2021年4~9月 印象に残った本 その4
2021年4~9月 印象に残った本 その4
2021年4~9月 印象に残った本 その4
・終わりなき日常を生きろ 宮台真司
概要:高学歴たちは何故オウムに行ったのか。僅か数週間で書かれた、オウムと共に生きた時評。

 サブカル評論の中でブッチギリで有名なフレーズ「終わりなき日常」。定義自体は「イデオロギー・宗教などの大きな物語が失われた時代では、人々は心の拠り所を求めた行動をする」、というもの。これ自体はリオタールや大塚英志も語ってるネタなんだけど、本書は論調が特徴的。
 挑発的な言辞、東・宇野以降とは対照的な平易な文章、写真・コラム・空想対談(!?)などのMOOK的な文面作り…。ああ、90年代ってこんな感じだったのか…!と時代を肌で感じられる好著。


・幻獣の話 池内紀
概要:ギリシャ神話に始まり、ロボットまで。古今の幻獣をラインナップした読み物。

 比較宗教学・文化人類学のように「文化現象としての妖怪・精霊を体系的に考察する」のではなく、ざっくばらんに列挙した本。とはいえボルヘス好きとして楽しくない訳がない。


8月のくず 平山夢明
粗筋:奴隷獣との語らい。底辺極貧バトル。絶望の中から這い上がる物語。

https://magiclazy.diarynote.jp/201907080012504941/
 前にも紹介したが、僕は平山夢明という作家を偏愛している。

 平山小説は、時代ごとに変遷してきた。
 第一期は90年代。「異常快楽殺人」「東京伝説」のようなサイコパス系、「超怖い話」のような怪談実話を書いていた。この頃の特徴と言えばとにかく写実的でグロテスクな描写。水死体の描写で「破けた肉まん」は天才。
 第二期は異形コレクション執筆時。「独白するユニバーサル横メルカトル」「ダイナー」などで数々の賞を取ったこの時期は翻訳調の固い文章が増え、また完成度の高い短編で知られるようになった。
 そして第三期は、10年代中ごろから。地べたを這いずるような目に遭いながらも、最後にどこか希望の残る終わり方を見せる。「デブを捨てに」「猿より下、ヤギより上」辺りはそういう抜けのある気持ちよさを見せてくれる。

 …そんなわけで、「8月のくず」もいつも通り最低で最高な本でした。
今度の人生は、ハズレだったかい?おまけをやるよ。
おしまいにする前に読んでくれ。絶望の果てまで届く物語を。これは、明日なき世界の福音だ。


 帯文のこの惹句が、まさに平山ワールドを象徴している。

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