『オマージュ』軸で二本立て評『ゴーストバスターズ アフターライフ』『バイオハザード ウェルカムトゥラクーンシティ』
『オマージュ』軸で二本立て評『ゴーストバスターズ アフターライフ』『バイオハザード ウェルカムトゥラクーンシティ』
〇ゴーストバスターズ

粗筋 或る老人が死んだ。それをきっかけに、娘家族は遺された農場に移住する。老人の孫娘フィービーは怪しげな機械に導かれるまま、地下の秘密ラボに足を踏み入れる。ロッカーにかかったジャケットには「スペングラ―」の文字が。そう、彼女の祖父は伝説のゴーストバスターズが一人、イゴン・スペングラ―だった。


①ノスタルジー爆弾盛り
 本作は『1』の30年後を舞台にした続編ということもあり、随所に過去作のネタがちりばめられています。主要キャラの再登場は勿論のこと、ゴーザ・マシュマロマン・マンチャ―といった敵キャラも出れば、霊柩バスター車「ECTO1」やトラッパー(捕獲器)といった往年のアイテムも出る。更には"Who do you call?"の台詞やセレン鉱の設定、冒頭での椅子カバーを突き破る演出に至るまで、とにかく1を徹底的に意識した作りになっています。


②80年代ノスタルジー
 おまけにこの映画、ここ10年くらい流行りの「80年代ノスタルジー」ジャンルにも乗っかってるんですよ。少年少女の冒険、経済苦の一家といった設定はまるきり『グーニーズ』やスピルバーグ作品のド定番。サマースクールで見せる映画は『クジョー』『チャイルドプレイ』といった当時の作品(わざわざVHSデッキで見せる辺りも憎い!)。フィービーの相棒少年が持つゴテゴテした秘密道具、パズルを解いて出てくる鍵、滑車ゴンドラで降りた先には広大な地下宮殿が…。
 ノスタルジー×ノスタルジーでアラフィフ世代を殺す映画になっています。


③ファンムービーの是非:立ち位置
 過去の評で「ファンムービーってどうなん?」と言った手前、
https://magiclazy.diarynote.jp/?day=20200820
2枚舌になりますが僕は今作大絶賛派です。少なくとも、今作には必然性があるからです。

 先ず第一に、本作はオリジナルを焼き直すのではなくノスタルジーの対象としている点。これを説明するのに、2016年のリブート版『ゴーストバスターズ』と比較する必要があります。
 あちらはポールフェイグ監督×メリッサマッカーシーのコンビによる、『ウーマンス』(女性の同性友情もの)路線でした。4人チームの性別だけ逆転させて、1作目を再解釈したわけです。
 ただまあ…あちらは(特に古参ファンから激烈な)酷評を受けました。折しもポリコレ→反動保守の波が映画ファンにも広がり始めていたという時代性もあります。ですが、(上っ面だけの)焼き直しだったのにも原因があると思うのです。

 ゴーストバスターズ1は、サタデーナイトライブ組のコメディセンス、NY文化を盛り込んだまさしく時代の体現者。映画の出来良しあしを超えた、「売れるべくして売れた」映画だったのです。
 ゆえに、1をそっくり踏襲した筈の『ゴーストバスターズ2』は酷評されました。アイヴァンライトマン監督はその原因を
the shift of the zeitgeist(時代精神が変わってしまった)
と語っています。

 2の失敗を踏まえると、またぞろ焼き直し路線に走ったバスターズ(2016)が陳腐に見えるのも当然のこと。ゆえに、今回のバスターズ(2022)が相対化目線を持っているのは良きことです。


④故ハロルド・ライミスへの愛
 もう一つの理由が、俳優ハロルドに捧げられた作品だという点。彼はオリジナルメンバーで、既に鬼籍入りしています。

 そもそもの話をすれば、2016年版バスターズは当初『3』の予定でした。ところがハロルドが亡くなり、アイヴァンライトマン監督が降板した。それを急遽全く別の企画として再始動したという流れなのです。
 今作には、そのハロルドへの敬愛が満ちています。フィービーが宿敵ゴーザと対決するラストバトルで、レーザーノズルを握る手がそっと支えられる。スペングラーのゴーストという作品上の設定と重ねられて、ハロルドがもう一度銀幕に現れる。存命の老バスターズ3人と並んでイゴンが(孫越しに)立ち、「4人」でバスティングに臨む…。虚実幽明の被膜を通した、何とも感動的な画です。

 やっぱね、『1』へのリスペクトが違ェんすわ!!2016年版は沢山カメオ出演使う割に扱いがなおざりで、その癖ラストにハロルドへの献辞をいけしゃあしゃあと付ける。
 それと今作比べてみて下さいよ!CGばっかの2016年版と違って、鍵の神に追われるシーンではわざとコマ撮り風の動きを見せる。砂埃に塗れたECTO-1が消火栓の脇を通り過ぎるときに、さっと水を被ってバスターズマークが鮮やかに姿を現す…。監督はアイヴァンライトマンの息子、ジェイソンライトマンなだけあって、『1』の精神をよく分かってんだよ!!!


