2021年4~9月 印象に残った本 その4
2021年4~9月 印象に残った本 その4
2021年4~9月 印象に残った本 その4
・終わりなき日常を生きろ 宮台真司
概要:高学歴たちは何故オウムに行ったのか。僅か数週間で書かれた、オウムと共に生きた時評。

 サブカル評論の中でブッチギリで有名なフレーズ「終わりなき日常」。定義自体は「イデオロギー・宗教などの大きな物語が失われた時代では、人々は心の拠り所を求めた行動をする」、というもの。これ自体はリオタールや大塚英志も語ってるネタなんだけど、本書は論調が特徴的。
 挑発的な言辞、東・宇野以降とは対照的な平易な文章、写真・コラム・空想対談(!?)などのMOOK的な文面作り…。ああ、90年代ってこんな感じだったのか…!と時代を肌で感じられる好著。


・幻獣の話 池内紀
概要:ギリシャ神話に始まり、ロボットまで。古今の幻獣をラインナップした読み物。

 比較宗教学・文化人類学のように「文化現象としての妖怪・精霊を体系的に考察する」のではなく、ざっくばらんに列挙した本。とはいえボルヘス好きとして楽しくない訳がない。


8月のくず 平山夢明
粗筋:奴隷獣との語らい。底辺極貧バトル。絶望の中から這い上がる物語。

https://magiclazy.diarynote.jp/201907080012504941/
 前にも紹介したが、僕は平山夢明という作家を偏愛している。

 平山小説は、時代ごとに変遷してきた。
 第一期は90年代。「異常快楽殺人」「東京伝説」のようなサイコパス系、「超怖い話」のような怪談実話を書いていた。この頃の特徴と言えばとにかく写実的でグロテスクな描写。水死体の描写で「破けた肉まん」は天才。
 第二期は異形コレクション執筆時。「独白するユニバーサル横メルカトル」「ダイナー」などで数々の賞を取ったこの時期は翻訳調の固い文章が増え、また完成度の高い短編で知られるようになった。
 そして第三期は、10年代中ごろから。地べたを這いずるような目に遭いながらも、最後にどこか希望の残る終わり方を見せる。「デブを捨てに」「猿より下、ヤギより上」辺りはそういう抜けのある気持ちよさを見せてくれる。

 …そんなわけで、「8月のくず」もいつも通り最低で最高な本でした。
今度の人生は、ハズレだったかい?おまけをやるよ。
おしまいにする前に読んでくれ。絶望の果てまで届く物語を。これは、明日なき世界の福音だ。


 帯文のこの惹句が、まさに平山ワールドを象徴している。
 リハビリがてらスタン回した・当たったデッキ雑感。

・緑単
 ブッチギリトップメタ。KP高くて受けが広いうえ、クソゲーパターンもある。同系用にヤスペラ・不自然な成長4積みになってて末世。

・白単
 BO1でだけなら使いたいデッキ。流石にコントロール相手地獄。

・イゼット 
 古式ゆかしき黄金架+アールンド。表現の反復・フラバなどのドロソ積まざるを得ないのが微妙ポイント。とはいえ土地5まで伸びないと即死だからなあ…。

・黒単
 カード単体はクッソ弱いけど、実は有機的にかみ合うデッキ。ドロソ・宝物・履修で小回りが利くので、イゼットより回しやすい。ロルスは神。
 トークン特化型は押された盤面返せないからどうなのかな。雪上の血痕からロルス戻すのが楽なのでは。

・オルゾフ
 ラス増やしたタイプ。ケイヤもラスも代替が利くけど、精鋭呪文縛りだけはオンリーワン。BO3でなら使いたいかな。

・青白
 勝てるカードが無さ過ぎる。そもそも白積む理由が少ないという。


 黒単が一番好み。1/4宝物くんの渋さが癖になる。
喪失からの回復を描く映画『空白』をちょっと語る
粗筋 きっかけは、少女の事故死から。万引きを店長に見咎められた中学生は道に飛び込み、トラックに引き潰された。一人娘の花音を失った漁師は、頑として非を認めない。学校やスーパーに落ち度があったのではと疑う彼は、強行に走り出す…。


 結構ヘビーな映画でした。

①作品概説
 挑戦的な作品を作り続ける制作会社スターサンズと、強烈な人物を硬質なタッチで描く吉田恵輔が、再び手を組んだ。主演は演劇界でも存在感を放つ古田新太に、若手ナンバーワンの実力を持つ松阪桃李。

 今作は企画・制作の河村氏が"intolerance”と副題を打つように、「不寛容」を巡る物語です。娘を失った父親、仕事に忠実だった店長、正義感溢れるパート店員、文化祭に追われる担任…。それぞれが、役割の中で生きている。平時ならば何とか折り合いの付く筈だった人間関係が、余裕のなさゆえに擦り切れていく。決定的な悪人が居ない代わりに、誰かは誰かに対しての加害者となりうる不条理さを、今作は描き出しています。


②人物描写の妙
 罪と赦し、に関しては他の人もレビューしてるので、僕は違う観点で本作を語ろうと思います。今作には大きく3類型の人が居り、それぞれが喪失からの回復度合いが違う。しかも、事態を一番かき回す父親こそが救われるのに、胸糞悪い話にならない説得力がある。この人物描写の巧みさこそが、今作の魅力だと思います。


③父親、充(みつる):良き人
 暴言の絶えない父権主義者、直ぐに他人に突っかかる…。漁師の充はパッと見、典型的な昭和オヤジです。しかし彼は「有能」なんですよ。それが、物語のごく序盤の時点で既に示されている。
 娘との最後の晩、仕事相手との電話で一旦会話を打ち切るも、直ぐに元の話題に戻ろうとする。娘が品行方正だと信じる際は、「娘は学校について相談があった」「ならば、虐めがあったのではないか」「学校に問い合わせ、個別の生徒から犯人を割り出してやる」…と(バイアスありにせよ)論理的に考え行動出来る。
 
 彼は粗暴ゆえに周りと衝突する。しかし頭が冷えた後に自分を振り返る余裕は、実はある。それゆえに、自分を慕う漁師バディ、元妻に一旦は激昂するも、最終的には関係を修復することが出来た。


③パート店員、草加部:好(よ)き人
 充と対立するのは、店長の青柳ではなく、パート店員の草加部でした。彼女は率先してスーパーの切り盛りに動く。休日はボランティア活動に精を出し、青柳が世間のバッシングを浴びるや、矢面に立って守ろうとする。お節介な有能タイプなんですね。
 しかし、彼女は物事を二元論で捉えたがった。自分に賛同しない者は倫理的に劣った者としてレッテルを貼る。ボランティア仲間にはスーパーを守る活動への参加を強引に勧め、店長を責める充には暴言を吐きかける。
 彼女は充と違って、自分を改める度量がなかった。ゆえに、密かに恋慕していた店長に拒否された後は立ち直れなかった。


④青柳、花音:善き人
 巻き込まれ型スリラー映画において、主人公というのは「感情移入して、同情を寄せられる」造形なのが通例。ところが本作は、そこからズラしてある。これがニクい。
 青柳も、開始10分で死ぬ花音も、残酷な言い方をするならば「トロい」人間です。論理的に物事を説明出来ず、かといって他人の情緒を先読みも出来ず、そして哀しむべきは自分の感情を表出することさえ不得手。叱られれば萎縮し、挨拶されればどもるように返事をする。質問や頼み事をされても、曖昧な笑みを浮かべるだけ…。
 花音の死後、生徒や教師の言い分がとても印象的でした。「居ても居なくても変わらない」「虐めの対象になるほどの印象すらない」「何をやってもダメ」「頑張ろうとしても、頑張れない子じゃないか…と」。内気という括りよりも、境界知能や発達障害などの疑いがあるような、そんな子供。

 青柳にしても、祖母の諫言を受け流し、草加部の懇願を拒絶し、ドン底での提案にも返答を返さなかった。悪意や攻撃性がないのに、どんどん落ちぶれていく様にも哀しい必然性があった。


⑤「ヒメアノ~ル」とイルカの雲
 吉田監督の過去作に、「ヒメアノ~ル」というサイコスリラーがあります。原作漫画においては、殺人鬼森田は妄想と恬淡と会話する、超然とした異常者でした。しかし映画においては、ラストでトラウマが克服されます。致命傷を負い朦朧とする中で、最後に見るのは親友と遊んだかけがえのない時間…。
 僕は吉田監督作品には、こうしたちっぽけな救いが見えると思います。青柳にかけられる、顔も知らない(実は会っている)相手からのねぎらい。充が青空の絵を通して感じた、娘との繋がり。恐らく青柳は、青年の勧める弁当屋は開かない。花音に至っては、死んでしまっている。それでも、一片の救いだけは…と希求せずにはいられない。
 始まりはホラーやシュールギャグだったのに、最後に切なくなる…それが吉田作品に通底する魅力ではないでしょうか。


⑥結びに
 大分褒め調子だったんで、最後にちょっとクサします。「偏向報道するマスゴミ」「ネットによる中傷」、この2要素が流石に鼻に付きます。描写が先ずべたな上、こういう「純度100%の悪意」って、本作のメッセージ性と正反対ですよね?たぶん河村プロデューサーの意向なんでしょうけど、止めた方が良いですよ。映画が浅くなるんで。




 はい、2000字評でした。下半期の中では現状かなり上位の作品です。
映画『空白』観た
https://www.youtube.com/watch?v=znsLkRaBlpo&ab_channel=%E3%82%B7%E3%83%8D%E3%83%9E%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%87%E3%82%A4

「毒親が娘の死をきっかけに暴走し周りを巻き込んでいく」。
粗筋の時点では、サイコ寄りのヒューマンドラマだと思ってた。…けれど「我が強く周りと衝突する者の方が救済される」という落ち着け方。それでいて、単なる胸糞にしない演出力・演技は素晴らしいね。
 
 たださぁ…「マスゴミ偏向報道」「ネット連中」等の手垢が付いた表現には心底げんなりした。邪推だけど、あれは河村プロデューサーが要求しただろうね。そういう安易な「悪人・悪意」は作品の性質と正反対だから…止めようね!

