2021春アニメ 最終雑感
2021年6月28日 趣味
〇ダイナゼノン
神。
7話辺りからの演出が本当に光る。各人の屈託を全て「映像的演出の積み重ね」で丁寧に描き出し、合体ロボ文法に沿った成長として回収する。そして最終回の全部盛りバトル!敵味方それぞれのペアでの殴り合い→全形態変身→初期形態での決着…。完璧だった。
完成度的にはグリッドマンより断然今作ですね。キャラクターの作り方が段違い。原作特撮、外伝全く知らなくとも楽しめる1クールアニメでした。
〇スーパーカブ
演出素晴らしい。
…けど、ダイナと違って作品への思い入れはそんな無いんだよな。原作ポエムを直球台詞で発するのはぎょっとするし、6話炎上に対して原作者のポエムツイートは正直引いた。
〇ゾンビランドサガリベンジ
ラスト3話でびっくりするほど盛り下がった。
僕、アイドルアニメの面白さって「個人的事情をパフォーマンスに乗せる」ことにあると思うんです。作品内の観客はアイドルの事情なんて知らない。けれど神の視点の視聴者は、前半部のドラマで語られた事情と感情を後半のパフォーマンス内に見出すから、感動出来る。それが身勝手な想いだとしても、いや身勝手だからこそ、芸道に昇華する姿が素晴らしいんですよ。
で、ゾンサガR。「災害復興」という無条件に素晴らしい(と思うべき)一般論をぶち上げられて「良いこと言ってるでしょー」は、ねぇ…。災害サバイバルや舞台裏でゾンビ働きをして、適度にコメディーに振るならまだ許せた。でも全部シリアスに振って「良いこと言ってる!」はキツイ…。おまけにラストライブでのQUEENコール&レスポンスのパロシーンを長々1分やるのは…センスが無さ過ぎる。
でも、Cパートで宇宙船→地上殲滅レーザーのオチは流石に笑った。
・ゾンビ生成方法の謎(巽の吐血と関係が?)
・徐福と幸太郎の馴れ初め
・伝説のたえの正体(および源さくらとの関係)
・サガを襲う災厄
これを3期で回収したら再評価できる…かもしれん。
〇Vivy -Florite Eye’s Song-
ゴミ。マジで予想通りだった。
https://magiclazy.diarynote.jp/202105010507381472/
・11話マツモト「シンギュラリティ計画は失敗しました!」
…え、自称スーパーAIの癖に君マジで無能だったん?表舞台での干渉はしないにせよ、100年かけて地下で鉄人兵団作ったとかないの?何でバックアッププラン全く立ててないの?
・12話黒幕「人間よりAIの方が賢い!」
「シンギュラリティ」の定義がふんわりし過ぎ。改変前の世界、現行世界の両方でAIの叛乱が起きたのだから、各事象の差異はあるにせよ「どちらも特定の要件を満たしから叛乱に至った」っていう答え合わせは必要。ありていに言えば「ロボット3原則の穴」的な。
オペレーター程度の扱いだったアーカイブが黒幕だったというのは映像的な面白みはある。でも「人類抹殺マザーAIをぶっ潰すために、本拠地高層ビルにカチコミかける」展開、これ「アイ、ロボット」の丸パクリなんだよなあ…。
・12話ラスト科学者「Vivyの記憶を過去に送るよ!」
それ出来るんだ!?一つの世界線だけの奇蹟の技術じゃないなら、博士(そしてマツモトは)何でも出来る筈だよね。マツモトは先ずvivy以外の「タイムトラベル先の素体」を100年前地点に無数に配置して、「vivyが100年後失敗してもやり直せる選択肢を増やす」プランも取れるワケじゃん。
それと、何で「数千人規模の虐殺が開始された」近過去に飛ばすの?もう一度100年前からやり直すとかのプラン無いの?13話で「100年分の膨大なデータを過去でも引き継げる」ってあるから、それで100年前時点のピュアな黒幕説得すれば?
事象の確定率を上げるために近過去にしか行けないなら、せめて虐殺開始ー10分くらいの地点指定しない?それでタイムトラベル博士の身柄だけは保安すれば、vivyは無限にタイムトラベルの権利を確保できるワケじゃん?
僕が思うに、今作のクソさ加減って「制約」を設定しなかったことにあります。時間SFってジャンルは、
①回数制限がある(跳躍者の精神、タイムマシンの耐久度が減衰する、内在する負の累積効果がある)
②事態が収束する(特定の結果が必ず起きる、事象は違うが跳躍者自身の判断基準ではどれも許せる結果にならない)
③断片的なコミュニケーションゆえに、叙述トリック的な齟齬が起きる(予言、手紙・無線・日記などの非対面アイテムによる交信)
④跳躍幅に制限がある
⑤跳躍幅を伸ばすとデメリットがあるため、実質的に制限がある(幅を伸ばすと情報量・記憶の精度が劣化する)
などの制約設定があります。それがあるからこそ、「他にやりようあるじゃん?」って僕みたいな陰キャの御託を避けられるんです。長月センセは「深く考えずに楽しめるライトSF」とか抜かしてるけど、それ作り手側が手を抜く言い訳じゃねえから…。「論理的必然のある帰結」がないとか、それ時間SF失格だから…。ならSF陰謀ものやサイバー空間の話にでもしてろ。
それに加え、13話ラストライブの演出もどうかと思いましたね。回想使い過ぎ。違うんだよ、ライブシーンでの回想表現っていうのは、例えば
ライブ:手を差し伸べる
過去:伸ばした手が届かなかった
とか、
ライブ:足を踏み出す
過去:尻込みする、逃げ出す
とか、対比・類似的な演出の異同で面白がらせるものなんだよ。それに引きかえVivyと来たら1話~12話までの回想の単なるごり押しで、現代時勢でのライブ映像は殆どない…。「歌っとけばアイドルアニメやん?」って浅薄としか言いようのない考えが透けて見える。
黒幕は「創造に感動したー!ヤックデカルチャー!」って虐殺止めるんやろ?
でも、それは「詩の朗読」「絵画」「物語」とかでも良いワケじゃん。歌と踊りでしか表せないものがあると、映像で示せてないのはバカ過ぎるよ。
クソほど悪口言いましたが、僕はSFに何よりも「論理的明快さ」を期待する人種だからです。抒情とか世界観で語れるSFはありますが、そういうのはブラッドベリとかリドリースコットのような怪人にしか出来ない芸当。なんで、「普通の名作」狙う分にはきちんと脚本ブラッシュアップして欲しかったなあ…。
Vivyの風刺絵で吹いたものがあったので、画像→乗っけときます。
神。
7話辺りからの演出が本当に光る。各人の屈託を全て「映像的演出の積み重ね」で丁寧に描き出し、合体ロボ文法に沿った成長として回収する。そして最終回の全部盛りバトル!敵味方それぞれのペアでの殴り合い→全形態変身→初期形態での決着…。完璧だった。
完成度的にはグリッドマンより断然今作ですね。キャラクターの作り方が段違い。原作特撮、外伝全く知らなくとも楽しめる1クールアニメでした。
〇スーパーカブ
演出素晴らしい。
…けど、ダイナと違って作品への思い入れはそんな無いんだよな。原作ポエムを直球台詞で発するのはぎょっとするし、6話炎上に対して原作者のポエムツイートは正直引いた。
〇ゾンビランドサガリベンジ
ラスト3話でびっくりするほど盛り下がった。
僕、アイドルアニメの面白さって「個人的事情をパフォーマンスに乗せる」ことにあると思うんです。作品内の観客はアイドルの事情なんて知らない。けれど神の視点の視聴者は、前半部のドラマで語られた事情と感情を後半のパフォーマンス内に見出すから、感動出来る。それが身勝手な想いだとしても、いや身勝手だからこそ、芸道に昇華する姿が素晴らしいんですよ。
で、ゾンサガR。「災害復興」という無条件に素晴らしい(と思うべき)一般論をぶち上げられて「良いこと言ってるでしょー」は、ねぇ…。災害サバイバルや舞台裏でゾンビ働きをして、適度にコメディーに振るならまだ許せた。でも全部シリアスに振って「良いこと言ってる!」はキツイ…。おまけにラストライブでのQUEENコール&レスポンスのパロシーンを長々1分やるのは…センスが無さ過ぎる。
でも、Cパートで宇宙船→地上殲滅レーザーのオチは流石に笑った。
・ゾンビ生成方法の謎(巽の吐血と関係が?)
・徐福と幸太郎の馴れ初め
・伝説のたえの正体(および源さくらとの関係)
・サガを襲う災厄
これを3期で回収したら再評価できる…かもしれん。
〇Vivy -Florite Eye’s Song-
ゴミ。マジで予想通りだった。
https://magiclazy.diarynote.jp/202105010507381472/
・11話マツモト「シンギュラリティ計画は失敗しました!」
…え、自称スーパーAIの癖に君マジで無能だったん?表舞台での干渉はしないにせよ、100年かけて地下で鉄人兵団作ったとかないの?何でバックアッププラン全く立ててないの?
・12話黒幕「人間よりAIの方が賢い!」
「シンギュラリティ」の定義がふんわりし過ぎ。改変前の世界、現行世界の両方でAIの叛乱が起きたのだから、各事象の差異はあるにせよ「どちらも特定の要件を満たしから叛乱に至った」っていう答え合わせは必要。ありていに言えば「ロボット3原則の穴」的な。
オペレーター程度の扱いだったアーカイブが黒幕だったというのは映像的な面白みはある。でも「人類抹殺マザーAIをぶっ潰すために、本拠地高層ビルにカチコミかける」展開、これ「アイ、ロボット」の丸パクリなんだよなあ…。
・12話ラスト科学者「Vivyの記憶を過去に送るよ!」
それ出来るんだ!?一つの世界線だけの奇蹟の技術じゃないなら、博士(そしてマツモトは)何でも出来る筈だよね。マツモトは先ずvivy以外の「タイムトラベル先の素体」を100年前地点に無数に配置して、「vivyが100年後失敗してもやり直せる選択肢を増やす」プランも取れるワケじゃん。
それと、何で「数千人規模の虐殺が開始された」近過去に飛ばすの?もう一度100年前からやり直すとかのプラン無いの?13話で「100年分の膨大なデータを過去でも引き継げる」ってあるから、それで100年前時点のピュアな黒幕説得すれば?
事象の確定率を上げるために近過去にしか行けないなら、せめて虐殺開始ー10分くらいの地点指定しない?それでタイムトラベル博士の身柄だけは保安すれば、vivyは無限にタイムトラベルの権利を確保できるワケじゃん?
僕が思うに、今作のクソさ加減って「制約」を設定しなかったことにあります。時間SFってジャンルは、
①回数制限がある(跳躍者の精神、タイムマシンの耐久度が減衰する、内在する負の累積効果がある)
②事態が収束する(特定の結果が必ず起きる、事象は違うが跳躍者自身の判断基準ではどれも許せる結果にならない)
③断片的なコミュニケーションゆえに、叙述トリック的な齟齬が起きる(予言、手紙・無線・日記などの非対面アイテムによる交信)
④跳躍幅に制限がある
⑤跳躍幅を伸ばすとデメリットがあるため、実質的に制限がある(幅を伸ばすと情報量・記憶の精度が劣化する)
などの制約設定があります。それがあるからこそ、「他にやりようあるじゃん?」って僕みたいな陰キャの御託を避けられるんです。長月センセは「深く考えずに楽しめるライトSF」とか抜かしてるけど、それ作り手側が手を抜く言い訳じゃねえから…。「論理的必然のある帰結」がないとか、それ時間SF失格だから…。ならSF陰謀ものやサイバー空間の話にでもしてろ。
それに加え、13話ラストライブの演出もどうかと思いましたね。回想使い過ぎ。違うんだよ、ライブシーンでの回想表現っていうのは、例えば
ライブ:手を差し伸べる
過去:伸ばした手が届かなかった
とか、
ライブ:足を踏み出す
過去:尻込みする、逃げ出す
とか、対比・類似的な演出の異同で面白がらせるものなんだよ。それに引きかえVivyと来たら1話~12話までの回想の単なるごり押しで、現代時勢でのライブ映像は殆どない…。「歌っとけばアイドルアニメやん?」って浅薄としか言いようのない考えが透けて見える。
黒幕は「創造に感動したー!ヤックデカルチャー!」って虐殺止めるんやろ?
でも、それは「詩の朗読」「絵画」「物語」とかでも良いワケじゃん。歌と踊りでしか表せないものがあると、映像で示せてないのはバカ過ぎるよ。
クソほど悪口言いましたが、僕はSFに何よりも「論理的明快さ」を期待する人種だからです。抒情とか世界観で語れるSFはありますが、そういうのはブラッドベリとかリドリースコットのような怪人にしか出来ない芸当。なんで、「普通の名作」狙う分にはきちんと脚本ブラッシュアップして欲しかったなあ…。
Vivyの風刺絵で吹いたものがあったので、画像→乗っけときます。
粗筋 時は元治元年(1864年)。尊王攘夷吹き荒れる京の都で、人斬り抜刀斎と呼ばれる暗殺者が居た。新時代を築くという大義のため、長州藩士の許で人斬り稼業を続ける抜刀斎。ある夜彼は行きがかりから武家崩れらしき少女、雪代巴を助ける。自分が憎き仇とも知らず、彼は巴に徐々に惹かれていく…。
①作品紹介
「るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー」は少年ジャンプのレジェンド漫画で…って流石に紹介要らんよね?
映画版「るろうに剣心」は大友啓史監督、佐藤健主演の人気シリーズ。累計興収120億の大ヒットを果たしました(アクション方面の漫画実写化ではブッチギリの記録です)。
7年ぶりとなる映画4・5作目は「るろうに剣心・最終章 the final/the beggining」と銘打たれ今春公開。the finalは雪代縁編、the beginnnigは剣心過去編となります。
②評論基準と映画るろ剣について
タイトル通り熱誠込めて酷評します。何故なら「真面目な時代劇として観るには余りにも脚本・演出・考証が雑過ぎる」から。ですが同時に断っておきたいのは「全ての時代劇が、厳密な考証に基づいていないといけない」とも思ってません。後述しますが、今作に限り特殊な事情があるからです。
思い返せば、1作目も結構いい加減だったんですよ。神谷道場で穏やかな昼下がりを過ごす剣心が、板戸の敷居をバッチリ踏みつけたりしてて。でも、高速チャンバラがバチクソ恰好良いから、そんな些事は全然気にならない。アクションなり突出したものがあれば、ファンタジー時代劇でも構わないんです。
③「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編」
原作既読勢なら、縁編=the final、回想=the beginningの流れを不思議に思う筈。何故なら原作では人誅→回想(京都)→回想(闇乃武)→最終決戦という流れだからです。ならどうして、入れ子構造で前後編に分けるのか?それはるろ剣映像化最高傑作と評される、「追憶編」が存在しているからです。
「追憶編」とは、1999年に発売されたるろ剣のOVAシリーズ。
などの高い志を持って作られた作品です。殺陣の描写ひとつ取ってみても、「斬り付けた刃が骨で止まるや、左手で押して斬り抜ける」というように隅々まで気が払われている傑作なんです。
さて今作「~the beginning」は、製作協力に「追憶編」の名がクレジットされています。だからこそ、観る側も本格時代劇を期待せざるを得ないんですよ!僕が映画を素直な気持ちで楽しめない穿ちクズなんじゃないんですよ?作り手側が勝手にハードル上げたってことを理解して欲しいんです。
以上をご承知おきの上、重箱の隅を削岩する類の酷評をお楽しみください。
④台詞の酷さ
脚本ふざけてんのか!!?緊迫感ある遣り取りとか、メッセージ性の高いものを、直接台詞でくっちゃべんなや!!何でそれで「追憶編」の名前出せんの!??
やりようはいくらでもある。例えば内通者を疑う場面。報告をする側近に対し、桂小五郎は柿などの果実を剥く画にする。実の中に一部傷んだ部分を見つけた彼は、小刀で乱暴に抉って捨てる…。そうすれば、「裏切り者が居ることを示す」他にも「内通者は始末される」「不穏さを投げかける」などの役割も果たせるじゃないですか!演出、工夫しよ?
⑤台詞の酷さ2:機密観念、ゼロ
長州藩士、TPOが理解できない。例えば、抜刀斎に池田屋事件勃発を知らせる場面。
…先ず、発端から経緯まで長々説明するのは、無粋の極み。でもそれ以上に、こいつら往来のど真ん中でこの会話してるんですよ。画面の右側に、結構な頻度で通行人がてくてく通過してんの!!君たちさァ…一応は幕府方に追われる身の筈、よね?
或いは池田屋の決着がついたあと、長州藩士と新選組があわや斬り合いか、という場面。
いやさァ…長州の大物の名前、新選組の面前で出して良いの?それ知られたら余計に、相手方も引っ込みつかなくなるよ?
別に、この下り全部無くす必要はないんです。火急の用を告げるときは、裏路地に5歩移動するとか。にらみ合いの時には「退け!」の一言で済ませ、帰りの道々で事情を説明するとか。ちょっと場面や順序変えるだけでしょ?
⑥美術の酷さ:汚れ観念、ゼロ
新選組も巴も、皆さんお金持ちなんですかね?
対馬藩邸を抜刀斎が襲撃し、その跡を新選組が検分する場面が冒頭あります。その時の衣装が①ぺらっぺらの草履②白足袋③床すれすれの袴なんですが…。浅葱の羽織は新選組のトレードマークとして許そう。でも、十人以上の血と臓腑でドロドロになった床を歩くんだぜ?黒の草鞋掛け足袋+脚絆、とかの歩き易い恰好で遠足来てくれない!?
或いは長州藩士の潜伏する宿屋で、巴が下働きをするシーン。洗濯や炊事場風景を映しておきながら、前掛けが真っ白…なのは序の口。巴のおべべが上質な生地なうえ、広帯に帯留め、お太鼓まであるしっかり仕立て。…作業着なんだから、機能性重視して小袖にしよ?
⑦所作ダメ:抜刀斎の刀ポジ
抜刀斎と呼ばれていた頃の緋村は、純粋な人斬り。そのため行住坐臥、全てが臨戦態勢。眠るときも刀を掻き抱くようにして、膝立てで目を瞑る…んだけど。刀を右腕で抱えています。
当たり前の話ですが、刀の鞘は利き手と反対側の体に差します。斜め前に抜きはらう形でないと、2尺3寸の日本刀は鞘から抜け出さないからです。実際、「追憶編」のシーンではしっかり左側に立てて眠りに付いています。
僕ここ、ミスリードかと思ったんですよ。納刀した状態で、鞘で撲殺する甲冑剣術が出るんじゃないかと。「追憶編」では、鞘のこじりで相手の眼窩を突き潰すシーンがありますしね。…当然期待は裏切られたワケですが。
他にも、巴と初対面する酒場のシーンでは、刀を右手側に寝かせた状態で置く。室内を移動するシーンでも、右腕で鞘を握ってのしのし歩く…。平和か!
⑧所作ダメ2:偽装結婚
京を逃げ出した抜刀斎と巴は、ほとぼりが冷める迄とある里山で夫婦として暮らします。…それならお歯黒ォ!つけろ!
偽装結婚の間はまだ分かる。それなら猶更、初めて情を交わし真に夫婦となった朝には絶対に付けるべきでしょ!
「幸せの意味がようやく分かった」「あなたは悲しみをくれた人、それと同時に喜びをくれた人」なんてクソかったるい直接台詞入れんな!鏡に向かい、鉄漿を口に持っていく画を一発入れるだけで、「ああ、巴は心から剣心を愛し始めたのだな」って分かるじゃないですか!その巴を見れば、闇乃武も「ハニートラップ完成じゃ!」って理解できるやん!
⑨結びに
作品外の話になりますが、興行形態そのものにも不満があります。「the final」「the beginning」を連続公開の形にすれば、当然観客は「前後編なのだな」と思いますよね?でも、the final(4月公開)の後にthe beginning(6月公開)を観ても、何の新鮮さもないんですよ。the finalの時点で事の顛末は全て回想で語られ、それ通りにthe beginningが進むからです。
寧ろ、原作通りの描写手順の方が、前後編にする意味はあった筈です。最強キャラ、雪代縁の登場→回想京都編と巴の登場で前編を終える。「え、決着はまだ!?」「何で剣心は巴を斬ったの!?」と観客が煩悶を抱え1か月を過ごすからこそ、後編で巴編→縁との最終決着を描けばカタルシスとなる。当たり前ですよね?
でも、製作側はそれをしなかった。何故なら、追憶編意識してるから。それで、この出来ですか………。全く以て、面の皮が厚い。
4000字評でした。「ドクターデスの遺産」「樹海村」に並ぶ、欠点あげつらい型の評論だけど許してね!アクション減らして、138分の大半をシリアス時代劇にしておきながら中身腐ってんだもん!!
①作品紹介
「るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー」は少年ジャンプのレジェンド漫画で…って流石に紹介要らんよね?
映画版「るろうに剣心」は大友啓史監督、佐藤健主演の人気シリーズ。累計興収120億の大ヒットを果たしました(アクション方面の漫画実写化ではブッチギリの記録です)。
7年ぶりとなる映画4・5作目は「るろうに剣心・最終章 the final/the beggining」と銘打たれ今春公開。the finalは雪代縁編、the beginnnigは剣心過去編となります。
②評論基準と映画るろ剣について
タイトル通り熱誠込めて酷評します。何故なら「真面目な時代劇として観るには余りにも脚本・演出・考証が雑過ぎる」から。ですが同時に断っておきたいのは「全ての時代劇が、厳密な考証に基づいていないといけない」とも思ってません。後述しますが、今作に限り特殊な事情があるからです。
思い返せば、1作目も結構いい加減だったんですよ。神谷道場で穏やかな昼下がりを過ごす剣心が、板戸の敷居をバッチリ踏みつけたりしてて。でも、高速チャンバラがバチクソ恰好良いから、そんな些事は全然気にならない。アクションなり突出したものがあれば、ファンタジー時代劇でも構わないんです。
③「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編」
原作既読勢なら、縁編=the final、回想=the beginningの流れを不思議に思う筈。何故なら原作では人誅→回想(京都)→回想(闇乃武)→最終決戦という流れだからです。ならどうして、入れ子構造で前後編に分けるのか?それはるろ剣映像化最高傑作と評される、「追憶編」が存在しているからです。
「追憶編」とは、1999年に発売されたるろ剣のOVAシリーズ。
台詞を厳選し、安易な会話をさせない。
心理描写を繊細に、完璧に行う。
歴史要素は存分に盛り込むが、全面には押し出さない。
人斬りにリアリティをもたせるため、敢えて凄惨な表現に挑む。
などの高い志を持って作られた作品です。殺陣の描写ひとつ取ってみても、「斬り付けた刃が骨で止まるや、左手で押して斬り抜ける」というように隅々まで気が払われている傑作なんです。
さて今作「~the beginning」は、製作協力に「追憶編」の名がクレジットされています。だからこそ、観る側も本格時代劇を期待せざるを得ないんですよ!僕が映画を素直な気持ちで楽しめない穿ちクズなんじゃないんですよ?作り手側が勝手にハードル上げたってことを理解して欲しいんです。
以上をご承知おきの上、重箱の隅を削岩する類の酷評をお楽しみください。
④台詞の酷さ
「幸せは、どういうものなのか分かった」
「情報がどこかから漏れています→まさか、仲間内に裏切り者が?」
「大事のためには、小さな犠牲が生まれるのは仕方ないものでございましょうか?」
脚本ふざけてんのか!!?緊迫感ある遣り取りとか、メッセージ性の高いものを、直接台詞でくっちゃべんなや!!何でそれで「追憶編」の名前出せんの!??
やりようはいくらでもある。例えば内通者を疑う場面。報告をする側近に対し、桂小五郎は柿などの果実を剥く画にする。実の中に一部傷んだ部分を見つけた彼は、小刀で乱暴に抉って捨てる…。そうすれば、「裏切り者が居ることを示す」他にも「内通者は始末される」「不穏さを投げかける」などの役割も果たせるじゃないですか!演出、工夫しよ?
