マトモとゴミのせめぎ合い!(シリーズでは)良作ホラーの『牛首村』を長文評
2022年3月4日 映画
粗筋 雨宮奏音は友人の蓮から、とある心霊動画を見せられる。廃墟<坪野鉱泉>で肝試しを行った少女が神隠しに遭ったのだが、その顔は奏音と瓜二つ。二人は夏休みを利用し北陸を訪れる。
その地で出会った少年、将太に案内された三澄家で奏音は驚愕の真実を知る。奏音には双子の妹詩音が居り、その詩音こそ坪野鉱泉で失踪した少女だった。二人の家系は、双子の片割れを必ず間引きする集落「牛首村」の出だった…。
①前置き
ホラー映画監督、清水崇が手掛ける「村」シリーズの第三弾。
https://magiclazy.diarynote.jp/202102061759561963/
https://magiclazy.diarynote.jp/202103180016269478/
僕は過去2作は散々に論難しました。…けれど、今作は「ふつう」のホラー映画になってて驚きましたよ。以下、過去作との対比を中心として、本作の面白さを(1時間半地点まで)語って行きます。
②話が理解出来る
ストーリーが筋道立ってる!!脚本はシリーズ通して保坂・清水監督タッグなんですけど、今作は何故か分かりやすくなってます。
第一に、話の軸がブレない。上記レビューで言ったように、話の推進力を複数設ける映画は(余程上手い監督ではない限り)失敗します。その点、本作は一貫している。「奏音には双子の妹が居た」「遡れば牛首村の出生である」など、情報は後から付加されるものの、当初の目的たる「失踪した少女を探す」という軸は最後までキープされる。土俗要素が、心霊ホラーの邪魔になっていないんですね。
この点について、一つ推測できます。監督はインタビューで
と語っています。前作『樹海村』でも、初稿は「江の島は樹海と地底洞窟を通じ繋がっている」という『竜神伝説』を絡める予定だったと語っています。想像なんですが、今作は製作サイドがクソ脚本を上手くコントロールしたんじゃないですかね?
清水監督は『呪怨』ばかりが有名ですけど、ド直球ホラーは得てして少ない。『ラビット・ホラー3D』では童話とグランギニョルを組み合わせたり、『稀人』では土俗ホラーとクトゥルフを絡めたり。芸術的意欲は買えるものの、ぶっちゃけ脚本に落とし込めていないのが致命的でした。
今作はそうした難解要素をカット。ストレートで、見やすいお話になっています。
③脈絡が繋がる
話の理解に関連した項目ですが、これも今作は出来ていた。一点目として、小さな伏線をこまめに張っています。「父親が詩音/三澄家を隠していた」ことは序盤の気まずい食事シーンや幼年期の回想で、「Youtuber一行の死亡」は幽霊シーンで事前に伏線を張っているため、後に提示されても唐突さがない。おまけに、ブッサイクなテレビ局映画のようにご丁寧なフラッシュバックで答え合わせをするワケでもない。提示の仕方がスマートです。
もう一点としては、編集の繋ぎ方も向上してますね。廃墟のエレベーターシーンの直後に、ショッピングモールのエレベーターにカットを繋ぐ。そうした「感情の流れ」を途切れさせない極めてふつうの気の利いた編集が続く為、観てる側が「あれ?いきなり場面飛んだ?」と当惑することもありません。
④ドラマが面白い
ベタで結構、ドラマパートが見やすいです。第一に、キャラ立ちが良い。主人公に片想いする蓮、ヒッチハイクに応じた男・山崎が個性的。漣はお調子者ながら奏音に対して一途な子犬男子、山崎は陽気なアンちゃんとしてムードメーカーになりつつ物語を牽引する。愛着が持てるキャラが居るってのは、それだけでホラーとして成功です。