 
 長文日記書くかも。
 
地上波初放送『鬼滅の刃 無限列車編』を観て、涙が止まらなかった!!!!
テレビアニメ『鬼滅の刃』プロモーションリールより

10月初週~無限列車編放送(第一話「は」新作1時間)
12月初週~遊郭編放送開始

 ……最近さ、特典映像つけて後は総集編として封切る『劇場版』アニメって流行ってるじゃん?(『コトブキ飛行隊』とか『かくしごと』とか)
 …でも、劇場アニメを半クールかけて放送するって、初めて聴いたわ。え、これでいてDVD2本分冊とかで売るん?流石にフジもufoも恥知らずじゃない?


 つーか2期ってまさか『遊郭編』だけで終わんの!!??刀の里VS壺じい編、柱特訓編は更に次へ持越し?2期で最低この2つまで終わらせておかないと、産屋敷襲撃編→無限城編を劇場版前後編でも終わり切れないんだが…。


 確かにね、ufotableって『空の境界』なり『Fate』なり、5年10年かけて余すことなくアニメ化する企画は経験済み。でもそれって、型月厨っていうコアなクソオタ向けなんですよ。
 言っちゃ悪いが『鬼滅の刃』の客層って大半がライトなアニメファンじゃん?現に2020年末~2021年初頭は『呪術廻戦』、2021年中旬からは『東京卍リベンジャーズ』に女性層は目移りしてきたワケだし。
 だから、鬼滅コンテンツはもっと早々に畳むべきなんじゃないすかね…。格ゲーとキメツ学園とFreen!だけじゃ、話題が持たんぞ。
2021年4~9月 印象に残った本 その3
2021年4~9月 印象に残った本 その3
 アメリカ編。

・実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル
概要:「努力すれば報われる」社会…一見正しいように思えるが、生まれる家系・天与の才能に左右される点が見過ごされている。
 能力主義社会において「功利主義」は分断を生み出す。分断を防ぐため、社会が目指すべきは「共通善」ではないか、とサンデルは警鐘を鳴らす。

親ガチャ言説の火付け役。上野千鶴子の東大祝辞然り、「七光り」言説自体は他にもある。けれど『実力も運の~』は、類書にない魅力を2点持っているように思えた。

 一つ目は、思想史を踏まえている点。プロテスタンティズムが能力主義をもたらした、とサンデルは主張する。
マックスウェーバーが『プロテ~』で語るように、予定説を信仰していては日々の拠り所がなくなる。その不安を解消するために「労働に励めば、自分は救済される側に居ると実感出来る」との奇妙な論理が生まれた。ここに、労働が神の摂理と合一した。宗教改革の出発点である「能力主義の否定」が、覆ってしまったのである。
 この観点はなるほど目から鱗。

 2つ目は、情緒を強調している点。本書では「(彼らは)尊厳が傷つけられた」という表現がくどいほど繰り返される。
 経済格差そのものは、歴史の普遍現象だった。階級社会では能力と階級は必ずしも一致しないため、貴族は謙虚に、貧民は諦めが付いた。ところが能力主義社会では、経済格差は能力の差であり貧乏人は劣等人だと見做されるようになる。しかし学歴・財産は世襲として機能しており、階級社会は続いている。
 労働の尊厳を傷つけられた大衆は憎悪に満ち、社会の分断は広がる。従来正しい側だったリベラルへの鋭い批判を放つところに、本書の価値がある。



・世界と僕の間に タナハシ・コーツ
概要 白人国家アメリカにおいて、黒人が生きるとはどういうことなのか。15歳の息子へ向けて父親が送る手紙、という体裁で書かれた人種問題エッセイ。全米図書賞受賞作。

 良い意味でも、悪い意味でもこれこそが「アメリカのリベラル」だな…と感じた一冊。
 琳琅玉麗たる文章は、けちの付けようがない。具象的で詩のような言葉選び、五感に訴えかける情景描写、畳みかけて胸を打つ語調…。字を追うだけで、涙がこぼれてくる。

 でも内容そのものを、全肯定は出来ないとも感じた。
 先ず、活動家としての側面。コーツはゴッリゴリのブラックパンサー党の家系出身のせいか、黒人・白人を二元論として捉える。そのうえ、その対立には妥協も変化も一切認めていない。非常に狭隘。

 もう一つが、タナハシ・コーツ自身の半自伝的なもの書きスタイル。彼は「黒人であり」「ストリート出身だ」と、弱者を代弁する立ち位置で文章を書いている。しかし(上述した)能力主義社会アメリカという観点から本書を読むと、コーツは超絶勝ち組なのが分かる。これは(後知恵ではあるけど)読者に反感を与える要素だと思う。
 貧困地区とはいえ彼の家には膨大な蔵書があり、幼少期からクリティカルライティングの特訓を受けて育った。ドえらい文化エリートの家系なんですね。大学も名門ハワード大学へと進み、若くして活躍を始めるようになる。

 コーツは本書の中で白人を、「テレビに出てくるような、豪邸に住み、家具があり、社交に勤しむ人種」と繰り返し言っている。でも現実はどうだろうか。シングル家庭に生まれ、高校で職業準備コースを出た後は、レジ打ちやウェイトレスになるしかない層の方が遥かに多いのではないだろうか?
 そんな層が「白人は、黒人を殺すことでしか自我を保てない奴らだ」と罵倒してくる文章を読んだら。よりにもよって、その著者がエリート文化人なら…。憤るのではないだろうか?
 この本が評価された翌年にトランプが当選というのが、アメリカの分断をまさに象徴していると思う。



 続きます。『ディスタンクシオン』を月末までに読み終えられないので、今回で終わり。
2021年4~9月 印象に残った本 その2
2021年4~9月 印象に残った本 その2
2021年4~9月 印象に残った本 その2
〇Goetia:The lesser key of Solomon the King Alesiter Crowley
概要:著名な魔導書「レメゲトン」 の第一巻「ゴエティア:ソロモンの小さな鍵」を、元祖厨二病、アレイスター・クロウリーが編集した版。

 サブカルに大きな影響を与えた「ソロモン72柱」だけなら、ソシャゲwikiを閲覧するだけで知れる。しかし原著で楽しめたのは、「皆も書ける魔法陣キット」だの「ギリシャ語・英語詠唱対照表」だの、寧ろ付録部分。
 クロウリー自身は”Occult”(隠されたもの)を開かれた「オカルト」にしようとした人だが、現代の読者としてはそれが滑稽にも愛らしく読める。
……… 
就中、我が目に希代に映じしは其の文躰にあり。
"If he mayth obedient not to thee…."
 斯様に古りし仮名遣いは、シヤイクスピアの御代のものなり。
 扨て、ちうに病に床臥せし者は独逸語羅丁語の詠唱を好むのが、当節の習いとなりつる。然はあれど、遡る事ももとせのアレイスタア師も又、中英語を愛づる気色なり。然すがは、ちうに病の父祖ならんや。




〇宗教的経験の諸相 ウィリアム・ジェイムズ
概要:宗教的な昂揚・或いは沈静を分類した『ギフォード講義』の書籍化。

 教理問答、宗教組織、歴史などの旧来観点を離れ、純粋に「個人的な体験」から宗教を語った画期的な著作。氏の代表作『プラグマティズム』とも深く通じるところがあるが、こちらの方が中世~近世の信仰録からの引用がある分、いくぶんか具体的で読み易い。
 引用されるものが、頑迷で素朴な「市井の人々」の言葉であり、人間的な弱さを抱きとめる優しさが、本文の端々から垣間見える。だからこそ本書は長らく読み継がれてきたのだなあ…。と、いちメンヘラとして思った。



〇虎狼の血3部作 柚月裕子
粗筋:治安を守るため任侠と癒着し、越権行為も辞さない悪徳刑事。彼を内偵するため県警から送り込まれた若手エリートが、徐々にそのタフな生き方に感化されていく。

 映画原作もの。
 映画はストレートなアウトローものだったが、原作小説はミステリーの色合いが強い。それも連作短編という小説にしか出来ないギミックで、読者の心を抉る手つきは見事。映画版では、エモーションを重視する作りに転換したことに改めて感心。豚小屋はね…良いよね…。

 2作目は可もなく不可もなく。けれど3作目が「かつて敵なしだった極道者が、時代変化に適応出来ず自滅していく」話で涙がちょちょ切れた。『実録銀座私設警察』などの任侠映画を、善く読み込んでるよね。



