冷静に状況判断と分析が出来る。他のモンスターとの小競り合いだったり、リオレウス討伐の序盤で攻撃パターンを観察することで、弱点を推測させる。そうしたらハンターばかりのパーティーに「レンジャー」が合流することで、漸く討伐可能になったっていうゲーム性・ロジックになるじゃないですか。
⑦性格崩壊
この映画、ラストで「俺たちの戦いはこれからだ!」展開に入るんですけど、リドルエンディングの他に問題があります。それはアルテミスと「ハンター」、両人の動機が投げっぱになっている点。
劇中、アルテミスは何度も指輪を取り出し「必ず生きて戻る」と自分に誓います。また、「ハンター」も夜ごと祭壇に小さな人形を二つ祭りその前で祈りを捧げる様子から、妻子と生き別れになったことを匂わせます。そういった現世への執念があるからこそ二人は強かった筈。
その癖、リオレウスを討伐した後も二人はゲートを通りモンハン世界への帰還&討伐の旅に戻ります。…良いよ、現世に帰ったら続編作れねえもん、この落ち着け方は仕方ない。でもロジック作ろうよ。
次元間のつなぎ目が不安定だと、モンハン世界とあらゆる次元が繋がってしまう…だから故郷の次元を守るために次元渡り装置「スカイゲート」を修理すべくモンハン世界に帰る、とかさ。そこで二人が指輪・人形を愛おしそうに撫でた後に武器を構えれば、動機も分かるじゃん!
なのにゲート越しにゴアマガラを見て「ひと狩り行くぜ!」とばかり飛び込みにいくの…狂人ですよこれ。
⑧結びに
残念なことに、今作の世界興収は苦戦しております。そのうえ古謡を元にしたジョーク(dirty kneesと-neseをかけたギャグ)を出した結果、中国人・日本人差別だと炎上。世界配給の時点で東宝・テンセントがガッツリ関わっており日中市場を当て込んでいた筈なのに、要らんところですらケチがついたワケです。
とはいえゲームを離れて観れば楽しめる部分も間違いなくある一本。日本の興収も公開3週目で10億と少し寂しい状況なので、皆さんもお近くの映画館で観ましょう!…こういうこと言うと、まん防自粛警察に狩られちゃいますかね?
はい、5千字評でした。やっぱ人間が内側から食い破られる映画って良いよね!(リョナ感
粗筋 特殊部隊員のアルテミス大尉は、消息を絶ったブラボーチームの捜索のため砂漠へ。彼女の率いるアルファチームは急速接近する砂嵐に巻き込まれ視界を失い、意識を取り戻すと辺り一面は別世界となっていた。焼き焦がされたブラボーチームの残骸を見つけ呆然とする彼らだが、砂の下から現れた巨獣によって隊は大混乱に…。
①作品概説
ゲーム「モンスターハンター」は2004年の1作目発売以降、派生タイトル49作、通算6千万本を売り上げる屈指の大ヒットシリーズ…らしいよ!以下のレビューでは映画本編とパンフ以上のゲーム情報は一切ないので、既プレイ勢はご寛恕下さい。
監督は通称「ダメな方のポールアンダーソン」こと、ポール・W・S・アンダーソン。ホラーリメイク・実写化やそこそこ佳作のSFを撮ってきた人だけど、日本で有名なのは何といっても「バイオシリーズ」「ミラジョボビッチの旦那」の2点だね。御蔭で「嫁を映画に出したいだけのクソ監督」呼ばわりをされる始末。今作に至っては娘も出演し、晴れて家族映画ってワケやな!