⑤台詞の酷さ2:機密観念、ゼロ
長州藩士、TPOが理解できない。例えば、抜刀斎に池田屋事件勃発を知らせる場面。
大変だ!池田屋が襲われた!強硬派が「都に火を放ち、混乱に乗じて帝を長州へお連れする」計画をしていたが、桂さんは彼らを止めるべく今夜池田屋に乗り込む予定だ。ところが新選組の拷問で情報を漏らした者が出たため、池田屋に奴らが乗り込んだんだ!頼む、桂さんを救い出してくれ!
…先ず、発端から経緯まで長々説明するのは、無粋の極み。でもそれ以上に、こいつら往来のど真ん中でこの会話してるんですよ。画面の右側に、結構な頻度で通行人がてくてく通過してんの!!君たちさァ…一応は幕府方に追われる身の筈、よね?
或いは池田屋の決着がついたあと、長州藩士と新選組があわや斬り合いか、という場面。
ここは引け!抜刀斎!桂先生は無事だ!何とか池田屋での鉢合わせは防いだんだ!これは先生直々の命令だぞ!
いやさァ…長州の大物の名前、新選組の面前で出して良いの?それ知られたら余計に、相手方も引っ込みつかなくなるよ?
別に、この下り全部無くす必要はないんです。火急の用を告げるときは、裏路地に5歩移動するとか。にらみ合いの時には「退け!」の一言で済ませ、帰りの道々で事情を説明するとか。ちょっと場面や順序変えるだけでしょ?
⑥美術の酷さ:汚れ観念、ゼロ
新選組も巴も、皆さんお金持ちなんですかね?
対馬藩邸を抜刀斎が襲撃し、その跡を新選組が検分する場面が冒頭あります。その時の衣装が①ぺらっぺらの草履②白足袋③床すれすれの袴なんですが…。浅葱の羽織は新選組のトレードマークとして許そう。でも、十人以上の血と臓腑でドロドロになった床を歩くんだぜ?黒の草鞋掛け足袋+脚絆、とかの歩き易い恰好で遠足来てくれない!?
或いは長州藩士の潜伏する宿屋で、巴が下働きをするシーン。洗濯や炊事場風景を映しておきながら、前掛けが真っ白…なのは序の口。巴のおべべが上質な生地なうえ、広帯に帯留め、お太鼓まであるしっかり仕立て。…作業着なんだから、機能性重視して小袖にしよ?
⑦所作ダメ:抜刀斎の刀ポジ
抜刀斎と呼ばれていた頃の緋村は、純粋な人斬り。そのため行住坐臥、全てが臨戦態勢。眠るときも刀を掻き抱くようにして、膝立てで目を瞑る…んだけど。刀を右腕で抱えています。
当たり前の話ですが、刀の鞘は利き手と反対側の体に差します。斜め前に抜きはらう形でないと、2尺3寸の日本刀は鞘から抜け出さないからです。実際、「追憶編」のシーンではしっかり左側に立てて眠りに付いています。
僕ここ、ミスリードかと思ったんですよ。納刀した状態で、鞘で撲殺する甲冑剣術が出るんじゃないかと。「追憶編」では、鞘のこじりで相手の眼窩を突き潰すシーンがありますしね。…当然期待は裏切られたワケですが。
他にも、巴と初対面する酒場のシーンでは、刀を右手側に寝かせた状態で置く。室内を移動するシーンでも、右腕で鞘を握ってのしのし歩く…。平和か!
⑧所作ダメ2:偽装結婚
京を逃げ出した抜刀斎と巴は、ほとぼりが冷める迄とある里山で夫婦として暮らします。…それならお歯黒ォ!つけろ!
偽装結婚の間はまだ分かる。それなら猶更、初めて情を交わし真に夫婦となった朝には絶対に付けるべきでしょ!
「幸せの意味がようやく分かった」「あなたは悲しみをくれた人、それと同時に喜びをくれた人」なんてクソかったるい直接台詞入れんな!鏡に向かい、鉄漿を口に持っていく画を一発入れるだけで、「ああ、巴は心から剣心を愛し始めたのだな」って分かるじゃないですか!その巴を見れば、闇乃武も「ハニートラップ完成じゃ!」って理解できるやん!
⑨結びに
作品外の話になりますが、興行形態そのものにも不満があります。「the final」「the beginning」を連続公開の形にすれば、当然観客は「前後編なのだな」と思いますよね?でも、the final(4月公開)の後にthe beginning(6月公開)を観ても、何の新鮮さもないんですよ。the finalの時点で事の顛末は全て回想で語られ、それ通りにthe beginningが進むからです。
寧ろ、原作通りの描写手順の方が、前後編にする意味はあった筈です。最強キャラ、雪代縁の登場→回想京都編と巴の登場で前編を終える。「え、決着はまだ!?」「何で剣心は巴を斬ったの!?」と観客が煩悶を抱え1か月を過ごすからこそ、後編で巴編→縁との最終決着を描けばカタルシスとなる。当たり前ですよね?
でも、製作側はそれをしなかった。何故なら、追憶編意識してるから。それで、この出来ですか………。全く以て、面の皮が厚い。
4000字評でした。「ドクターデスの遺産」「樹海村」に並ぶ、欠点あげつらい型の評論だけど許してね!アクション減らして、138分の大半をシリアス時代劇にしておきながら中身腐ってんだもん!!
るろ剣最終章 the beginningについて一言
2021年6月23日 趣味臭ェ―ーーーーーー!!!!
「最終作でシリアスな本格時代劇やってます!!」て作り手が自慢げにしてる癖に、演出がペナっっっペナなのは草生えますよ。僕は時代劇そんなに詳しくないけど、流石にこの出来が悪いのは分かる。
水・木曜日中にまた1本長文評書きます。
「最終作でシリアスな本格時代劇やってます!!」て作り手が自慢げにしてる癖に、演出がペナっっっペナなのは草生えますよ。僕は時代劇そんなに詳しくないけど、流石にこの出来が悪いのは分かる。
水・木曜日中にまた1本長文評書きます。
2021/6/18時点 本と漫画の日記
2021年6月18日 読書
〇積ん読懺悔録
文庫本の積み本はコンスタントに消化しているが、携帯し辛いハードカバーは手を付けづらい。…その癖本屋で興味を惹かれる→買う本は大概ハードカバーなんだよなあ…。
・ディスタンクシオン ブルデュー
デスタク?(MTG脳)
「21世紀の資本」とか「素晴らしき世界」で語った”成功は個々人の能力よりも、それを発揮できる環境、育ち方に起因する」って論旨の元ネタの人。デュルケームに並ぶ社会学の泰斗なんで名前は知ってたけど、しっかり読んだことはなかった。
ただハードカバーの上下巻、合計千ページは重ェ…。二段組の補注もエラい分量あるし…。
・実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル
ディスタンクシオンを思い出すきっかけになった、最近の話題本。400pくらいなのでさっくり読める筈。
・Clara and the Sun Kazuo Ishiguro
過去作は全部原書で読んだので、まあこれも。かずっちの本の面白さは
The remains of the Day>>When We Were Orphans>>The Unconsoled>>(省略)>>最下位がThe buried Giant
の順。異論は認めない。
・Goetia: The lesser key of Solomon the King Aleister Crowley
ソロモン72柱の印章だとか、ヘブライ語の召喚術とか、厨2レベル高い。君も明日からレッツカバラ!
三体1~3 劉慈欣
「バーナード嬢いわく、」で知り、翻訳が最終巻までそろったと知り購入。高ェ!デケェ!読み終えられる気せんぞ!
独学大全 読書猿
ひろ〇きとか堀江〇ンとかのセルフハック本は「しらべぇからネタ引っ張ってゴーストライターに書かせましたー」って感じの出来栄えが多い。
その点、この本は熱量が違うね。全部試している間に人生終われる。
〇新しく追い始めた漫画
4~6月で10タイトル近く追ってた漫画が終わったので、新タイトルを補充。新しい試みとして、これまで見下げジャンルだった異世界転生・なろう系もいくつか手を出す。
・九条の大罪
実質ウシジマくん。
・十字架のろくにん
僕の好きなジャンル「復讐もの」なんだが…なーんか中途半端なんよなあ。元軍属の祖父に特殊技能を仕込まれるって言う割に、「拷問器具」とか「自白剤」と言った中学生のようなネタばかり。おまけに毎回拉致→地下拷問の流れでワンパターン。現実的には一番難しい拉致+後処理をしっかり描くとか、「リバーシブル」みたく拷問描写を異常に凝るとか、特徴が欲しい。
それにヒロインとのラブコメ展開もなあ…。「オールドボーイ」とか「復讐の毒鼓」みたいに、ヒロイン自体がサスペンスや物語の原動力になるなら兎も角、蛇足としか思えん。
若い作家さんなのは承知だけど、ジャンル的ディティールもストーリーも薄味。一度打ち切りになったのも納得の出来。
・異世界黙示録マイノグーラ
転生→ユニークスキル+相棒ゲット→困ってる部族助ける→配下に加え成り上がり開始。なろうテンプレ通りではあるが、作画のレベルが抜群に高いね。ヒロインを可愛く表情豊かに描き、きちんと演出で緩急をつけられるから、つるつる最後まで読める。
ほめ過ぎって思うでしょ?でも世の中には「黙れ(ドン!)」レベルのものがゴロゴロしてるワケで…。
・異世界のんびり農家
ユニークスキルで農園を広げ続ける話なのだけれど、繁殖して増えるのが動物のみならず人間もなのよね。原作者がエロゲライターらしくそういう話になるのは分かるのだけれど、全く描写がエロに振れない。
同じ農業系なろうの「駆除人」みたく、コミカライズ時にシズル感・肌の質感で扇情を誘うこともなく、淡々と「女増えましたー→ヤリましたー→コミュニティー広げましたー」を続けるだけ。あの平板な画とテンションで延々続けられると流石に笑えて来る。
…まあ話が面白いかと言われると…反応に困るが。
・Unnamed Memory
尊い。てぇてぇ…(語彙消失)。
・買い足すかもしれないメモ
メイドラゴン、異種族レビュアーズ、メイドインアビス、忍者と極道、アオのハコ、少年のアビス、逃げ若、ネコオブリビングデッド、アンデッドアンラック、ダンダダン、うるわしの宵の君、ドキュンサーガ、ハト、骨ドラゴン、メダリスト、トリリオンゲーム、シャングリラフロンティア、
辺り。トリリオンゲームは池上画で敬遠してたけど世評がちゃんと高いので買う。
文庫本の積み本はコンスタントに消化しているが、携帯し辛いハードカバーは手を付けづらい。…その癖本屋で興味を惹かれる→買う本は大概ハードカバーなんだよなあ…。
・ディスタンクシオン ブルデュー
デスタク?(MTG脳)
「21世紀の資本」とか「素晴らしき世界」で語った”成功は個々人の能力よりも、それを発揮できる環境、育ち方に起因する」って論旨の元ネタの人。デュルケームに並ぶ社会学の泰斗なんで名前は知ってたけど、しっかり読んだことはなかった。
ただハードカバーの上下巻、合計千ページは重ェ…。二段組の補注もエラい分量あるし…。
・実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル
ディスタンクシオンを思い出すきっかけになった、最近の話題本。400pくらいなのでさっくり読める筈。
・Clara and the Sun Kazuo Ishiguro
過去作は全部原書で読んだので、まあこれも。かずっちの本の面白さは
The remains of the Day>>When We Were Orphans>>The Unconsoled>>(省略)>>最下位がThe buried Giant
の順。異論は認めない。
・Goetia: The lesser key of Solomon the King Aleister Crowley
ソロモン72柱の印章だとか、ヘブライ語の召喚術とか、厨2レベル高い。君も明日からレッツカバラ!
三体1~3 劉慈欣
「バーナード嬢いわく、」で知り、翻訳が最終巻までそろったと知り購入。高ェ!デケェ!読み終えられる気せんぞ!
独学大全 読書猿
ひろ〇きとか堀江〇ンとかのセルフハック本は「しらべぇからネタ引っ張ってゴーストライターに書かせましたー」って感じの出来栄えが多い。
その点、この本は熱量が違うね。全部試している間に人生終われる。
〇新しく追い始めた漫画
4~6月で10タイトル近く追ってた漫画が終わったので、新タイトルを補充。新しい試みとして、これまで見下げジャンルだった異世界転生・なろう系もいくつか手を出す。
・九条の大罪
実質ウシジマくん。
・十字架のろくにん
僕の好きなジャンル「復讐もの」なんだが…なーんか中途半端なんよなあ。元軍属の祖父に特殊技能を仕込まれるって言う割に、「拷問器具」とか「自白剤」と言った中学生のようなネタばかり。おまけに毎回拉致→地下拷問の流れでワンパターン。現実的には一番難しい拉致+後処理をしっかり描くとか、「リバーシブル」みたく拷問描写を異常に凝るとか、特徴が欲しい。
それにヒロインとのラブコメ展開もなあ…。「オールドボーイ」とか「復讐の毒鼓」みたいに、ヒロイン自体がサスペンスや物語の原動力になるなら兎も角、蛇足としか思えん。
若い作家さんなのは承知だけど、ジャンル的ディティールもストーリーも薄味。一度打ち切りになったのも納得の出来。
・異世界黙示録マイノグーラ
転生→ユニークスキル+相棒ゲット→困ってる部族助ける→配下に加え成り上がり開始。なろうテンプレ通りではあるが、作画のレベルが抜群に高いね。ヒロインを可愛く表情豊かに描き、きちんと演出で緩急をつけられるから、つるつる最後まで読める。
ほめ過ぎって思うでしょ?でも世の中には「黙れ(ドン!)」レベルのものがゴロゴロしてるワケで…。
・異世界のんびり農家
ユニークスキルで農園を広げ続ける話なのだけれど、繁殖して増えるのが動物のみならず人間もなのよね。原作者がエロゲライターらしくそういう話になるのは分かるのだけれど、全く描写がエロに振れない。
同じ農業系なろうの「駆除人」みたく、コミカライズ時にシズル感・肌の質感で扇情を誘うこともなく、淡々と「女増えましたー→ヤリましたー→コミュニティー広げましたー」を続けるだけ。あの平板な画とテンションで延々続けられると流石に笑えて来る。
…まあ話が面白いかと言われると…反応に困るが。
・Unnamed Memory
尊い。てぇてぇ…(語彙消失)。
・買い足すかもしれないメモ
メイドラゴン、異種族レビュアーズ、メイドインアビス、忍者と極道、アオのハコ、少年のアビス、逃げ若、
辺り。トリリオンゲームは池上画で敬遠してたけど世評がちゃんと高いので買う。
今年現状1・2位。
粗筋 映画の都、ニャリウッド。内向的な青年ジーン・フィニはいつか映画を作ることを夢見ながら、天才プロデューサー・ポンポネットのアシスタントとして働いていた。ある日ポンポさんからCM制作を任され、没頭するジーン。そのセンスにほれ込んだポンポさんは、彼を新作映画の監督に抜擢。主演2人にレジェンド俳優のマーティン、新人女優のナタリーを起用し、映画制作は幕を開く。
①作品概説
原作は杉谷庄吾(人間プラモ)の同名漫画。pixiv上での公開直後から話題沸騰、書籍化・シリーズ化に加え、今回劇場映画化を果たしました。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は6/4(金)に封切。公開は僅か60館ながら満員大入り、世評も概ね絶賛ムード。…なんですが、原作ファンの一部から激怒も出ており、評価が二分されている印象。
僕個人は大絶賛派なんですが、原作6巻・映画見比べてブチギレる人が出るのも理解できるところ。改変ポイントを「創作と才能」というテーマでこれから語って行こうと思います。
②漫画『映画大好きポンポさん』の魅力
「このマンガがすごい!」に入賞するなど、評価の高い原作。卓抜したキャラクター作り、ロジカルでテンポの良いサクセスストーリー、具体性がありつつも他媒体にも通じるコンテンツ作りの骨格説明…。特徴を上げればキリがないですが、僕個人は「表現の引き出しが半端ない」ところに惹かれました。ページをめくるごとに感動があるんですよ。
見れば分かる通り、原作の画はデフォルメが効いています。ですがふとした時に、精緻に描き込まれた背景だったり、色彩と光に満ち溢れた一枚画が目に飛び込んで来る。普通の漫画では単に奇をてらった表現になるところを、ファインダー越しに現れる「何かとても綺麗で…神々しい…光溢れる」瞬間として描き出すことで、必然性が生まれている。
これって、MANGAにしか出来ない表現だと思うんですよね。映像作品でモノクロ尽くしにしたり写実とデフォルメを行き来したりすれば、意識高い系に見られてしまう。前ページの最終コマ・次ページの第一コマで落差を生むのはネームの基本ですが、世界の電子書籍潮流である「縦スクロール」ではこの感動は生じえない。横向き・ページめくり(送り)ならではの機能です。
それでは次に、劇場アニメ「ポンポさん」の特徴に目を移しましょう。
③劇場アニメ『映画大好きポンポさん』
今作には映画・映像ならではの魅力があります。
先ずはポンポさんの犯罪的可愛さ。ジーンの突飛な発想に一瞬キョトンとした表情を見せ、若干上目遣いでニヤリとする。童女のようにはしゃぐ際には、ワンピの袖から脇チラする…といった具合に。この辺りは足立氏のキャラデザ、『この世界の片隅に』組のアニメスタジオ「CLAP」ならではといったところ。
他には『セッション』のシンバル投げ(恫喝)・『ガンズアキンボ』ポスターなどの映画ネタがあれば、多様なワイプ・クロスカッティング・スプリットスクリーン・モンタージュ・ソールバス風のタイポグラフィといった映画技法などもふんだんに盛り込まれています。
ですが、それ以上に制作現場風景の情報量に目を奪われました。役者が演じるステージの外側には照明が、カメラが、配線が、足場が、資材や台車がある。スタジオの外には控室用のトレーラーがあり、屋外撮影ではドリーレーン・ドリーカメラが演技を追う…など。引きの画を見せる際に、そうしたディティールで映画には多くの人が携わっていると見せられるのは、映画ならではと言えるでしょう。
④原作への不満:大天才の群像劇
ここから原作への不満を述べるので、ファンは回れ右して下さい。漫画「ポンポさん」、凡人が一人も視界に入らないんですよ。
主人公のジーンは度を越えた映画バカです。「幸福は創造の敵、満たされない者こそ精神世界の深さがある…」とポンポさんはジーンの素質を見抜き、監督に抜擢していく。「不適合者/オタク/マイノリティーが偉業を成す」…定番ですよね。でも、自己実現と呼ぶには過ぎた社会的成功が待っている。
映画が好きといっても、体系的な教育を受けていない。その世界に入って下積みが長いワケでもない。けれど彼は20代(ひょっとしたら10代?)でのデビュー作でニャカデミー賞(世界最高権威)を総ナメにする。主演女優のナタリーにしてもそうです。役そのものが彼女へのアテガキにせよ、演技経験0の田舎娘がこれまた新人女優賞を取る。結局のところ、才能があったとしか呼べない成功を果たす。
漫画なら未だ良いんです。本筋はスラップスティックな会話劇なのだし、読んでる途中で休憩することも出来る。けれど90分イッキ見の映画で只管成功譚が続いたのでは、鼻持ちならない自慢話になってしまう。枝葉末節を増やして間延びさせるか、不遇だった過去話をアタマにつけてカタルシスに昇華させるか、映画ではいずれか手段は必要になってくる。ではどうだったかというと…。
⑤映画におけるジーン:「狂気」の定義
原作も映画も、ジーンはある種の狂人です。…けれど、その捉え方ははっきりと違う。
漫画のジーンは「ファンの語源はファナティック、つまりは好きを突き詰めた」「彼はプラトーを越えた」(大半の人間は限界を感じると努力を止めるが、一流は無為に思える努力を続け壁を突き破る)の言葉が示すように、一途なんですよ。好き過ぎて、他のことになんか目が行かない。
一方の映画における狂気とは、「覚悟と選択」を意味しています。平尾監督がインタビューで
自己の核たる部分での挫折だからこそ、それはヤマ場になり成長となる。劇中劇とジーン自身をダブらせながら「あの日のアリアが/僕にはあの画が必要なんだ」と土下座から啖呵を切るシーンにも、重みが生まれる。
⑥映画オリキャラ、アラン
はい、ファンブチギレのオリキャラ、アランくんの話に移ります。
「夢を諦めなければ、きっと叶う」。うーん、良い言葉ですよね。原作者さんも、ほぼ同じことをパンフ後書きで仰ってます。でも、万人が望んだ夢を、望んだ形で叶えられるのでしょうか。僕は努力至上信仰に否定的です。
映画でも「信じ抜け」だの、尤もな美辞麗句を挙げるヤツいますよね。でも、(映画版)『BECK』だの、『~のプペル』だの心底愚かしい作品は「あ、才能がなかった(信じられなかった)んだ。じゃあ、排除されても仕方ないよね」と零れ落ちた人間を「敵」として描くんですよ。死ねや!
そういう愚作と対照的な一作を紹介します。三浦しをん原作、映画化・アニメ化もされた小説『舟を編む』です。この作品で僕が一番胸打たれたのは、西岡という青年です。人当たりが良く、何事もそつなく器用に片づける。主人公の馬締を、うだつの上がらない変人程度にしか思っていなかった。でも、辞書編纂の仕事に馬締が加わった時に、初めて気づくんですね。「あ、こいつは天才だ。俺は一生追いつけないんだ」と。けれど、彼は諦めなかった。
創造の中心に才能があることを自覚しながらも「俺にしかできないことを成し遂げて、あいつの度肝を抜かしてやる」と、編集部と人を繋ぐ仕事に注力。馬締には出来ない仕事で辞書編纂を支える。
この点で、映画版ポンポさんは『舟を編む』とも似ています。ハイスクール時代、アランはジーンに「下ばっかり向いてないで、前を向いていろよ。じゃないと、大事なものを落っことすぞ」とアドバイスする。しかし、社会経験を経て再会した際には、立場が逆になっているんですね。カフェテラスの場面で、光射す席から若き天才監督ジーンが語りかけ、誇れるものがないと悟ったアランは影から相槌を返すだけ。
けれど、アランもまた絶望しなかった。ジーンが編集作業で苦悩し、納期に間に合わず投資家が一斉に手を引いてしまう。資金難に陥る制作会社を救ったのが、アランの申し出だった。
彼は企画会議の場で、ペーターゼンフィルムへの融資を上申。会議の無断生配信によって稟議の握り潰しを許さない言質取りをする。夢を語る一方で、エゲツなさもあって良い。
今作において、才能のある人間はキャラの輪郭線が色で滲む演出を施されています。半ば恫喝じみた奇手で稟議を押し通した瞬間、アランの輪郭線もまた青い光が滲みだす(ジーンの赤い光とはまた別です)。彼もまた、彼にしか出来ない仕事で創作に貢献できた。
⑦アラン(と映画業界、および世間一般)
なぜ、改変しなければならないのか?それはこれが「映画」にまつわる物語を、「映画で」語るからです。
プロデューサー、監督、脚本、主演俳優、カメラマン…。原作ポンポさんシリーズで取り上げられるのは、花形のお仕事です。でも、映画はそれだけじゃない。原作2巻において、ホテルの手配、ケータリング、カメラクレーンの操作技師などは(一流だからという理由だけで)さも創造性のないものとして扱われる。そうですかね???