第二に、人物関係が整理されています。『樹海村』はメインキャラ20人が6グループに分かれており煩雑の極みでした。一方、『牛首村』は雨宮家⊂(含む)三澄家の1グループのみ。メインキャラに至っては奏音・詩音姉妹と蓮・将太のカップル2組4人だけ。
演出でキャラの描き分けを試みているのも、好感が持てます。蓮・将太がお泊り会をする下りでは、蓮の枕元にはNintendo Switchとイヤホン、将太の枕元にはシックな腕時計と数珠が置かれ、二人は対照的な性格だと示す。或いは姉妹の祖母・妙子の初登場シーンでは、ビッシリ並んだ対人形やお札の呪言「双」を見せて過去を示唆している。
…これが村シリーズ…だと…?(畏怖)
⑤恐怖シーンも良い
犬鳴はクソ演出、樹海はファンタジー化して壊滅的でした。しかし牛首のホラーパートは手堅い。怪奇現象が起きる→ギャーと叫ぶような展開は少なく、「何か映ってるのに登場人物が気づかない」といったレパートリーが増えている。
それに、ホラーオタクの僕から見ても「コイツは凄い!」と感心出来る場面さえありました。奏音・蓮が昼肝試しをする間、山崎が廃墟横で留守番するシーンです。このシーン、2つの意味でフレッシュなんですよ。
「水たまりが震え、不審に思ったキャラが近づく」…。ホラーの通例としては、「水たまりから手が出てきて掴まれ、引き摺り込まれる」パターンになるんです。ところが本作は、「水たまりに映る屋上から誰かが身を投げ、水面にぶつかる瞬間に水が大きく跳ねる」というもの。これ…見たことない演出ですね。
更に言うと、山崎の反応含めた展開も怖いです。「キャラが怪異に気づき、息を呑む」…。これもパターンに照らすなら「怪異が一旦ピタリと止まり、高速で接近してくる」ものが多い。ところが本作、同じペースで何度も続くんですよ。「テリファイド」って演出1億点のホラー映画でも見たんですが、
https://www.youtube.com/watch?v=rscYJXrWNvI&ab_channel=VoidG
機械的に淡々と現象が起きるってのはビックリホラーとは一線を画する怖さです。
「マジかよ…村シリーズなのに絶賛しないといけないじゃん…」戦々恐々としてた僕ですが、1時間半からの急展開で安心しました。さすが清水監督!クソ映画はここからだ!
⑥タイムスリップ超展開
ストーリーはこう続きます。祖母・妙子には双子の奇子が居たが、村の風習に従い餓死用の穴ぐらに突き落とされていた。壮絶な過去を知り怖気づく一行。しかし山崎に続き蓮も奇怪な死を遂げ、奏音・将太の二人は改めて詩音を探すことを決意。妙子に改めて話を聴きに行くのですが…部屋で転んだ次の瞬間に大昔の牛首村にタイムスリップします。
ホラー映画で急激な場面転換をする場合って、①現代で別の場所に飛ぶ②今いる場所の過去に飛ぶ、のどちらかなんですよ。ところが牛首は「別の時代の」「別の場所に」飛ぶんですよ。脈絡ねえじゃんか!!
しかも、演出も悪い。恐怖で失神する/眠りにつくなど「目を閉じ、目覚める」転換であるとか、扉をくぐる/カーテンを捲る/照明が落ち音楽が消えるといった「視覚的な推移」もない。だって今作、ババァに突き飛ばされて畳に突っ伏した次には洞窟ですよ???唐突過ぎだろ!フィルムのリール紛失してない?
⑦百鬼夜行
過去の穴ぐらにタイムスリップし、詩音と再会した二人。だが、そこで目撃するのは牛首村の暗部。姉妹の大叔母に当たる奇子は、穴ぐらで生き延びるため、間引きで順次突き落とされてくる子供たちを片っ端から食っていたのだった!奇子は手を変え品を変え、3人に襲い来る…!
幽霊ホラーって、「同じ幽霊が」「色んな手段で」怖がらせるジャンルだと思うんです。ところが本作、次々新キャラが出てくるんですよ。いやー参った!