②序盤:サバイバルホラー
僕もね、バイオ3・4・5・6のクソっぷりをリアタイ劇場で目撃してるので、全く期待せず今作を見たんですよ。…ところが何と、序盤は結構面白かった。何故ならサバイバルホラーとしての側面を強く打ち出していたから。
物語の導入は、ざっくりした世界観と主人公の設定描写です。ここの世界跳躍で「日本では異世界転生が流行ってるから日本市場向けに作った」なんてパータレな意見を結構見るんですが…あのね。ロビンソンクルーソーはじめ、嵐に遭って彼岸に渡るのは海洋冒険小説の伝統だから!映画でもMGM版オズの魔法使い以降ずっとあるから!寧ろ、余計な人間ドラマを見せず開幕10分で次元渡りさせる割り切りっぷりは評価できるくらい。
さて、モンハン世界に飛ばされたアルファチームは巨大なドラゴン、ディアブロス亜種に襲われる。犠牲を出しながら洞窟に駆け込むも、今度は蜘蛛の群れネルスキュラに虐殺されていく。ここが素晴らしいのは、ファンタジーの割にリアリティレベルをかなり高く設定していると見せていること。
ファンタジー方面のゲーム実写化と言えば、「ウォークラフト」「名探偵ピカチュウ」など、リアリティーレベルが低いものが多い(一概に悪いワケじゃないですよ?)。一方今作は(たとえ巨大なモンスターが出るにしても)人間側の判定はシビアなんですよ。刺されてもブチ転がされても噛まれても死ぬ。背丈ほどの鈍器を振り回したり、大型バスサイズのモンスターにぶつかられても直ぐに起き上がるような「ゲーム的リアリティ」映画ではない、とはっきり示してくれる。
③過剰なグロサービス
そんなサバイバルホラー要素を後押しするのが、人間側の過剰なグロ演出。ディアブロスに串刺しにされるのは序の口、真の恐怖はネルスキュラ登場以後に始まります。人間を一本釣りしたり、頭からガブリンチョしたり。運よく巣に連れ去られたメンバーも、脱出の過程でエグい死に方をしていく。
アンダーソン監督って、ホラー・バイオレンス方面の実写化・リメイクを多く手掛けるからか、ジャンル作品の小ネタを無邪気にブチ込む癖が見られます。「バイオ6」では「ロボコップ」、「イベントホライズン」では「惑星ソラリス」+「ヘルレイザー」と言った感じでね。
今作も、ネルスキュラの巣脱出パートはピータージャクソンの過去作「キングコング」と「ホビット」2作目の蜘蛛わらわら描写ですね。こわごわと進む主人公をカメラがズームアウトしていって巣の広大さ、蜘蛛の多さを見せて絶望感を煽る。おまけに、黒人兵士の体に産み付けられた卵がブチュブチュ潰れて小蜘蛛がジャリジャリジャリッ!と湧き出すサービスシーンはダラボン監督の「ミスト」でしょ!
おまけに、命からがら逃げだした後は傷口にガンパウダー振りかけて焼灼止血する「ランボー3」っぽいシーンもあったり…。いやーボンクラオタクの僕は大好物だけど、カッコいいモンスターが暴れるシーンを見たい原作ファンはどういう顔して今観てんだろとも思いましたけどね。
④中ボス討伐ロジック
結局、巣を脱出した時点で生き残りはアルテミス一人。しかし彼女は謎のアジア人、「ハンター」に出会い助けられます。大して意味のない殴り合いを経験し仲良くなった二人は、砂漠地帯を脱出するべくディアブロス亜種の討伐を決意します。この下りの見所は、モンスターを倒すロジックがしっかりしているところ。
上述した通り、リアリティーレベルを高くした以上「根性で何とか倒す」展開は取れない。そのためちっぽけな人間が巨大なモンスターを倒すには何らかのロジックが必要になる。そこで二人は作戦を練り始めるんですね。音に反応するモンスターなので特定の場所に誘導しよう、毒で先ず弱らせよう、とどめを刺すための武器を調達しよう…、と。
この反撃開始展開の良さは2点。一つが映像的な伏線。音に反応する性質はディアブロスに最初に襲われるシーンで、トラップ敷設や武器調達の場所はアルテミスと「ハンター」が無駄に殴り合うシーンで、ネルスキュラの毒はアルテミスが刺されるシーンでそれぞれ前に出されているので、唐突さがない。
もう一つがハクスラ要素。ハクスラというのは「モンスターを狩って、それで武器を強化して、更に強い敵を討伐できるようになる」というRPGのシステム名称。ネルスキュラを狩って毒を得て、毒武器でディアブロスを狩り、ディアブロスから剥いだ装甲で沙漠の嵐をやり過ごす…と攻略ごとにやれることが増えていく。序盤の巣脱出パートではメディキットの酸素パック+発煙筒で即席火炎放射器を作る下りもあったりして、殺しべ長者マラソンは裸一貫になった時点で始まっていたご様子。
⑤リアリティレベル崩壊:ファンタジー要素
そんな訳で、門外漢の僕はディアブロス亜種討伐までは楽しく見れてました。50分時点までは良い…問題はここからだ!
砂漠を抜け、森林地帯に足を踏み入れた二人。しかし火を吐く巨竜、リオレウスに草食モンスターの群れが追いまくられ二人の方へ殺到する。あわや…という場面でハンター一行に助けられるのだが、ここから一気にリアリティーレベルが落ちていく。
船室で目を覚ましたアルテミスの前に先ず登場するのがデカい猫。身長1M半はあろうか…この足裏と股関節で二足歩行は無理に見えるがすたすた歩く。アイルーという種族らしく、知能は人間程度ある。
ネコ人間は何とか許すにしても、ファンタジー武器も沢山出てくる。ハンターのリーダー、大団長は身の丈ほどある斧を軽々振り回すうえ、地面に打ち付けると炎の波がぶわわっと広がる。何か強そう。
…繰り返すけどね、リアリティレベルが低い=即駄作じゃないんですよ。一貫させて!亜人出しても良い、エレメント装備を出しても良い、でもそれなら最初から荒唐無稽さやハイファンタジーの作り込みで面白さを追求しよ?途中までシビアなサバイバルホラーをやってきたのに、何で突然ファンタジーになるの?これってメタフィクションだったの?DQユアストーリー?
