『劇場版 呪術廻戦0』 観た
2021年12月25日 映画
同じく週ジャン看板漫画の「映画鬼滅」と比較して、縷々語って行きます。
①鬼滅にはない美点
・まとまってる
原作の「東京都立呪術高等専門学校」が元々4話読み切り作品なので、広げた風呂敷をちゃんと畳んでくれる。キャラ紹介・世界観提示・固有名詞説明もきちんとあるので、なんとなく観に来た人にも親切。
・ぎゃあぎゃあ叫ばない
愁嘆場はいくつかあるが、あっさり流してアクションに移行するのでダレない。「リカちゃぁああん!ありがとう!ありがとう!」とか叫ばなくて本当に良かった。
これを美点として挙げないといけないのが、テレビ邦画のそもそも終わってる部分ではあるのだが…。
・コミカル演出のセンス
原作のツッコミ・シュール・ギャグシーンを、デフォルメ画・背景・SEなどで(漫画版の印象より強く)戯画化している。べったべたゆえ好みが分かれるだろうが、僕は賛成。
鬼滅との違いとしては、鬼滅は「キャラ中心」のギャグに対し、呪術は「シチュエーション中心」のギャグなのよね。ドラマに緩急を付ける方法としては、こっちの方が上。
②鬼滅と同じ欠点
・直接説明
百回は言って来たけど、劇場映画で漫画吹き出しを全部ト書きにするの、止めよ?
「そうだ、伊地知さんに連絡しないと」→携帯を取り出す→「圏外!?」→スマホ画面の「圏外」表示、では2重描写だから!台詞は「そうだ、連絡を」だけで、あとは映像でさらっと流せるでしょ!
・動きで情感表現をしない
上記項目に似た話だけど、映像的間接表現で済むものをわざわざ台詞に託してしまう。
例えば前半見せ場の、乙骨が覚醒するシーン。「今度こそ僕は立ち上がるんだ!」と奮起するのなら、その手前で崩れ落ちる/逃げ出すような逆構図のシーンを対比的に置かなきゃ。
或いは、真希が乙骨へ徐々に思慕を見せる下り。序盤の好感度が低い場面では、(真希視点での)乙骨のナヨナヨぶりを歩き方・肩の角度で予め見せる。その後で、乙骨に褒められてドキッとするシーンでは、初めて顔を真っすぐ見据える視点にすれば対比になるじゃん!会話距離の変化で心の距離感見せるとか、もっと工夫しようぜ。
・アクションのリフレインがない
この映画は気弱な少年の成長物語なのだから、その成長ぶりは映像で、アクションで示さなきゃ。
折角、真希との組み手、狗巻との共闘が序盤中盤にあるのだから、これをラスボス戦で回収しないのは上手くないよね。「里香、(動きを)合わせろ」とセルフ共闘展開が折角入るのだから、ここで狗巻との連携をスケールアップしたアクションを取らせるとか。或いは、真希との組み手では対応出来なかった動きを、夏油との近接格闘では繰り出すとか。
そういう時間差を置いたアクションの繰り返しこそが、アクション映画の気持ちよさにはあるんだけどなあ。
③鬼滅にはない欠点
・画面が貧相
ufotableはデジタル技術班や、光表現の撮影処理がバケモンだから比較すべきじゃないけど、鬼滅に比べて呪術って平面的にベターっとしてるよね。アクションシーンの3D背景や風景映像は結構力入ってるけど、会話シーンは観ててキツい。
平面的な画面+口だけパクパク+カメラパンで誤魔化しのトリプルコンボって…正直テレビレベルだよ。
・回想多用
やめろ!予算ないのバレる!
2~3秒フラッシュバックなら兎も角、20秒以上流すのはキツイって!