〇遠巷説百物語 京極夏彦
粗筋:遠野藩家老付隠密の浪人が、変事不祥事の裏で闇社会の住人と出会う

 京極フリークとして最高にアガった1冊。
 「巷説」シリーズはこれまで「書楼弔堂」で番外編をやってはいたが、まさか10年越しの新作。それも「でっけぇ鼠がおりやしてね」と語られていた、大奸物との最終決着まで本作で付けられた。
 先に挙げた『虎狼の血』と同じく、連作短編の設定を活かした風呂敷の畳み方もお見事。「巷説」シリーズのテーマである「物語を語る/騙る」ことへの解答、章の扉を使ったトリック、そして遠野郷という民話のふるさと設定を活かしたたオチ…。京極ファンなら泣いて絶頂するしめくくりです。



 続きます。
2021年4~9月 印象に残った本
2021年4~9月 印象に残った本
2021年4~9月 印象に残った本
 PC触る時間減らした分、けっこう読書量が増えた。

〇本

・21世紀の資本 トマ・ピケティ
概要:資本収益率R>経済成長Gの公式は20世紀半ばを除き、歴史の普遍的事実である。経済格差が広がり続ける21世紀では、世襲制資本主義が台頭していく。
https://magiclazy.diarynote.jp/202005272316572743/
 ドキュメンタリー映画で知った。とにかく文章が上手い。
 章の始めでいったん抽象的な概念を提示しても、かみ砕いた言葉・具体的な事例で丁寧に説明してくれる。18世紀の経済を無機質な数字で語られたらサッパリだが、「ゴリオじいさん」などの文学を引用し生き生きとした風景で見せてくれる。
 ポピュラーサイエンスはかくあれ、といった一冊。
 

・火星年代記 レイ・ブラッドベリ
粗筋 火星移住を目指した地球人たちの、数百年にわたる興亡史
 ブラッドベリ作品では「華氏451」に並び評される長編。地球人とは性質も倫理も違う火星人による抵抗、それでも蝟集し食い荒らしていく地球人、やがては緩やかに滅びていく両文明…。連作短編なので、1日1篇さっくり読める。
「バーナード嬢曰く、」でも紹介されたけど、滅びる者の悲哀を描かせたらブラッドベリに敵う者は居ないね。


・三体 劉慈欣
粗筋 三体文明と地球文明による、数世紀に渉る総力戦
 エンタメ小説の全てが詰まっている。設定を読むとハードSFっぽいけど、全く難解ではありません。
第一部が
歴史サスペンス→ミステリー→ギーグファンタジー→SF
第二部が
科学プロジェクトもの→コンゲーム→スペースオペラ→疑心暗鬼スリラー
第三部が
悲恋もの→童話→ディストピア→ディザスター→C・クラーク的な高次元SF
と目まぐるしくジャンルが移り変わる。そのうえ、どの要素も独立した短編小説でも通用するクオリティ。ここ5年でベストのフィクション。



〇漫画
・異種族レビュアーズ
個人的に異種姦漫画って、リアル方向が好きでして(「鉄巻とーます」から「みぞね」辺りまで)。なのでアニメ化で知ったときは敬遠してたんですが…読んだらドはまりしました。

 サキュ嬢をファミ通クロスレビューするメインストーリーの面白さは勿論のこと、レビュー事業が拡大していく成り上がり、ファンタジー世界のミステリー要素、の2軸も巧妙に織り交ぜられている。天原先生の創造力には敬服するばかり。
 作画も種族ごとの特徴づけやキャラ萌えが上手く、苦手意識を持ったのを反省。漫画の面白さって写実性や描き込みだけじゃないなあ…と改めて思った(某海賊漫画と比べながら)



・忍者と極道
 山田風太郎×浪花節×藤田和日郎演出。「HELSING」と同じで、クサさ(誉め言葉)にハマれる人ならとことんハマる。
 黒幕の設定情報をガッツリカバー裏で語っているのには驚いた。毎巻楽しく読んでるけど、電子版読んでる人はついて来れるのかな?


・メダリスト
 ああ^~ロリコンになるぅ^~。
 スレた作品の多いアフタヌーンで、ここまでド直球、熱気の凄まじい漫画って珍しいね。ヴィンランドサガに並ぶ看板漫画。


・ダンダダン
 オカルト×心霊、の2軸で攻めるという出だしは面白い。が、1巻早々で両方ごっちゃになったのは残念。『レンタルマギカ』みたく、オカルトはオカルトの専門家、心霊は心霊の専門、とケイパー要素のある異能ファンタジーを期待してた。
 けど、太眉白ギャルは可愛いよね!可愛い!(語彙消失



 続きます。
万人にはお勧め出来ないが…大好きな不条理映画『オールド』を語る
粗筋 優雅なリゾートに滞在する、複数の家族。彼らは支配人から特別な招待を受け、奥地にあるプライベートビーチへと赴く。だが、女性の死体が打ち上げられたことから、狂騒が始まる。岩に囲まれたこの浜辺では、約2万倍の速度で人間は老化していく…。


①作品概説
 原作はグラフィックノベルの『SAND CASTLE』。監督は『シックス・センス』を始め、ホラーやスリラー作品を30年撮り続けてきたM・ナイト・シャマラン。…そう、万人受けしない映画で有名な、あのシャマランです。
 支持する層(通称シャマラニスト)は熱狂的に擁護する一方、嫌いな方々には激烈に非難されるのがシャマラン映画の常。今作も御多分に盛れず、IMDBやRotten Tomatoesなどのレビューサイトでも評価の点数がパックリ2分されています。
 不支持派の意見は確かに分かる。分かるがそれでも、シャマラニストとしてこの映画は褒めたい。この映画の(変な)見所を、これから語って行きます。


②老化現象:(ザ・グレイトフル・デッド+メイド・イン・ヘヴン)/2
 老人に生まれ赤子として死ぬ『ベンジャミンバトン』、寿命を資金として貯蔵・運用できる『タイム』など、老化を扱った映画は数あります。そんな中で今作の面白さは、「超高速の老化」「体の変化に思考や判断が追い付かない」の2点にあるでしょう。
 
 暫時目を離した子供が、青少年と呼べる姿で戻って来る。表皮の切り傷は、瞬く間に修復していく。大人たちが口論する間に、テントでじゃれ合っていた少年少女は睦んでしまい、孕んでしまう。瞬く間に出産するが、嬰児は数瞬で息絶える。

 とりわけ常軌を逸したものは、腹部に出来た腫瘍を取り出すシーンですね。3センチ大だと診断されていた腫瘍も、時間の進み方が違うこのビーチでは異常な速度で膨らんでいく。外科医と看護師の二人で緊急摘出術を図るも、メスで切開した先から体組織は瞬間的に癒合する始末。
 そのためメスで裂いた後に指を鉗子代わりにこじ開け続け、腹腔より林檎サイズの肉塊をもりもり引きずり出す…。いやー、正視に堪えない(誉め言葉)!
 

③撮影監督、マイケル・ジオラキス
 画面のイヤさを演出してくれるのは、マイケル・ジオラキス。『スプリット』以降のシャマラン映画全てを担当するほか、『イット・フォローズ』『Us』などのホラー・スリラー有名作を撮影しています。
 今作でもその手腕を発揮。成長してしまった姉弟の顔は直ぐに映さず、背中越しにゆっくりカメラを動かし長丁場の画を作る。あっと言う間に腐敗・分解された死体を見せる際は「肋骨の内側」から周りの人を眺める視点に留める。全員がヒステリーに陥った際は、カメラが砂浜を「うろうろ…うろうろ…」と小走りペースで駆け回り、各人のリアクションを映していく。
 今作はシャマラン映画の中では「気まずい会話」シーンが比較的少ない為、映像でイヤさを際立たせています。


④高速老化が象徴するもの
 シャマランは今作に影響を与えたものとして、ルイス・ブニュエルの『皆殺しの天使』を挙げています。どちらの作品も、閉鎖空間に置かれた一行が「どういう訳か」出られなくなる物語です。
 今作においても、ビーチからの脱出は失敗し続けます。行きに通った道を戻ると、気絶して浜辺で目覚める。海から海岸伝いに泳げば、溺死する。崖を登れば、滑落する。全身を布で覆っても、全身の骨が折れて死ぬ。何をしても助からない。
 私はこのビーチが象徴するものは、人生そのものだと考えています。老いや果てに待ち構える死は、どうあがいても避けられない。

 では、人生には絶望しか残されていないのだろうか?シャマランはその問いに、否と応える。
 主人公夫妻にも、老いは忍び寄る。夫のガイは老眼、妻のプリスカは難聴が進んでいく。朝=壮年時代はあれほど互いに気後れと怒りをぶつけ合っていた二人も、夜=晩年には、穏やかな気持ちで死を迎え入れる。鮮烈だった心の痛みも、次第に穏やかなものとなり、やがては忘れ去る。ほろ苦さも湛えながら、それでも肯定的な面を捉えられているのは、こういう映画↓
https://magiclazy.diarynote.jp/201912242358429869/
とは違いますね。


⑤シャマランの遍歴と作家性
 シャマラン映画には、一貫したテーマ性があります。それは「世界から疎外された・傷ついた者が、世界の真実・自身の役割を知る」というもの。これにはシャマラン自身の信念が投影されていると言われます。
 シャマランは極度の「出たがり監督」です。ほぼ全ての自作にチョイ役として出演し、DVDには子供・学生時代の短編作品を特典でくっ付ける。天狗になっていた頃の『レディインザウォーター』では、世界を変える天才作家の役をやり出す始末。とはいえ、その後いったんキャリアが低迷するワケですが…。