先ずは食人鬼奇子と隠れんぼ!穴ぐら脱出したのもつかの間、奇子が召喚した牛首ガキ集団が追いすがる!辿り付いた牛首村には棒立ち村民が群生しており、追いついた牛首ガキ集団とフュージョン!ドッペル双子に変身するぞ!
…いやさァ…「タイムスリップ」と前述した通り、穴ぐらの時点では「過去の牛首村」に偶然入り込んだ展開だった筈。ところが、地上に戻った途端、牛首ガキ集団やドッペル双子が出るような悪夢的風景となる。お前映画のリアリティラインどこに設定してんだよ!!何で1分単位でリアリティが急降下していくんだ!
極めつけとして、奇子にバイ菌タッチされた詩音の肌が人面疽に覆われゾンビ奇子になり果てます。何でもアリやな…。
⑧映画のオチ
ゾンビ奇子VS奏音・将太のドリームマッチが開幕。正気を取り戻した詩音が崖から身を投げようとすると、奏音も
「心配すんなよ。一人ぼっちは寂しいもんな…」(MDKMGK)
とユニゾンジャンプ。何故か将太も付いてきて、3人仲良く投身自殺します。…次の瞬間、坪野鉱泉のエレベーターに再びタイムスリップ!愛の力で帰還!めでたしめでたし!
犬鳴と同じイカレポンチ具合ですが、ラストにおまけが付きます。電話で奏音と話す詩音。不穏な台詞を呟き振り返ると、その顔は奇子に変わっている…。奇子は詩音の体を乗っ取り、現世に帰還していたのです。
ラストシーンで余計なフックを仕掛けるのはホラーの定番。でもね、僕はこのオチ好きなんですよ。一つには、霊界スマホと化したSiriアプリが繰り返し発する「ヨリシロ:依り代とは、神霊が憑依する容れ物のこと」のことば。一応は伏線が張ってあるんです。もう一点、「異界に行く/帰還する」という、シリーズお決まりの展開だからです。
⑨「村」ユニバース構想
清水監督が狂ってんだから、僕も狂った妄言吐いて良いよね?僕、「村」シリーズは後々にユニバース化すると思うんですよ。
樹海に続き、今作でも過去キャラの再登場が行われます。犬鳴のクソガキはわおーんと啼き、Youtuberアッキーナは(2回死んでんのに)転生体として3度目の登場を果たす。まさかゴミのようなファンサービスでもあるまい…それなら、クロスオーバーとして捉えるのが自然でしょう。
「村」設定、配給が東映、ユニバース化、清水監督…。これらの要素をひっくるめ、一つの予想が成り立ちます。村シリーズは最後、東映えいが村になる筈です!!
映画のエロ・グロを規制せんとする、教育委員会やポリコリの奸賊ども。彼奴等を成敗すべく、転生し現世に潜伏するバケモン共が村アベンジャーズを結成!バケモン総大将として、伽椰子も友情出演して良いでしょう(東映且つ清水作品です)!
パンフで「シリーズ化の想定はなかった」なんて言ってますが、全国公開の大作映画で1年1本ペースで作るものは完全に企画ありきです。特撮やファミリーアニメと違い、実写映画のコンテンツ力に関しては邦画は地の底を這うようなもの。コミック実写化は9割が駄作止まり、High&Lowブームも終息した今、シリーズがコンスタントに続く実写邦画ってコンフィデンスマンJPしかないですよ?そんな情勢だからこそ、ホラーという鉄板ジャンルでシリーズ&ユニバース化を進めるってのは、戦略してマジでありだと思ってます。
⑩結びに
前半絶賛しましたが、飽くまで(ゴミのような過去2作と相対比較して)マシってだけです。クソ映画ハンターにしか勧められる代物ではありません。
しかしウラを返せば、進歩しているのも事実。這えば立て、立てば歩めの親心で見守っていきたい…そんなクソ映画成長日記を続けたいのも山々ですが、DiaryNoteは今月末でサ終です。当ブログでクソ映画を長々語るのはこれで最期でしょうが、皆さんもどうか良きクソ映画ライフを。
はい!!!!6千字評でした!!!!皆も観に行って不幸になれ!!!
