『シング:ネクストステージ』
粗筋 ニュー・ムーン劇場は、連日の大入り満員。だが、ショービズの本場から来た評論家に酷評されてしまう。ムーンは躍起になり、一座を連れレッドショア・シティへ向かう。
 一流劇場のクリスタルタワーに忍び込んだ彼らは、意気揚々とオーディションを受けるも落選。だが、何の気なしに口にした言葉がクリスタル社長の耳に止まる。「伝説のロックスター、クレイの復帰作にする」…出まかせの安請け合いから、次なるステージは始まった。


 
 ショーの規模を小劇場からドームに変えたせいで、フィクション性が大幅に上がってしまった。別個の作品として観るならまだしも、続きものとして考えるとムーン一座が身勝手に見えてしまう。…ってのが正直な感想です。

『シング』1作目は、イルミネーション作品にしては世知辛い話でした。物件の差し押さえ、賞金、強盗、賭博と金にまつわる出来事が全編に散りばめられている。
 一方の『シング2』はどうか。ムーン側は誰一人、金の心配をしないんですよ。正規の契約ならまだ良い。けれど不法侵入+騙り詐欺でこの仕事にありついているんです。その結果、客が1万人は入るような巨大ステージを使い、大勢の裏方スタッフに指図して、高級ホテルでの宿泊も出来るようになった。

 この映画、ムーンを事ある毎に恫喝してくるクリスタル社長が悪役になるんですが…それって当然の権利じゃない?騙されて都会に連れて来られただとか、権力を嵩に着て横槍入れるなら分かる。でも、騙して仕事受注したうえ、莫大な費用は全部社長持ちですよ?そりゃ「娘を配役しろ」だの、「ご破算にしたらぶっ殺すぞ」だの言うのも分かる。

 クライマックスに向けての展開も、現実に即して考えるならムーン側が明らかに横暴です。「クレイを連れてくる」約束を果たせず、社長はムーンをとっちめようとする。するとムーンは逆に、クリスタルをやり込める作戦に打って出る。クリスタル・ステージを占拠し、1夜限りのショーを開催するのだ…。

 もちろん、これはコメディータッチのファミリーアニメなのはわかってます。でも、ムーンのやり口は悪どいにも程がある。巨大ステージを占拠し、客を全員入場無料にして、警備員を足止めすべくレストランフロアで暴動を起こす…。更には、ショーが無事成功したのちにはクリスタル社長を逮捕させる。
 挙句の果てには、クリスタル社ではなく「別の一流興行主」に乗り換えてこのショーをロングランさせる…。いやーーーーーーー信義則の欠片もねえじゃんか!


 確かに、ミュージカルシーンの出来は素晴らしいですよ?前作は「歌」一本に感動が絞られていたが、今作では衣装・踊り・照明・舞台装置などが一体となった「舞台芸術」へと進化していた。でもそれってつまり、裏方さんの比重が大きいってことだよね。なのにこの映画では、裏方はギャグ要員/賑やかしでしかない。
 ショーの規模は遥かに大きくなったのに、1と同じく「舞台上のパフォーマーだけでショービズは成り立ってる」かのように描く。『シング2』として観ると…独善的で理想主義過ぎるかな。


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