ハリウッド映画は分業の世界です。主演どころの演技以外の演出・考証を担う第二班がある。スタッフ・機材を運送するドライバーが居る。アクション映画には数限りないCGアーティストが居る。自然ロケやスタントには医療班が同行する。花形のお仕事と違って、人員に替えは効くかもしれない。でも、機能としては必要なんですよ。「俺独りの作品です!」なんて言えるの、『JUNK HEAD』の堀監督だけでしょ。
本作中盤、雨天のシーンが印象的です。ジーンが脚本にない画を思いつき撮影に入るまでは原作と同じですが、現場で監督のアイデアに次々提案が投げかけられていく。「俺が屋根から転落するのはどうかな」「ヤギが顔を舐めれば、彼が変わるきっかけになる」「それなら私、転べるように地面整えときますね」。アランと同じく、裏方の力によって作品が前に行くことだってある。
⑧ポンポさん
原作において、ポンポさんはジーンに輪をかけた超天才です。現役高校生で制作会社の全権を取り仕切り、自分で監督・脚本も出来るという万能人。
映画も設定上は同じなのですが、最後の扱い方が違う。インタビュー記事で『紅の豚』のポルコ・ロッソが例に挙げられるように、彼女は理想の具現化=成長の止まった存在だった。けれど、完成したフィルムを観て感化されることで、彼女もまた成長を始めた。天才にさえも、孤独ではなく救済の余地が残されているやさしさ。
言葉に人生が乗っかってる分、原作2巻の「ポンポさん、映画大好き」より、映画版の「君の映画、大好きだぞ」に僕は深さを感じます。
⑨結びに
解釈違い。…そう言われると返す言葉もないです。原作者が来場者プレゼント用に書き下ろした漫画では、「ジーンは高校生から映画にハマり、脳内で上映会を開ける直観像記憶能力を開花させた」下りがあり、ジーン=大天才の認識が深まるばかり。監督曰く杉谷氏とのオリキャラ交渉はすんなり行ったそうなんだけど…ホンマかなぁ…。
ですが、僕はこの映画版をこそ支持します。何故なら多くの「天才ではなかった」人が関わり、観客の大多数もまた「天才ではなかった」人。映画がそういう芸術だからこそ、今作は幅広い共感を生むと思うので。
はい、6千字評でした。原作は漫画としてむっちゃ面白いけど、人間ドラマとしては結構嫌いな部類。そんなワケで、対比するたびに映画アゲ↑になっちゃいました。
この才能と人生に関する話は以前『2分の1の魔法』評と大体同じ。
https://magiclazy.diarynote.jp/202008270239023291/
粗筋 映画の都、ニャリウッド。内向的な青年ジーン・フィニはいつか映画を作ることを夢見ながら、天才プロデューサー・ポンポネットのアシスタントとして働いていた。ある日ポンポさんからCM制作を任され、没頭するジーン。そのセンスにほれ込んだポンポさんは、彼を新作映画の監督に抜擢。主演2人にレジェンド俳優のマーティン、新人女優のナタリーを起用し、映画制作は幕を開く。
①作品概説
原作は杉谷庄吾(人間プラモ)の同名漫画。pixiv上での公開直後から話題沸騰、書籍化・シリーズ化に加え、今回劇場映画化を果たしました。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は6/4(金)に封切。公開は僅か60館ながら満員大入り、世評も概ね絶賛ムード。…なんですが、原作ファンの一部から激怒も出ており、評価が二分されている印象。
僕個人は大絶賛派なんですが、原作6巻・映画見比べてブチギレる人が出るのも理解できるところ。改変ポイントを「創作と才能」というテーマでこれから語って行こうと思います。
②漫画『映画大好きポンポさん』の魅力
「このマンガがすごい!」に入賞するなど、評価の高い原作。卓抜したキャラクター作り、ロジカルでテンポの良いサクセスストーリー、具体性がありつつも他媒体にも通じるコンテンツ作りの骨格説明…。特徴を上げればキリがないですが、僕個人は「表現の引き出しが半端ない」ところに惹かれました。ページをめくるごとに感動があるんですよ。
見れば分かる通り、原作の画はデフォルメが効いています。ですがふとした時に、精緻に描き込まれた背景だったり、色彩と光に満ち溢れた一枚画が目に飛び込んで来る。普通の漫画では単に奇をてらった表現になるところを、ファインダー越しに現れる「何かとても綺麗で…神々しい…光溢れる」瞬間として描き出すことで、必然性が生まれている。
これって、MANGAにしか出来ない表現だと思うんですよね。映像作品でモノクロ尽くしにしたり写実とデフォルメを行き来したりすれば、意識高い系に見られてしまう。前ページの最終コマ・次ページの第一コマで落差を生むのはネームの基本ですが、世界の電子書籍潮流である「縦スクロール」ではこの感動は生じえない。横向き・ページめくり(送り)ならではの機能です。
それでは次に、劇場アニメ「ポンポさん」の特徴に目を移しましょう。
③劇場アニメ『映画大好きポンポさん』
今作には映画・映像ならではの魅力があります。
先ずはポンポさんの犯罪的可愛さ。ジーンの突飛な発想に一瞬キョトンとした表情を見せ、若干上目遣いでニヤリとする。童女のようにはしゃぐ際には、ワンピの袖から脇チラする…といった具合に。この辺りは足立氏のキャラデザ、『この世界の片隅に』組のアニメスタジオ「CLAP」ならではといったところ。
他には『セッション』のシンバル投げ(恫喝)・『ガンズアキンボ』ポスターなどの映画ネタがあれば、多様なワイプ・クロスカッティング・スプリットスクリーン・モンタージュ・ソールバス風のタイポグラフィといった映画技法などもふんだんに盛り込まれています。
ですが、それ以上に制作現場風景の情報量に目を奪われました。役者が演じるステージの外側には照明が、カメラが、配線が、足場が、資材や台車がある。スタジオの外には控室用のトレーラーがあり、屋外撮影ではドリーレーン・ドリーカメラが演技を追う…など。引きの画を見せる際に、そうしたディティールで映画には多くの人が携わっていると見せられるのは、映画ならではと言えるでしょう。
④原作への不満:大天才の群像劇
ここから原作への不満を述べるので、ファンは回れ右して下さい。漫画「ポンポさん」、凡人が一人も視界に入らないんですよ。
主人公のジーンは度を越えた映画バカです。「幸福は創造の敵、満たされない者こそ精神世界の深さがある…」とポンポさんはジーンの素質を見抜き、監督に抜擢していく。「不適合者/オタク/マイノリティーが偉業を成す」…定番ですよね。でも、自己実現と呼ぶには過ぎた社会的成功が待っている。
映画が好きといっても、体系的な教育を受けていない。その世界に入って下積みが長いワケでもない。けれど彼は20代(ひょっとしたら10代?)でのデビュー作でニャカデミー賞(世界最高権威)を総ナメにする。主演女優のナタリーにしてもそうです。役そのものが彼女へのアテガキにせよ、演技経験0の田舎娘がこれまた新人女優賞を取る。結局のところ、才能があったとしか呼べない成功を果たす。
漫画なら未だ良いんです。本筋はスラップスティックな会話劇なのだし、読んでる途中で休憩することも出来る。けれど90分イッキ見の映画で只管成功譚が続いたのでは、鼻持ちならない自慢話になってしまう。枝葉末節を増やして間延びさせるか、不遇だった過去話をアタマにつけてカタルシスに昇華させるか、映画ではいずれか手段は必要になってくる。ではどうだったかというと…。
⑤映画におけるジーン:「狂気」の定義
原作も映画も、ジーンはある種の狂人です。…けれど、その捉え方ははっきりと違う。
漫画のジーンは「ファンの語源はファナティック、つまりは好きを突き詰めた」「彼はプラトーを越えた」(大半の人間は限界を感じると努力を止めるが、一流は無為に思える努力を続け壁を突き破る)の言葉が示すように、一途なんですよ。好き過ぎて、他のことになんか目が行かない。
一方の映画における狂気とは、「覚悟と選択」を意味しています。平尾監督がインタビューで
映画制作版の『セッション』にしたいと語るようと語るように、本作は『セッション』と似ています。好きで飛び込んだ業界なのに、いつの間にか憎悪や苦痛や自己嫌悪が生まれていく。それでもなお「ほどほどの幸せ」に安住するワケにはいかない。人生の選択肢の消去と、編集画面での「Delete」キーの押し下げ。二つをダブらせながら、彼は自覚的に痛みを伴いながら純化していく。
自己の核たる部分での挫折だからこそ、それはヤマ場になり成長となる。劇中劇とジーン自身をダブらせながら「あの日のアリアが/僕にはあの画が必要なんだ」と土下座から啖呵を切るシーンにも、重みが生まれる。
⑥映画オリキャラ、アラン
はい、ファンブチギレのオリキャラ、アランくんの話に移ります。
「夢を諦めなければ、きっと叶う」。うーん、良い言葉ですよね。原作者さんも、ほぼ同じことをパンフ後書きで仰ってます。でも、万人が望んだ夢を、望んだ形で叶えられるのでしょうか。僕は努力至上信仰に否定的です。
映画でも「信じ抜け」だの、尤もな美辞麗句を挙げるヤツいますよね。でも、(映画版)『BECK』だの、『~のプペル』だの心底愚かしい作品は「あ、才能がなかった(信じられなかった)んだ。じゃあ、排除されても仕方ないよね」と零れ落ちた人間を「敵」として描くんですよ。死ねや!
そういう愚作と対照的な一作を紹介します。三浦しをん原作、映画化・アニメ化もされた小説『舟を編む』です。この作品で僕が一番胸打たれたのは、西岡という青年です。人当たりが良く、何事もそつなく器用に片づける。主人公の馬締を、うだつの上がらない変人程度にしか思っていなかった。でも、辞書編纂の仕事に馬締が加わった時に、初めて気づくんですね。「あ、こいつは天才だ。俺は一生追いつけないんだ」と。けれど、彼は諦めなかった。
創造の中心に才能があることを自覚しながらも「俺にしかできないことを成し遂げて、あいつの度肝を抜かしてやる」と、編集部と人を繋ぐ仕事に注力。馬締には出来ない仕事で辞書編纂を支える。
この点で、映画版ポンポさんは『舟を編む』とも似ています。ハイスクール時代、アランはジーンに「下ばっかり向いてないで、前を向いていろよ。じゃないと、大事なものを落っことすぞ」とアドバイスする。しかし、社会経験を経て再会した際には、立場が逆になっているんですね。カフェテラスの場面で、光射す席から若き天才監督ジーンが語りかけ、誇れるものがないと悟ったアランは影から相槌を返すだけ。
けれど、アランもまた絶望しなかった。ジーンが編集作業で苦悩し、納期に間に合わず投資家が一斉に手を引いてしまう。資金難に陥る制作会社を救ったのが、アランの申し出だった。
彼は企画会議の場で、ペーターゼンフィルムへの融資を上申。会議の無断生配信によって稟議の握り潰しを許さない言質取りをする。夢を語る一方で、エゲツなさもあって良い。
今作において、才能のある人間はキャラの輪郭線が色で滲む演出を施されています。半ば恫喝じみた奇手で稟議を押し通した瞬間、アランの輪郭線もまた青い光が滲みだす(ジーンの赤い光とはまた別です)。彼もまた、彼にしか出来ない仕事で創作に貢献できた。
⑦アラン(と映画業界、および世間一般)
なぜ、改変しなければならないのか?それはこれが「映画」にまつわる物語を、「映画で」語るからです。
プロデューサー、監督、脚本、主演俳優、カメラマン…。原作ポンポさんシリーズで取り上げられるのは、花形のお仕事です。でも、映画はそれだけじゃない。原作2巻において、ホテルの手配、ケータリング、カメラクレーンの操作技師などは(一流だからという理由だけで)さも創造性のないものとして扱われる。そうですかね???
ハリウッド映画は分業の世界です。主演どころの演技以外の演出・考証を担う第二班がある。スタッフ・機材を運送するドライバーが居る。アクション映画には数限りないCGアーティストが居る。自然ロケやスタントには医療班が同行する。花形のお仕事と違って、人員に替えは効くかもしれない。でも、機能としては必要なんですよ。「俺独りの作品です!」なんて言えるの、『JUNK HEAD』の堀監督だけでしょ。
本作中盤、雨天のシーンが印象的です。ジーンが脚本にない画を思いつき撮影に入るまでは原作と同じですが、現場で監督のアイデアに次々提案が投げかけられていく。「俺が屋根から転落するのはどうかな」「ヤギが顔を舐めれば、彼が変わるきっかけになる」「それなら私、転べるように地面整えときますね」。アランと同じく、裏方の力によって作品が前に行くことだってある。
⑧ポンポさん
原作において、ポンポさんはジーンに輪をかけた超天才です。現役高校生で制作会社の全権を取り仕切り、自分で監督・脚本も出来るという万能人。
映画も設定上は同じなのですが、最後の扱い方が違う。インタビュー記事で『紅の豚』のポルコ・ロッソが例に挙げられるように、彼女は理想の具現化=成長の止まった存在だった。けれど、完成したフィルムを観て感化されることで、彼女もまた成長を始めた。天才にさえも、孤独ではなく救済の余地が残されているやさしさ。
言葉に人生が乗っかってる分、原作2巻の「ポンポさん、映画大好き」より、映画版の「君の映画、大好きだぞ」に僕は深さを感じます。
⑨結びに
解釈違い。…そう言われると返す言葉もないです。原作者が来場者プレゼント用に書き下ろした漫画では、「ジーンは高校生から映画にハマり、脳内で上映会を開ける直観像記憶能力を開花させた」下りがあり、ジーン=大天才の認識が深まるばかり。監督曰く杉谷氏とのオリキャラ交渉はすんなり行ったそうなんだけど…ホンマかなぁ…。
ですが、僕はこの映画版をこそ支持します。何故なら多くの「天才ではなかった」人が関わり、観客の大多数もまた「天才ではなかった」人。映画がそういう芸術だからこそ、今作は幅広い共感を生むと思うので。
はい、6千字評でした。原作は漫画としてむっちゃ面白いけど、人間ドラマとしては結構嫌いな部類。そんなワケで、対比するたびに映画アゲ↑になっちゃいました。
この才能と人生に関する話は以前『2分の1の魔法』評と大体同じ。
https://magiclazy.diarynote.jp/202008270239023291/
映画漬けの日 + Note準備中
2021年6月8日 趣味〇日記
朝から遠出して博物館行く→定休日と知りぐんにゃり→帰宅してふて寝するのもバカらしいので映画梯子。ファーザー→アオラレ→映画大好きポンポさんの3本立て。
ファーザーは2回目、アオラレはB級スリラー(でもソツのない作りで普通に良作だった)なので軽い方だが、新作3本は頭に響く。映画大好きポンポさんは今年度ベスト3に確実に入る1本なので、今週中にレビュー書く予定。
〇Note
DN上で胎界主について書く人居ないし、DN上は文中に画像を表示できずURL爆貼り状態になって見づらいのでNoteで考察記事を書くことに。他との比較としては
・Note:編集自由度は低いが、文字リンク、画像表示は出来る。タグ検索が出来るのは高評価。
・はてな:ググった感じでは胎界主記事の量はNote>はてななので。考察は定期的に外部情報を摂取したい業深娯楽なので、そこは重視したい。
・twitter:過去話や設定と絡めて長文をクソほど流す場合には読みにくさ半端ない。画像表示の違いはあれど、リアルタイム考察媒体としては5チャンネルのスレの方が有益。新しくアカウント作ってやるものではないね。
そんな感じ。考察材料として買ったアレイスター・クロウリー編纂「Goetia:the lesser key of king the Solomon」を読むのが最近の日課です。ヘブライ語の召喚式とか厨二かよ。
朝から遠出して博物館行く→定休日と知りぐんにゃり→帰宅してふて寝するのもバカらしいので映画梯子。ファーザー→アオラレ→映画大好きポンポさんの3本立て。
ファーザーは2回目、アオラレはB級スリラー(でもソツのない作りで普通に良作だった)なので軽い方だが、新作3本は頭に響く。映画大好きポンポさんは今年度ベスト3に確実に入る1本なので、今週中にレビュー書く予定。
〇Note
DN上で胎界主について書く人居ないし、DN上は文中に画像を表示できずURL爆貼り状態になって見づらいのでNoteで考察記事を書くことに。他との比較としては
・Note:編集自由度は低いが、文字リンク、画像表示は出来る。タグ検索が出来るのは高評価。
・はてな:ググった感じでは胎界主記事の量はNote>はてななので。考察は定期的に外部情報を摂取したい業深娯楽なので、そこは重視したい。
・twitter:過去話や設定と絡めて長文をクソほど流す場合には読みにくさ半端ない。画像表示の違いはあれど、リアルタイム考察媒体としては5チャンネルのスレの方が有益。新しくアカウント作ってやるものではないね。
そんな感じ。考察材料として買ったアレイスター・クロウリー編纂「Goetia:the lesser key of king the Solomon」を読むのが最近の日課です。ヘブライ語の召喚式とか厨二かよ。
めっちゃ興味あるけど絶対観に行きたくない新作映画(結構長文)
2021年5月31日 映画
※注意:特定の団体を小馬鹿にする論調が続きます。オフザケが嫌いな方にはブラバをお勧めします。
なお、私個人は無宗教であり、宗教的見地から特定の団体に肩入れ或いは排斥する意図なきことを始めに言明しておきます。
■前置き
…最近、芸人映画って話題じゃないですか?年末から今年にかけて「銭凸待ちのプ〇ル」は話題になりましたし、来月にはさんま猛プッシュの「漁港の肉子ちゃん」が公開。バカリズムに至ってはテレビに加え映画脚本もこなすようになり、順当なキャリアを歩むまでに。
そんな中、僕が昔から追ってた芸人作家さんが居ます。…歴史上の偉人、直近に卒した有名人や、果ては存命中の政治家を自身に憑依させるイタコ芸で有名な大川って人です。大川総裁って呼ばれてるから、芸能事務所・大川興業の社長ですかね?
繰り返しになりますが、僕は無宗教なのでHSの信者ではありません。ですが、HSの映画は何本も観たし、副読本として説法書を買いもした。
何故か?もともと地雷映画を踏み抜きに行くスキモノっていうのもありますが、幸福の科学の映画って、大川さんの野望やルサンチマンに満ち溢れているんですよ。作品そのもののブットビ具合にプラスして、メタレベルでの可笑しみ・ほろ苦さを感じ取れる。
ここからは僕が過去に見た、HS映画の数々を紹介していきます。メタ成分の分析は飽くまで与太話ですので、真に受けないでください。
〇仏陀再誕
たぶん一番知名度のあった映画じゃないかな?大御所声優ご歴々を起用、信者の人海戦術によるタダ券配り、テレビスポットをバンバン打つことによって8.5億の興収を得ました(「ハルヒの消失」クラスの売上です)。
この映画、何がヤバいってラスボスがI田大先生なんすよ。HSの本によれば、(エルカンターレが最強という前提ではあるものの)建前としては他宗教との融和を説いている。でも、映画での池D先生の描き方が露骨過ぎた。
・HSより圧倒的に規模の大きい教団
・政治を支配している
・メディア支配
・それどころか、テレビで毒電波を垂れ流す
・教祖様が半島系のヤバ筋と繋がっている
…といった有様。そうかそうか、それで愛と融和を説くって…納得いくかーい!
〇ファイナルジャッジメント(実写)、神秘の法
2012年の2作。どちらも架空の軍事国家によって日本が侵略される近未来宗教バトル映画ですが、モデルは間違いなく中国です。同年日本公開の「レッドドーン」は日和って悪役を中国人民軍→北朝鮮にした一方、幸福の科学ははっきりと「中国=世界の敵!」と名指す(作品は別になりますが、宇宙人と謎の黒幕が電話会談するシーンでは開口一番「ニイハォ」www)
時期的には幸福実現党が国政への意欲をまだ燃やしていた頃。憲法改正!自虐史観撤廃!先制攻撃出来る軍隊を持て!と息巻いていた。尖閣ビデオ流出の記憶が新しい時期でもあり、タカ派極振りでワンチャン国会議員を狙う戦略は悪くなかったかもしれない。
けれど…翌年にトリモロス=安倍という100倍ヤベーヤツが台頭。中央政治からフェードアウトしていきました。
〇UFO学園の秘密
危険集団の謎を追う高校生たちが、背後の超常存在を知ると共に超能力に目覚め戦う…といった作品。青春・ミステリー・SFホラー・サスペンスなど、ジャンル性があり布教映画とは思えないほど別格の1本。作中でのセルフツッコミ、公式ギャグ4コマなど、「うさん臭さへの相対化視点」があるのにも驚く。
今作におけるメタ要素は、幸福の科学大学(仮称)設立認可の棄却騒動ですね。ざっくり説明すると、私立中高・私塾は兎も角霊言なんて戯言を教育方針に据える大学に認可なんて出してやらんと文科省がすげなく却下しました。
「科学的合理性が認められない」。そういい放つ(HS側からすれば)冷たい世間に対し、作品内でも、また現実のHSでも同様の非合理な回答を示す。そこもまた、本作のメタ要素の一つです。
映画内では「信じればッ…真実は姿を現すんだァーー!」とバトルフェーズへ。巨大トカゲ怪人とジャバウォックのガチンコ殴り合いに突入します。
一方、現実のHSはお家芸の霊言により反駁論陣を敷きます。普通さァ…疑似科学にせよ、インテリジェントデザイン説にせよ、科学データ「っぽい」ものを反論材料にするよね。宗教教育で心身の修養・団体行動でチームワークの獲得→国際人材の開発、とか(捏造)データ込みでそういう論調張らない?「非科学じゃん!」→「真理ですが、何か?」はキティゲェじゃん…。
■本題
漸く本題の、HS最新作『美しい誘惑~現代の「画皮」』の話します!!!
テーマをざっくり言うと「顔だけのオンナって怖ェなァ!!」。ポリコレ時代に打ちだすには気骨ありますよねぇ!
国の行く末を担う青年が傾国の毒婦に危機感を抱きながらも結婚することに。その結婚式当日、化けの皮を表した妖魔とサイキック坊さんバトルをするって話なんですが…これ、脚本が総裁のご長女なんですよね…。
メタ的な話をすると、大川総裁の愛人問題で教団は内紛、夫人とは離婚し、息子は脱会してyoutuberデビューしHSの内幕を暴露する敵側に回ったと聞きます。結果、ご長女が後継者と目されている…。こう聞いてから粗筋見返すと、エゲツなさに哀しくなりません?
そういう訳で、僕の好きなゲテモノ系なんですよ!!でもどうしても観に行く踏ん切りがつかないのは、死ぬほど映像のクオリティが低いからなんです!!
https://www.youtube.com/watch?v=PitlRpE3pKo&ab_channel=HSMovies
予告映像って最大の宣材だから、普通は良いシーンの切り貼りになるものなんですよ?でも2:08、2:31のCGがPS2レベルなんですよ!!仮令ね、予算が少なくたって近接格闘織り交ぜるとか、特殊メイクした顔・模型の接写で場面繋ぐことだって出来た筈。でもそういう工夫がないって、『UFO学園の秘密』から明らかに映画として退化してんじゃん!!!
クソ映画って、「歪さ」こそが愛すべき要素だと思います。献金パワーでアホほど金かけてるのにダサいとか、技術的には高品質なのに監督・脚本の反吐が出そうな思想がにじみ出ているとか。一方で、全方位ダメなクソ映画をこき下ろすのって…ただのイジメになっちゃう。
そんなワケで、「美しい誘惑~現代の画皮~」を見に行く踏ん切りがつきません。既にご覧になった方が居れば、感想を残していって下さい!!!
なお、私個人は無宗教であり、宗教的見地から特定の団体に肩入れ或いは排斥する意図なきことを始めに言明しておきます。
■前置き
…最近、芸人映画って話題じゃないですか?年末から今年にかけて「銭凸待ちのプ〇ル」は話題になりましたし、来月にはさんま猛プッシュの「漁港の肉子ちゃん」が公開。バカリズムに至ってはテレビに加え映画脚本もこなすようになり、順当なキャリアを歩むまでに。
そんな中、僕が昔から追ってた芸人作家さんが居ます。…歴史上の偉人、直近に卒した有名人や、果ては存命中の政治家を自身に憑依させるイタコ芸で有名な大川って人です。大川総裁って呼ばれてるから、芸能事務所・大川興業の社長ですかね?
繰り返しになりますが、僕は無宗教なのでHSの信者ではありません。ですが、HSの映画は何本も観たし、副読本として説法書を買いもした。
何故か?