・画面転調のマンネリ
覚醒シーン・回想導入・場面転換でブラックアウト/ホワイトアウトを毎回使うのは止めれ。庵野秀明的な、「黒ベタ背景に白文字を無音で流す」ってのはさ、ここぞで使うからカッコいいんじゃん。いくら原作コマであると言っても、多用はダサいぜ。
朴監督が絵コンテ・演出どちらにも関わってるから、流石にこれは監督の力量かなあ…。近作アニメの「映画大好きポンポさん」のセンスとは天地の差だね。
https://magiclazy.diarynote.jp/202106110252029046/
④甲乙つけがたい点
・アクション作画
所謂「ヌルヌルアクション」では鬼滅が上。でもMAPPAのアクションって、重み表現、動きのブレ、音楽の合わせ技で、疾走感と外連味を生み出す「アガる」画なのよ。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38301071
https://www.youtube.com/watch?v=WoG2dDRuKXI&ab_channel=STUDIOI
これも好みの問題ですかね。
・(サービスとしての)アニオリ
ここ10年くらい、「良作アニメ=原作に忠実なアニメ」って風潮があるじゃないですか。鬼滅もまさにその例なんですけど、今作「呪術0」は「京都百鬼夜行」のシーンで7分ほどアニオリが挟まります。
僕は劇場版におけるアニオリは、「単体映画として面白くなる」なら肯定派です。その点で今作、VS夏油戦で乙骨が黑閃を発動させるオリ展開は痺れましたね。テレビアニメ観てた勢には嬉しいサービスですし、ライト層にとって見ても単純にカッコいい技じゃないですか。白い背景にふっと花火が咲いて黒い稲妻ドーン。うん、技名叫ばなくてスマート。
七海の等劃呪法バトルもスマート、五条先生も許そう、でも京都高の下りは蛇足ですね。アクションだけでなく、わざわざ会話の掛け合いまで入れてテンポを絶望的に削いでしまっている。おまけに、コミカルな寸劇仕立てにしてはシリアスさが台無しでしょう。ここ、各人の特徴を生かした連携にした方がスマートだったんじゃないかなあ…。
〇総評
無限列車より上等な劇場アニメだと思いますよ?キャラが描けていて、話は分かるし、きちんと成長もする。それが無いのに猫も杓子も観に行った鬼滅は異常で、そんな鬼滅より絶対売れないと思うけど、それでも僕はこっちの映画の方を支持したい。まあ、本当に面白いアニメ見たいんならドリームワークスやピクサーのゼロ年代作品観るべきだと思うけどな。
①鬼滅にはない美点
・まとまってる
原作の「東京都立呪術高等専門学校」が元々4話読み切り作品なので、広げた風呂敷をちゃんと畳んでくれる。キャラ紹介・世界観提示・固有名詞説明もきちんとあるので、なんとなく観に来た人にも親切。
・ぎゃあぎゃあ叫ばない
愁嘆場はいくつかあるが、あっさり流してアクションに移行するのでダレない。「リカちゃぁああん!ありがとう!ありがとう!」とか叫ばなくて本当に良かった。
これを美点として挙げないといけないのが、テレビ邦画のそもそも終わってる部分ではあるのだが…。
・コミカル演出のセンス
原作のツッコミ・シュール・ギャグシーンを、デフォルメ画・背景・SEなどで(漫画版の印象より強く)戯画化している。べったべたゆえ好みが分かれるだろうが、僕は賛成。
鬼滅との違いとしては、鬼滅は「キャラ中心」のギャグに対し、呪術は「シチュエーション中心」のギャグなのよね。ドラマに緩急を付ける方法としては、こっちの方が上。
②鬼滅と同じ欠点
・直接説明
百回は言って来たけど、劇場映画で漫画吹き出しを全部ト書きにするの、止めよ?
「そうだ、伊地知さんに連絡しないと」→携帯を取り出す→「圏外!?」→スマホ画面の「圏外」表示、では2重描写だから!台詞は「そうだ、連絡を」だけで、あとは映像でさらっと流せるでしょ!
