2021年4~9月 印象に残った本 その2
2021年4~9月 印象に残った本 その2
2021年4~9月 印象に残った本 その2
〇Goetia:The lesser key of Solomon the King Alesiter Crowley
概要:著名な魔導書「レメゲトン」 の第一巻「ゴエティア:ソロモンの小さな鍵」を、元祖厨二病、アレイスター・クロウリーが編集した版。

 サブカルに大きな影響を与えた「ソロモン72柱」だけなら、ソシャゲwikiを閲覧するだけで知れる。しかし原著で楽しめたのは、「皆も書ける魔法陣キット」だの「ギリシャ語・英語詠唱対照表」だの、寧ろ付録部分。
 クロウリー自身は”Occult”(隠されたもの)を開かれた「オカルト」にしようとした人だが、現代の読者としてはそれが滑稽にも愛らしく読める。
……… 
就中、我が目に希代に映じしは其の文躰にあり。
"If he mayth obedient not to thee…."
 斯様に古りし仮名遣いは、シヤイクスピアの御代のものなり。
 扨て、ちうに病に床臥せし者は独逸語羅丁語の詠唱を好むのが、当節の習いとなりつる。然はあれど、遡る事ももとせのアレイスタア師も又、中英語を愛づる気色なり。然すがは、ちうに病の父祖ならんや。




〇宗教的経験の諸相 ウィリアム・ジェイムズ
概要:宗教的な昂揚・或いは沈静を分類した『ギフォード講義』の書籍化。

 教理問答、宗教組織、歴史などの旧来観点を離れ、純粋に「個人的な体験」から宗教を語った画期的な著作。氏の代表作『プラグマティズム』とも深く通じるところがあるが、こちらの方が中世~近世の信仰録からの引用がある分、いくぶんか具体的で読み易い。
 引用されるものが、頑迷で素朴な「市井の人々」の言葉であり、人間的な弱さを抱きとめる優しさが、本文の端々から垣間見える。だからこそ本書は長らく読み継がれてきたのだなあ…。と、いちメンヘラとして思った。



〇虎狼の血3部作 柚月裕子
粗筋:治安を守るため任侠と癒着し、越権行為も辞さない悪徳刑事。彼を内偵するため県警から送り込まれた若手エリートが、徐々にそのタフな生き方に感化されていく。

 映画原作もの。
 映画はストレートなアウトローものだったが、原作小説はミステリーの色合いが強い。それも連作短編という小説にしか出来ないギミックで、読者の心を抉る手つきは見事。映画版では、エモーションを重視する作りに転換したことに改めて感心。豚小屋はね…良いよね…。

 2作目は可もなく不可もなく。けれど3作目が「かつて敵なしだった極道者が、時代変化に適応出来ず自滅していく」話で涙がちょちょ切れた。『実録銀座私設警察』などの任侠映画を、善く読み込んでるよね。



〇遠巷説百物語 京極夏彦
粗筋:遠野藩家老付隠密の浪人が、変事不祥事の裏で闇社会の住人と出会う

 京極フリークとして最高にアガった1冊。
 「巷説」シリーズはこれまで「書楼弔堂」で番外編をやってはいたが、まさか10年越しの新作。それも「でっけぇ鼠がおりやしてね」と語られていた、大奸物との最終決着まで本作で付けられた。
 先に挙げた『虎狼の血』と同じく、連作短編の設定を活かした風呂敷の畳み方もお見事。「巷説」シリーズのテーマである「物語を語る/騙る」ことへの解答、章の扉を使ったトリック、そして遠野郷という民話のふるさと設定を活かしたたオチ…。京極ファンなら泣いて絶頂するしめくくりです。



 続きます。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索