⑤ポリコレなんぞクソ喰らえ!
 別観点を最後に一つ。今作、ビックリするほどポリコレから外れてます。2016年版は保守側から(女性蔑視的な)揶揄を受けたように、ポリコレの波に乗った一作だったワケです。あれから6年、ポリコレムーヴメントは止むどころかずーーーっと続いてる、その中で今作はゴリッゴリの正道保守。
 一応、アジア系や黒人が申し訳程度に出てはいる。けれど登場人物の大半は白人、おまけに3組の男女カップルが成立して一人たりともゲイが出ない。
 極めつけが、エンドクレジット後のおまけ映像。シガニーウィーバー×ビルマーレイのファンサービスが付くんですが、あれ元々ナンパテクニックの話ですよ?ビルの演じるヴェンクマンは、ワインスタイン騒動のあった現代からすれば相当危ないキャラ。ファンは兎も角、自称リベラル層が今作をどう見るのかには不安が残りますね…。


⑥結びに
 映画としての出来が良いとは言いません。若い人が観て楽しいとも思いません。それでも、1が好きな人なら号泣して涙腺が千切れること必至の1本です。




〇バイオハザード

粗筋 アンブレラ社が撤退を始め、ゴーストタウン化したラクーンシティ。Tウイルスが流出したことから社は全市を封鎖、住民は夜明けの破滅を知ることもなく閉じ込められてしまう。レッドフィールド兄妹は、果たして生きてこの町を出られるのか。


①小ネタ爆盛り
 今作もまた、オマージュをふんだんに取り入れた作品です。ベースとなっているのがゲームの「バイオハザード1」「バイオハザード2」の2作。1の洋館探索、2のラクーンシティ脱出を同時並行させ、群像劇仕立てにしています。

…んだけどさあ、クッソ詰まんなかったです。その詰まんなさを説明するのに、映画版バイオシリーズを振り返っていきます。


②映画『バイオハザード』
 通称「ダメな方のポール・アンダーソン』が撮り、ミラジョボヴィッチが主演した映画シリーズ。「1は名作、2はそこそこ、3以降はゴミ」というのが大方の共通認識だと思います。それでは何故、1は良かったのか?
 それはあのスタイリッシュなルックでしょう。無機質で硬質なハイブの風景、黒くてゴツい服に身を包んだ特殊隊員、主人公のアリスは対照的に真紅のワンピースとブーツの出で立ち。ハードなガンアクションや流行りのバレットタイム演出を取り入れ、容赦のないゴアシーンもある。無論、これらの要素はマイケル・マン作品やマトリックスの影響下にある。それでも、従来野暮ったいジャンルだったゾンビ映画に、かっちょ良さを取り入れた。だからこそ1は楽しいんです。


③映画バイオ(3以降)
 では、何故そんなバイオがダメになっていったか。アンダーソン×ミラ夫婦が作品を私物化していったのも原因ですが、中途半端な原作目くばせにも一因があると思います。
 モンハン評でも言ったんですが、
https://magiclazy.diarynote.jp/202104210215374656/
この監督、無邪気な小ネタ入れたがるんですよ。「3」ではクリスを出してあっさり死なせ、「4」では超人ウェスカーの高速ダンスバトルを再現する。「5」ではレオンとエイダのパチモンを出して無駄死にもさせたり…。ゲームとは全く違うオリジナルストーリーな癖して、随所で「ほら、元ネタリスペクトだから!」とその実雑なパロディをブチ込む。この辺りが原作ファンをイラっとさせる映画でした。


④映画独自性
 その点で、スタイリッシュさに回帰するのではなく、ゲームファンへの目くばせに終始した本作は残念でなりません。一応、本作は「サバイバルホラーへの回帰」を打ち出しています。確かに、ホラー演出は強めの映画となってはいる。
 なら猶更、オマージュネタは要らなくねえすか?スペンサー邸のホール、警察署入り口をじっくり見せるカットは好きです。原作ファンは再現度にニヤッと出来るし、未プレイ層にもゴシックホラー的な雰囲気を味わせられる。でも、月光をつま弾いたら扉が開くとか、「かゆ うま」をゾンビが文字にするとか、エンドクレジットで超人ウェスカーとエイダを出すとか、そういうくすぐりは要らんでしょ!!
 おまけにラスボスはお決まりのロケラン退治なんですが、レオンは狭い空間に人間5人とG生物が同居する中で撃つんですよ。密閉性の高いコンテナで爆発が起きたら、全員内臓破裂で死ぬから!おまけに死体は塵一つ残らず、返り血や肉片がかかる描写も無い。ホラーの癖してこういう所手抜くのはさあ…ゾンビ映画としてダメでしょ?


⑤結びに
 ホラーとしてのバイオを楽しみたい?ならもう、ゲームで良いんですよ。ホラーバイオのルネサンスとなった「Resident Evil バイオ7」、リメイクとして評価の高い「バイオ:Re2」、最新作であり最も売れた「バイオ8 ヴィレッジ」。映像技術が進んだ今般、わざわざ映画である必要はもうない。





 以上、二本立て5千字評でした。バイオの方も、1・2ごった煮じゃなくてじっくりドラマ1本を見せてくれたなら評価してたかも。どうせホラーやるなら『バイオ7』か『アウトブレイク File1』でやれや。

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