ここからは僕が過去に見た、HS映画の数々を紹介していきます。メタ成分の分析は飽くまで与太話ですので、真に受けないでください。
〇仏陀再誕
たぶん一番知名度のあった映画じゃないかな?大御所声優ご歴々を起用、信者の人海戦術によるタダ券配り、テレビスポットをバンバン打つことによって8.5億の興収を得ました(「ハルヒの消失」クラスの売上です)。
この映画、何がヤバいってラスボスがI田大先生なんすよ。HSの本によれば、(エルカンターレが最強という前提ではあるものの)建前としては他宗教との融和を説いている。でも、映画での池D先生の描き方が露骨過ぎた。
・HSより圧倒的に規模の大きい教団
・政治を支配している
・メディア支配
・それどころか、テレビで毒電波を垂れ流す
・教祖様が半島系のヤバ筋と繋がっている
…といった有様。そうかそうか、それで愛と融和を説くって…納得いくかーい!
〇ファイナルジャッジメント(実写)、神秘の法
2012年の2作。どちらも架空の軍事国家によって日本が侵略される近未来宗教バトル映画ですが、モデルは間違いなく中国です。同年日本公開の「レッドドーン」は日和って悪役を中国人民軍→北朝鮮にした一方、幸福の科学ははっきりと「中国=世界の敵!」と名指す(作品は別になりますが、宇宙人と謎の黒幕が電話会談するシーンでは開口一番「ニイハォ」www)
時期的には幸福実現党が国政への意欲をまだ燃やしていた頃。憲法改正!自虐史観撤廃!先制攻撃出来る軍隊を持て!と息巻いていた。尖閣ビデオ流出の記憶が新しい時期でもあり、タカ派極振りでワンチャン国会議員を狙う戦略は悪くなかったかもしれない。
けれど…翌年にトリモロス=安倍という100倍ヤベーヤツが台頭。中央政治からフェードアウトしていきました。
〇UFO学園の秘密
危険集団の謎を追う高校生たちが、背後の超常存在を知ると共に超能力に目覚め戦う…といった作品。青春・ミステリー・SFホラー・サスペンスなど、ジャンル性があり
今作におけるメタ要素は、幸福の科学大学(仮称)設立認可の棄却騒動ですね。ざっくり説明すると、私立中高・私塾は兎も角霊言なんて戯言を教育方針に据える大学に認可なんて出してやらんと文科省がすげなく却下しました。
「科学的合理性が認められない」。そういい放つ(HS側からすれば)冷たい世間に対し、作品内でも、また現実のHSでも同様の非合理な回答を示す。そこもまた、本作のメタ要素の一つです。
映画内では「信じればッ…真実は姿を現すんだァーー!」とバトルフェーズへ。巨大トカゲ怪人とジャバウォックのガチンコ殴り合いに突入します。
一方、現実のHSはお家芸の霊言により反駁論陣を敷きます。普通さァ…疑似科学にせよ、インテリジェントデザイン説にせよ、科学データ「っぽい」ものを反論材料にするよね。宗教教育で心身の修養・団体行動でチームワークの獲得→国際人材の開発、とか(捏造)データ込みでそういう論調張らない?「非科学じゃん!」→「真理ですが、何か?」はキティゲェじゃん…。
■本題
漸く本題の、HS最新作『美しい誘惑~現代の「画皮」』の話します!!!
テーマをざっくり言うと「顔だけのオンナって怖ェなァ!!」。ポリコレ時代に打ちだすには気骨ありますよねぇ!
国の行く末を担う青年が傾国の毒婦に危機感を抱きながらも結婚することに。その結婚式当日、化けの皮を表した妖魔とサイキック坊さんバトルをするって話なんですが…これ、脚本が総裁のご長女なんですよね…。
メタ的な話をすると、大川総裁の愛人問題で教団は内紛、夫人とは離婚し、息子は脱会してyoutuberデビューしHSの内幕を暴露する敵側に回ったと聞きます。結果、ご長女が後継者と目されている…。こう聞いてから粗筋見返すと、エゲツなさに哀しくなりません?
そういう訳で、僕の好きなゲテモノ系なんですよ!!でもどうしても観に行く踏ん切りがつかないのは、死ぬほど映像のクオリティが低いからなんです!!
https://www.youtube.com/watch?v=PitlRpE3pKo&ab_channel=HSMovies
予告映像って最大の宣材だから、普通は良いシーンの切り貼りになるものなんですよ?でも2:08、2:31のCGがPS2レベルなんですよ!!仮令ね、予算が少なくたって近接格闘織り交ぜるとか、特殊メイクした顔・模型の接写で場面繋ぐことだって出来た筈。でもそういう工夫がないって、『UFO学園の秘密』から明らかに映画として退化してんじゃん!!!
クソ映画って、「歪さ」こそが愛すべき要素だと思います。献金パワーでアホほど金かけてるのにダサいとか、技術的には高品質なのに監督・脚本の反吐が出そうな思想がにじみ出ているとか。一方で、全方位ダメなクソ映画をこき下ろすのって…ただのイジメになっちゃう。
そんなワケで、「美しい誘惑~現代の画皮~」を見に行く踏ん切りがつきません。既にご覧になった方が居れば、感想を残していって下さい!!!
5月はSwitch充してました
2021年5月29日 趣味
〇大神 絶景版
PS2でプレイ済だけど、絶景版は触ってなかったのでこの機会に。(結果的には、HDリマスターとか4K描画とかは実感できず…)
元が15年前のゲームだから仕方ないけど、2021年現在から見ると
・マップ移動、屋内外移動、イベント発生などで必ず数秒のロードが挟まる(現代RPGはシームレス)
・ムービー加速がない(全スキップのみ)
・会話を文末尾まで瞬間表示できない
・ファストトラベル(マップ移動)の手順が煩雑
・高低差のあるダンジョンで謎解きギミックをミスると、上階層に上がる手間で30秒以上かかる
・バトルが完全な作業
などの点で不便さを感じた。
とはいえ、終盤のゲーム演出がエゲツないほど上手いから全部許せるな!「reset ~ありがとうバージョン」→「太陽は昇る」→「reset」の流れは泣かせの暴力。昔1度プレイしたのに涙腺千切れそうになる。
・Control ultimate edition Switchクラウドバージョン
2019年の海外ゲーム賞を獲りまくった1本。前から気になってたので購入。
地形をぶっ壊しながら進むシステム、物理演算と光学的な質感再現を追求し尽くしたオブジェクト表現、オカルトSFのシェアードコミュニティ「SCP」をベースにしたダークな世界観…。ゲームそのものは文句のつけようがない1作なのだけれど………翻訳が酷過ぎる!!
OPムービー30秒地点で、こんな原文と訳がある。
It’s like…we live in a room, and there is a poster on the wall.
↓
私たちはある部屋に住んでいて、その壁にポスターがあるわ。
バカかな??問題点を列挙すると…
①一番肝心なIt’s like~の部分を丸ごと削っている(世界の真相を比喩で説明する下りであって、この文はその始まり)
②そのくせ、「ある部屋」「その壁」などの末節を削らない(字幕翻訳は情報量を削ぎ落とすのが鉄則)
③直訳で文章を長くしている
④weを中学英語脳で「私達」と訳している(theyも「彼ら」と訳しちゃダメだよ!)
素人が烏滸がましいけど、僕なら
「人類は言うなれば、ポスターの掛かった部屋の住人ね」
って訳すかな。
こんな調子で、機械翻訳にぶち込んだような珍文が目白押し。字幕表示時間が異常に短いのも含め、日本ローカライズ担当さんは無能オブ無能。
話変わるけど、Remedy社の作品に共通する特徴「基本1本道の構成」というのも僕個人の好みでした。箱庭お使い系、オープンワールド系、クラフト系みたいな自由度高いやり込みゲームはどうしても食指が動かんのよな…。remedyゲームが指向するような、「映画的」コンテンツが僕みたいのには合う。白い部屋の扉を開けた途端真っ赤な風景がドガシャーーン!!!って飛び込んで来るキューブリック的演出も好き。
PS2でプレイ済だけど、絶景版は触ってなかったのでこの機会に。(結果的には、HDリマスターとか4K描画とかは実感できず…)
元が15年前のゲームだから仕方ないけど、2021年現在から見ると
・マップ移動、屋内外移動、イベント発生などで必ず数秒のロードが挟まる(現代RPGはシームレス)
・ムービー加速がない(全スキップのみ)
・会話を文末尾まで瞬間表示できない
・ファストトラベル(マップ移動)の手順が煩雑
・高低差のあるダンジョンで謎解きギミックをミスると、上階層に上がる手間で30秒以上かかる
・バトルが完全な作業
などの点で不便さを感じた。
とはいえ、終盤のゲーム演出がエゲツないほど上手いから全部許せるな!「reset ~ありがとうバージョン」→「太陽は昇る」→「reset」の流れは泣かせの暴力。昔1度プレイしたのに涙腺千切れそうになる。
・Control ultimate edition Switchクラウドバージョン
2019年の海外ゲーム賞を獲りまくった1本。前から気になってたので購入。
地形をぶっ壊しながら進むシステム、物理演算と光学的な質感再現を追求し尽くしたオブジェクト表現、オカルトSFのシェアードコミュニティ「SCP」をベースにしたダークな世界観…。ゲームそのものは文句のつけようがない1作なのだけれど………翻訳が酷過ぎる!!
OPムービー30秒地点で、こんな原文と訳がある。
It’s like…we live in a room, and there is a poster on the wall.
↓
私たちはある部屋に住んでいて、その壁にポスターがあるわ。
バカかな??問題点を列挙すると…
①一番肝心なIt’s like~の部分を丸ごと削っている(世界の真相を比喩で説明する下りであって、この文はその始まり)
②そのくせ、「ある部屋」「その壁」などの末節を削らない(字幕翻訳は情報量を削ぎ落とすのが鉄則)
③直訳で文章を長くしている
④weを中学英語脳で「私達」と訳している(theyも「彼ら」と訳しちゃダメだよ!)
素人が烏滸がましいけど、僕なら
「人類は言うなれば、ポスターの掛かった部屋の住人ね」
って訳すかな。
こんな調子で、機械翻訳にぶち込んだような珍文が目白押し。字幕表示時間が異常に短いのも含め、日本ローカライズ担当さんは無能オブ無能。
話変わるけど、Remedy社の作品に共通する特徴「基本1本道の構成」というのも僕個人の好みでした。箱庭お使い系、オープンワールド系、クラフト系みたいな自由度高いやり込みゲームはどうしても食指が動かんのよな…。remedyゲームが指向するような、「映画的」コンテンツが僕みたいのには合う。白い部屋の扉を開けた途端真っ赤な風景がドガシャーーン!!!って飛び込んで来るキューブリック的演出も好き。
2021春アニメ 途中経過
2021年5月20日 趣味
前回紹介した6作の評価
https://magiclazy.diarynote.jp/202104230058383420/
〇完走確定
・ゾンビランドSAGA リベンジ
サイゲパワーの結晶たる3DCGライブに目が行くけど、キャラの演出が抜群に上手いね。視聴者の意識が向かう会話・状況の中心キャラのみならず、画面端のキャラの表情や仕草を凝ることで各人の性格付けを反映させている。萌え(死語)の追及としてはかくあるべし。
・スーパーカブ
6話で感動した。修学旅行に一人だけカブで現地集合するって話なんだけど、「周りは誰も歓迎しない」のよ。部活・趣味の日常系アニメって①描く範囲が彼らのサークル周りに限定されるか②彼らを無条件に肯定する世界か、の2点が多い。
一方、カブ6話では合流した主人公に対し一瞬引いた空気が漂い、その後無視されていく。このちばてつや的な「世界が背後に広がっている」感覚は、なるほど小説より視覚メディアに向いてる気がする。これはメディアミックス化した価値があるね。
・ダイナゼノン
「盛り上がりが遅い!」(鱗滝師匠)。主人公チームの病みが見え始める4話から漸く楽しくなってきた。5話ラスト「飽くまで噂なんだけど…事故じゃなくて自さt」のぶつ切り演出には鳥肌が立った。
〇様子見
・ヴィヴィ―
https://magiclazy.diarynote.jp/202105010507381472/
あかんこれ…危惧通り伏線ではなく粗のパターンや…。ポイ捨てキャラ感動話はうっすいし、時間SFとしてもロボット(AI)SFとしても作り込み足りてなくて、ラノベ風掛け合いとライブシーンにしか面白みがない…。
キャラデザ・作画は良いし、バトルの外連味も悪くないのになあ。とはいえ12・13話で完璧な伏線回収があるかもしれないので視聴続行する。
・シャドーハウス
1~2話のローテンポぶりは「主人公二人への感情移入」装置として褒めたけど、6話まで進んで漸くお披露目回編は流石に遅すぎる。原作漫画の面白さって「監視・閉鎖社会における成り上がり&体制打破」にあると思う。それなのにこのテンポで進むとしたら、1クールの最後は「同期組の落ちこぼれコンビが廃棄&廃品回収」される下りでのバッドエンドになるよね。作品単体の落ち着け方としてどうかな?
とはいえ、端折り過ぎると約ネバ2期のような地獄になるし、漫画アニメ化は大変ね。
〇視聴諦め
・MARS RED
4話切り。仲間内で「雑魚キャラ煽り」を延々続け、そいつが死亡フラグ重ねた挙句死ななかった。一方、同じ話で出てきた捨てキャラはあっさり死んで神妙ぶるエンディング…心底アホくさくなった。
別にね、ギャグとシリアスが混在してても良いんですよ。でも吸血鬼系アニメの鬼滅もヘルシングも血界戦線も、ギャグの時はデフォルメを使って空気を変えていた。今作の何が辛いって、おちゃらけ掛け合いパートの時も同じ表情なんすよ。
演出が下手なのは基より、キャラデザの時点でダメだった可能性がある。アニメMARS REDのキャラデザは漫画家の唐々煙が担当。この人の代表作「曇天に笑う」シリーズを読んだことあるんだけど、表情、特にデフォルメ表現に乏しいんだよねぇ…。BLタッチなシリアス噺には向いてるだろうけど、陽気な男子トークでも同じ調子はきつい。
唐々煙先生の画自体を否定する気はないけど(アニメ化に先駆けたコミカライズは未読で、そっちが成功しているか知らんので)、アニメでやるならもっとハードボイルド・ノワールジャンルに寄せた演出にして欲しかった。
こんなところで。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104230058383420/
〇完走確定
・ゾンビランドSAGA リベンジ
サイゲパワーの結晶たる3DCGライブに目が行くけど、キャラの演出が抜群に上手いね。視聴者の意識が向かう会話・状況の中心キャラのみならず、画面端のキャラの表情や仕草を凝ることで各人の性格付けを反映させている。萌え(死語)の追及としてはかくあるべし。
・スーパーカブ
6話で感動した。修学旅行に一人だけカブで現地集合するって話なんだけど、「周りは誰も歓迎しない」のよ。部活・趣味の日常系アニメって①描く範囲が彼らのサークル周りに限定されるか②彼らを無条件に肯定する世界か、の2点が多い。
一方、カブ6話では合流した主人公に対し一瞬引いた空気が漂い、その後無視されていく。このちばてつや的な「世界が背後に広がっている」感覚は、なるほど小説より視覚メディアに向いてる気がする。これはメディアミックス化した価値があるね。
・ダイナゼノン
「盛り上がりが遅い!」(鱗滝師匠)。主人公チームの病みが見え始める4話から漸く楽しくなってきた。5話ラスト「飽くまで噂なんだけど…事故じゃなくて自さt」のぶつ切り演出には鳥肌が立った。
〇様子見
・ヴィヴィ―
https://magiclazy.diarynote.jp/202105010507381472/
あかんこれ…危惧通り伏線ではなく粗のパターンや…。ポイ捨てキャラ感動話はうっすいし、時間SFとしてもロボット(AI)SFとしても作り込み足りてなくて、ラノベ風掛け合いとライブシーンにしか面白みがない…。
キャラデザ・作画は良いし、バトルの外連味も悪くないのになあ。とはいえ12・13話で完璧な伏線回収があるかもしれないので視聴続行する。
・シャドーハウス
1~2話のローテンポぶりは「主人公二人への感情移入」装置として褒めたけど、6話まで進んで漸くお披露目回編は流石に遅すぎる。原作漫画の面白さって「監視・閉鎖社会における成り上がり&体制打破」にあると思う。それなのにこのテンポで進むとしたら、1クールの最後は「同期組の落ちこぼれコンビが廃棄&廃品回収」される下りでのバッドエンドになるよね。作品単体の落ち着け方としてどうかな?
とはいえ、端折り過ぎると約ネバ2期のような地獄になるし、漫画アニメ化は大変ね。
〇視聴諦め
・MARS RED
4話切り。仲間内で「雑魚キャラ煽り」を延々続け、そいつが死亡フラグ重ねた挙句死ななかった。一方、同じ話で出てきた捨てキャラはあっさり死んで神妙ぶるエンディング…心底アホくさくなった。
別にね、ギャグとシリアスが混在してても良いんですよ。でも吸血鬼系アニメの鬼滅もヘルシングも血界戦線も、ギャグの時はデフォルメを使って空気を変えていた。今作の何が辛いって、おちゃらけ掛け合いパートの時も同じ表情なんすよ。
演出が下手なのは基より、キャラデザの時点でダメだった可能性がある。アニメMARS REDのキャラデザは漫画家の唐々煙が担当。この人の代表作「曇天に笑う」シリーズを読んだことあるんだけど、表情、特にデフォルメ表現に乏しいんだよねぇ…。BLタッチなシリアス噺には向いてるだろうけど、陽気な男子トークでも同じ調子はきつい。
唐々煙先生の画自体を否定する気はないけど(アニメ化に先駆けたコミカライズは未読で、そっちが成功しているか知らんので)、アニメでやるならもっとハードボイルド・ノワールジャンルに寄せた演出にして欲しかった。
こんなところで。
今更ながら「天穂のサクナヒメ」プレイしました
2021年5月12日 趣味
・稲作パート:◎
RPGのレベル上げをこういう趣向で、とてつもない作り込みで打ち出したことはやはり偉い。稲作11の行程が緻密なのは勿論、マスクデータを現実ベースにさせたことで調べる・知る喜びがその都度出てくるのはやり込み要素として嬉しいよね。(ゲーム全く詳しくないけど)最近の他ゲーだとウマ娘もその系譜かな。
・バトル:〇
コンシューマゲー体験はPS2(DMC3・バイオ4)で止まってるので僕的には丁度良いシンプルさ。ただコンボゲーなのにダウン追撃・発生キャンセルがないのはちょっと辛い。範囲カチ上げからのエリアルor巻き込みのパターンしかないから作業ゲーになるんよな…。
・世界観、キャラ:◎
ほんわか和風ゲーのルックしてて実はシビア。プロローグで印象最悪だったキャラ達が世界の背景情報を知って同情を寄せられ、ゲームプレイを通じて段々と愛おしく見えてくる構成は見事。
俗世が地獄だからこその「桃源郷で登仙」→敢えて天人五衰を受け入れて俗世に再び戻っていく、という終わり方も余韻があって良い。
・ストーリー、演出:△~〇
ところどころ惜しい。サクナ+5人の作り込みが良いだけに、アシグモの掘り下げが全くなかったり、友ココロワを唆した天上人の正体が分からず終いだったり(祭で天界の人間を招待する下りがあるのに、そこで伏線回収もせず)。
大手デベロッパーなら追加DLCを半年くらいで出して後付け補完することが可能だけど、インディーズだから難しいだろうしなあ…。
ストーリーも噴火~祭手前の後半部がちょい微妙。
強大なボスを前にこれまでの力を失うって展開は王道なんだけど、和風ゲーの至高「大神」みたくまた一つづつ取り戻していく過程にエモさが微塵もない。あ、飽くまで「お使い」扱いなんだっていう…。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm695629
・やり込み要素
天辺宮は100階までクリア。300階登頂、アブラムシ駆除は流石に良いかな…。
確かに評判に違わぬ良作でした。ゲーム素人にはこのくらいのボリューム・難度が心地いい。
RPGのレベル上げをこういう趣向で、とてつもない作り込みで打ち出したことはやはり偉い。稲作11の行程が緻密なのは勿論、マスクデータを現実ベースにさせたことで調べる・知る喜びがその都度出てくるのはやり込み要素として嬉しいよね。(ゲーム全く詳しくないけど)最近の他ゲーだとウマ娘もその系譜かな。
・バトル:〇
コンシューマゲー体験はPS2(DMC3・バイオ4)で止まってるので僕的には丁度良いシンプルさ。ただコンボゲーなのにダウン追撃・発生キャンセルがないのはちょっと辛い。範囲カチ上げからのエリアルor巻き込みのパターンしかないから作業ゲーになるんよな…。
・世界観、キャラ:◎
ほんわか和風ゲーのルックしてて実はシビア。プロローグで印象最悪だったキャラ達が世界の背景情報を知って同情を寄せられ、ゲームプレイを通じて段々と愛おしく見えてくる構成は見事。
俗世が地獄だからこその「桃源郷で登仙」→敢えて天人五衰を受け入れて俗世に再び戻っていく、という終わり方も余韻があって良い。
・ストーリー、演出:△~〇
ところどころ惜しい。サクナ+5人の作り込みが良いだけに、アシグモの掘り下げが全くなかったり、友ココロワを唆した天上人の正体が分からず終いだったり(祭で天界の人間を招待する下りがあるのに、そこで伏線回収もせず)。
大手デベロッパーなら追加DLCを半年くらいで出して後付け補完することが可能だけど、インディーズだから難しいだろうしなあ…。
ストーリーも噴火~祭手前の後半部がちょい微妙。
強大なボスを前にこれまでの力を失うって展開は王道なんだけど、和風ゲーの至高「大神」みたくまた一つづつ取り戻していく過程にエモさが微塵もない。あ、飽くまで「お使い」扱いなんだっていう…。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm695629
・やり込み要素
天辺宮は100階までクリア。300階登頂、アブラムシ駆除は流石に良いかな…。
確かに評判に違わぬ良作でした。ゲーム素人にはこのくらいのボリューム・難度が心地いい。
現在追ってる連載漫画 2021年4月(5月) ラスト
2021年5月10日 趣味 亜人最終巻が先週出ましたね。医者志望・同族執着される人でなしという主人公らしさを活かした決着で満足。SAT・警備会社編と違って「陥った瞬間に詰み」というのも不死者を滅する方法として良き。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104052348382267/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104072042068576/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104100021328022/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104112204127920/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104132218323004/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104181140427567/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104192301406461/
⑬日常もの(学校、ほんわか系)
・映像研には手を出すな!
粗筋:天才作家&原画マン&庶務のトリオアニ研
漫画賞→湯浅監督のアニメ化→実写映画と凄まじい躍進を見せていたわりに、新刊1年以上出てないね。作者のネット炎上関係あるんかな?
