2021年下半期映画振り返り ベスト編
2022年1月2日 映画 結構劇場で観た。
ベスト10
・ドントブリーズ2
強力接着剤、電気ケーブル、檻、犬ちゃん、麻薬組織…一度出したアイテムを、後のシーンで別の機能で活用するアクション的手際が見事。
それに前作で印象最悪だった「狂人」を贖罪させる塩梅も良いね。それなりに応援出来るが、手放しで褒められない人物。だからこそ、自己犠牲が尊いものとなる。
・オールド
https://magiclazy.diarynote.jp/202109091946084779/
粗もいっぱいある映画(僕は本来そういうの突っ込むタイプ)なんだけど、どうしようもなく惹きつけられてしまう。インパクト!って映画好きなんだ。
・空白
https://magiclazy.diarynote.jp/202109290211569226/
人物描写とストーリー展開が巧み。善性ではなく行動力と共感性のある人間の方が報われるという捌き分けも素晴らしい。
・アナザーラウンド
「中年の人生再帰映画」って、普通は何だかんだ丸く収まるジャンルなんですよ。ところが今作、決定的な後悔を一つ抱えてしまう。「人生は何時からでもやり直せる」とだけ提示するのではなく、「何時でも間違いを犯してしまう」さまも見せる。
ゆえに、ラストの"what a life"の祝祭シーンにも言いようのない哀感と充実が生まれる。真摯な人生賛歌映画でした。
・アンテベラム
社会性とエンタメ性の両立が見事。特筆すべきは、脱出ロジックだね。差別主義者は南北戦争時代の暮らしを旧套墨守して、現代テクノロジーを受け入れない(=センサー、照明、フェンス、厳重な戸締りがない)から、主人公は逃げられる。ジャンル映画的な粗が解消されると共に、「偏狭な保守派の頑迷さ」への批評にもなっている。グッド。
・JOINT
とんでもないインディーズ映画。
「演技力よりルックを重視」したキャスティングだけあって、確かに演技に難は少々ある。けれど、その素人臭さがドキュメンタリックな作風にマッチしている。おまけに、朴訥な人間が見せるくぐもった笑い方、仕事合間のじゃれ合いなど、旧来のVシネ・ヤクザ映画にはないフレッシュさもある。
大作ゴミ邦画の特徴と言えば「キャスティングに予算の大半を使って、内容ボロボロ」。今作はその対極にある。オレオレ詐欺/名簿ビジネスなどこれまで散々こすられてきた特殊詐欺題材も、きっちりリサーチされ現代版にリシェイプされている。ライティング/シェーディングなど撮影もインディーズとは思えないほどしっかりしているため、画面に安っぽさがない。
これを20代で撮るっつーのはスゲーね。央大監督は間違いなく躍進していくと思う。
・レイジングファイア
アクションの豊富さが見事。ドニー・イェン兄貴と言えばカンフーアクションだが、今作のアクションは実に多彩。床板1枚挟んだ高低差アクション、車とバイクで並走しながらの「近接格闘」(!?)、FPS視点や回り込むカメラアングルでの銃撃など、観ていて飽きない。
それで居て、ラスト15分では「HEAT」そっくりの市街地集団銃撃戦、「SPL 狼たちよ静かに死ね」と同じ特殊警棒VSナイフの殺陣など、名作たちへのオマージュも忘れない(「SPL」も今作もアクション監督は谷垣氏ゆえ似ているのは当然だが)。
汚職・圧力社会そのものは有耶無耶で終わってるのはすっきりしないが、観ている間はとにかく気持ちいい一作。
ベスト3
・燃えよ剣
原田眞人監督の演出は素晴らしいね!クソ邦画と違って台詞で説明せず、キャラクターの描き分けや心情表現を映像に託してくれる。所作・小道具・ロケ・セットどれも見事。
それに、ユーモア溢れる脚本も見事。「るろ剣最終章 the beginning」とか、藤沢周平時代劇とか、とにかくメソメソしてて鈍重なんですよ。対する今作、基本はシリアスながら随所で和やかな掛け合い、愛くるしいじゃれ合いがあって一向に飽きない。流石にシネフィルを自称する監督だけある。
・最後の決闘裁判
誇り高い武人・野心に燃える伊達男、互いに譲れない決闘………その裏で搾取される女性の惨さ。僕はおポリティカルおコレクト映画が大嫌いなんですよ。最初から男/白人/異性愛者が無能な悪人に指定されていて、女/黒人/ゲイが有能な人権派になっているから。その点今作は、1章2章でマジョリティー側の尤もな理屈が提示されているからこそ、3章で真実が明かされた時に大きな衝撃がある。(それに、見直した時にやっぱり男たちのパートにも感情移入してしまう魔力がある)。
それでいて、「世界には抗えぬシステムがあって、運命に人間は翻弄されるだけ」というリドリースコット作品に一貫するテーマがきっちり描かれている。主人公は命を賭けた決闘裁判を抜け、漸く自由を手に入れた。…その筈なのに、「決闘の勝者=男を立てた伴侶」の役割をすぐさま押し付けられ、絶望を通り越した諦めに沈んでいく…。ラストで我が子を見つめる、あの茫洋とした視線が忘れられない。
・マリグナント
大!大!大好きな映画!今年ベスト1!
ジェームズワン作品(=ゴーストハウスホラー)という先入観を見事に逆手に取ったドンデン返し!そこから展開される、クローネンバーグ的な人体変形シーン!更に畳みかける、高低差を活かし弧を描くような奇怪な虐殺&大乱闘(たっぷり2場面で!)!