その地で出会った少年、将太に案内された三澄家で奏音は驚愕の真実を知る。奏音には双子の妹詩音が居り、その詩音こそ坪野鉱泉で失踪した少女だった。二人の家系は、双子の片割れを必ず間引きする集落「牛首村」の出だった…。
①前置き
ホラー映画監督、清水崇が手掛ける「村」シリーズの第三弾。
https://magiclazy.diarynote.jp/202102061759561963/
https://magiclazy.diarynote.jp/202103180016269478/
僕は過去2作は散々に論難しました。…けれど、今作は「ふつう」のホラー映画になってて驚きましたよ。以下、過去作との対比を中心として、本作の面白さを(1時間半地点まで)語って行きます。
②話が理解出来る
ストーリーが筋道立ってる!!脚本はシリーズ通して保坂・清水監督タッグなんですけど、今作は
第一に、話の軸がブレない。上記レビューで言ったように、話の推進力を複数設ける映画は(余程上手い監督ではない限り)失敗します。その点、本作は一貫している。「奏音には双子の妹が居た」「遡れば牛首村の出生である」など、情報は後から付加されるものの、当初の目的たる「失踪した少女を探す」という軸は最後までキープされる。土俗要素が、心霊ホラーの邪魔になっていないんですね。
この点について、一つ推測できます。監督はインタビューで
(双子設定を語りつつ)「石川県の旧牛首村には『牛首繭』という、一つの繭に二つの蛹が入ったものがある。それを双子設定に絡めようと思ったが、複雑になり過ぎるので取りやめとなった」
と語っています。前作『樹海村』でも、初稿は「江の島は樹海と地底洞窟を通じ繋がっている」という『竜神伝説』を絡める予定だったと語っています。想像なんですが、今作は製作サイドが
清水監督は『呪怨』ばかりが有名ですけど、ド直球ホラーは得てして少ない。『ラビット・ホラー3D』では童話とグランギニョルを組み合わせたり、『稀人』では土俗ホラーとクトゥルフを絡めたり。芸術的意欲は買えるものの、ぶっちゃけ脚本に落とし込めていないのが致命的でした。
今作はそうした難解要素をカット。ストレートで、見やすいお話になっています。
③脈絡が繋がる
話の理解に関連した項目ですが、これも今作は出来ていた。一点目として、小さな伏線をこまめに張っています。「父親が詩音/三澄家を隠していた」ことは序盤の気まずい食事シーンや幼年期の回想で、「Youtuber一行の死亡」は幽霊シーンで事前に伏線を張っているため、後に提示されても唐突さがない。おまけに、ブッサイクなテレビ局映画のようにご丁寧なフラッシュバックで答え合わせをするワケでもない。提示の仕方がスマートです。
もう一点としては、編集の繋ぎ方も向上してますね。廃墟のエレベーターシーンの直後に、ショッピングモールのエレベーターにカットを繋ぐ。そうした「感情の流れ」を途切れさせない
④ドラマが面白い
ベタで結構、ドラマパートが見やすいです。第一に、キャラ立ちが良い。主人公に片想いする蓮、ヒッチハイクに応じた男・山崎が個性的。漣はお調子者ながら奏音に対して一途な子犬男子、山崎は陽気なアンちゃんとしてムードメーカーになりつつ物語を牽引する。愛着が持てるキャラが居るってのは、それだけでホラーとして成功です。
第二に、人物関係が整理されています。『樹海村』はメインキャラ20人が6グループに分かれており煩雑の極みでした。一方、『牛首村』は雨宮家⊂(含む)三澄家の1グループのみ。メインキャラに至っては奏音・詩音姉妹と蓮・将太のカップル2組4人だけ。