・動きで情感表現をしない
上記項目に似た話だけど、映像的間接表現で済むものをわざわざ台詞に託してしまう。
例えば前半見せ場の、乙骨が覚醒するシーン。「今度こそ僕は立ち上がるんだ!」と奮起するのなら、その手前で崩れ落ちる/逃げ出すような逆構図のシーンを対比的に置かなきゃ。
或いは、真希が乙骨へ徐々に思慕を見せる下り。序盤の好感度が低い場面では、(真希視点での)乙骨のナヨナヨぶりを歩き方・肩の角度で予め見せる。その後で、乙骨に褒められてドキッとするシーンでは、初めて顔を真っすぐ見据える視点にすれば対比になるじゃん!会話距離の変化で心の距離感見せるとか、もっと工夫しようぜ。
・アクションのリフレインがない
この映画は気弱な少年の成長物語なのだから、その成長ぶりは映像で、アクションで示さなきゃ。
折角、真希との組み手、狗巻との共闘が序盤中盤にあるのだから、これをラスボス戦で回収しないのは上手くないよね。「里香、(動きを)合わせろ」とセルフ共闘展開が折角入るのだから、ここで狗巻との連携をスケールアップしたアクションを取らせるとか。或いは、真希との組み手では対応出来なかった動きを、夏油との近接格闘では繰り出すとか。
そういう時間差を置いたアクションの繰り返しこそが、アクション映画の気持ちよさにはあるんだけどなあ。
③鬼滅にはない欠点
・画面が貧相
ufotableはデジタル技術班や、光表現の撮影処理がバケモンだから比較すべきじゃないけど、鬼滅に比べて呪術って平面的にベターっとしてるよね。アクションシーンの3D背景や風景映像は結構力入ってるけど、会話シーンは観ててキツい。
平面的な画面+口だけパクパク+カメラパンで誤魔化しのトリプルコンボって…正直テレビレベルだよ。
・回想多用
やめろ!予算ないのバレる!
2~3秒フラッシュバックなら兎も角、20秒以上流すのはキツイって!
・画面転調のマンネリ
覚醒シーン・回想導入・場面転換でブラックアウト/ホワイトアウトを毎回使うのは止めれ。庵野秀明的な、「黒ベタ背景に白文字を無音で流す」ってのはさ、ここぞで使うからカッコいいんじゃん。いくら原作コマであると言っても、多用はダサいぜ。
朴監督が絵コンテ・演出どちらにも関わってるから、流石にこれは監督の力量かなあ…。近作アニメの「映画大好きポンポさん」のセンスとは天地の差だね。
https://magiclazy.diarynote.jp/202106110252029046/
④甲乙つけがたい点
・アクション作画
所謂「ヌルヌルアクション」では鬼滅が上。でもMAPPAのアクションって、重み表現、動きのブレ、音楽の合わせ技で、疾走感と外連味を生み出す「アガる」画なのよ。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38301071
https://www.youtube.com/watch?v=WoG2dDRuKXI&ab_channel=STUDIOI
これも好みの問題ですかね。
・(サービスとしての)アニオリ
ここ10年くらい、「良作アニメ=原作に忠実なアニメ」って風潮があるじゃないですか。鬼滅もまさにその例なんですけど、今作「呪術0」は「京都百鬼夜行」のシーンで7分ほどアニオリが挟まります。
僕は劇場版におけるアニオリは、「単体映画として面白くなる」なら肯定派です。その点で今作、VS夏油戦で乙骨が黑閃を発動させるオリ展開は痺れましたね。テレビアニメ観てた勢には嬉しいサービスですし、ライト層にとって見ても単純にカッコいい技じゃないですか。白い背景にふっと花火が咲いて黒い稲妻ドーン。うん、技名叫ばなくてスマート。
七海の等劃呪法バトルもスマート、五条先生も許そう、でも京都高の下りは蛇足ですね。アクションだけでなく、わざわざ会話の掛け合いまで入れてテンポを絶望的に削いでしまっている。おまけに、コミカルな寸劇仕立てにしてはシリアスさが台無しでしょう。ここ、各人の特徴を生かした連携にした方がスマートだったんじゃないかなあ…。
〇総評
無限列車より上等な劇場アニメだと思いますよ?キャラが描けていて、話は分かるし、きちんと成長もする。それが無いのに猫も杓子も観に行った鬼滅は異常で、そんな鬼滅より絶対売れないと思うけど、それでも僕はこっちの映画の方を支持したい。
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