 シャマラニストとして今作『オールド』がひときわ感動的なのは、「世界を変える者は俺自身でなくても良い」という意識が見えるところ。映画において、主人公夫妻は死を迎えた。けれど子供たちの命を守ったことで、姉弟2人がビーチ≒世界を変えることに繋がった。
 若くしてスター監督となったシャマランも、知命の年に。今作には娘2人が或いは第二班監督、或いはミュージシャンとして参加しているとのこと。(縁故野郎と言ったら終いなんですが)『ヴィジット』以前は「天才俺ひとりVS世界」という意識だった彼が、後進を育てる視点を持ち始めたのは…泣けますね(シャマラニスト限定の感覚)。


⑥映画のオチ
 かように寓話的な装いで進んできた本作は、ラスト10分でぐっとリアルな着地をする。
 実はこのビーチ、製薬会社の極秘治験場だったのである。遅行性の病気は通常、長期にわたる治験で効果が証明されるものだ。ところがこのビーチは1日に50年が進むため、たった1日で新薬の効果が確かめるられる。そのため、医療データから新薬の対象となる持病持ちを招待し、実験に使っていた…と明かされる。
 脱出不可能に思われたビーチも、姉弟は内部関係者の情報からサンゴ礁が鍵になると割り出す。1日を経て50代になった二人は、職員に身バレすることなく警察関係者に接触。ビーチの存在を暴露し、犠牲者の仇を取ることに成功する…といった具合で話は終わる。

 シャマランは「ドンデン返しの人」と思われがちだが、飽くまでテーマ性を描く手段としてギミックを利用するのであって、そこが売りではない。本作も伏線はそつなく配置する割に、回収の段階はごくあっさりなため、肩透かしと思う人は多いかもしれない。


⑦結びに:弁明
 そりゃあね、粗はありますよ?真面目なSFとして観るなら、「時間加速原理って何?」「老化は兎も角、死体の腐敗まで早くなるの何で?」「金属で鉱物パワー防げる理由は?それがサンゴ礁で代替できるわけは?」「腫瘍って転移するのが厄介だから、林檎サイズになったら全身手遅れでしょ?」「排泄や摂取は早まらないの?」「死体が高速で腐るんだから、持ち込んだ飯も数秒で塵になるだろ」…とか、いっぱい疑問出ますよ!
 それに、寓話・イメージとして了解してきた話が、最後に突如リアリティレベルが上がる点もね。そりゃキレる人が出るのは分かる。

 それでもなお、スリラー作家としての巧みな設定・雰囲気作り、それにそぐわぬ切実で胸を打つテーマの提示…。シャマランにしか作れない映像世界なんですよ。細かい粗もガハハと許せる人、尖った映画が好きな人には、とてもお勧めな作品です。



 4千字評でした。シャマラン映画の言語化難しい。
https://www.youtube.com/watch?v=KyqB6FKZcQo&ab_channel=%E3%82%B7%E3%83%8D%E3%83%9E%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%87%E3%82%A4

 ブニュエル『皆殺しの天使』のような不条理監禁群像劇に始まり、諦念と円熟を匂わせる人生悲劇へと移り。けれど最後にはリアリティーレベルがぐっと元に戻って、伏線回収して終わる。僕、こういうジャンル変転する映画大好きなんよなー。

 下半期ベスト映画だったので、長文日記書きます。なんなら2回目観に行くレベル(シャマラニスト


 
月姫リメイク やってる
ネロカオス居らんの!!??


 ネタバレ解禁は9/8(発売半月後)なので詳しくは言わんが…

①キャラ
・厨2成分薄め。特に中ボス戦で殺人衝動を覚醒させないのはさぁ…
・新キャラ、キツイ(FGOみ)

②システム
・ノベルゲーの質は、まほよからガタ落ち、Fate HAと同程度。特にアクションシーンでの演出周りは心底ガッカリ
・まほよの一本道ではなく、分岐ノベルゲーに回帰。バッドエンドではお馴染みの型月寸劇
フローチャートから選択肢へ自由に飛べるのは良し。ただエフェクトカットがないのはダルい。これ分岐ノベルゲーっすよね?
・R18は17分割の一枚絵部分。エロはない(当たり前

③話
・2ルートのみ。シエルルートは兎も角、アルクルートはトゥルーなし
・平成→令和の時代変化は特になし。携帯は遠野家にて没収!


…文句多いな?
とはいえ、初動14万本と弩級の売れ方をしたので、まほよと違って後編は期待できそうですね。アルクルートの補完、遠野家ルートの他、後編はどうなるのかな…?

Tsukihime Remake: The Other Side of Red Garden PV
https://www.youtube.com/watch?v=UZ7ync_CTjE&ab_channel=HawkOfLight

さつきルート…だと…?これでまた10年とか期間空けたら、さしもの型月厨も枯渇庭園やぞ!
”スガ死ねウンコちんちん”ドキュメンタリー、『パンケーキを毒見する』をこき下ろす
粗筋 「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」で政治を問うてきたスターサンズが、遂に本丸に斬り込んだ。日本史上初、現職総理のドキュメンタリーを撮る!
 菅義偉総理にまつわるフッテージの他、著名人歴々へのインタビュー、笑いと物語性のある短編アニメーションが色を添える。分かりやすく間口の広い、「政治バラエティ」映画。


①前置き
 「政権批判(映画)の批判」をこれからするワケですが、僕は批判自体が間違っているとは思いません。まして、「安倍猊下菅閣下に拝跪!自民万歳!」って層でもありません。映画として、ドキュメンタリーとして低劣だと言いたいだけです。

 個人的には、「公正中立なドキュメンタリー」は存在しないと思っています。前は尊敬してた森達也監督が言うように、企画・撮影・編集に作り手の意図が入り込む時点で、出来上がったものは主観的になってしまう。以前に別の映画評で語ったように、プロパガンダ的であっても面白ければアリです。
https://magiclazy.diarynote.jp/202005272316572743/

 ただ、上記エントリには議論に先立ち、「そもそも知らない」状態が最悪な以上とも書きました。…いえね、コロナのご時世、スガが無能だなんて、流スガに皆分かり切ってるでしょ?多くの観客の精査・議論に堪え得るように、多少の客観性・中立性は確保すべきと思うのだが…。
 独善的!印象操作!下品!無思慮!浅識!駄目プロパガンダの見本市になってました。以下、観ててキッツい要素を列挙していきます。


②(一見)客観的:国会審議ビューイング
 前半の見せ場は、上西教授のパートだ。国営ヤクザ放送大手メディアでは編集されているせいで、まるで「ハキハキ答弁している」ように見える菅総理の姿。しかし上西教授は審議の映像をノーカットで見せ、その欺瞞を露にしていく。
 この”方向性”は間違いなく良い。学術会議任命拒否を、立憲民主が追求する。ところがスガはトートロジーに終始するのみ。追求が鋭くなると後ろの席に答弁書を出させ、カンペ丸読みでどうにかその場を切り抜ける。ノーカットでなら、無策と疚しさがはっきりするのだ。

 ところが本作、そこに「解説」を過剰に投入してしまう。同パートの前半は3分生映像→1分解説をカットバックさせており、まだ見やすい。ところが後半に行くにつれ、後付けはヒートアップ。テロップ、矢印、SE、ヤジ吹き出しが付加され、終いにはリアルタイムコメンタリーとなる。熱の入りように、監督は「俺もスガを追い詰めてるんだ!」と自己陶酔してるのだろうか。だが、ドキュメンタリーとしてこれは上手くない。


③(一見)客観的:国会審議の「本当の」姿
 そもそもの問題は何だったか?NHKメディアの国会映像は「編集されて、歪んでいる」のが問題だった筈だ。だからこそ、長尺の「本当の」姿を見せることに意味があった。ところが、当の映画の作り手たちもまた、映像に加工を施す。これでは、同じレベルにまで堕してしまう。

 ドキュメンタリーは、映画は観客に解釈と思考を促させる芸術だ。何も「完全無編集にしろ」とは言わない。ただ、さりげなく意図を忍ばせるのが上策だ。
 重低音や環境音をごく僅かに付け、圧迫感を煽る。真を突くコメントを最後にぼそっと呟き、数秒の暗転を挟む。目元の見えない口元のアップで非人間性を、或いは目元のみのアップで腹黒さを演出する…。フッテージの繋ぎ合わせ方で意味を持たせるのが上品で陰険なやり口なのだが…さっすがテレビ屋出身!映画文法なんざ関係ねェやな!


④(一見)実証的:数値データ
 コミカルな調子で始まる映画も、最後は悲愴な空気を帯びて終わる。日本は先進国トップG7の中で最低の国、その証左として各種データが列挙されるのだが…これがもうお粗末。
 PCR実施率が低い…これをスガの失政というのは間違いない。だが、平均賃金、幸福度、男女平等、自殺率などの項目でさえ「これも、現政権が招いたことだ」と一義的に断言するのには首肯しかねる。中でも、自殺率のデータには驚いた。2015年のデータを使っている上に、同一グラフ内で抽出年次が違うのだ(諸外国が15年、日本は14年といった具合に)。

 スガを叩くために6年前のデータを使い、あまつさえ(グラフ上の落差をくっきりさせるために)数値さえ弄る。これは、ジャーナリズム精神に悖るという同義以前の問題だ。映画本編で「スガは隠蔽・工作をする輩だ!」と糾弾する、当の作り手が同じ真似をする。そのうえで杜撰な改竄跡を放置するその無思慮さが理解できないのだ。
 因みに「男女不平等」データを挙げるわりに、この映画の女性演出はミソジニー的だ。スガの自伝をうっとり読む、スガの叩き上げ人生を無邪気に褒めるのは、決まって若い女性。「スガを賛美するのが馬鹿女」って言いたいのかな?