・空電(ノイズ)の姫君
粗筋:女子高生×大学生男子の2:2バンド結成
冬目先生のアナログペン画すこ(話はよく分かんねえわ)。
・山を渡る
粗筋:大学登山部
下級生のハイキング編、上級生のクライミング編と両方楽しめる欲張りセット。
・極主夫道
粗筋:元ヤクザの主夫生活ギャグ
ヤクザコメディー漫画ってやたらネタが(文字なり画面なり)クドくいものが多いんだけど、この漫画流し方が凄いあっさりしてるのよね。超絶読みやすい。
・ふろラン
粗筋:女子大生がランニングしたあと銭湯行きます
様子見1巻。
細かいことだけど、主人公コンビがボディーバッグなりリュックなり担いでいないの何で?ランニングで汗びっしょりかいて、風呂入ってる間に生乾きになった服って壮絶な臭さだと思うんだけど…それまた着て帰宅するの?キャラデザも背景もリアルなだけに着替え描写ないのが気になる。
・尾かしらつき。
粗筋:奇形と情緒不安定の二人が結婚するまで
佐原先生の「主人公になれない人間を掬い取る」筆致は日陰者として堪らんものがある。
・潮が舞い子が舞い
粗筋:高校生の日常
「月曜日の友達」の抒情性、「空が灰色だから」のシュール会話劇が融合した何とも言えない空気。阿部先生どんどん進化するね。
・午後3時雨宮教授の御茶の時間
粗筋:英文学教授のおやつ作り
前言った通り、鷹野作品はこういう雰囲気が合ってるよ。「ホビット」のシャイアー回は無限に読める。
・バーナード嬢いわく。
粗筋:高校生の知ったか読者バトル漫画(だった)
初期の知識マウント路線も、それ以降の和やか読書コミュニケート路線も、どっちも好き(本読み感)。
⑭日常もの(シリアスめ)
・フラジャイル
粗筋:天才病理医のお仕事
初期の「院内政治・慣行に縛られる担当医を変人病理医が正す世直しもの」路線よりも、ワンテーマ掘り下げる最近の路線の方が好み。特に製薬編、医療裁判編は似たものを漫画で読んだことなくて新鮮だった。
いつかはコロナ編が来るだろうから楽しみ。
・来世は他人が良い
粗筋:ヤクザの跡取り同士の婚約
本職ヤクザ描写はぶっちゃけ「ニセコイ。」レベル(作者自身も「任侠エンタメに振り切る」と言っているし…)なんだけど、半グレ描写は結構秀逸。
・最後の秘境東京藝大
粗筋:天才のすくつ密着取材碌
同名ルポ小説のコミカライズ。次回最終巻。
・推しの子
粗筋:ドルオタが推しの子供に転生したけど推しが殺されたので首謀者に復讐すべく芸能界に入る
現実のゴシップ・事件を漫画のネタに出す際って、事例の悲惨さ・醜悪さを戯画化するものが多い。そんな中、「推しの子」は成長要素として取り入れつつストーリー進められていて、アカ先生の創作力ぱない。
・僕の妻は発達障害
粗筋:発達障害ルポ漫画
「頭の中に詰まった『興味の水風船』が、刺激に触れるたび床に転がり落ちる」って描写が素晴らしい。これは当事者にしか分からないし、漫画ならではの表現でもある。
療育漫画の中では主人公が美人過ぎ+ギャグし過ぎのきらいはあるが、妻の軽率さで一旦決定的な亀裂が走る辺りしっかりシリアス要素もあって良い。
⑮最近読み始めたもの
・葬送のフリーレン
粗筋:長命エルフが人生を見出す話
こ漫凄1位から。粗筋や無料1話からは予想できないくらい、ちょくちょくギャグ挟んでて小気味いい。ファンタジー漫画の中で群を抜いてバトル描写を捨ててる点も新鮮。
・マッシュル
粗筋:レベルカンストして物理で殴れば良い
なろうイキリ+ワンパンマンフォロワー。真っ当に魔法で戦う仲間キャラも基本「俺のセコンズ(超必)の方がつえー」っていう才能論で片づけてて、バトル漫画としては正直きつい。…けどチートイキリもギャグセンスがあれば不快感なく流せる辺り、ジャンルの開拓者になれるのでは?
・怪獣8号
粗筋:怪獣化したおっさんが正体隠して駆除軍隊入り
設定「パシフィックリム」+デザイン「ワールドトリガー」+ちょっぴり「寄生獣」。
抜群に見易いバトル構図、覚醒系コンテンツでは珍しい「昼行燈モードでも知恵で戦う」バトルロジック、ヒロインの可愛さ。これこそネクスト鬼滅なのでは?
というわけで、現状追ってるのは80タイトルでした。特におススメの漫画は
テコンダー朴
チェーザレ ~破壊の創造者~
チ。 ~地球の運動について~
応天の門
Dr. ストーン
ダンジョン飯
ドリフターズ
軍靴のバルツァー
怪獣8号
推しの子
の10本ですね。皆さんもお勧めの漫画があれば教えてください。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104052348382267/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104072042068576/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104100021328022/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104112204127920/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104132218323004/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104181140427567/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104192301406461/
⑬日常もの(学校、ほんわか系)
・映像研には手を出すな!
粗筋:天才作家&原画マン&庶務のトリオアニ研
漫画賞→湯浅監督のアニメ化→実写映画と凄まじい躍進を見せていたわりに、新刊1年以上出てないね。作者のネット炎上関係あるんかな?
・空電(ノイズ)の姫君
粗筋:女子高生×大学生男子の2:2バンド結成
冬目先生のアナログペン画すこ(話はよく分かんねえわ)。
・山を渡る
粗筋:大学登山部
下級生のハイキング編、上級生のクライミング編と両方楽しめる欲張りセット。
・極主夫道
粗筋:元ヤクザの主夫生活ギャグ
ヤクザコメディー漫画ってやたらネタが(文字なり画面なり)クドくいものが多いんだけど、この漫画流し方が凄いあっさりしてるのよね。超絶読みやすい。
・ふろラン
粗筋:女子大生がランニングしたあと銭湯行きます
様子見1巻。
細かいことだけど、主人公コンビがボディーバッグなりリュックなり担いでいないの何で?ランニングで汗びっしょりかいて、風呂入ってる間に生乾きになった服って壮絶な臭さだと思うんだけど…それまた着て帰宅するの?キャラデザも背景もリアルなだけに着替え描写ないのが気になる。
・尾かしらつき。
粗筋:奇形と情緒不安定の二人が結婚するまで
佐原先生の「主人公になれない人間を掬い取る」筆致は日陰者として堪らんものがある。
・潮が舞い子が舞い
粗筋:高校生の日常
「月曜日の友達」の抒情性、「空が灰色だから」のシュール会話劇が融合した何とも言えない空気。阿部先生どんどん進化するね。
・午後3時雨宮教授の御茶の時間
粗筋:英文学教授のおやつ作り
前言った通り、鷹野作品はこういう雰囲気が合ってるよ。「ホビット」のシャイアー回は無限に読める。
・バーナード嬢いわく。
粗筋:高校生の知ったか読者バトル漫画(だった)
初期の知識マウント路線も、それ以降の和やか読書コミュニケート路線も、どっちも好き(本読み感)。
⑭日常もの(シリアスめ)
・フラジャイル
粗筋:天才病理医のお仕事
初期の「院内政治・慣行に縛られる担当医を変人病理医が正す世直しもの」路線よりも、ワンテーマ掘り下げる最近の路線の方が好み。特に製薬編、医療裁判編は似たものを漫画で読んだことなくて新鮮だった。
いつかはコロナ編が来るだろうから楽しみ。
・来世は他人が良い
粗筋:ヤクザの跡取り同士の婚約
本職ヤクザ描写はぶっちゃけ「ニセコイ。」レベル(作者自身も「任侠エンタメに振り切る」と言っているし…)なんだけど、半グレ描写は結構秀逸。
・最後の秘境東京藝大
粗筋:天才のすくつ密着取材碌
同名ルポ小説のコミカライズ。次回最終巻。
・推しの子
粗筋:ドルオタが推しの子供に転生したけど推しが殺されたので首謀者に復讐すべく芸能界に入る
現実のゴシップ・事件を漫画のネタに出す際って、事例の悲惨さ・醜悪さを戯画化するものが多い。そんな中、「推しの子」は成長要素として取り入れつつストーリー進められていて、アカ先生の創作力ぱない。
・僕の妻は発達障害
粗筋:発達障害ルポ漫画
「頭の中に詰まった『興味の水風船』が、刺激に触れるたび床に転がり落ちる」って描写が素晴らしい。これは当事者にしか分からないし、漫画ならではの表現でもある。
療育漫画の中では主人公が美人過ぎ+ギャグし過ぎのきらいはあるが、妻の軽率さで一旦決定的な亀裂が走る辺りしっかりシリアス要素もあって良い。
⑮最近読み始めたもの
・葬送のフリーレン
粗筋:長命エルフが人生を見出す話
こ漫凄1位から。粗筋や無料1話からは予想できないくらい、ちょくちょくギャグ挟んでて小気味いい。ファンタジー漫画の中で群を抜いてバトル描写を捨ててる点も新鮮。
・マッシュル
粗筋:レベルカンストして物理で殴れば良い
なろうイキリ+ワンパンマンフォロワー。真っ当に魔法で戦う仲間キャラも基本「俺のセコンズ(超必)の方がつえー」っていう才能論で片づけてて、バトル漫画としては正直きつい。…けどチートイキリもギャグセンスがあれば不快感なく流せる辺り、ジャンルの開拓者になれるのでは?
・怪獣8号
粗筋:怪獣化したおっさんが正体隠して駆除軍隊入り
設定「パシフィックリム」+デザイン「ワールドトリガー」+ちょっぴり「寄生獣」。
抜群に見易いバトル構図、覚醒系コンテンツでは珍しい「昼行燈モードでも知恵で戦う」バトルロジック、ヒロインの可愛さ。これこそネクスト鬼滅なのでは?
というわけで、現状追ってるのは80タイトルでした。特におススメの漫画は
テコンダー朴
チェーザレ ~破壊の創造者~
チ。 ~地球の運動について~
応天の門
Dr. ストーン
ダンジョン飯
ドリフターズ
軍靴のバルツァー
怪獣8号
推しの子
の10本ですね。皆さんもお勧めの漫画があれば教えてください。
入れ替わりホラー映画『ザ・スイッチ』についてさくっと語る
2021年5月5日 映画
粗筋 高校生のミリーは複雑な家庭事情に学校でのイジメと不幸続き。ある晩、街を騒がす連続殺人鬼ブッチャーに襲われ、胸に短剣を突き立てられた。ところがその短剣「ラ・ドーラ」には古代の魔法がかけられていて、翌朝目覚めると二人の体は入れ替わっていた…。
①作品概説
低予算で高収益を上げるホラーを生み出し続ける制作会社ブラムハウスと、あの「ハッピーデスデイ」のクリストファーランドン監督が再び手を組んだ。
「ハッピーデスデイ」は死に戻り型SFとスラッシャーのジャンルミックスだったが、本作はボディスワップ(入れ替わり)とスラッシャーのジャンルミックス作品となる。主演は人気コメディ俳優のヴィンス・ヴォーンに、「スリービルボード」の好演が記憶に新しいキャスリン・ニュートン等。
②ザ・スイッチの魅力
今作には映画的な面白さが多数あります。「ジェイソンシリーズ」「ハロウィン」「スクリーム」などのスラッシャー映画パロギャグ、ジャンルミックス要素、入れ替わりギャグに必須の演技力(最近だと「ジュマンジ」辺り)など…。ですが、1点特筆するならば「キャラクター描写の丁寧さ」こそが最大の魅力でしょう。
本作においても、ミリーのパーソナルな部分は物語のテンポを削ぐことなく成長要素として配置されています。父親の死と母親との確執、学校でのイジメ、淡い恋心…。回想を一切挟まず、会話の中で(しかもハプニングや説得などの機能を持たせつつ)キャラクターに深みを持たせる手腕は流石のランドン監督ですね。
③ボディスワップジャンル
はい、褒めポイント終わり。こっから貶すよ!この映画、ボディスワップの肝所外してんの!
個人的に、ボディスワップジャンルの面白さは「異なる環境への順応」過程にあると思います。日本人なら誰でも知ってる「君の名は。」挙げましょうか。都会男子の瀧と田舎女子の三葉の入れ替わり。適度なエロコメを挟みつつも互いの境遇・性差を知り、非日常に慣れていく。ギャップ・ハプニング・成長の欲張りセットなワケです。
「君の名は。」はラブコメですが、本作のようなボディスワップスリラーにおける「順応」とは何か。それは「追い詰め合い」なんですよ。特に善人と悪人がスイッチする場合はそうです。善人の体を手に入れた悪人は、その立場を利用して悪事をやってのける。一方、悪人の体に入った善人は無実の追及を受け難儀するが、悪人社会orスキルを活かして情報を集め悪人を追う。だがそれが悪人にも知られ…といった具合に。
それでは今作なんですが…入れ替わった二人は普段と同じことしかしないんですね。これは面白みがない。ミリーの体に入ったブッチャーは空気を吸う感覚で人を殺す…殺人自体は良いんですけど、全部腕力!
赤いレジャージャケットにブルージーンズの出で立ちのハクいスケなんですよ?色香で惑わせてから殺してくれよ!(M豚感)。トイレの個室に誘うとか、凶器を隠した車のバックシートに連れていくとか、そういう「腕力は弱いが性的魅力を武器にして」殺す悪女っぷりがない。毎回正面からメンチ切って突撃していく。
一方ブッチャーの体に入ったミリーも、目覚めて事態を認識した途端親友らに会いに行き元の仲良しチームに戻る。腕力の使い方を徐々にマスターするだとか、ブッチャーのねぐらで彼の殺人習性を捜索するといった下りがない。
④奇想は美徳か?
と語るように、ランドン監督は本作の執筆中意図的に入れ替わり映画を避けていたという。…志は立派だと思うけど、とりわけジャンルミックス・マッシュアップを目的とした映画でその姿勢ってどうなんかな?「型を知って型破り、知らぬは型無し」とも言うように、基本を認識するところから脱構築は始まるものじゃないかな。
ランドン監督が唯一好きな入れ替わり映画として挙げた「フェイス/オフ」はまさに「追い詰め合い」映画だった。今作でこれが成立しなかった最大の要因って、ブッチャーを頭アッパラパーの殺人モンスターに設定したことにあると思う。ひとくちに殺人鬼と言っても、社会生活を営む裏でシリアるキラーサイコパスでも成り立つ筈。
そういう知能犯要素がないから、ブッチャーを追う下りが珍獣捕獲と変わらないのよね。これは入れ替わりジャンルとしてはやはり失敗だったと思う。
⑤入れ替わり解除
入れ替わりリミットの土壇場でブッチャーを騙す下りがもう本当に雑。ここに異論を唱える人は流石に一人も居ない筈(パンフのライターですらバカにしてたし)。
解除の儀式は入れ替わりが発生してから1日だけ。ミリー(ブッチャーの体)はブッチャー(ミリーの体)を何とか追い詰め馬乗りになるが、そのとき腕時計のアラームが鳴る。24時を過ぎたことに高笑いするブッチャーだが、そのときミリーは悟る。「そうだわ!時計台の鐘が鳴っていない。この時計は心配性のブッカーが5分早めておいてくれたんだ、だからまだ24時を過ぎていない!」そう言い短剣を突きさすことで、儀式を完遂した…。んだけど、待てよおい。
先ず大前提として、台詞で全説明するとかありえないからね?それと、ブッチャー(ミリーの体)の腕時計を鳴らすべきでしょ。追手側の時計なんて細工を疑って当然じゃん?「入れ替わり前で細工しようのないミリーの体についた時計」が鳴るからこそ、ブッチャーは油断して抵抗を止めるんじゃないの?
この「5分早め」ロジック自体は、一応伏線付いてるんです。入れ替わりの前の日、ミリーの片想い(実は両想い)相手のブッカーが「時計を5分早めておくと、得をするよ」とアドバイスしてくれていた。ならさぁ!入れ替わる晩に、ミリーが時計を弄ってから床に就く下りを何で入れないの?そうすれば2段構えの伏線になるし、ブッチャー側も知る由がなく油断する理屈になる。
それなのに映画と来たらミリーが独り合点した挙句、台詞でべらべらネタ晴らしをするだけ。ツイスト利かせたかったんだろうけど、理屈としても映像としても心底ダサい上に蛇足だよ。
⑥結びに
ツッコミたいところはまだある!失敗作の「ハッピーデスデイ2U」と同じで、現実的には問題が解決してないところ!ミリーの体を借りたブッチャーが電ノコやガラス瓶など思いっきり指紋のつく方法で5人惨殺してんの!折角元の体に戻っても、即日タイーホで禁固150年食らうよね!(そういう意味でも知能犯タイプにしなかったのは間違いじゃね?)。
でも、ブラムハウスってこんなもんですよ。
https://magiclazy.diarynote.jp/202011100043418635/
https://magiclazy.diarynote.jp/202012282108261830/
上記2作しかり、詰めがはっきり甘い映画が多い(『透明人間』のような無欠の傑作は例外)。
でも、決して嫌いになれないのは社会風刺やジャンルミックス、キャラクター成長譚など骨格がしっかりしてるから。「ホラーなんてこんなもの」という観客の予想を超えてくる。これもまた、映画の楽しみだよね。
3500字評でした。
良く出来てるし、トータルで言えば好きな方ですよ?でも『透明人間』と同列に語られると、おじさんちょっと腹立つかな…(イキリオタク)。
①作品概説
低予算で高収益を上げるホラーを生み出し続ける制作会社ブラムハウスと、あの「ハッピーデスデイ」のクリストファーランドン監督が再び手を組んだ。
「ハッピーデスデイ」は死に戻り型SFとスラッシャーのジャンルミックスだったが、本作はボディスワップ(入れ替わり)とスラッシャーのジャンルミックス作品となる。主演は人気コメディ俳優のヴィンス・ヴォーンに、「スリービルボード」の好演が記憶に新しいキャスリン・ニュートン等。
②ザ・スイッチの魅力
今作には映画的な面白さが多数あります。「ジェイソンシリーズ」「ハロウィン」「スクリーム」などのスラッシャー映画パロギャグ、ジャンルミックス要素、入れ替わりギャグに必須の演技力(最近だと「ジュマンジ」辺り)など…。ですが、1点特筆するならば「キャラクター描写の丁寧さ」こそが最大の魅力でしょう。
「監督作へのアプローチでまず僕が拘るのは、エモーショナルな部分だ。」と語るように、監督はホラー映画の登場人物を記号で終わらせない。過去作「ハッピーデスデイ」が上手く行っていたのもここです。「やりマンブロンド」というホラー映画で絶対に死ぬ設定を逆手に取り、主人公に死に戻りをさせる。その煉獄の中で彼女は自分の非を直視し家族との折り合いをつけ、きちんと成長を遂げ殺人鬼との対峙を果たす。映画冒頭では好感度最悪だった筈なのに、観客はいつの間にか応援する側に回ってしまうのです。
「80年代や90年代初めのホラーや殺人鬼の映画は、登場人物のパーソナルなドラマをちゃんと描いていないものが多い…」
本作においても、ミリーのパーソナルな部分は物語のテンポを削ぐことなく成長要素として配置されています。父親の死と母親との確執、学校でのイジメ、淡い恋心…。回想を一切挟まず、会話の中で(しかもハプニングや説得などの機能を持たせつつ)キャラクターに深みを持たせる手腕は流石のランドン監督ですね。
③ボディスワップジャンル
はい、褒めポイント終わり。こっから貶すよ!この映画、ボディスワップの肝所外してんの!
個人的に、ボディスワップジャンルの面白さは「異なる環境への順応」過程にあると思います。日本人なら誰でも知ってる「君の名は。」挙げましょうか。都会男子の瀧と田舎女子の三葉の入れ替わり。適度なエロコメを挟みつつも互いの境遇・性差を知り、非日常に慣れていく。ギャップ・ハプニング・成長の欲張りセットなワケです。
「君の名は。」はラブコメですが、本作のようなボディスワップスリラーにおける「順応」とは何か。それは「追い詰め合い」なんですよ。特に善人と悪人がスイッチする場合はそうです。善人の体を手に入れた悪人は、その立場を利用して悪事をやってのける。一方、悪人の体に入った善人は無実の追及を受け難儀するが、悪人社会orスキルを活かして情報を集め悪人を追う。だがそれが悪人にも知られ…といった具合に。
それでは今作なんですが…入れ替わった二人は普段と同じことしかしないんですね。これは面白みがない。ミリーの体に入ったブッチャーは空気を吸う感覚で人を殺す…殺人自体は良いんですけど、全部腕力!
赤いレジャージャケットにブルージーンズの出で立ちのハクいスケなんですよ?色香で惑わせてから殺してくれよ!(M豚感)。トイレの個室に誘うとか、凶器を隠した車のバックシートに連れていくとか、そういう「腕力は弱いが性的魅力を武器にして」殺す悪女っぷりがない。毎回正面からメンチ切って突撃していく。
一方ブッチャーの体に入ったミリーも、目覚めて事態を認識した途端親友らに会いに行き元の仲良しチームに戻る。腕力の使い方を徐々にマスターするだとか、ブッチャーのねぐらで彼の殺人習性を捜索するといった下りがない。
④奇想は美徳か?
「似た世界観の作品が存在するときは、ほかの人の作品で脚本が汚染されないように気を付けている」
と語るように、ランドン監督は本作の執筆中意図的に入れ替わり映画を避けていたという。…志は立派だと思うけど、とりわけジャンルミックス・マッシュアップを目的とした映画でその姿勢ってどうなんかな?「型を知って型破り、知らぬは型無し」とも言うように、基本を認識するところから脱構築は始まるものじゃないかな。
ランドン監督が唯一好きな入れ替わり映画として挙げた「フェイス/オフ」はまさに「追い詰め合い」映画だった。今作でこれが成立しなかった最大の要因って、ブッチャーを頭アッパラパーの殺人モンスターに設定したことにあると思う。ひとくちに殺人鬼と言っても、社会生活を営む裏でシリアるキラーサイコパスでも成り立つ筈。
そういう知能犯要素がないから、ブッチャーを追う下りが珍獣捕獲と変わらないのよね。これは入れ替わりジャンルとしてはやはり失敗だったと思う。
⑤入れ替わり解除
入れ替わりリミットの土壇場でブッチャーを騙す下りがもう本当に雑。ここに異論を唱える人は流石に一人も居ない筈(パンフのライターですらバカにしてたし)。
解除の儀式は入れ替わりが発生してから1日だけ。ミリー(ブッチャーの体)はブッチャー(ミリーの体)を何とか追い詰め馬乗りになるが、そのとき腕時計のアラームが鳴る。24時を過ぎたことに高笑いするブッチャーだが、そのときミリーは悟る。「そうだわ!時計台の鐘が鳴っていない。この時計は心配性のブッカーが5分早めておいてくれたんだ、だからまだ24時を過ぎていない!」そう言い短剣を突きさすことで、儀式を完遂した…。んだけど、待てよおい。
先ず大前提として、台詞で全説明するとかありえないからね?それと、ブッチャー(ミリーの体)の腕時計を鳴らすべきでしょ。追手側の時計なんて細工を疑って当然じゃん?「入れ替わり前で細工しようのないミリーの体についた時計」が鳴るからこそ、ブッチャーは油断して抵抗を止めるんじゃないの?
この「5分早め」ロジック自体は、一応伏線付いてるんです。入れ替わりの前の日、ミリーの片想い(実は両想い)相手のブッカーが「時計を5分早めておくと、得をするよ」とアドバイスしてくれていた。ならさぁ!入れ替わる晩に、ミリーが時計を弄ってから床に就く下りを何で入れないの?そうすれば2段構えの伏線になるし、ブッチャー側も知る由がなく油断する理屈になる。
それなのに映画と来たらミリーが独り合点した挙句、台詞でべらべらネタ晴らしをするだけ。ツイスト利かせたかったんだろうけど、理屈としても映像としても心底ダサい上に蛇足だよ。
⑥結びに
ツッコミたいところはまだある!失敗作の「ハッピーデスデイ2U」と同じで、現実的には問題が解決してないところ!ミリーの体を借りたブッチャーが電ノコやガラス瓶など思いっきり指紋のつく方法で5人惨殺してんの!折角元の体に戻っても、即日タイーホで禁固150年食らうよね!(そういう意味でも知能犯タイプにしなかったのは間違いじゃね?)。
でも、ブラムハウスってこんなもんですよ。
https://magiclazy.diarynote.jp/202011100043418635/
https://magiclazy.diarynote.jp/202012282108261830/
上記2作しかり、詰めがはっきり甘い映画が多い(『透明人間』のような無欠の傑作は例外)。
でも、決して嫌いになれないのは社会風刺やジャンルミックス、キャラクター成長譚など骨格がしっかりしてるから。「ホラーなんてこんなもの」という観客の予想を超えてくる。これもまた、映画の楽しみだよね。
3500字評でした。
良く出来てるし、トータルで言えば好きな方ですよ?でも『透明人間』と同列に語られると、おじさんちょっと腹立つかな…(イキリオタク)。
「るろうに剣心-the final-」が和製アベンジャーズだった件
2021年5月3日 映画
冗長で眠たいシリアス展開が漸く終わったと思ったら、過去作のキャラ総出演でラスト1時間にアジト強襲開始して一気に盛り上がった。
蒼紫、左之助が原作のように活躍しない、って批判意見観るけどそれどうなんかね。ちゃんとストーリー上の必然性があるよ。
蒼紫様はダイナマイト途中退場するけど、御庭番衆に「気球の行方を追え」と命じていてそれがアジト(縁からラブレター貰った剣心以外は本来知らない)を見つける流れになっている。
左之助に至ってはアンチのフタエノキワミ!二重の極み習得を京都篇でオミットされたせいでまるで噛ませ犬なんだけど、大八車を破城槌代わりに使ったおかげで剣心が先に進む手助けになった。
バトルとしての見せ場があるのがベストっていうのも分かるんだけど、ケイパー映画みたいに「作戦遂行のために役割を果たす」っていうのも活躍の一つだよ?