演出でキャラの描き分けを試みているのも、好感が持てます。蓮・将太がお泊り会をする下りでは、蓮の枕元にはNintendo Switchとイヤホン、将太の枕元にはシックな腕時計と数珠が置かれ、二人は対照的な性格だと示す。或いは姉妹の祖母・妙子の初登場シーンでは、ビッシリ並んだ対人形やお札の呪言「双」を見せて過去を示唆している。
…これが村シリーズ…だと…?(畏怖)
⑤恐怖シーンも良い
犬鳴はクソ演出、樹海はファンタジー化して壊滅的でした。しかし牛首のホラーパートは手堅い。怪奇現象が起きる→ギャーと叫ぶような展開は少なく、「何か映ってるのに登場人物が気づかない」といったレパートリーが増えている。
それに、ホラーオタクの僕から見ても「コイツは凄い!」と感心出来る場面さえありました。奏音・蓮が昼肝試しをする間、山崎が廃墟横で留守番するシーンです。このシーン、2つの意味でフレッシュなんですよ。
「水たまりが震え、不審に思ったキャラが近づく」…。ホラーの通例としては、「水たまりから手が出てきて掴まれ、引き摺り込まれる」パターンになるんです。ところが本作は、「水たまりに映る屋上から誰かが身を投げ、水面にぶつかる瞬間に水が大きく跳ねる」というもの。これ…見たことない演出ですね。
更に言うと、山崎の反応含めた展開も怖いです。「キャラが怪異に気づき、息を呑む」…。これもパターンに照らすなら「怪異が一旦ピタリと止まり、高速で接近してくる」ものが多い。ところが本作、同じペースで何度も続くんですよ。「テリファイド」って演出1億点のホラー映画でも見たんですが、
https://www.youtube.com/watch?v=rscYJXrWNvI&ab_channel=VoidG
機械的に淡々と現象が起きるってのはビックリホラーとは一線を画する怖さです。
「マジかよ…村シリーズなのに絶賛しないといけないじゃん…」戦々恐々としてた僕ですが、1時間半からの急展開で安心しました。さすが清水監督!クソ映画はここからだ!
⑥タイムスリップ超展開
ストーリーはこう続きます。祖母・妙子には双子の奇子が居たが、村の風習に従い餓死用の穴ぐらに突き落とされていた。壮絶な過去を知り怖気づく一行。しかし山崎に続き蓮も奇怪な死を遂げ、奏音・将太の二人は改めて詩音を探すことを決意。妙子に改めて話を聴きに行くのですが…部屋で転んだ次の瞬間に大昔の牛首村にタイムスリップします。
ホラー映画で急激な場面転換をする場合って、①現代で別の場所に飛ぶ②今いる場所の過去に飛ぶ、のどちらかなんですよ。ところが牛首は「別の時代の」「別の場所に」飛ぶんですよ。脈絡ねえじゃんか!!
しかも、演出も悪い。恐怖で失神する/眠りにつくなど「目を閉じ、目覚める」転換であるとか、扉をくぐる/カーテンを捲る/照明が落ち音楽が消えるといった「視覚的な推移」もない。だって今作、ババァに突き飛ばされて畳に突っ伏した次には洞窟ですよ???唐突過ぎだろ!フィルムのリール紛失してない?
⑦百鬼夜行
過去の穴ぐらにタイムスリップし、詩音と再会した二人。だが、そこで目撃するのは牛首村の暗部。姉妹の大叔母に当たる奇子は、穴ぐらで生き延びるため、間引きで順次突き落とされてくる子供たちを片っ端から食っていたのだった!奇子は手を変え品を変え、3人に襲い来る…!
幽霊ホラーって、「同じ幽霊が」「色んな手段で」怖がらせるジャンルだと思うんです。ところが本作、次々新キャラが出てくるんですよ。いやー参った!
先ずは食人鬼奇子と隠れんぼ!穴ぐら脱出したのもつかの間、奇子が召喚した牛首ガキ集団が追いすがる!辿り付いた牛首村には棒立ち村民が群生しており、追いついた牛首ガキ集団とフュージョン!ドッペル双子に変身するぞ!