⑤ブーメラン論法:前川元事務次官の叫び
 お前が言うなの別事例として、前川元事務次官のインタビューがある。「加計告発」によってスガの側近から圧力を受け、また「出会い系バー」を巡るメディアバッシングを受けた。前川氏は「人格攻撃によって、個人の発言や実績が破壊されるのはあってはならない」と悲痛に叫ぶ。
 確かに正論だ。「出会い系バーは視察であり疚しい意図はなかった」とのガバガバ答弁も呑み込もう。でもねこの映画…「昔の義偉(よしひで)さん、イケメンだったのね♡」「スガの博打政治は失敗続き!ギャハハ!」って人格攻撃を最前までやってから前川パートにつなぐのよ。

 嘲りパートも、前川パートも削らなくて良い。ただ、両者の間に最低20分くらいの時間空ければ良いだけじゃない。上述した通り、フッテージの繋ぎ方次第で印象はガラリと変わるのがドキュメンタリーというもの。それを理解出来てないのは…ちょっと心配になる。


⑥メディア絶対視:赤旗と大手メディア
 スガは無能である。無能の無法は許されない。メディアは権力監視を果たすべきだ、との論調に後半入っていくのだが…僕はここで引っ掛かりを覚えた。
 
 スガの闇資金問題に対し、しんぶん赤旗が舌鋒鋭く切り込むパートは良い。決済印付の収支報告書を集め、SNS投稿から本来の経費を弾き出す…と地道な証拠集めをするブンヤ仕事が観られるだけではない(何せ、「新聞記者」2作にはついぞなかったお仕事ぶりだからな!)。しんぶん赤旗に奉職する記者の葛藤を描いていたからだ。
 赤旗に就職する条件として、共産党員にならねばならない。しかし、スポンサーの意向に左右される他メディアに行くくらいなら、購読料のみで独立経営される赤旗に行く方がジャーナリストとしてマシと若干の難渋を滲ませる。アンビバレントな感情を記者が持ち、それを映像として見せている点は、今作の数少ないフェアな要素だろう。

 それでは、何故大手メディアは赤旗のようなスクープを書けないのか。それはスガから圧力が掛かるせいだ、と言うのだが…。


⑦メディア絶対視:スガはビッグブラザーか?
 私はメディアの人間ではないので、業界の慣行・不文律を知らない。だが、仮に新聞社・メディア全体が一枚岩だとしても、権力の圧力に負けるものなのだろうか?スガの圧力が事実にせよ、メディア側が、少なくともデスク以上が権力に阿るからこそ、メディアが腐敗するのではないか?それを今作は全く映さない。その偽善が鼻に付くのだ。
 元経産官僚の古賀氏は語る。「官邸から報ステ幹部に圧力ショートメールが来て、私は番組を降板させられた」。ンならそれを映せや!ドキュメンタリーやぞ!編集会議の議事録、通話記録、メール、そうした「忖度して内々で報道を取りやめた事例」の記録が一切出てこない。俺たち正しいんだけどなー!!スガの圧力凄くてなー!!かーツレーわー!!とだけ言われても…。

 頓珍漢な話と言えば、スガ=大本営説という珍パートがある。
情報部:論理的データで分析(≒メディア)
作戦部:情緒を優先し圧力(≒スガ)
と二次大戦期と現代をリンクさせ、語る。「日帝は紙の配給を止めるなど、物理的な圧力をかけた。現代は同じことが起きている」、と語るのだが…。えっ、スガってサーバとか輪転機とか放送免許を抑えられんの?しかも「これが圧力の証拠だ!」と意気揚々示されるのが、ワクチン報道に関するアベ、役人の「抗議します」tweet画像2通だけ…。そっかTwitter最強だったかー!!せめて後日届く正式書面の方映してくれー!


⑧アニメーションの出来の悪さ
 今作への否定レビューの中で、とりわけ世評が悪いのが劇中5本流れる風刺短編アニメだ。

 僕はドキュメンタリー映画内のアニメには、2つの機能があると考えている。
 一つは、過去作を引用し持論の「代弁」をさせること。冒頭に挙げた『21世紀の資本』はこのタイプで、監督や出演者の口から言わないことで「普遍的真理」「社会通念」であるように演出する。
 もう一つは、新作アニメを用い、扱う題材の経緯・内幕などを「説明」する機能。本作はこちらに近いのだが…とにかく余計なものが多すぎる。

 先ず、テンポが鈍重なうえに説明過多。井上監督はテレビ屋さんゆえ知らんのだろうが、映画は暗闇で大画面を眺めるぶん集中できるのだ。寓話で簡略化普遍化する、オチを明かさず暗転や風景映像に移り、時間差で観客にじんわりと思考を促す…といったように。
 「政治家は二枚舌だから地獄の舌抜きが効かないー!」「なんとー!アベは自民党の親玉だから、抜いても抜いても無限に生えてくる―!」…って、画面まんまを朗読するの心底ダサいから止めて?多弁が利くのって、早口かつ軽妙なジョークを交えるときだけだからね?「ボウリングフォーコロンバイン」の、白人銃信仰のアニメ観てから出直しな?

 100歩譲って、これがドキュメンタリーとは無関係に「アニメ単体として楽しむ」代物としよう。監督は恥知らずにも「モンティパイソン」意識と言ってるしね。
 でも作り手には!テリーギリアムの芸術性やセンスも!「サウスパーク」の激烈な批評性も!「シンプソンズ」の物語性や台詞の鋭さも、ねえよ!風刺アニメ舐めんな!


⑨結びに
 この映画、炎上したんですよ。スガどうこうじゃなく、社長の発言で。
https://www.banger.jp/movie/61751/

僕は鬼滅もエヴァも映画として好きじゃないし、作品の多様性はあって然るべきだと思う。でもこれ、(本来なら観られるべき良作なのに)って前提ありますよね?僕は、スターサンズの政治色が濃い作品はこれに当てはまらないと思う。
本筋キャラクターと絡まない五輪・学生運動をぶち込んで引き延ばした『ああ荒野』、ファンタジー陰謀の『新聞記者』、
https://magiclazy.diarynote.jp/202004070128144710/
スガは叩く一方で望月自身、東京新聞は神聖化する「i 新聞記者ドキュメント」…。ジャンル映画として、僕はどうしても出来が良いと思えないんですよ。


 それにね、この映画の誤りが一つ、公開後に明らかになった。横浜市長選です。
 劇中描かれるように、スガは横浜族議員の秘書からキャリアをスタートさせた。ハマの裏市長と恐れられたスガのホームグラウンドでさえも、彼を見捨てた。
 この映画は有権者を「凍えて死んでいく羊」と描いた。けれどコロナ禍で尻に火が付いた国民は、馬鹿なりにでも考えを持って行動出来る。そしてそれを導くのは、きっとこんな映画じゃない。






 はい、5千字評でした。今年ワーストです。
 くどいようだけど、政権批判を封じたいワケじゃない。多少偏ってても良い。この映画も、「スガがイメージ戦略で洗脳するなら、俺らもイメージで戦ってやる!毒を毒で制するんだ!」って客観視や開き直りがあれば、最後に許せたんでしょうが。

サヨ(侮蔑語)大人気のドキュメンタリー、『パンケーキを毒見する』観た
 酷過ぎる。客観性公平性は過少、浅知恵ロジックはブーメラン、ジャンル知識ゼロが垣間見える風刺(もどき)アニメ…。実は一番まともだったのがしんぶん赤旗という謎。
 
 とにかく「クサい」映画だったので、長文日記書きまーす。






…別に僕は自民支持じゃないからね?ただ批判するにせよ「スガ死ねウンコちんちん」レベルではまともじゃないよね、ってことです。

公開前だけど『ザ・スーサイド・スクワッド』について大体全部語る
粗筋 南アメリカの独裁島国で、クーデターが起きた。実験施設「ヨトゥンハイム」で異星生物を用いた「スターフィッシュ計画」が行われてきたが、新政府が悪用すれば世界の危機となる。
 米政府高官は極悪受刑者14人を招集し、減刑と引き換えに島への潜入任務を言い渡す。逃亡すれば死、失敗しても死。自殺級の特殊部隊=スーサイドスクワッドの極秘ミッションが始まる。


①概説…もとい映画『スーサイド・スクワッド』
 5年前、『スーサイド・スクワッド』の前評判は大変なものでした。『ニューヨーク1997』を集団にしたような過激なプロット、シックでダークな予告編はyoutubeでバカ受け。『バットマンVSスーパーマン』がコケた後でもあり、ヒーローの出ないアメコミ映画として期待されたものの…評判は芳しくありませんでした。

 興行収入自体は悪くなかったものの、評価が低かったのはなぜか。大きく分けて、「テンポが悪すぎる」「ヴィランが主人公なのに善人過ぎる」の2点が挙げられますが、これには監督、デヴィッド・エアーの作家性が関わっています。