とはいえ、操が回転剣舞・六連で八ツ目を倒したり、宗次郎がひょっこり現れて共闘始めるのには流石に笑ったけど。お前は北海道篇実写化まで待て。
寧ろ映画としての問題は、ドラマパートのダレ具合だよね。巴の死の下りが1度5分程度の回想があった後、フラッシュバックがいちいち挟まるんだ。これがクドい。
過去篇を15分なり20分なり時間区切って一度に語って、そののちに反復と変化でエモーション上げてくれや。風車や日記といった映像的に使える筈の小道具も後出しじゃんけんで上手くない。
勿論、過去篇が切れ切れになったのは理由があって。
6月に公開される「るろうに剣心 -the beginning-」は、人誅編で挟まれた過去譚(人斬り編・巴編)がベースの模様。
https://www.youtube.com/watch?v=tt74EALUt-4&ab_channel=FilmIsNowMovieTrailersInternational
ここで時間軸に合わせて語るために、今回のthe finalではイメージ映像ぐらいの表現にしか出来んかったんやろな…(ならthe finalの公開を後に持ってきた方が良くね?とは思うが)。
過去篇と言えば、るろ剣派生作品で最高傑作として名高いOVA「追憶篇」との比較は避けられないだろう。追憶篇は無駄な説明台詞を一切廃した作品なんだから、the beginningはせめてバトル中に絶叫演説しない映画だと良いなあ…。
蒼紫、左之助が原作のように活躍しない、って批判意見観るけどそれどうなんかね。ちゃんとストーリー上の必然性があるよ。
蒼紫様はダイナマイト途中退場するけど、御庭番衆に「気球の行方を追え」と命じていてそれがアジト(縁からラブレター貰った剣心以外は本来知らない)を見つける流れになっている。
左之助に至っては
バトルとしての見せ場があるのがベストっていうのも分かるんだけど、ケイパー映画みたいに「作戦遂行のために役割を果たす」っていうのも活躍の一つだよ?
とはいえ、操が回転剣舞・六連で八ツ目を倒したり、宗次郎がひょっこり現れて共闘始めるのには流石に笑ったけど。お前は北海道篇実写化まで待て。
寧ろ映画としての問題は、ドラマパートのダレ具合だよね。巴の死の下りが1度5分程度の回想があった後、フラッシュバックがいちいち挟まるんだ。これがクドい。
過去篇を15分なり20分なり時間区切って一度に語って、そののちに反復と変化でエモーション上げてくれや。風車や日記といった映像的に使える筈の小道具も後出しじゃんけんで上手くない。
勿論、過去篇が切れ切れになったのは理由があって。
6月に公開される「るろうに剣心 -the beginning-」は、人誅編で挟まれた過去譚(人斬り編・巴編)がベースの模様。
https://www.youtube.com/watch?v=tt74EALUt-4&ab_channel=FilmIsNowMovieTrailersInternational
ここで時間軸に合わせて語るために、今回のthe finalではイメージ映像ぐらいの表現にしか出来んかったんやろな…(ならthe finalの公開を後に持ってきた方が良くね?とは思うが)。
過去篇と言えば、るろ剣派生作品で最高傑作として名高いOVA「追憶篇」との比較は避けられないだろう。追憶篇は無駄な説明台詞を一切廃した作品なんだから、the beginningはせめてバトル中に絶叫演説しない映画だと良いなあ…。
ちょいモヤる、という話をします。具体的にはキャラの行動原理、ジャンル性からの逸脱の2点。
簡単な粗筋説明を先にしておきます。
AIが発展した近未来、AIは効率化のため各人にひとつづつ「使命」が与えられている。テーマパークで働くAI、ヴィヴィの使命は「歌で人々を幸せにする」こと。ある日、彼女の許に謎のAI、マツモトが現れる。彼は電子ハック技術の高さを証拠に自分は未来から来た、と主張。
彼によると100年後、AIは人間に対して戦争を起こす。自分の使命はAIを滅ぼすことにあり、100年を掛けAIを滅ぼす「シンギュラリティ計画」に従事するようヴィヴィに求めてくる…といったお話です。
それでは、モヤる点についての話に戻ります。
一つ目がキャラ(マツモト)の行動原理について。ヴィヴィと行動を共にする理由がないんですよ。ヴィヴィは物語のスタート時点では、初の自律思考型AIというだけあって超高性能。しかしそんなヴィヴィの電脳防壁をあっさり破るほど、マツモトはチート性能のキャラなんです。ハッキングで施設の機械系統をまるごと乗っ取ったり、世界の記録を改竄したり。テディベアやキューブ型ロボット、大型工作機械などに入り込んで操縦すら出来る。
片方が非人間型のバディ作品っていうのは、基本的に「相即不離」が原則です。沖方先生の「マルドゥック」シリーズや、寄生バディもの、憑依ものに至るまで、単純な戦闘力では勝る側も「主人公=人間の側を離れられない」。だからこその分業・協力でバディとして盛り上がる…というのが王道です。でも、今作においてマツモトはヴィヴィの完全上位互換なんですよ。こんな足手まといを連れていく必要がない。
一応、マツモトは計画の相棒にヴィヴィを選んだ理由として「100年後もボディが完璧な形で残っているのが博物館で死蔵されていたヴィヴィしかなかった」からと説明。ただ、これも冷静に考えればおかしくて。100年前へのタイムトラベルの「依り代」としてヴィヴィの価値があるとしても、それ以後行動を共にする必然性はない。作中描写されるチートハッキングで操り人形にすれば良いので、「自由意志を持った」相棒である意味がない。
次にモヤポイントの2点目、ジャンル性からの逸脱について。
メタレベルの話になるんですが、時間SFの醍醐味は「事象の俯瞰性」にあると思っています。SFの概念以前の「予言の成就・家系因縁譚」から、ウェルズの輝かしき「タイムマシン」。歴史改変と歴史不変・時間逆行などの派生パターンや、最近のライトノベル界で人気の死に戻り・生き直し系に至るまで…。様々なパターンがありますが、概ね「物語序盤で日常を描き、時間跳躍によって出来た差異を戻すor改善する」過程に面白さがあると思います。
Vivyに話を戻すと、マツモト曰く「100年の間にAI史を巡る重大な転換点がいくつかあった」。そして、概ね2話に1エピソードの形で特定の時代を舞台に、転換点を担う歴史の要人とヴィヴィ・マツモトの交流が描かれます。
なればこそ、作劇上、(ヴィヴィに対してではなく)我々視聴者に対して「この時代にこんな出来事があり(人物が居て)、それが後のAI史にどういう影響を与えた」というのを示さないのは上手くないんですよ。事前情報との落差がなく、エピソード毎にポッと出のキャラが出て、次の回では解決を繰り返していくので、シンギュラリティ計画のロードマップがまるで見えない。
そんな視聴者の不満を代弁するかのように、第二話でヴィヴィが「情報を小出しにしないで、全て開示して」とマツモトに言います。すると彼は「あなたを信用しない内は明かせない」と応えます。しかしその後、要人警護成功を受け「あなたを信用しましょう」と言っているにも関わらず、3話・5話目になっても情報を明かす気配がない。
こうしたモヤポイントについて、解釈は二つあります。
一つ目、好意的に解釈するなら「マツモト黒幕説の伏線」ってことです。
マツモトがヴィヴィに(そして観客に)見せるのは常にカメラフッテージ・新聞記事などの記録であって、神の視点での「現実」ではない。また、マツモトは使命を「AIを滅ぼす」「戦争を回避する」などと口にするが、一度たりとも「人類を救う」という表現をしていない(というかAIが人類を征服したとも言っていない)。
それと穿った見方ですが、「シンギュラリティ計画」という呼称にも引っ掛かりがあります。シンギュラリティとは、AIの成長が人類のレベルを超え、文明の主役になる「技術特異点」のこと。だとしたら、「シンギュラリティ阻止計画」などの名称にすべきでは…?
以上の理由から、マツモトの目的は歴史改変によるディストピア回避!といった単純なものではないとの推測が立ちます。先述したように、ヴィヴィは史上初の自律思考型AIです。マツモトの狙いは、敢えて情報を小出しにしてその都度ヴィヴィに考えさせ自己フィードバックを促すことではないか。
最終的な目的として考えられるのは、悪く考えるなら100年かけヴィヴィを人類に対する革命の旗頭に仕立て上げること。逆に良く考えるなら、ヴィヴィを改変前の歴史でAIが辿った論理的結論から抜け出せるスーパーAIに成長させる、なんてこともありそうです。
…ここからが今回の日記の本題です。Vivyの構成をひじょーーーーに悪く解釈すると、書き手がマジでこれが最善だと思ってる説が浮上します。だって、脚本が長月先生だから。
「Re:ゼロから始まる異世界転生」の作者として有名な長月先生ですが、あの悪名高き爆死アニメ「戦翼のシグルドリーヴァ」の脚本家でもあります。通称シグルリの世間的な酷評ポイントは「要素を詰め込み過ぎ」「設定が後付け且つ作品の外部で行われる」の2点。…なんですが、これ今作Vivy~にも当てはまりつつあるのが気がかりです。
要素詰め込み問題について。シグルリは「ミリタリー」「ファンタジー」「美少女」「おっさん」「コメディ」「シリアス」と複数の要素(しかも対立事項まで)をぶち込んだ結果まとまりのないアニメになりました。
Vivyも正直言って、大分散らかってる感あります。クール系包容力お姉さん×ウザがらみお喋りマスコットの掛け合いはラノベ作家の本領発揮なのでまだ良いにしても、アイドル(歌唱)要素もあるかと思えば、時間SF描写に至っては(現段階では)手抜きも良いところ。
加え、2話1エピソードによる「未来科学社会における人間の非喜劇」要素も、全ッ然上手くない(「攻殻」「プラネテス」「電脳コイル」辺りの傑作のように科学技術のディティールが秀逸か否かのレベルにすらない。人間模様の前振りが薄すぎるせいで、どういう結末になろうとも感動に繋がらない)。
次に設定後付けについて。シグルリは「漫画スピンオフ」「前日譚の小説」「脚本の補足ツイート」「公式Q&A」「おじさんコメンタリー」を予習して、漸くついていけるという有様だったそうです。…いや、派生作品って魅力的な世界観・キャラクターの幅を広げるものだよね?主軸作の粗を観客側に補完してもらう手段じゃないよね?それって主軸(シグルリで言えばアニメ)を愚弄してない?
…で、これもVivyに該当するんですよね…。制作委員会方式のお家芸とはいえ、アニメ放映と同じタイミングで原案小説本・コミカライズ発売が転がされ、おまけに公式サイト・Twitter上では脚本両氏のQ&Aが繰り広げられる始末…(長月先生は批判コメント好き勢らしく、ツッコミに普通に反応してるのがまた…)。
僕はね、別に長月先生の創作能力を貶すつもりはないです。でも、小説とアニメは違うんですよ。長編小説シリーズや連載漫画、(DLや配信が定着して以降の)ゲームはどれだけでも後付けで容量を増やしていける「足し算」のコンテンツなんです。一方、1クールアニメや映画は予算や尺が最初に決まっていて素材を削っていく「引き算」のコンテンツなんですよ。だから詰め込んじゃいけないし、アニメらしさの中で面白さを伝え切らなければいけない。
そんなこんなでまあ、『Vivy -Fluorite Eye’s Song』に対し期待半分不安半分を抱いている現状です。(違和感抱かせる時点で伏線として下手なのでは?という疑問をさておくにしても)モヤモヤポイントはきちんと伏線として回収されるのを願うばかり。
タイムリーなことを言えば、昨日4/30から原案小説本が発売され、本日5/1にGyao!、ニコ生で1~5話の無料一挙振り返り配信が行われるそうです。これを機に(?)皆さんもVivyの魅力に触れてみよう!
簡単な粗筋説明を先にしておきます。
AIが発展した近未来、AIは効率化のため各人にひとつづつ「使命」が与えられている。テーマパークで働くAI、ヴィヴィの使命は「歌で人々を幸せにする」こと。ある日、彼女の許に謎のAI、マツモトが現れる。彼は電子ハック技術の高さを証拠に自分は未来から来た、と主張。
彼によると100年後、AIは人間に対して戦争を起こす。自分の使命はAIを滅ぼすことにあり、100年を掛けAIを滅ぼす「シンギュラリティ計画」に従事するようヴィヴィに求めてくる…といったお話です。
それでは、モヤる点についての話に戻ります。
一つ目がキャラ(マツモト)の行動原理について。ヴィヴィと行動を共にする理由がないんですよ。ヴィヴィは物語のスタート時点では、初の自律思考型AIというだけあって超高性能。しかしそんなヴィヴィの電脳防壁をあっさり破るほど、マツモトはチート性能のキャラなんです。ハッキングで施設の機械系統をまるごと乗っ取ったり、世界の記録を改竄したり。テディベアやキューブ型ロボット、大型工作機械などに入り込んで操縦すら出来る。
片方が非人間型のバディ作品っていうのは、基本的に「相即不離」が原則です。沖方先生の「マルドゥック」シリーズや、寄生バディもの、憑依ものに至るまで、単純な戦闘力では勝る側も「主人公=人間の側を離れられない」。だからこその分業・協力でバディとして盛り上がる…というのが王道です。でも、今作においてマツモトはヴィヴィの完全上位互換なんですよ。こんな足手まといを連れていく必要がない。
一応、マツモトは計画の相棒にヴィヴィを選んだ理由として「100年後もボディが完璧な形で残っているのが博物館で死蔵されていたヴィヴィしかなかった」からと説明。ただ、これも冷静に考えればおかしくて。100年前へのタイムトラベルの「依り代」としてヴィヴィの価値があるとしても、それ以後行動を共にする必然性はない。作中描写されるチートハッキングで操り人形にすれば良いので、「自由意志を持った」相棒である意味がない。
次にモヤポイントの2点目、ジャンル性からの逸脱について。
メタレベルの話になるんですが、時間SFの醍醐味は「事象の俯瞰性」にあると思っています。SFの概念以前の「予言の成就・家系因縁譚」から、ウェルズの輝かしき「タイムマシン」。歴史改変と歴史不変・時間逆行などの派生パターンや、最近のライトノベル界で人気の死に戻り・生き直し系に至るまで…。様々なパターンがありますが、概ね「物語序盤で日常を描き、時間跳躍によって出来た差異を戻すor改善する」過程に面白さがあると思います。
Vivyに話を戻すと、マツモト曰く「100年の間にAI史を巡る重大な転換点がいくつかあった」。そして、概ね2話に1エピソードの形で特定の時代を舞台に、転換点を担う歴史の要人とヴィヴィ・マツモトの交流が描かれます。
なればこそ、作劇上、(ヴィヴィに対してではなく)我々視聴者に対して「この時代にこんな出来事があり(人物が居て)、それが後のAI史にどういう影響を与えた」というのを示さないのは上手くないんですよ。事前情報との落差がなく、エピソード毎にポッと出のキャラが出て、次の回では解決を繰り返していくので、シンギュラリティ計画のロードマップがまるで見えない。
そんな視聴者の不満を代弁するかのように、第二話でヴィヴィが「情報を小出しにしないで、全て開示して」とマツモトに言います。すると彼は「あなたを信用しない内は明かせない」と応えます。しかしその後、要人警護成功を受け「あなたを信用しましょう」と言っているにも関わらず、3話・5話目になっても情報を明かす気配がない。
こうしたモヤポイントについて、解釈は二つあります。
一つ目、好意的に解釈するなら「マツモト黒幕説の伏線」ってことです。
マツモトがヴィヴィに(そして観客に)見せるのは常にカメラフッテージ・新聞記事などの記録であって、神の視点での「現実」ではない。また、マツモトは使命を「AIを滅ぼす」「戦争を回避する」などと口にするが、一度たりとも「人類を救う」という表現をしていない(というかAIが人類を征服したとも言っていない)。
それと穿った見方ですが、「シンギュラリティ計画」という呼称にも引っ掛かりがあります。シンギュラリティとは、AIの成長が人類のレベルを超え、文明の主役になる「技術特異点」のこと。だとしたら、「シンギュラリティ阻止計画」などの名称にすべきでは…?
以上の理由から、マツモトの目的は歴史改変によるディストピア回避!といった単純なものではないとの推測が立ちます。先述したように、ヴィヴィは史上初の自律思考型AIです。マツモトの狙いは、敢えて情報を小出しにしてその都度ヴィヴィに考えさせ自己フィードバックを促すことではないか。
最終的な目的として考えられるのは、悪く考えるなら100年かけヴィヴィを人類に対する革命の旗頭に仕立て上げること。逆に良く考えるなら、ヴィヴィを改変前の歴史でAIが辿った論理的結論から抜け出せるスーパーAIに成長させる、なんてこともありそうです。
…ここからが今回の日記の本題です。Vivyの構成をひじょーーーーに悪く解釈すると、書き手がマジでこれが最善だと思ってる説が浮上します。だって、脚本が長月先生だから。
「Re:ゼロから始まる異世界転生」の作者として有名な長月先生ですが、あの悪名高き爆死アニメ「戦翼のシグルドリーヴァ」の脚本家でもあります。通称シグルリの世間的な酷評ポイントは「要素を詰め込み過ぎ」「設定が後付け且つ作品の外部で行われる」の2点。…なんですが、これ今作Vivy~にも当てはまりつつあるのが気がかりです。
要素詰め込み問題について。シグルリは「ミリタリー」「ファンタジー」「美少女」「おっさん」「コメディ」「シリアス」と複数の要素(しかも対立事項まで)をぶち込んだ結果まとまりのないアニメになりました。
Vivyも正直言って、大分散らかってる感あります。クール系包容力お姉さん×ウザがらみお喋りマスコットの掛け合いはラノベ作家の本領発揮なのでまだ良いにしても、アイドル(歌唱)要素もあるかと思えば、時間SF描写に至っては(現段階では)手抜きも良いところ。
加え、2話1エピソードによる「未来科学社会における人間の非喜劇」要素も、全ッ然上手くない(「攻殻」「プラネテス」「電脳コイル」辺りの傑作のように科学技術のディティールが秀逸か否かのレベルにすらない。人間模様の前振りが薄すぎるせいで、どういう結末になろうとも感動に繋がらない)。
次に設定後付けについて。シグルリは「漫画スピンオフ」「前日譚の小説」「脚本の補足ツイート」「公式Q&A」「おじさんコメンタリー」を予習して、漸くついていけるという有様だったそうです。…いや、派生作品って魅力的な世界観・キャラクターの幅を広げるものだよね?主軸作の粗を観客側に補完してもらう手段じゃないよね?それって主軸(シグルリで言えばアニメ)を愚弄してない?
…で、これもVivyに該当するんですよね…。制作委員会方式のお家芸とはいえ、アニメ放映と同じタイミングで原案小説本・コミカライズ発売が転がされ、おまけに公式サイト・Twitter上では脚本両氏のQ&Aが繰り広げられる始末…(長月先生は批判コメント好き勢らしく、ツッコミに普通に反応してるのがまた…)。
僕はね、別に長月先生の創作能力を貶すつもりはないです。でも、小説とアニメは違うんですよ。長編小説シリーズや連載漫画、(DLや配信が定着して以降の)ゲームはどれだけでも後付けで容量を増やしていける「足し算」のコンテンツなんです。一方、1クールアニメや映画は予算や尺が最初に決まっていて素材を削っていく「引き算」のコンテンツなんですよ。だから詰め込んじゃいけないし、アニメらしさの中で面白さを伝え切らなければいけない。
そんなこんなでまあ、『Vivy -Fluorite Eye’s Song』に対し期待半分不安半分を抱いている現状です。(違和感抱かせる時点で伏線として下手なのでは?という疑問をさておくにしても)モヤモヤポイントはきちんと伏線として回収されるのを願うばかり。
タイムリーなことを言えば、昨日4/30から原案小説本が発売され、本日5/1にGyao!、ニコ生で1~5話の無料一挙振り返り配信が行われるそうです。これを機に(?)皆さんもVivyの魅力に触れてみよう!
ねんがんのNintendo Switchをてにいれました。
2021年4月28日 趣味 雑感。
・Switch本体
購入前はテーブルモードでプレイするつもりだったけれど、一度TVモードを味わったらもう戻れない。快適過ぎる。寧ろたかが1万ケチってSwitch Liteを買うメリットはないことを(今更)声を大にして言いたい。軽い!小さい!が売りになるのって、鞄に隠し持って放課後部室でモンハンプレイする中高生しかおらんくない?
・操作
慣れた。アカウントを事前に作ってクレカ登録しておけば起動3分でもうゲーム出来る。スマホ初期設定より簡単やな!
・コントローラー
Joy Conはクソ。本体の厚みに合わせた設計というのは重々承知だけど、グリップ感、手触り、コントローラー上部のL・ZL・R・ZRボタンの厚みといい、これゲームに向いた代物じゃねえよ!
操作の簡単なパーティーゲームや、ターン制RPGなら兎も角アクションは無理。
・Online利用券
購入前はちんぷんかんぷんだったけど、e-shopはショバ代要らず、Online利用券はオンライン対戦のショバ代ってことなのね。ゲームソフトDLに別途料金が掛からないと理解できて安心。
・バイオ7クラウドゲーム
テーブルモードでは実質プレイ不可。元が据え置き機専用ソフトのため、インベントリを開く・字幕が流れる・フッテージを読むといった際の文字表示サイズが「テレビの大画面に映される」こと前提の大きさ。そのためスイッチの画面に表示されると可読性が著しく低い。Liteみたいに筐体わしづかみで顔に近づけるなら兎も角、テーブルモードは無理ムリ。これも購入前には想像すらしなかった発見。
ゲームそのものは結構面白かったです。スイッチでは本来オーバースペックなゲームも、クラウド上で動かすことで高精細なグラフィックで楽しめる。(ゲームは全く詳しくないけど)バイオ4とSIRENの中間くらいの雰囲気・難易度でホラーゲーム、アクションゲーム両方の楽しさがあった。これを2千円で楽しめるのは十分お買い得やね。
・月姫R
早く売れ(無茶ぶり)
・Switch本体
購入前はテーブルモードでプレイするつもりだったけれど、一度TVモードを味わったらもう戻れない。快適過ぎる。寧ろたかが1万ケチってSwitch Liteを買うメリットはないことを(今更)声を大にして言いたい。軽い!小さい!が売りになるのって、鞄に隠し持って放課後部室でモンハンプレイする中高生しかおらんくない?
・操作
慣れた。アカウントを事前に作ってクレカ登録しておけば起動3分でもうゲーム出来る。スマホ初期設定より簡単やな!
・コントローラー
Joy Conはクソ。本体の厚みに合わせた設計というのは重々承知だけど、グリップ感、手触り、コントローラー上部のL・ZL・R・ZRボタンの厚みといい、これゲームに向いた代物じゃねえよ!