⑥リアリティレベル崩壊:バトルロジックの杜撰さ
映画のファンタジー転換によって、バトルロジックも無実化していきます。
ポールはこうした演出を施した理由に…(中略)…「軍の兵器が通用しないことを見せることで、モンスターの強さを引き立たせられる」として、原作ゲームを知らない観客にも「モンハン」の世界の武器を使うことの説得力を持たせていたのだ。
と監督が語る通り、リオレウスには一切の現代武器が効きません。…良いよ、「この世の武器が効かない」のは呑み込むよ。でも「モンハン世界の武器が何故効くか」に説得力がないのよ。M1エイブラムスの対戦車榴弾は効かなくて、何でハンターの持つダイナマイト矢は効くの?
言葉で説明する必要はない。折角ネルスキュラ~ディアブロス討伐の下りでハクスラ要素を出してるのだから、リオレウス討伐へも脈絡を繋げれば良いじゃん!例えば、序盤にディアブロスとリオレウスの縄張り争いをさせる。ハンヴィーに積んだ重機関銃では傷つかなくとも、モンスター同士のぶつかり合いでは外皮に傷がつく描写を入れる。そうして後リオレウス討伐に向かう前にスラッシュアックスの斧頭にディアブロスから剥いだ外皮を付けたり、ダイナマイト矢に角の破片を仕込む画を入れる。そしたら「ディアブロスってツエ―からすげーリオレウスも狩れる」ってロジックになるじゃないですか。
一応ね、「リオレウスは炎を吐く直前に隙が出来る」という弱点ロジックもあるんです。ただこれも大団長が(明らかに巻きのペースで世界観設定を口頭説明しつつ)討伐直前に親切に教えてくるんですよ。これも美しくない。
折角主人公のアルテミスを、現実世界の特殊部隊員って設定にしたじゃないですか。なら、「彼女が弱点を見つけるべき」なんですよ。軍人だからこそ、危機的状況に遭っても冷静に状況判断と分析が出来る。他のモンスターとの小競り合いだったり、リオレウス討伐の序盤で攻撃パターンを観察することで、弱点を推測させる。そうしたらハンターばかりのパーティーに「レンジャー」が合流することで、漸く討伐可能になったっていうゲーム性・ロジックになるじゃないですか。
⑦性格崩壊
この映画、ラストで「俺たちの戦いはこれからだ!」展開に入るんですけど、リドルエンディングの他に問題があります。それはアルテミスと「ハンター」、両人の動機が投げっぱになっている点。
劇中、アルテミスは何度も指輪を取り出し「必ず生きて戻る」と自分に誓います。また、「ハンター」も夜ごと祭壇に小さな人形を二つ祭りその前で祈りを捧げる様子から、妻子と生き別れになったことを匂わせます。そういった現世への執念があるからこそ二人は強かった筈。
その癖、リオレウスを討伐した後も二人はゲートを通りモンハン世界への帰還&討伐の旅に戻ります。…良いよ、現世に帰ったら続編作れねえもん、この落ち着け方は仕方ない。でもロジック作ろうよ。
次元間のつなぎ目が不安定だと、モンハン世界とあらゆる次元が繋がってしまう…だから故郷の次元を守るために次元渡り装置「スカイゲート」を修理すべくモンハン世界に帰る、とかさ。そこで二人が指輪・人形を愛おしそうに撫でた後に武器を構えれば、動機も分かるじゃん!
なのにゲート越しにゴアマガラを見て「ひと狩り行くぜ!」とばかり飛び込みにいくの…狂人ですよこれ。
⑧結びに
残念なことに、今作の世界興収は苦戦しております。そのうえ古謡を元にしたジョーク(dirty kneesと-neseをかけたギャグ)を出した結果、中国人・日本人差別だと炎上。世界配給の時点で東宝・テンセントがガッツリ関わっており日中市場を当て込んでいた筈なのに、要らんところですらケチがついたワケです。
とはいえゲームを離れて観れば楽しめる部分も間違いなくある一本。日本の興収も公開3週目で10億と少し寂しい状況なので、皆さんもお近くの映画館で観ましょう!…こういうこと言うと、まん防自粛警察に狩られちゃいますかね?
はい、5千字評でした。やっぱ人間が内側から食い破られる映画って良いよね!(リョナ感
コメント
あと別にリョナラー=グロ好きじゃねーぞwww