②デヴィッド・エアー
 ストリート育ち、軍隊経験あり。彼の作品にはアウトローや末端の警官・軍人といった荒くれつわもの達が登場します。成程、そう聞けば『スーサイドスクワッド』の監督に適任に思える。しかし、彼は「ハードな環境に強くならざるを得なかった者達の悲哀、そこで培われた友情」を描く作家でもあるのです。これが作品との食い合わせを悪くした。

 2000年代に再生を始めたアメコミ映画は、悩める超人を描いてきました。DC映画、ソニー映画の数々ですね。その流れを変えたのが、マーベルの『アイアンマン』でした。勿論ト二―も悩む。しかし彼は気持ちをカラッと切り替え、行動に移す。このネアカマインドが、新しかった。
 しかし、『スーサイドスクワッド』は昔の路線に戻ってしまった。おまけに、先述した『BVS』も同じ路線だったにも関わらず、です。

 極悪人集団だからこそ、ヒーローとは違った物語になる!そう観客は期待したものの、描かれるのは「俺もな、生い立ちが悪いだけやねん。善人やねん…」とウジウジした吐露。おまけにそれがキャラクター紹介のための回想、キャラの能力を測るための回想、一度心が折れ再起するための回想…といちいち回想形式が挟まる。
 女々しい上に、テンポが悪い。DC映画の復権は、『ワンダーウーマン』まで待つことになったのです。


③ジェームズガン版『ザ・スーサイド・スクワッド』
 昨日の日記にも書きましたが、エアー版スースクの逆張りです。エア―版の欠点を帳消しにする要素のてんこ盛りゆえ、前作に失望した人ほど評価は高いでしょう。以下、ジェームズ・ガンの経歴も踏まえつつ列挙していきます。


④きちんと死ぬ!
 「エクスペンダブルズ」って、名前の割に味方が死なないって思いません?「スーサイド」の割に、エアー版も殆ど死人出ないですよね?ご安心下さい!『ザ・スーサイド・スクワッド』は、冒頭のつかみで沢山死にます!
 溺死!顔面貫通!銃殺×3!焼死!頭爆発!設定は「14人」ですが、半数は開始10分で冗談のような死に方をします! 在庫処分を終えると、ガンお得意の80’ソングと共にOPクレジットへ。(" People who died"のチョイスは悪趣味ながら、ガン監督の脚本過去作『ドーン・オブ・ザ・デッド』でも使われた曲ですね)。

 敵・味方共に命が軽く、その死に様もブラックな笑いに満ちている。冒頭はまさに「俺たちの見たかったスーサイドスクワッド」です。


⑤回想がない
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にも言えることですが、キャラクターの過去は会話の中だ概ね済まされます。(ツイスト要素として時間軸の入れ替えが行われているためか)本筋の作戦遂行と無関係な回想を何度も挟むことはありません。話が前に進んでるよ!(進まないのが異常なんだけど)


⑥カラフル
 出世作の『スーパー!』、説明不要の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の頃から、ガン監督の色使いは美麗です。極彩色の宇宙や爆発、都市空間やコスチューム。淡褐色な風景の中にも、原色や対比色を織り交ぜることで、目も彩な画面になる。(今回の予告編でも確認出来ます。2:04のハーレイクインカッコよくない?)
https://www.youtube.com/watch?v=eg5ciqQzmK0&ab_channel=WarnerBros.Pictures
 今回、それが際立ったのはナイトシーンですね。闇に打ち沈んでいても、火焔、衣装、脳漿、照明と色彩に満ちている。エアー版とは段違い…ですね。


⑦グロ
 敵は怪物ではなく人間の兵士、味方も容赦なく死ぬ。エアー版よりゴア描写は格段に増えましたが、「生理的嫌悪感の湧くグロ」もあったのは驚きですね。
 世界のガン監督も、元はZ級ホラーのプロダクション「トロマ映画」出身。ヒトデ怪獣の体表がぱっくり割れ、ブツブツ組織の襞から小ヒトデが蜘蛛の子のように湧くシーンがあったり。ゾンビ化人間の生体実験シーンは、ナチ組織ということもあり『OVERLORD』を思い出しました。ラノベじゃないよ
https://www.youtube.com/watch?v=3i-ooDJMOzo&ab_channel=Movieclips


⑧武器の豊富さ
 エアー監督は銃器のリアリティに拘る監督ゆえ、スースクのガンバトルは地味でした。一方ガン監督はアメコミ映画とオタク心を分かってらっしゃる。
 主人公のブラッドスポートは、板状のガジェットを展開させて武器にする。1個では拳銃タイプだが、それを前に上部につぎ足すことでライフルやグレネードガンへと巨大化していく。
 同じく遠距離タイプのピースメイカーも、手斧に拳銃、吹き矢や投げナイフといちいち殺し方が多彩。近接格闘でなくとも、バトルシーンに華があるのは良いね。


⑨ギャグシーン
 …と、ここまで褒めて来ましたが、ここからは貶しタイムです。先ず一つ、ギャグのテンポが鈍重。
 ガン作品の、「オフビートな笑い」自体は良いんですよ。下積み時代のショートブラックコメディ『PG Porn』の時代から、「噛み合わない会話でシュールな空気が流れる」笑いの名手だったから。
 でも、『GOTG』では笑いは多様だった。相手の悪態に更なる軽口で応酬、頓珍漢な返答を説明口調で切り返す、更に外れたことを言い始めたら強引に会話を止める…など。
 一方の『ザ・スースク』はズレたことを言う→引きの画で気まずい空気が流れる→数秒後にワンコメント、のワンパターン。とにかく会話テンポと編集が鈍重。

 コロナ下とはいえ、ギャグ映画の試写開場で笑い声ひとつ起きないのってヤバくないですか?


⑩ギャグとシリアスの配分
 これも上手くなかったですね。ギャグ交じりの映画って、序盤はギャグ>シリアスだったものが、後半に行くにつれシリアスの方が重めになっていくものなんですよ。
 例えば、同じゴアギャグR指定ヒーロー映画の「デッドプール2」。あちらも序盤でタスクフォースXの面々が冗談のような死に方を遂げますが、後半ではちゃんとシリアスになる。

 加え、中盤以降も「味方の死」で笑いを取るのは、物語のシリアスさを欠く愚作でしょう。善人の反政府ゲリラをそれと知らず虐殺した、ゲリラの協力者が死んだ際にネタにする、ラストバトルでトラウマを克服した主人公格が台詞途中でミンチになる…。
 デップーにせよGOTGにせよ、中盤以降に味方(それも死に様で)弄りで笑い取りませんよ。敵の成敗方法がバカげているだとか、しぶとい相手がアホみたいな死に方をするだとか、「相手方」で笑いを取るもの。序盤のテンションのまま最後まで通したのは哀しいですね。


⑪シリアスの方向性
 シリアス成分が、「米帝の卑劣な外交政策」「無辜の民を救う」とスクワッド面々の外部に置かれたせいで、成長物語として機能していない。
「GOTG」がまさにそうなんですけど、序盤に悪口の応酬をした台詞が、実は本人の鬱屈や過去のトラウマを反映したものなんですよ。ギャグと思えた裏にシリアスな苦しみがある、それを積み重ねていって「個人的な成長を遂げる」ことが「世界を救う」ことに直結する。小さな物語大きな物語、二つが呼応するからこそ、冒険作品は面白いと思うのです。


⑫結びに
 僕は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が死ぬほど好きです。それゆえ、期待値を過剰に高くもうけ過ぎたがゆえに粗探しだったかもしれません。実際、rotten tomatosでは試写組は軒並み高得点を付けており、公開すれば恐らく好評を博するでしょう。

 それにね、痛快なことが一つあった。「何だそのシロ(ブリーフ)は! キモイな!」「それは人種差別だぞ!」のギャグシーン。ポリコレバッシングでブッ叩かれ、一時はディズニーから完全に梯子を外されたガン監督が、ほかならぬ映画の中で人種ジョークをカマす。リベラルポリコレの権化たるディズニーでは、もう出来ない一幕だろうからね。





 はい、4千字評でした。日記書くの久しぶりだし、パンフもなくて客観性に欠けるけど、事前レビューということでどうかおひとつ。
 

 
 前作『スーサイドスクワッド』の逆張り映画でした
デビッド・エアー版と比較して「あー納得」と言える層はまだしも。「面白い」映画を期待する人にはおススメできません。


 言いたいこと結構浮かんだので、頑張って明日深夜までに評を1本書きます。

試写会当選

2021年8月2日 趣味
試写会当選
 ひと月更新してませんでしたが元気です。

 何通か応募してた中で、まさかの『スーサイドスクワッド2』当選。公開10日前に劇場に見に行きます。


 以下試写会疑問
・「ネット応募よりもハガキ投函の方が当選確率が高い」説
 そもそも眉唾だが、仮にそうだとしてもハガキ+切手代、手書きの手間が面倒よなあ。ネット応募なら数瞬で済むので、片っ端から応募できる。
 在住都道府県限定でなければ、過疎隣県会場のものまでダメ元で応募しても良いから、
手書きで5通出す×手書き当選確率、と
ネットで20通出す×ネット当選確率、のどちらが期待値高くなるかも不明。なので僕はネット派です。(SW級の「どうしても受かりたい!」作品なら手書きの神頼みはアリだが)