…いやさァ…「タイムスリップ」と前述した通り、穴ぐらの時点では「過去の牛首村」に偶然入り込んだ展開だった筈。ところが、地上に戻った途端、牛首ガキ集団やドッペル双子が出るような悪夢的風景となる。お前映画のリアリティラインどこに設定してんだよ!!何で1分単位でリアリティが急降下していくんだ!
極めつけとして、奇子にバイ菌タッチされた詩音の肌が人面疽に覆われゾンビ奇子になり果てます。何でもアリやな…。
⑧映画のオチ
ゾンビ奇子VS奏音・将太のドリームマッチが開幕。正気を取り戻した詩音が崖から身を投げようとすると、奏音も
「心配すんなよ。一人ぼっちは寂しいもんな…」(MDKMGK)
とユニゾンジャンプ。何故か将太も付いてきて、3人仲良く投身自殺します。…次の瞬間、坪野鉱泉のエレベーターに再びタイムスリップ!愛の力で帰還!めでたしめでたし!
犬鳴と同じイカレポンチ具合ですが、ラストにおまけが付きます。電話で奏音と話す詩音。不穏な台詞を呟き振り返ると、その顔は奇子に変わっている…。奇子は詩音の体を乗っ取り、現世に帰還していたのです。
ラストシーンで余計なフックを仕掛けるのはホラーの定番。でもね、僕はこのオチ好きなんですよ。一つには、霊界スマホと化したSiriアプリが繰り返し発する「ヨリシロ:依り代とは、神霊が憑依する容れ物のこと」のことば。一応は伏線が張ってあるんです。もう一点、「異界に行く/帰還する」という、シリーズお決まりの展開だからです。
⑨「村」ユニバース構想
清水監督が狂ってんだから、僕も狂った妄言吐いて良いよね?僕、「村」シリーズは後々にユニバース化すると思うんですよ。
樹海に続き、今作でも過去キャラの再登場が行われます。犬鳴のクソガキはわおーんと啼き、Youtuberアッキーナは(2回死んでんのに)転生体として3度目の登場を果たす。まさかゴミのようなファンサービスでもあるまい…それなら、クロスオーバーとして捉えるのが自然でしょう。
「村」設定、配給が東映、ユニバース化、清水監督…。これらの要素をひっくるめ、一つの予想が成り立ちます。村シリーズは最後、東映えいが村になる筈です!!
映画のエロ・グロを規制せんとする、教育委員会やポリコリの奸賊ども。彼奴等を成敗すべく、転生し現世に潜伏するバケモン共が村アベンジャーズを結成!バケモン総大将として、伽椰子も友情出演して良いでしょう(東映且つ清水作品です)!
パンフで「シリーズ化の想定はなかった」なんて言ってますが、全国公開の大作映画で1年1本ペースで作るものは完全に企画ありきです。特撮やファミリーアニメと違い、実写映画のコンテンツ力に関しては邦画は地の底を這うようなもの。コミック実写化は9割が駄作止まり、High&Lowブームも終息した今、シリーズがコンスタントに続く実写邦画ってコンフィデンスマンJPしかないですよ?そんな情勢だからこそ、ホラーという鉄板ジャンルでシリーズ&ユニバース化を進めるってのは、戦略してマジでありだと思ってます。
⑩結びに
前半絶賛しましたが、飽くまで(ゴミのような過去2作と相対比較して)マシってだけです。クソ映画ハンターにしか勧められる代物ではありません。
しかしウラを返せば、進歩しているのも事実。這えば立て、立てば歩めの親心で見守っていきたい…そんなクソ映画成長日記を続けたいのも山々ですが、DiaryNoteは今月末でサ終です。当ブログでクソ映画を長々語るのはこれで最期でしょうが、皆さんもどうか良きクソ映画ライフを。
はい!!!!6千字評でした!!!!皆も観に行って不幸になれ!!!
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