操作の簡単なパーティーゲームや、ターン制RPGなら兎も角アクションは無理。
・Online利用券
購入前はちんぷんかんぷんだったけど、e-shopはショバ代要らず、Online利用券はオンライン対戦のショバ代ってことなのね。ゲームソフトDLに別途料金が掛からないと理解できて安心。
・バイオ7クラウドゲーム
テーブルモードでは実質プレイ不可。元が据え置き機専用ソフトのため、インベントリを開く・字幕が流れる・フッテージを読むといった際の文字表示サイズが「テレビの大画面に映される」こと前提の大きさ。そのためスイッチの画面に表示されると可読性が著しく低い。Liteみたいに筐体わしづかみで顔に近づけるなら兎も角、テーブルモードは無理ムリ。これも購入前には想像すらしなかった発見。
ゲームそのものは結構面白かったです。スイッチでは本来オーバースペックなゲームも、クラウド上で動かすことで高精細なグラフィックで楽しめる。(ゲームは全く詳しくないけど)バイオ4とSIRENの中間くらいの雰囲気・難易度でホラーゲーム、アクションゲーム両方の楽しさがあった。これを2千円で楽しめるのは十分お買い得やね。
・月姫R
早く売れ(無茶ぶり)
2021春アニメ 現段階感想 + 追記
2021年4月22日 趣味
ウマ2期の一挙放送見てアニメ熱が再燃し、ウマゲーの育成中手持無沙汰なので(サイゲ豚か何か?)久しぶりに今期からアニメ観直し始める。全作品1話観る体力はないので、まとめサイト複数で評価高い作品からピックアップ。
・ゾンビランド佐賀R
1期はきちんと観ていた。
予算は明らかに増えているし、MAPPA作画に何の不安もないが、個人的に盛り上がりに欠けるなあ…。1期って各人が抱える過去にそれぞれスポットを当て、ギャグ・シュールを挟みつつも世代・属性ごとのアイドル論にそれぞれ昇華されていた。
対し2期は既に過去エピを使いつくしている以上、後は成り上がりで話持っていくしかなさそうなんだが…。折角ゾンビ+ブラック労働という設定上いくらでもキャラを動かせるのに、「これゾンサガでやる意味ある?」って話が続いて早くも食傷気味。
・SSSS.DYNAZENON
1期は観ていた。
1期が伏線を張る段階ではヒロイン二人のえちちな太もも&胸で間を持たせていた一方、2期は普通のシーンとキャラ掛け合いがただただ退屈。TRIGGERのバッキバキに決まったレイアウト見てる瞬間は幸せなんやが…。
これから楽しくなる…よね?
・Vivy -Fluorite Eye’s Song-
『シグルリ』(傑作漫画「シグルイ」ではない)の致命的なこけ方を振り返るに、リゼロ作者のまたぞろオリジナル作品には若干警戒心。とはいえ、クール系万能メイド×お喋り狂言回しマスコットのバディでライトな『攻殻』っぽいものをやるという路線は評価出来る。
僕ラノベ偏見持ってるしリゼロもそこまで読んでないんだけど、この作者さん元々ハードSF志向なんだってね。長編小説とアニメの媒体特性の違いを踏まえたうえで風呂敷広げすぎなければ、死狂リと違って綺麗に完結できるやも。作画は結構良いし。
・シャドーハウス
作り手側の愛がひしひし感じられる。
この原作漫画、能力バトル+管理社会サスペンスであって「シャドー・生き人形の主従関係」「広大な屋敷が”煤”を中心に回っている」という設定説明ってもっと簡潔に飛ばしても良いものなのよ。けれど1話できっちりケイト×エミリコがクッッッッッッッソ可愛い様子を描けていてアニメの導入としてばっちり。
無礼を承知で言わせてもらえば「約ネバ」の成功作ともいえる漫画なので、しっかりコンテンツとして成長していってほしいと思った。
・スーパーカブ
ツボる。何だこのリアルな不憫萌えは!?
「月がきれい」や「やがて君になる」みたいな演出の上手さで引っ張っていく作品なんだろうけど、百合や異性恋愛も挟まず地味女子高生の生態追うだけの話で24分保つのヤバない?原作も凄そうだが(爆死したらしいけど)それを拾ったアニメ製作陣も本気やね。現状今期1位。
・観れてないもの
「ゴジラSP」「極主夫道」も興味あるんやがネトフリなので断念…。第4波長引きそうだしこれを機に加入しても良いんだけど、まあNintendo Switch来たら長時間配信作品見る暇はなくなりそう。
・後悔したもの
長瀞
間も演出も何もかもキツい。17時台の子供向けなら兎も角、キモオタ向けの深夜ラブコメでこんな90年代アニメみたいなテンションはちょっと…。
日常系アニメでコアファンが付いたものって軒並み場面ごとにリアリティレベルの差をつけたところに勝因があるもの。なのにコメディシーンと発情シーンが同じテンションなのは本当に映像化のセンスがないとしか…。
けど「ヒロインが黒ギャル+名前がニガー瀞は差別だ!」って騒ぐ海外のポリコレ豚は流石にキチガイだと思う。下の名前の「ハヤセ」も「hard yacka(重労働→奴隷プランテーション)を指している」とかそのうち言ってきそう。「瀞」はtrough(かいば→家畜)とか…いくらでもこじつけ出来るな!Naggar Trough Hard Yacka!
+追記
・MARS RED
「大正吸血鬼譚」の粗筋見た時は「鬼滅」や「終わりのセラフ」を連想して敬遠したんだけど、実際にアニメ見たらまるで違った。原作が舞台朗読劇らしく、照明や画面の非常に平面な使い方でそれを表現。その一方で、幾原監督作品や「レヴュースターライト」みたいに露骨に舞台演出使いまくって「ほら!そこらのアニメと違うでしょ!」と露悪的になることもない。演劇アニメで作画・アクションに全く力振らないのも新鮮。
音遣いと云い、品の良さを感じるね。これも大きな拾い物だった。
そんな感じで現状6本見て行きます。4月3週目の段階では
スーパーカブ=MARS RED>シャドーハウス=ゾンサガ>Vyvy>ダイナゼノンの順。
・ゾンビランド佐賀R
1期はきちんと観ていた。
予算は明らかに増えているし、MAPPA作画に何の不安もないが、個人的に盛り上がりに欠けるなあ…。1期って各人が抱える過去にそれぞれスポットを当て、ギャグ・シュールを挟みつつも世代・属性ごとのアイドル論にそれぞれ昇華されていた。
対し2期は既に過去エピを使いつくしている以上、後は成り上がりで話持っていくしかなさそうなんだが…。折角ゾンビ+ブラック労働という設定上いくらでもキャラを動かせるのに、「これゾンサガでやる意味ある?」って話が続いて早くも食傷気味。
・SSSS.DYNAZENON
1期は観ていた。
1期が伏線を張る段階ではヒロイン二人のえちちな太もも&胸で間を持たせていた一方、2期は普通のシーンとキャラ掛け合いがただただ退屈。TRIGGERのバッキバキに決まったレイアウト見てる瞬間は幸せなんやが…。
これから楽しくなる…よね?
・Vivy -Fluorite Eye’s Song-
『シグルリ』(傑作漫画「シグルイ」ではない)の致命的なこけ方を振り返るに、リゼロ作者のまたぞろオリジナル作品には若干警戒心。とはいえ、クール系万能メイド×お喋り狂言回しマスコットのバディでライトな『攻殻』っぽいものをやるという路線は評価出来る。
僕ラノベ偏見持ってるしリゼロもそこまで読んでないんだけど、この作者さん元々ハードSF志向なんだってね。長編小説とアニメの媒体特性の違いを踏まえたうえで風呂敷広げすぎなければ、死狂リと違って綺麗に完結できるやも。作画は結構良いし。
・シャドーハウス
作り手側の愛がひしひし感じられる。
この原作漫画、能力バトル+管理社会サスペンスであって「シャドー・生き人形の主従関係」「広大な屋敷が”煤”を中心に回っている」という設定説明ってもっと簡潔に飛ばしても良いものなのよ。けれど1話できっちりケイト×エミリコがクッッッッッッッソ可愛い様子を描けていてアニメの導入としてばっちり。
・スーパーカブ
ツボる。何だこのリアルな不憫萌えは!?
「月がきれい」や「やがて君になる」みたいな演出の上手さで引っ張っていく作品なんだろうけど、百合や異性恋愛も挟まず地味女子高生の生態追うだけの話で24分保つのヤバない?原作も凄そうだが(爆死したらしいけど)それを拾ったアニメ製作陣も本気やね。現状今期1位。
・観れてないもの
「ゴジラSP」「極主夫道」も興味あるんやがネトフリなので断念…。第4波長引きそうだしこれを機に加入しても良いんだけど、まあNintendo Switch来たら長時間配信作品見る暇はなくなりそう。
・後悔したもの
長瀞
間も演出も何もかもキツい。17時台の子供向けなら兎も角、キモオタ向けの深夜ラブコメでこんな90年代アニメみたいなテンションはちょっと…。
日常系アニメでコアファンが付いたものって軒並み場面ごとにリアリティレベルの差をつけたところに勝因があるもの。なのにコメディシーンと発情シーンが同じテンションなのは本当に映像化のセンスがないとしか…。
けど「ヒロインが黒ギャル+名前がニガー瀞は差別だ!」って騒ぐ海外のポリコレ豚は流石にキチガイだと思う。下の名前の「ハヤセ」も「hard yacka(重労働→奴隷プランテーション)を指している」とかそのうち言ってきそう。「瀞」はtrough(かいば→家畜)とか…いくらでもこじつけ出来るな!Naggar Trough Hard Yacka!
+追記
・MARS RED
「大正吸血鬼譚」の粗筋見た時は「鬼滅」や「終わりのセラフ」を連想して敬遠したんだけど、実際にアニメ見たらまるで違った。原作が舞台朗読劇らしく、照明や画面の非常に平面な使い方でそれを表現。その一方で、幾原監督作品や「レヴュースターライト」みたいに露骨に舞台演出使いまくって「ほら!そこらのアニメと違うでしょ!」と露悪的になることもない。演劇アニメで作画・アクションに全く力振らないのも新鮮。
音遣いと云い、品の良さを感じるね。これも大きな拾い物だった。
そんな感じで現状6本見て行きます。4月3週目の段階では
スーパーカブ=MARS RED>シャドーハウス=ゾンサガ>Vyvy>ダイナゼノンの順。
国内の酷評レビューが原作ありき論調ばかりだったので、完全門外漢の素人意見ですが、お一つ。
粗筋 特殊部隊員のアルテミス大尉は、消息を絶ったブラボーチームの捜索のため砂漠へ。彼女の率いるアルファチームは急速接近する砂嵐に巻き込まれ視界を失い、意識を取り戻すと辺り一面は別世界となっていた。焼き焦がされたブラボーチームの残骸を見つけ呆然とする彼らだが、砂の下から現れた巨獣によって隊は大混乱に…。
①作品概説
ゲーム「モンスターハンター」は2004年の1作目発売以降、派生タイトル49作、通算6千万本を売り上げる屈指の大ヒットシリーズ…らしいよ!以下のレビューでは映画本編とパンフ以上のゲーム情報は一切ないので、既プレイ勢はご寛恕下さい。
監督は通称「ダメな方のポールアンダーソン」こと、ポール・W・S・アンダーソン。ホラーリメイク・実写化やそこそこ佳作のSFを撮ってきた人だけど、日本で有名なのは何といっても「バイオシリーズ」「ミラジョボビッチの旦那」の2点だね。御蔭で「嫁を映画に出したいだけのクソ監督」呼ばわりをされる始末。今作に至っては娘も出演し、晴れて家族映画ってワケやな!
②序盤:サバイバルホラー
僕もね、バイオ3・4・5・6のクソっぷりをリアタイ劇場で目撃してるので、全く期待せず今作を見たんですよ。…ところが何と、序盤は結構面白かった。何故ならサバイバルホラーとしての側面を強く打ち出していたから。
物語の導入は、ざっくりした世界観と主人公の設定描写です。ここの世界跳躍で「日本では異世界転生が流行ってるから日本市場向けに作った」なんてパータレな意見を結構見るんですが…あのね。ロビンソンクルーソーはじめ、嵐に遭って彼岸に渡るのは海洋冒険小説の伝統だから!映画でもMGM版オズの魔法使い以降ずっとあるから!寧ろ、余計な人間ドラマを見せず開幕10分で次元渡りさせる割り切りっぷりは評価できるくらい。
さて、モンハン世界に飛ばされたアルファチームは巨大なドラゴン、ディアブロス亜種に襲われる。犠牲を出しながら洞窟に駆け込むも、今度は蜘蛛の群れネルスキュラに虐殺されていく。ここが素晴らしいのは、ファンタジーの割にリアリティレベルをかなり高く設定していると見せていること。
ファンタジー方面のゲーム実写化と言えば、「ウォークラフト」「名探偵ピカチュウ」など、リアリティーレベルが低いものが多い(一概に悪いワケじゃないですよ?)。一方今作は(たとえ巨大なモンスターが出るにしても)人間側の判定はシビアなんですよ。刺されてもブチ転がされても噛まれても死ぬ。背丈ほどの鈍器を振り回したり、大型バスサイズのモンスターにぶつかられても直ぐに起き上がるような「ゲーム的リアリティ」映画ではない、とはっきり示してくれる。
③過剰なグロサービス
そんなサバイバルホラー要素を後押しするのが、人間側の過剰なグロ演出。ディアブロスに串刺しにされるのは序の口、真の恐怖はネルスキュラ登場以後に始まります。人間を一本釣りしたり、頭からガブリンチョしたり。運よく巣に連れ去られたメンバーも、脱出の過程でエグい死に方をしていく。
アンダーソン監督って、ホラー・バイオレンス方面の実写化・リメイクを多く手掛けるからか、ジャンル作品の小ネタを無邪気にブチ込む癖が見られます。「バイオ6」では「ロボコップ」、「イベントホライズン」では「惑星ソラリス」+「ヘルレイザー」と言った感じでね。
今作も、ネルスキュラの巣脱出パートはピータージャクソンの過去作「キングコング」と「ホビット」2作目の蜘蛛わらわら描写ですね。こわごわと進む主人公をカメラがズームアウトしていって巣の広大さ、蜘蛛の多さを見せて絶望感を煽る。おまけに、黒人兵士の体に産み付けられた卵がブチュブチュ潰れて小蜘蛛がジャリジャリジャリッ!と湧き出すサービスシーンはダラボン監督の「ミスト」でしょ!
おまけに、命からがら逃げだした後は傷口にガンパウダー振りかけて焼灼止血する「ランボー3」っぽいシーンもあったり…。いやーボンクラオタクの僕は大好物だけど、カッコいいモンスターが暴れるシーンを見たい原作ファンはどういう顔して今観てんだろとも思いましたけどね。
④中ボス討伐ロジック
結局、巣を脱出した時点で生き残りはアルテミス一人。しかし彼女は謎のアジア人、「ハンター」に出会い助けられます。大して意味のない殴り合いを経験し仲良くなった二人は、砂漠地帯を脱出するべくディアブロス亜種の討伐を決意します。この下りの見所は、モンスターを倒すロジックがしっかりしているところ。
上述した通り、リアリティーレベルを高くした以上「根性で何とか倒す」展開は取れない。そのためちっぽけな人間が巨大なモンスターを倒すには何らかのロジックが必要になる。そこで二人は作戦を練り始めるんですね。音に反応するモンスターなので特定の場所に誘導しよう、毒で先ず弱らせよう、とどめを刺すための武器を調達しよう…、と。
この反撃開始展開の良さは2点。一つが映像的な伏線。音に反応する性質はディアブロスに最初に襲われるシーンで、トラップ敷設や武器調達の場所はアルテミスと「ハンター」が無駄に殴り合うシーンで、ネルスキュラの毒はアルテミスが刺されるシーンでそれぞれ前に出されているので、唐突さがない。
もう一つがハクスラ要素。ハクスラというのは「モンスターを狩って、それで武器を強化して、更に強い敵を討伐できるようになる」というRPGのシステム名称。ネルスキュラを狩って毒を得て、毒武器でディアブロスを狩り、ディアブロスから剥いだ装甲で沙漠の嵐をやり過ごす…と攻略ごとにやれることが増えていく。序盤の巣脱出パートではメディキットの酸素パック+発煙筒で即席火炎放射器を作る下りもあったりして、殺しべ長者マラソンは裸一貫になった時点で始まっていたご様子。
⑤リアリティレベル崩壊:ファンタジー要素
そんな訳で、門外漢の僕はディアブロス亜種討伐までは楽しく見れてました。50分時点までは良い…問題はここからだ!
砂漠を抜け、森林地帯に足を踏み入れた二人。しかし火を吐く巨竜、リオレウスに草食モンスターの群れが追いまくられ二人の方へ殺到する。あわや…という場面でハンター一行に助けられるのだが、ここから一気にリアリティーレベルが落ちていく。
船室で目を覚ましたアルテミスの前に先ず登場するのがデカい猫。身長1M半はあろうか…この足裏と股関節で二足歩行は無理に見えるがすたすた歩く。アイルーという種族らしく、知能は人間程度ある。
ネコ人間は何とか許すにしても、ファンタジー武器も沢山出てくる。ハンターのリーダー、大団長は身の丈ほどある斧を軽々振り回すうえ、地面に打ち付けると炎の波がぶわわっと広がる。何か強そう。
…繰り返すけどね、リアリティレベルが低い=即駄作じゃないんですよ。一貫させて!亜人出しても良い、エレメント装備を出しても良い、でもそれなら最初から荒唐無稽さやハイファンタジーの作り込みで面白さを追求しよ?途中までシビアなサバイバルホラーをやってきたのに、何で突然ファンタジーになるの?これってメタフィクションだったの?DQユアストーリー?
⑥リアリティレベル崩壊:バトルロジックの杜撰さ
映画のファンタジー転換によって、バトルロジックも無実化していきます。
と監督が語る通り、リオレウスには一切の現代武器が効きません。…良いよ、「この世の武器が効かない」のは呑み込むよ。でも「モンハン世界の武器が何故効くか」に説得力がないのよ。M1エイブラムスの対戦車榴弾は効かなくて、何でハンターの持つダイナマイト矢は効くの?
言葉で説明する必要はない。折角ネルスキュラ~ディアブロス討伐の下りでハクスラ要素を出してるのだから、リオレウス討伐へも脈絡を繋げれば良いじゃん!例えば、序盤にディアブロスとリオレウスの縄張り争いをさせる。ハンヴィーに積んだ重機関銃では傷つかなくとも、モンスター同士のぶつかり合いでは外皮に傷がつく描写を入れる。そうして後リオレウス討伐に向かう前にスラッシュアックスの斧頭にディアブロスから剥いだ外皮を付けたり、ダイナマイト矢に角の破片を仕込む画を入れる。そしたら「ディアブロスってツエ―からすげーリオレウスも狩れる」ってロジックになるじゃないですか。
一応ね、「リオレウスは炎を吐く直前に隙が出来る」という弱点ロジックもあるんです。ただこれも大団長が(明らかに巻きのペースで世界観設定を口頭説明しつつ)討伐直前に親切に教えてくるんですよ。これも美しくない。
折角主人公のアルテミスを、現実世界の特殊部隊員って設定にしたじゃないですか。なら、「彼女が弱点を見つけるべき」なんですよ。軍人だからこそ、危機的状況に遭っても冷静に状況判断と分析が出来る。他のモンスターとの小競り合いだったり、リオレウス討伐の序盤で攻撃パターンを観察することで、弱点を推測させる。そうしたらハンターばかりのパーティーに「レンジャー」が合流することで、漸く討伐可能になったっていうゲーム性・ロジックになるじゃないですか。
⑦性格崩壊
この映画、ラストで「俺たちの戦いはこれからだ!」展開に入るんですけど、リドルエンディングの他に問題があります。それはアルテミスと「ハンター」、両人の動機が投げっぱになっている点。
劇中、アルテミスは何度も指輪を取り出し「必ず生きて戻る」と自分に誓います。また、「ハンター」も夜ごと祭壇に小さな人形を二つ祭りその前で祈りを捧げる様子から、妻子と生き別れになったことを匂わせます。そういった現世への執念があるからこそ二人は強かった筈。
その癖、リオレウスを討伐した後も二人はゲートを通りモンハン世界への帰還&討伐の旅に戻ります。…良いよ、現世に帰ったら続編作れねえもん、この落ち着け方は仕方ない。でもロジック作ろうよ。
次元間のつなぎ目が不安定だと、モンハン世界とあらゆる次元が繋がってしまう…だから故郷の次元を守るために次元渡り装置「スカイゲート」を修理すべくモンハン世界に帰る、とかさ。そこで二人が指輪・人形を愛おしそうに撫でた後に武器を構えれば、動機も分かるじゃん!
なのにゲート越しにゴアマガラを見て「ひと狩り行くぜ!」とばかり飛び込みにいくの…狂人ですよこれ。
⑧結びに
残念なことに、今作の世界興収は苦戦しております。そのうえ古謡を元にしたジョーク(dirty kneesと-neseをかけたギャグ)を出した結果、中国人・日本人差別だと炎上。世界配給の時点で東宝・テンセントがガッツリ関わっており日中市場を当て込んでいた筈なのに、要らんところですらケチがついたワケです。
とはいえゲームを離れて観れば楽しめる部分も間違いなくある一本。日本の興収も公開3週目で10億と少し寂しい状況なので、皆さんもお近くの映画館で観ましょう!…こういうこと言うと、まん防自粛警察に狩られちゃいますかね?
はい、5千字評でした。やっぱ人間が内側から食い破られる映画って良いよね!(リョナ感
粗筋 特殊部隊員のアルテミス大尉は、消息を絶ったブラボーチームの捜索のため砂漠へ。彼女の率いるアルファチームは急速接近する砂嵐に巻き込まれ視界を失い、意識を取り戻すと辺り一面は別世界となっていた。焼き焦がされたブラボーチームの残骸を見つけ呆然とする彼らだが、砂の下から現れた巨獣によって隊は大混乱に…。
①作品概説
ゲーム「モンスターハンター」は2004年の1作目発売以降、派生タイトル49作、通算6千万本を売り上げる屈指の大ヒットシリーズ…らしいよ!以下のレビューでは映画本編とパンフ以上のゲーム情報は一切ないので、既プレイ勢はご寛恕下さい。
監督は通称「ダメな方のポールアンダーソン」こと、ポール・W・S・アンダーソン。ホラーリメイク・実写化やそこそこ佳作のSFを撮ってきた人だけど、日本で有名なのは何といっても「バイオシリーズ」「ミラジョボビッチの旦那」の2点だね。御蔭で「嫁を映画に出したいだけのクソ監督」呼ばわりをされる始末。今作に至っては娘も出演し、晴れて家族映画ってワケやな!
②序盤:サバイバルホラー
僕もね、バイオ3・4・5・6のクソっぷりをリアタイ劇場で目撃してるので、全く期待せず今作を見たんですよ。…ところが何と、序盤は結構面白かった。何故ならサバイバルホラーとしての側面を強く打ち出していたから。
物語の導入は、ざっくりした世界観と主人公の設定描写です。ここの世界跳躍で「日本では異世界転生が流行ってるから日本市場向けに作った」なんてパータレな意見を結構見るんですが…あのね。ロビンソンクルーソーはじめ、嵐に遭って彼岸に渡るのは海洋冒険小説の伝統だから!映画でもMGM版オズの魔法使い以降ずっとあるから!寧ろ、余計な人間ドラマを見せず開幕10分で次元渡りさせる割り切りっぷりは評価できるくらい。
さて、モンハン世界に飛ばされたアルファチームは巨大なドラゴン、ディアブロス亜種に襲われる。犠牲を出しながら洞窟に駆け込むも、今度は蜘蛛の群れネルスキュラに虐殺されていく。ここが素晴らしいのは、ファンタジーの割にリアリティレベルをかなり高く設定していると見せていること。
ファンタジー方面のゲーム実写化と言えば、「ウォークラフト」「名探偵ピカチュウ」など、リアリティーレベルが低いものが多い(一概に悪いワケじゃないですよ?)。一方今作は(たとえ巨大なモンスターが出るにしても)人間側の判定はシビアなんですよ。刺されてもブチ転がされても噛まれても死ぬ。背丈ほどの鈍器を振り回したり、大型バスサイズのモンスターにぶつかられても直ぐに起き上がるような「ゲーム的リアリティ」映画ではない、とはっきり示してくれる。
③過剰なグロサービス
そんなサバイバルホラー要素を後押しするのが、人間側の過剰なグロ演出。ディアブロスに串刺しにされるのは序の口、真の恐怖はネルスキュラ登場以後に始まります。人間を一本釣りしたり、頭からガブリンチョしたり。運よく巣に連れ去られたメンバーも、脱出の過程でエグい死に方をしていく。
アンダーソン監督って、ホラー・バイオレンス方面の実写化・リメイクを多く手掛けるからか、ジャンル作品の小ネタを無邪気にブチ込む癖が見られます。「バイオ6」では「ロボコップ」、「イベントホライズン」では「惑星ソラリス」+「ヘルレイザー」と言った感じでね。
今作も、ネルスキュラの巣脱出パートはピータージャクソンの過去作「キングコング」と「ホビット」2作目の蜘蛛わらわら描写ですね。こわごわと進む主人公をカメラがズームアウトしていって巣の広大さ、蜘蛛の多さを見せて絶望感を煽る。おまけに、黒人兵士の体に産み付けられた卵がブチュブチュ潰れて小蜘蛛がジャリジャリジャリッ!と湧き出すサービスシーンはダラボン監督の「ミスト」でしょ!