・「満員になり次第、入場を締め切らせて頂きます」との注意書き
 試写会童貞なんだけど、そういうのって有るの?
 キャパ250(コロナ対策で半数の125として)のスクリーンの場合、ぴったり125ではなく、ドタキャン見込みで冗長性持たせた130くらいを当選させてるのかな。
 そうだとすると、念のため開場1時間前にチケット(整理券)引き換えすべきなのか。うーむめんどい。。。



ググったら試写会プロの論考があった。ふつーにタメになる。
http://mypace-night.net/sisyakai-eiga
やっぱり試写会は開場間際に行っては駄目そう…。
映画『夏への扉 ーキミのいる未来へー』を僕が絶対観に行かない理由 ~なろう論を添えて~
映画『夏への扉 ーキミのいる未来へー』を僕が絶対観に行かない理由 ~なろう論を添えて~
 鬼滅以来の『未見予想レビュー』という狂人日記になります。
 また某ジャンルへの茶化しもあるため、オフザケを許容できる方のみどうぞ。


①初めに
 夏なのに、SFの冬が来た。
 先週末、「SF実写邦画」という希少ジャンルの公開がカチ合うという椿事が起きた。「夏への扉~」と「Arc」の2本である。ところが、オープニング成績は夏への扉(6000万/300館)、Arc(2000万/180館)と共に大爆死を遂げた。
 僕はハインライン原作の『夏への扉』が大好きだ。夏への扉実写の報を去年聞いたとき「時流にあった良い企画じゃん!」と感心もした。だが…予告編を見た瞬間に期待は吹き飛んだ。
https://www.youtube.com/watch?v=0Rlnb0N8vxU&ab_channel=%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9YouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
これは駄目だ。何故なら原作「夏への扉」は…なろう小説だったからだ。


②「夏への扉=なろう小説」説
 直ぐなろう系持ち出すとか教養貧か~?と思われるかもしれない。…だが少なくとも既読勢なら、この喩えに納得出来る筈だ。
 夏への扉は確かに面白い、だがそれはジャンクフード的な毒っけだ。才能による成り上がり、俺尊女卑、全世界の承認…。サクセスストーリーのテンポを重視し過ぎたがゆえの、気持ち悪さや臭さ。この引っ掛かり感があるからこそ、(日本人)読者の記憶に強烈に残り、読み継がれてきたと僕は考えている。


③原作粗筋と才能論
 天才発明家のダンは、友人でありCEOであるマイルズ、秘書のベルと会社を営んでいた。ところが経営方針でマイルズと対立、婚約まで交わしていたベルの姦計により全財産を失ってしまう。一矢報いようと乗り込むも、逆上したベルにより返り討ちに。30年後の未来へと冷凍睡眠で送られて…原作はこういった話だ。
 さて、この展開に覚えはないだろうか。そう、追放ものという異世界ジャンルである。テイマー・穴掘り・メイン盾といった「この世界では外れスキル/パラメータ」を与えられた主人公は、継承権を剥奪される・パーティーを追放される。ところが一点特化能力の応用法に気づき、成り上がりを始める…といった流れだ。
 
 原作において、ダンの発明の才は天下無比だ。未来では技術レベル自体は進歩しており、ダンも始めはギャップを覚える。しかし、イノベーションを生む人間は皆無。作中で唯一、万能ロボットを視た時だけは「スゲェ!これ設計者天才だな!」と驚く。しかし最終的には「あんな発想出来るの俺だけやろ…」と過去を上書きする旅に出かける。彼に匹敵する者は存在しない世界なのだ。

 
④語り口
 主人公の全能感を後押しするのが、独特の語り口だ。主人公の視点から物事を観察し(自分の感情は地の文で吐露するが、他人の感情を思推する描写はほぼ無い)、敵をやり込めるときは事実の順序立てや制度などを列挙し完全論破スタイルでまくし立てる。
 なろうだと…ゲーム的世界システムの話とか?(苦しい


⑤成り上がりと「成長」
 かのジョゼフキャンベルは、「神話類型論」を唱えた。「英雄は非日常で通過儀礼に遭い、変質を遂げることで成長する」という普遍的物語構造がある、と。

 なろう下げを続けるのも意地悪なので、同じく「復讐古典」ものの『モンテクリスト伯』を比較に挙げようか。主人公ダンテスも卑劣な罠により長期間不自由の身となり、チート頭脳を持った復讐超人として帰還する…のだが、趣が違う。板挟みの中で復讐より愛ゆえの自死を決断したり、或いは他者の幸せのため身を引いたり。彼は他者との関わりの中で、価値観を自発的に更新していく。

 一方の「夏への扉」は凄い。裏切り者は当然地獄行きだが、善側の同僚&博士&親切夫婦&姪ワイフ、何れの人間の忠告や哀願であっても一切耳を貸さない。「いや、僕最善のルート知ってるんで」とばかりにステップアップのコマとして機能させていく。

 神話構造に沿ったものが無条件に素晴らしい、とは言わない。だが(詳しくはハヤカワ文庫版のあとがきを参照して欲しいが)、小説「夏への扉」を評価するのは日本人だけだそうだ。日本でのSFオールタイムベスト投票をすると、ほぼ必ずベスト3に入る。一方アメリカ・イギリスの場合は、ヒューゴー賞を取ったハインライン作品は兎も角、「夏への扉」はベスト100選外になるとのこと。
 …なろう系こんなに流行るのも、日本だけやん?(強引


⑥トロフィーガール
 原作最大の気持ち悪さは、ロリ嫁娶り展開だ。ダン(30歳)は姪のリッキー(9歳)に
「おじさんはねぇ…居なくなるんだァ…」「お金、渡しとくねェ…」「そうそう、君のパパとその恋人も悪人なんだよォ…」「おじさんのことずっと好きで居てくれたら…21歳のときにコールドスリープに入ってね…。未来で花嫁さんになってよォ…」
と矢継ぎ早にお願いをする。完全に事案である
 分別付かぬ童女に、環境変化で不安になるタイミングで、情報を吹き込む。自主性もあったものではない、ただの洗脳だ。従順な年下ヒロインを無条件で手に入れる…そう、奴隷少女/召喚魔族/庇護王女展開だね!

 現代的な捉え方かもしれないが、男(30)×女(21)という年の差にも何とも言えないミソジニー感がある。時間SFの伏線回収という建前はあるものの、夫唱婦随の年の差にする必要はあるのか?
 寧ろ僕は、「インターステラー」のように「数十年の実時間を過ごす=自分の人生ひとつを犠牲にして、他者の幸せを願う」SFにこそ、感動できる。リッキーと同じ時を過ごし、彼女が適齢期になったときに異性として身を引くのもアリではないか?
 一方「夏への扉」は幼女を自分好みに仕込み、ぴちぴちのタイミングで冷凍から釣り上げ結婚する。「リッキーお腹出て来たねェ…もちろん、幸せの意味でだけど」のラストには鳥肌が立つ。


⑦時間改変に取り残される人たち
 時間博士トゥイッチェルの扱いも悲惨だ。彼は生涯を費やしたタイムトラベルが軍機密として封印させられ、落魄していた。そんな彼をダンは最初は揉み手で取り入り、実験を渋って以降は罵倒によって誘導する。
「ほら!スイッチ押してみろよ!やっぱペテンだったんだな!軍の奴らも言ってたよ!実現不可能な戯言なんだって、ゴミ箱送りにされたクズ理論だってな!気づいてないのお前だけだから!」
あんまり過ぎない…?1往復半の時間旅行を経て、理想郷に辿り着いた後も彼へのフォローはない。「スタートレック」「バックトゥーザフューチャー」のように「過去地点の博士にヒントを出し、それが未来の発明に繋がる」という輪廻の蛇が閉じる展開もない。

 夏への扉(未来βとしよう)に辿り着くために、取り残した人は他にも居る。万能機械を発明した同姓同名のダン(過去α)、誰かと結婚していたリッキー(未来α)。天才ダンは他に居たかもしれない。リッキーは別の人と幸せだったかもしれない。しかし主人公ダンは、それらを追求せず自分だけの夏への扉を求め時間跳躍を果たす。一応、
…とすれば、昔ながらの”曲折する時間の流れ”とか、”多元宇宙”とかいう観念は、ついに正しかったのであろうか!…

と悩んではいる。しかしその後に
しかし、ぼくは、ピートに劣らず、こんな哲学には縁がない。この世の真理がどうであろうと、ぼくは現在をこよなく愛しているし、ぼくの夏への扉はもう見つかった。

と疑念は全放棄。いっそ清々しい。


⑧映画『夏への扉 ーキミのいる世界へー』
 プロデューサーは、パンフでこう述べてるという。
SF好きの男性の妄想にならないように(笑)、女性の側から見てちゃんと理解できる形の璃子にしたかったんですよね。そこは女性の脚本家である菅野さんに書いてもらって本当に良かったと思っています。

現代映画として、まことに正道である。ヒロインは9歳→高校生に改変され、一度はヒロイン側の告白を振り「社会経験を積め」と諭す展開まであるという。
 
 正しい。だが、正しさが売上に直結するとは、僕は思わない。ポリコレ時代だからこそ、観客は正しさから外れたものが観たいのだ。


⑨大ポリコレ時代
 10年代後半、20年代ほどコンテンツの「正しさ」が煩い時代もなかったろう。黒人が怒れば、「風と共に去りぬ」は棚から消える。ストーリーゲーには同性愛とブサイク有色人種を出すのが義務化された。萌えアニメであっても、「高校生を住まわせるのは誘拐淫行」「スーパーカブ2ケツは犯罪」と叩かれる始末だ。
 でもな!一般的な男どもは、解脱したリベラル仙人ちゃうぞ!「美少女抱きてぇ!成功してぇ!世界に認められてぇ!」。そういう卑俗な欲求を満たす娯楽は、窮屈な時代にこそ売れるに決まってる。