上記2作のような、上品で社会性に満ちた映画ではない。それでも映画を観る喜びに満ちた作品なんですよ!残虐シーンをきっちりR18+で描いてくれたワン監督に、ただただ敬服と感謝しかない。
ベスト10
・ドントブリーズ2
強力接着剤、電気ケーブル、檻、犬ちゃん、麻薬組織…一度出したアイテムを、後のシーンで別の機能で活用するアクション的手際が見事。
それに前作で印象最悪だった「狂人」を贖罪させる塩梅も良いね。それなりに応援出来るが、手放しで褒められない人物。だからこそ、自己犠牲が尊いものとなる。
・オールド
https://magiclazy.diarynote.jp/202109091946084779/
粗もいっぱいある映画(僕は本来そういうの突っ込むタイプ)なんだけど、どうしようもなく惹きつけられてしまう。インパクト!って映画好きなんだ。
・空白
https://magiclazy.diarynote.jp/202109290211569226/
人物描写とストーリー展開が巧み。善性ではなく行動力と共感性のある人間の方が報われるという捌き分けも素晴らしい。
・アナザーラウンド
「中年の人生再帰映画」って、普通は何だかんだ丸く収まるジャンルなんですよ。ところが今作、決定的な後悔を一つ抱えてしまう。「人生は何時からでもやり直せる」とだけ提示するのではなく、「何時でも間違いを犯してしまう」さまも見せる。
ゆえに、ラストの"what a life"の祝祭シーンにも言いようのない哀感と充実が生まれる。真摯な人生賛歌映画でした。
・アンテベラム
社会性とエンタメ性の両立が見事。特筆すべきは、脱出ロジックだね。差別主義者は南北戦争時代の暮らしを旧套墨守して、現代テクノロジーを受け入れない(=センサー、照明、フェンス、厳重な戸締りがない)から、主人公は逃げられる。ジャンル映画的な粗が解消されると共に、「偏狭な保守派の頑迷さ」への批評にもなっている。グッド。
・JOINT
とんでもないインディーズ映画。
「演技力よりルックを重視」したキャスティングだけあって、確かに演技に難は少々ある。けれど、その素人臭さがドキュメンタリックな作風にマッチしている。おまけに、朴訥な人間が見せるくぐもった笑い方、仕事合間のじゃれ合いなど、旧来のVシネ・ヤクザ映画にはないフレッシュさもある。
大作ゴミ邦画の特徴と言えば「キャスティングに予算の大半を使って、内容ボロボロ」。今作はその対極にある。オレオレ詐欺/名簿ビジネスなどこれまで散々こすられてきた特殊詐欺題材も、きっちりリサーチされ現代版にリシェイプされている。ライティング/シェーディングなど撮影もインディーズとは思えないほどしっかりしているため、画面に安っぽさがない。
これを20代で撮るっつーのはスゲーね。央大監督は間違いなく躍進していくと思う。
・レイジングファイア
アクションの豊富さが見事。ドニー・イェン兄貴と言えばカンフーアクションだが、今作のアクションは実に多彩。床板1枚挟んだ高低差アクション、車とバイクで並走しながらの「近接格闘」(!?)、FPS視点や回り込むカメラアングルでの銃撃など、観ていて飽きない。
それで居て、ラスト15分では「HEAT」そっくりの市街地集団銃撃戦、「SPL 狼たちよ静かに死ね」と同じ特殊警棒VSナイフの殺陣など、名作たちへのオマージュも忘れない(「SPL」も今作もアクション監督は谷垣氏ゆえ似ているのは当然だが)。
汚職・圧力社会そのものは有耶無耶で終わってるのはすっきりしないが、観ている間はとにかく気持ちいい一作。
ベスト3
・燃えよ剣
原田眞人監督の演出は素晴らしいね!クソ邦画と違って台詞で説明せず、キャラクターの描き分けや心情表現を映像に託してくれる。所作・小道具・ロケ・セットどれも見事。
それに、ユーモア溢れる脚本も見事。「るろ剣最終章 the beginning」とか、藤沢周平時代劇とか、とにかくメソメソしてて鈍重なんですよ。対する今作、基本はシリアスながら随所で和やかな掛け合い、愛くるしいじゃれ合いがあって一向に飽きない。流石にシネフィルを自称する監督だけある。
・最後の決闘裁判
誇り高い武人・野心に燃える伊達男、互いに譲れない決闘………その裏で搾取される女性の惨さ。僕はおポリティカルおコレクト映画が大嫌いなんですよ。最初から男/白人/異性愛者が無能な悪人に指定されていて、女/黒人/ゲイが有能な人権派になっているから。その点今作は、1章2章でマジョリティー側の尤もな理屈が提示されているからこそ、3章で真実が明かされた時に大きな衝撃がある。(それに、見直した時にやっぱり男たちのパートにも感情移入してしまう魔力がある)。
それでいて、「世界には抗えぬシステムがあって、運命に人間は翻弄されるだけ」というリドリースコット作品に一貫するテーマがきっちり描かれている。主人公は命を賭けた決闘裁判を抜け、漸く自由を手に入れた。…その筈なのに、「決闘の勝者=男を立てた伴侶」の役割をすぐさま押し付けられ、絶望を通り越した諦めに沈んでいく…。ラストで我が子を見つめる、あの茫洋とした視線が忘れられない。
・マリグナント
大!大!大好きな映画!今年ベスト1!
ジェームズワン作品(=ゴーストハウスホラー)という先入観を見事に逆手に取ったドンデン返し!そこから展開される、クローネンバーグ的な人体変形シーン!更に畳みかける、高低差を活かし弧を描くような奇怪な虐殺&大乱闘(たっぷり2場面で!)!
上記2作のような、上品で社会性に満ちた映画ではない。それでも映画を観る喜びに満ちた作品なんですよ!残虐シーンをきっちりR18+で描いてくれたワン監督に、ただただ敬服と感謝しかない。
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