『コーダ あいのうた』
2022年3月12日 映画
粗筋 全聾一家の中で唯一の健聴者、ルビーには密かな楽しみがあった。それは歌。彼女は合唱のクラスで才能を見出され、音楽教師に「バークレー音大を受けないか?」と推薦される。
漸く動き出した彼女の人生。だが、父・兄が漁師仲間を救うべく立ち上げた漁業組合の仕事にも、通訳として彼女が不可欠だった。夢と現実の板挟みで苦しむ中で、彼女の下した決断は…。
大傑作。見るの遅れてたけど、余裕で今年ナンバーワンです。
先ず、青春音楽ものとしてレベルが途轍もない。ミュージカル映画で場面と歌詞がシンクロするってのは王道ですが、この映画はそれまでの積み上げが丁寧。働けど楽にならざる漁師業、聾家族への引け目と愛、漸く訪れた青春への昂揚感…。それらがあるからこそ、"I fought the law", ”Star man”, "Both sides Now"などの名曲が胸に迫って来る。
それに、類似作品の中で親の扱いがきちんとしているのも素晴らしいね。才能のある子供、それに反対するブルーカラーの親を描いた映画で言うと、『リトルダンサー』『フラガール』などが挙がる。でも、それらの映画では大人は間違った人間なんですよ。炭鉱仕事にも昔は栄光はあった、でも時代遅れになって、新しい価値を受け入れられない…。そんな頑固者でも、子供の一途な心に打たれ改心して送り出してやる…そういう話運びだった。
一方の『コーダ』は、対立軸が聴覚障害を巡って置かれているため糾弾出来るものではない。それどころか、彼らへ激烈に感情移入するシーンが一つ置かれている。
家族経営の漁業仲介業を手助けするため、音楽を諦めることにしたルビー。最後の晴れ舞台として臨むオータムフェスティバルで、彼女はデュエット曲を歌う。そこで、ふっ………と全ての音が消えていく。周りの観客は皆沸き立っている。涙ぐんでる人さえ居る。でも、父親には何も聞こえない。健聴者のような感動を、我が子に対してさえ抱くことが出来ない無力感が示される。
だからこそ、ラスト10分には怒涛の感動が訪れる。オーディション会場で、上から見守る家族に向けてルビーは歌詞を「手話」に乗せて歌い始める。音楽が世界に対する孤独ではなく、想いを届ける調べとして初めて理解できるようになる…。設定が、ストーリーが全て必然性を持っているだけに、このシーンの感動は凄まじい。
原作と違いコメディ要素はインキン金玉/コンドーム戦士の2点しかないですが、兎に角情感の厚みに圧倒されっぱなし!掛け値なしでお勧めの1作です。
漸く動き出した彼女の人生。だが、父・兄が漁師仲間を救うべく立ち上げた漁業組合の仕事にも、通訳として彼女が不可欠だった。夢と現実の板挟みで苦しむ中で、彼女の下した決断は…。
大傑作。見るの遅れてたけど、余裕で今年ナンバーワンです。
先ず、青春音楽ものとしてレベルが途轍もない。ミュージカル映画で場面と歌詞がシンクロするってのは王道ですが、この映画はそれまでの積み上げが丁寧。働けど楽にならざる漁師業、聾家族への引け目と愛、漸く訪れた青春への昂揚感…。それらがあるからこそ、"I fought the law", ”Star man”, "Both sides Now"などの名曲が胸に迫って来る。
それに、類似作品の中で親の扱いがきちんとしているのも素晴らしいね。才能のある子供、それに反対するブルーカラーの親を描いた映画で言うと、『リトルダンサー』『フラガール』などが挙がる。でも、それらの映画では大人は間違った人間なんですよ。炭鉱仕事にも昔は栄光はあった、でも時代遅れになって、新しい価値を受け入れられない…。そんな頑固者でも、子供の一途な心に打たれ改心して送り出してやる…そういう話運びだった。
一方の『コーダ』は、対立軸が聴覚障害を巡って置かれているため糾弾出来るものではない。それどころか、彼らへ激烈に感情移入するシーンが一つ置かれている。
家族経営の漁業仲介業を手助けするため、音楽を諦めることにしたルビー。最後の晴れ舞台として臨むオータムフェスティバルで、彼女はデュエット曲を歌う。そこで、ふっ………と全ての音が消えていく。周りの観客は皆沸き立っている。涙ぐんでる人さえ居る。でも、父親には何も聞こえない。健聴者のような感動を、我が子に対してさえ抱くことが出来ない無力感が示される。
だからこそ、ラスト10分には怒涛の感動が訪れる。オーディション会場で、上から見守る家族に向けてルビーは歌詞を「手話」に乗せて歌い始める。音楽が世界に対する孤独ではなく、想いを届ける調べとして初めて理解できるようになる…。設定が、ストーリーが全て必然性を持っているだけに、このシーンの感動は凄まじい。
原作と違いコメディ要素はインキン金玉/コンドーム戦士の2点しかないですが、兎に角情感の厚みに圧倒されっぱなし!掛け値なしでお勧めの1作です。
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