 映画版「夏への扉~」は無難の極致だ。「ソラニン」の監督!「キングダム」の主演!「お帰りモネ」のヒロイン!メインテーマはLiSA!「実写邦画」という狭い枠組みの中では、正解だったろう。だが、コンテンツ潮流全体から観たらどうか?
 原作通りやったら、間違いなくフェミやポリがブッ叩きに来た筈だ。だが同時に、ギンギンに尖った問題作として世間の注目を集めた筈だ。何の話題にもならず、最終見込み1.5億でポシャルことはなかったろう。
 
 パワーはあるが時代錯誤な原作。倫理を強いる窮屈な時代。欲望を肯定する潮流。これだけの材料があってなお、無難に逃げたのは返す返すも残念な次第である。まあ、本編は1ミリも観てはいないのだが




 ということで、狂人レビューもとい「観に行かない理由」でした。攻めたプロットの『キャラクター』がロングランで、無難な『夏への扉』が爆死したのも分かる気がする。

 
 映画ではないけれど、アニメ「チェンソーマン」もこの系譜で気になるところではある。流血描写自体はufotableが先鞭をつけてしまったので、きちんとデンジの性欲全開節が聴きたいところ。
https://www.youtube.com/watch?v=q15CRdE5Bv0&ab_channel=MAPPACHANNEL 


 漢検受けます。

 興味の幅を広げたい、けれど才能やセンスがない人間でも熱中出来るものないかなあ…と探してたらふと見当たった。
https://www.kanken.or.jp/kanken/outline/degree/example.html
1級の問題は流石に異次元めいた難易度。チャレンジし甲斐もありそう。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

期限:来年度第1回(7月)まで。やる気続くなら続行
目標・小目標:次回(今年10月)準一級。受かり次第一級
勉強法:丸  暗  記


 
〇ベスト10
・聖なる犯罪者
 机の引き出しで金玉絞り上げる拷問、って映像で初めて見たかも。感動した。
 …冗談は兎も角、「ヤクザと家族」の上位互換といえる一作。アウトローの壮絶な過去、暴力と純粋さが両立するパーソナリティー、受刑経験を活かしたお仕事映画のディティール、更生のカタルシスと転落のサスペンス、そして犯した罪との対峙…。
 宗教的なメタファーを数多く持ちながらも、純粋にエンタメとして楽しめる。R18+だけどこれこそ広く見られるべき映画。

・ミナリ
 ジムジャームッシュ作品とか、グレタガーウィグの「レディバード」のように、何気ない日常の一コマ一コマが瑞々しい。この監督がハリウッド版「君の名は。」撮るっていうのは納得だわ。絶対上手く行く。

・花束みたいな恋をした
 恋愛模様についてはピクリとも来なかったが、サブカル若者のディティールの拾い方が神がかってる。
 時代を切り取るものって、80’ノスタルジーであったり広い時代を切り取ることが多い。一方今作は十年代後半の5年だけ、それもポップシーンから一歩引いて(しかもネット文化は一切触れずに)リアリティを生み出している。脚本家の観察眼が凄まじいね。監督より、ダブル主演よりもパンフでインタビューが厚かった理由が良く分かるわ。

・騙し絵の牙
https://magiclazy.diarynote.jp/202104152343489958/
 普通に面白い。それがどれだけ難しいか。

・21ブリッジ
 逃走・追走劇を時間軸・空間軸両面で丁寧に追っていて、脚本構成が並外れて上手い。
 夜半に事件発生し、夜明け前までに解決するというスピード感も良いね。警官汚職ものでありながら、割と敵側のポカや強引さで自滅していく点もそこで緩和出来ている。

・ジェントルメン
 すっかり大作監督になったガイ・リッチーが、まさか初期作品のようなコックニークライム作品に戻ってくれるとは!ラストの伏線回収がぶっちゃけ雑なんだけど(本編になかった映像を付けたしてるので)、ドンデン返し+アクションのつるべ撃ちの御蔭で不思議な多幸感に満たされる。こういう勢い…嫌いじゃない。

・アオラレ
 前半部で「主人公のストレスを示すアイテム」だったものが、後半で物語を動かすアイテムとして別の機能を持って来る。この伏線脚本が先ず見事。
 それに「無敵の人」を殺人鬼に持って来る設定も良いね。話は通じる、悪知恵も利く。でも保身のブレーキだけは完全にぶっ壊れてるから、人前でも平気で人を殺し出す。
 原題"Unhinged"は「イカれる」「扉の蝶番を壊す」のダブルミーニングを持った良いタイトルなんだけど、日本版のB級ド直球センスも好き。 


ベスト3
・ファーザー
 アルツハイマー映画で「狂っていく様を外から眺める」のではなく、「当事者視点」で描き出したのは凄いね。頭が壊れて周囲とコミュニケーションが取れなくなるのではなく、「認知出来る外側の世界が壊れるからこそ、話が出来なくなる」という悲哀。ラスト10分、何とか正気を繋ぎとめようとした彼が最後に縋るものがね…不憫でね…。

・映画大好きポンポさん
https://magiclazy.diarynote.jp/202106110252029046/
CMの「たーとーえーばー」って曲、そういえば本編では使われてなかったな??
 名作です。

・素晴らしき世界
https://magiclazy.diarynote.jp/202103100151575242/
 堪んねえわあのラスト。



 上半期はこんな感じでした。下半期も生きてたら映画見続けたいな。
〇ワースト10
・ビルとテッドの時空旅行
https://magiclazy.diarynote.jp/202101102346482695/
「完成度は高くないが、特定の文脈を共有する層だけが受ける」ユルギャグが90分続く。只管苦痛。例えるならさまぁ~ずの番組。

・ミッションマンガル
https://magiclazy.diarynote.jp/202101182145096052/
 前情報や引き合いに出した作品を知らなければ、そんなにダメな映画でもないかも。でもパッドマン製作陣の次回作ってのは許せねーわ。

・ZOOM 見えない参加者
https://magiclazy.diarynote.jp/202101241822198215/
モキュメンタリーの教科書に乗せるべき反面教師。

・ヤクザと家族 the family
https://magiclazy.diarynote.jp/202102090110087200/
 藤井監督って、樋口や細田みたいに「ずば抜けたところはあるが、脚本は下手」な部類だと思うんよなー。少なくとも社会派作品は、腕のある脚本家付けた方が良いよ。

・モンスターハンター
https://magiclazy.diarynote.jp/202104210215374656/
 リアリティレベルの変化以前に、ラスト投げっぱにするのは矢ッ張りダメだわ。

・るろうに剣心最終章 the beginning
https://magiclazy.diarynote.jp/202106250126425721/
 作り手が追憶編意識してなかったら、多分ここまで辛口にならなかった。

・モータルコンバット
 実写化のダメ見本市。
 機能性よりデザインを重視したコスプレ学芸会、敵味方やたら多いキャラ数、固有名詞垂れ流しの説明台詞、伏線もカタルシスもない修行シーン、中途半端な現実←→異世界の往還。まさか令和の時代に実写版ドラゴンボールが観れるとは!
 チームバトルを推したいなら、「プレデターズ」のように開始3秒で異世界転生させて速攻バトらせる。血統の宿命に絞るなら、伝奇ノベルエロゲみたくダークな外連味を強める。もうちっと重心減らした話にしたら、普通に見れる映画になったと思う。

〇ワースト3
・樹海村
https://magiclazy.diarynote.jp/202103180016269478/
 純粋に出来が悪い。

・さんかく窓の外側は夜
「視えるが祓えない」「祓えるが視えない」霊能バディもの、って設定(=原作)天才じゃないすか!それなのに演出が勘所外し過ぎてて救いようがない。
「祓えるが視えない」冷川が除霊するシーンは良いんですよ。でも、彼独りでは「上手く視えない」様子を演出で見せないから、「これ、冷川一人で全部良くね?」ってなっちゃうんですよ。悪の女霊能者が出て以降は、ますますその認識が強化されてしまう。

 違うでしょ。バッチリ視える>少し視える>全く視えない、を演出分けすべき。だからこそ一旦は喧嘩別れした二人が和解し、巨悪を倒すシーンに感動出来るワケじゃん。「冷川ひとりではモヤ程度にしか視えないものが、三角と繋がることで凝集してピントが合う」→漸くまた掴めるようになる、ってきっちり描けよー!
 ただただ勿体ない映像化だった。


・新エヴァンゲリヲン
「成功したテラスハウス」、よりも適切な例えを知らない。
https://www.youtube.com/watch?v=05jLINMFiZU&ab_channel=PLANETSYouTube%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
 作り手も、観客も「これは庵野さんの嫁、これはガイナ分裂、これは鬱時代。庵野監督って偉いね、凄いね」って私小説的であることを善しとするまま終わっただけ。じゃあアニメ映画じゃなくて良いじゃん。「アオイホノオ」でも、NHKプロフェッショナルでも観てろよ。岡田斗司夫とか、ファスト映画解説で十分じゃん。
 ソーシャルの発達した時代で良かったね。


 シンエヴァがぶっちぎりワーストでした。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 >

 

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索