おまけに、命からがら逃げだした後は傷口にガンパウダー振りかけて焼灼止血する「ランボー3」っぽいシーンもあったり…。いやーボンクラオタクの僕は大好物だけど、カッコいいモンスターが暴れるシーンを見たい原作ファンはどういう顔して今観てんだろとも思いましたけどね。
④中ボス討伐ロジック
結局、巣を脱出した時点で生き残りはアルテミス一人。しかし彼女は謎のアジア人、「ハンター」に出会い助けられます。大して意味のない殴り合いを経験し仲良くなった二人は、砂漠地帯を脱出するべくディアブロス亜種の討伐を決意します。この下りの見所は、モンスターを倒すロジックがしっかりしているところ。
上述した通り、リアリティーレベルを高くした以上「根性で何とか倒す」展開は取れない。そのためちっぽけな人間が巨大なモンスターを倒すには何らかのロジックが必要になる。そこで二人は作戦を練り始めるんですね。音に反応するモンスターなので特定の場所に誘導しよう、毒で先ず弱らせよう、とどめを刺すための武器を調達しよう…、と。
この反撃開始展開の良さは2点。一つが映像的な伏線。音に反応する性質はディアブロスに最初に襲われるシーンで、トラップ敷設や武器調達の場所はアルテミスと「ハンター」が無駄に殴り合うシーンで、ネルスキュラの毒はアルテミスが刺されるシーンでそれぞれ前に出されているので、唐突さがない。
もう一つがハクスラ要素。ハクスラというのは「モンスターを狩って、それで武器を強化して、更に強い敵を討伐できるようになる」というRPGのシステム名称。ネルスキュラを狩って毒を得て、毒武器でディアブロスを狩り、ディアブロスから剥いだ装甲で沙漠の嵐をやり過ごす…と攻略ごとにやれることが増えていく。序盤の巣脱出パートではメディキットの酸素パック+発煙筒で即席火炎放射器を作る下りもあったりして、殺しべ長者マラソンは裸一貫になった時点で始まっていたご様子。
⑤リアリティレベル崩壊:ファンタジー要素
そんな訳で、門外漢の僕はディアブロス亜種討伐までは楽しく見れてました。50分時点までは良い…問題はここからだ!
砂漠を抜け、森林地帯に足を踏み入れた二人。しかし火を吐く巨竜、リオレウスに草食モンスターの群れが追いまくられ二人の方へ殺到する。あわや…という場面でハンター一行に助けられるのだが、ここから一気にリアリティーレベルが落ちていく。
船室で目を覚ましたアルテミスの前に先ず登場するのがデカい猫。身長1M半はあろうか…この足裏と股関節で二足歩行は無理に見えるがすたすた歩く。アイルーという種族らしく、知能は人間程度ある。
ネコ人間は何とか許すにしても、ファンタジー武器も沢山出てくる。ハンターのリーダー、大団長は身の丈ほどある斧を軽々振り回すうえ、地面に打ち付けると炎の波がぶわわっと広がる。何か強そう。
…繰り返すけどね、リアリティレベルが低い=即駄作じゃないんですよ。一貫させて!亜人出しても良い、エレメント装備を出しても良い、でもそれなら最初から荒唐無稽さやハイファンタジーの作り込みで面白さを追求しよ?途中までシビアなサバイバルホラーをやってきたのに、何で突然ファンタジーになるの?これってメタフィクションだったの?DQユアストーリー?
⑥リアリティレベル崩壊:バトルロジックの杜撰さ
映画のファンタジー転換によって、バトルロジックも無実化していきます。
ポールはこうした演出を施した理由に…(中略)…「軍の兵器が通用しないことを見せることで、モンスターの強さを引き立たせられる」として、原作ゲームを知らない観客にも「モンハン」の世界の武器を使うことの説得力を持たせていたのだ。
と監督が語る通り、リオレウスには一切の現代武器が効きません。…良いよ、「この世の武器が効かない」のは呑み込むよ。でも「モンハン世界の武器が何故効くか」に説得力がないのよ。M1エイブラムスの対戦車榴弾は効かなくて、何でハンターの持つダイナマイト矢は効くの?
言葉で説明する必要はない。折角ネルスキュラ~ディアブロス討伐の下りでハクスラ要素を出してるのだから、リオレウス討伐へも脈絡を繋げれば良いじゃん!例えば、序盤にディアブロスとリオレウスの縄張り争いをさせる。ハンヴィーに積んだ重機関銃では傷つかなくとも、モンスター同士のぶつかり合いでは外皮に傷がつく描写を入れる。そうして後リオレウス討伐に向かう前にスラッシュアックスの斧頭にディアブロスから剥いだ外皮を付けたり、ダイナマイト矢に角の破片を仕込む画を入れる。そしたら「ディアブロスってツエ―からすげーリオレウスも狩れる」ってロジックになるじゃないですか。
一応ね、「リオレウスは炎を吐く直前に隙が出来る」という弱点ロジックもあるんです。ただこれも大団長が(明らかに巻きのペースで世界観設定を口頭説明しつつ)討伐直前に親切に教えてくるんですよ。これも美しくない。
折角主人公のアルテミスを、現実世界の特殊部隊員って設定にしたじゃないですか。なら、「彼女が弱点を見つけるべき」なんですよ。軍人だからこそ、危機的状況に遭っても冷静に状況判断と分析が出来る。他のモンスターとの小競り合いだったり、リオレウス討伐の序盤で攻撃パターンを観察することで、弱点を推測させる。そうしたらハンターばかりのパーティーに「レンジャー」が合流することで、漸く討伐可能になったっていうゲーム性・ロジックになるじゃないですか。
⑦性格崩壊
この映画、ラストで「俺たちの戦いはこれからだ!」展開に入るんですけど、リドルエンディングの他に問題があります。それはアルテミスと「ハンター」、両人の動機が投げっぱになっている点。
劇中、アルテミスは何度も指輪を取り出し「必ず生きて戻る」と自分に誓います。また、「ハンター」も夜ごと祭壇に小さな人形を二つ祭りその前で祈りを捧げる様子から、妻子と生き別れになったことを匂わせます。そういった現世への執念があるからこそ二人は強かった筈。
その癖、リオレウスを討伐した後も二人はゲートを通りモンハン世界への帰還&討伐の旅に戻ります。…良いよ、現世に帰ったら続編作れねえもん、この落ち着け方は仕方ない。でもロジック作ろうよ。
次元間のつなぎ目が不安定だと、モンハン世界とあらゆる次元が繋がってしまう…だから故郷の次元を守るために次元渡り装置「スカイゲート」を修理すべくモンハン世界に帰る、とかさ。そこで二人が指輪・人形を愛おしそうに撫でた後に武器を構えれば、動機も分かるじゃん!
なのにゲート越しにゴアマガラを見て「ひと狩り行くぜ!」とばかり飛び込みにいくの…狂人ですよこれ。
⑧結びに
残念なことに、今作の世界興収は苦戦しております。そのうえ古謡を元にしたジョーク(dirty kneesと-neseをかけたギャグ)を出した結果、中国人・日本人差別だと炎上。世界配給の時点で東宝・テンセントがガッツリ関わっており日中市場を当て込んでいた筈なのに、要らんところですらケチがついたワケです。
とはいえゲームを離れて観れば楽しめる部分も間違いなくある一本。日本の興収も公開3週目で10億と少し寂しい状況なので、皆さんもお近くの映画館で観ましょう!…こういうこと言うと、まん防自粛警察に狩られちゃいますかね?
はい、5千字評でした。やっぱ人間が内側から食い破られる映画って良いよね!(リョナ感
現在追ってる連載漫画 2021年4月 その7
2021年4月19日 趣味次回最後。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104052348382267/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104072042068576/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104100021328022/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104112204127920/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104132218323004/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104181140427567/
⑫バトルもの
・亜人
粗筋:不死身のアスペ高校生VS不死身の国家転覆者
エロ漫画の人(失礼)
主人公永井の絶妙な人非人ぶりが抜群。最終局面なのに最新刊一向に出ないのは辛い…。。
・ドリフターズ
粗筋:「Fateって聖杯戦争という割に戦争してないので、僕は戦争させます」(ヒラコー談)
説明不要の面白さ。
・進撃の巨人
粗筋:巨人駆逐する→人類終わってるから人類こそ駆逐するわ
正直マーレ篇は長すぎるし構成も歪だけど、連載お疲れさまでした。
・不滅のあなたへ
粗筋:不滅の学習機構「フシ」と人類の敵「ノッカー」の無限バトル
大今先生はマルドゥック→聲の形→今作と一貫して「可愛い絵柄でエグい現実を見せる」のが上手い。今期アニメ放送中。
・軍靴のバルツァー
粗筋:帝国主義時代をそっくり異世界ファンタジーにしてみました
設定が天才。時代区分を限定しているから軍事政治科学建築美術などのディティールをいくらでも凝れるし、と同時に異世界ファンタジーだから人や国はいくらでも自由に転がせる。おまけにアナログ作画で本当に労作だと思う。
・ジョジョリオン
粗筋:これはしゃぼん玉じゃない…「高速でらせんが回転している」
ジョジョ枠。
・呪術廻戦
粗筋:名実共にポスト鬼滅
アニメーター的な視点を持った作者さんと知り、成程殺陣の上手さに納得。映画今冬公開。
・オオカミライズ
粗筋:ロシアと中国に分割統治された未来日本で狼人間病が流行る
伊藤先生のアクション描写は呪術みたいに流れるような動きはないんだけど、一枚画のキメッぷりが良い。カメラで撮ったような湾曲や遠近感があって好き。
・平穏時代の韋駄天たち
粗筋:思念体VS魔族の種族間生き残り戦争
http://amahara.bob.buttobi.net/
異種族レビュアーズ原作×メイドラゴン作画。
設定的に主人公側が高次存在で圧倒的に有利なのに、全くオレツエーにならない辺りお話が本当に上手いね。来季アニメ放送。
・ハイスコアガールDash
粗筋:前作の振られ幼馴染枠が今や28歳のくたびれ教員に
押切先生は時事ネタ+実在の人使うほど物語が動かなくなるので(アイデンティティーとか…)、思いっきりフィクションフィクションしてる方がやっぱ楽しい。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104052348382267/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104072042068576/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104100021328022/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104112204127920/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104132218323004/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104181140427567/
⑫バトルもの
・亜人
粗筋:不死身のアスペ高校生VS不死身の国家転覆者
エロ漫画の人(失礼)
主人公永井の絶妙な人非人ぶりが抜群。最終局面なのに最新刊一向に出ないのは辛い…。。
・ドリフターズ
粗筋:「Fateって聖杯戦争という割に戦争してないので、僕は戦争させます」(ヒラコー談)
説明不要の面白さ。
・進撃の巨人
粗筋:巨人駆逐する→人類終わってるから人類こそ駆逐するわ
正直マーレ篇は長すぎるし構成も歪だけど、連載お疲れさまでした。
・不滅のあなたへ
粗筋:不滅の学習機構「フシ」と人類の敵「ノッカー」の無限バトル
大今先生はマルドゥック→聲の形→今作と一貫して「可愛い絵柄でエグい現実を見せる」のが上手い。今期アニメ放送中。
・軍靴のバルツァー
粗筋:帝国主義時代をそっくり異世界ファンタジーにしてみました
設定が天才。時代区分を限定しているから軍事政治科学建築美術などのディティールをいくらでも凝れるし、と同時に異世界ファンタジーだから人や国はいくらでも自由に転がせる。おまけにアナログ作画で本当に労作だと思う。
・ジョジョリオン
粗筋:これはしゃぼん玉じゃない…「高速でらせんが回転している」
ジョジョ枠。
・呪術廻戦
粗筋:名実共にポスト鬼滅
アニメーター的な視点を持った作者さんと知り、成程殺陣の上手さに納得。映画今冬公開。
・オオカミライズ
粗筋:ロシアと中国に分割統治された未来日本で狼人間病が流行る
伊藤先生のアクション描写は呪術みたいに流れるような動きはないんだけど、一枚画のキメッぷりが良い。カメラで撮ったような湾曲や遠近感があって好き。
・平穏時代の韋駄天たち
粗筋:思念体VS魔族の種族間生き残り戦争
http://amahara.bob.buttobi.net/
異種族レビュアーズ原作×メイドラゴン作画。
設定的に主人公側が高次存在で圧倒的に有利なのに、全くオレツエーにならない辺りお話が本当に上手いね。来季アニメ放送。
・ハイスコアガールDash
粗筋:前作の振られ幼馴染枠が今や28歳のくたびれ教員に
押切先生は時事ネタ+実在の人使うほど物語が動かなくなるので(アイデンティティーとか…)、思いっきりフィクションフィクションしてる方がやっぱ楽しい。
現在追ってる連載漫画 2021年4月 その6
2021年4月18日 趣味 4月中にこのシリーズ終わらない気がしてきた。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104052348382267/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104072042068576/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104100021328022/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104112204127920/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104132218323004/
⑩ファンタジー(リアルめ)
・月華国奇医伝
粗筋:序列の低い王子が変人女医諸々率いて国盗り返し
https://magiclazy.diarynote.jp/202005080056007938/
前書いた通りエンタメの王道。それと分かり易い範囲の医学技術ネタも豊富。
・茉莉花官吏伝
粗筋:天才記憶能力の成り上がり
なろう系コミカライズ。
漫画の現時点では才能が圧倒的+記憶能力でも太刀打ちできない挫折を経験してなくて微妙…。わか先生の作画が好みで追ってる。
・わたしの幸せな結婚
粗筋:没落異能貴族のシンデレラストーリー
これも女性向けなろうコミカライズ。
こっちは1巻の時点で主要な人間関係、主人公の健気さ+鬱屈が丁寧に描かれている。原作からして上手いのだろうけど、漫画に落とし込む段階での構成が巧みだね。主人公が覚醒する伏線も張ってあり後々も期待できる。
・SPY FAMILY
粗筋:父諜報員×母殺し屋×養女エスパー×犬予知のインクレディブルファミリー
ドタバタ劇
超人家族ジャンルの中で、「能力を互いに知らない」+「バレるバレないサスペンスが主軸ではない」ってのはなかなか新鮮かも。ギャグ強めの少年連載漫画のわりにしっかり話が動いているのも良い。
⑪ラブコメ
・かぐや様は告らせたい!
粗筋:天才高校生の恋愛頭脳戦(設定)
「文化祭編以降のシリアス萎えるわ」って意見良く見るけど、僕はアカ先生のシリアス描写好きですよ?
でも一番は藤原書記VSラーメン四天王の単話シリーズだわ。「還暦バキューム」のパワーワードたるや。
・イジらないで、長瀞さん
粗筋:オタクに優しい黒ギャルは存在した!
ドギマギ発情パートよりも二人で仲良くわちゃわちゃしてるシーンの方が好き。今期アニメ放送中。
・その着せ替え人形は恋をする
粗筋:オタクに優しい白ギャルは存在した!
「主人公が日本人形職人の家系」って設定は天才的だと思う。直にコスプレ衣装作りが趣味じゃないからエピソードごとに意外性があり、と同時にモノづくりのディティールに説得力もある。加え、幼少時に「女っぽくて気持ち悪い」と言われトラウマを抱えるきっかけにもなる。僕はオタクが主人公の話は何かしら欠落が必要だと思ってるので、この設定はギュンギュン来る(だから「オタ恋」は死ぬほど嫌い。コンプレックスのない美男美女の話面白い?)
ただ、早々に両想いになって自己実現果たしてからはマンネリかなー。波乱起きて?(鬼畜)
・よふかしのうた
粗筋:吸血鬼を惚れさせねば1年で死ぬ!!
思春期特有の倦怠×不安×期待が全てないまぜになった独特の空気感が最高。前作「だがしかし。」の後半パートも良かったけど、モノローグが生む言葉の力もあり青春ものとして一段とハネた印象。
「ダレンシャン」みたいに親友男子がラスボスになって欲しいなー(シリアス厨)
・可愛すぎる男子がおうちで待っています
粗筋:外では有能内では干物美女×美形年下ヒモ男子の同棲記録
年上OL×学生男子のカップリングって、大抵男が軟弱な性格づけなんだけど、この作品はその類型から外れていて新鮮。あと、わか先生の画柄凄い好き。
・異世界おじさん
粗筋:異世界行ってしばらく意識不明だったおじさんの回想録
異世界転生を「現在進行形ではなく毎回ツッコミ交じりで回想する」って造りが先ず新鮮。加えラブコメとしても新境地を切り開いている。ラブコメにおける朴念仁キャラって「お前アスペかよ」ってくらい人間の機微に疎いものなんだけど、今作は「自分の色恋にだけ鈍感」で、相手の色恋場面にはツッコミに回る役割スイッチが出来てる。
今作最大の特徴であるメガドラ、セガサターンのコアなネタは(リアル世代じゃないので)、んにゃぴ…よくわかんないです。
https://magiclazy.diarynote.jp/202104052348382267/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104072042068576/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104100021328022/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104112204127920/
https://magiclazy.diarynote.jp/202104132218323004/
⑩ファンタジー(リアルめ)
・月華国奇医伝
粗筋:序列の低い王子が変人女医諸々率いて国盗り返し
https://magiclazy.diarynote.jp/202005080056007938/
前書いた通りエンタメの王道。それと分かり易い範囲の医学技術ネタも豊富。
・茉莉花官吏伝
粗筋:天才記憶能力の成り上がり
なろう系コミカライズ。
漫画の現時点では才能が圧倒的+記憶能力でも太刀打ちできない挫折を経験してなくて微妙…。わか先生の作画が好みで追ってる。
・わたしの幸せな結婚
粗筋:没落異能貴族のシンデレラストーリー
これも女性向けなろうコミカライズ。
こっちは1巻の時点で主要な人間関係、主人公の健気さ+鬱屈が丁寧に描かれている。原作からして上手いのだろうけど、漫画に落とし込む段階での構成が巧みだね。主人公が覚醒する伏線も張ってあり後々も期待できる。
・SPY FAMILY
粗筋:父諜報員×母殺し屋×養女エスパー×犬予知のインクレディブルファミリー
ドタバタ劇
超人家族ジャンルの中で、「能力を互いに知らない」+「バレるバレないサスペンスが主軸ではない」ってのはなかなか新鮮かも。ギャグ強めの少年連載漫画のわりにしっかり話が動いているのも良い。
⑪ラブコメ
・かぐや様は告らせたい!
粗筋:天才高校生の恋愛頭脳戦(設定)
「文化祭編以降のシリアス萎えるわ」って意見良く見るけど、僕はアカ先生のシリアス描写好きですよ?
でも一番は藤原書記VSラーメン四天王の単話シリーズだわ。「還暦バキューム」のパワーワードたるや。
・イジらないで、長瀞さん
粗筋:オタクに優しい黒ギャルは存在した!
ドギマギ発情パートよりも二人で仲良くわちゃわちゃしてるシーンの方が好き。今期アニメ放送中。
・その着せ替え人形は恋をする
粗筋:オタクに優しい白ギャルは存在した!
「主人公が日本人形職人の家系」って設定は天才的だと思う。直にコスプレ衣装作りが趣味じゃないからエピソードごとに意外性があり、と同時にモノづくりのディティールに説得力もある。加え、幼少時に「女っぽくて気持ち悪い」と言われトラウマを抱えるきっかけにもなる。僕はオタクが主人公の話は何かしら欠落が必要だと思ってるので、この設定はギュンギュン来る(だから「オタ恋」は死ぬほど嫌い。コンプレックスのない美男美女の話面白い?)
ただ、早々に両想いになって自己実現果たしてからはマンネリかなー。波乱起きて?(鬼畜)
・よふかしのうた
粗筋:吸血鬼を惚れさせねば1年で死ぬ!!
思春期特有の倦怠×不安×期待が全てないまぜになった独特の空気感が最高。前作「だがしかし。」の後半パートも良かったけど、モノローグが生む言葉の力もあり青春ものとして一段とハネた印象。
「ダレンシャン」みたいに親友男子がラスボスになって欲しいなー(シリアス厨)
・可愛すぎる男子がおうちで待っています
粗筋:外では有能内では干物美女×美形年下ヒモ男子の同棲記録
年上OL×学生男子のカップリングって、大抵男が軟弱な性格づけなんだけど、この作品はその類型から外れていて新鮮。あと、わか先生の画柄凄い好き。
・異世界おじさん
粗筋:異世界行ってしばらく意識不明だったおじさんの回想録
異世界転生を「現在進行形ではなく毎回ツッコミ交じりで回想する」って造りが先ず新鮮。加えラブコメとしても新境地を切り開いている。ラブコメにおける朴念仁キャラって「お前アスペかよ」ってくらい人間の機微に疎いものなんだけど、今作は「自分の色恋にだけ鈍感」で、相手の色恋場面にはツッコミに回る役割スイッチが出来てる。
今作最大の特徴であるメガドラ、セガサターンのコアなネタは(リアル世代じゃないので)、んにゃぴ…よくわかんないです。
裏切り合いコンゲーム!…ではない映画『騙し絵の牙』を結構褒める
2021年4月15日 映画
粗筋 辣腕社長が急逝し、跡目争いの勃発した老舗出版社「薫風社」。文芸一筋の守旧派宮藤常務と改革断行派の新社長東松の対立が激化する中、売上が低迷し続けるカルチャー誌「トリニティ」は廃刊の憂き目に遭う。
新編集長の速水は斬新なアイディアと確かな根回しによって雑誌の改革を実現。「小説薫風」と「トリニティ」間の引き抜きに端を発した社内抗争の結果、宮藤を追い落とす事態に。しかし東松派に見えた彼の真意は別にあって…?
地味だけど普通に面白かったんで紹介。
①作品概説と前置き
原作は「罪の声」などで評価の高い塩田武士による同名小説。主人公を大泉洋にあてがきされた原作が、このたび大泉洋ら実力派俳優が多数出演し映画化。
監督は「桐島、部活辞めるってよ」始め日本アカデミー賞常連の吉田大八。限定された空間での群像劇の名手として有名。
クソほど言ってきたけど、原作再現度、キャラ改変の多寡で映画を測る積りは一切ないっす。飽くまで映画単体の評価をします。…そういうの好きな人は鬼滅にでも行って?
②脚本面(大筋のネタバレあり)
「素晴らしき世界」評でも言いましたが
https://magiclazy.diarynote.jp/202103100151575242/
エンタメ映画の面白さの一つに、ジャンル変化があります。物語の筋は繋がりながらも、作品のトーンが変わっていくために飽きが来ない。
今作は大きく言えば「コンゲーム」ものですが、漫画原作のアレやTV劇場版のソレのようにはひとところに収まらない。
先代死後から廃刊危機に遭うまでの出だしは「サラリーマン」ものながら、速水が次々に奇手を打ち出してからは『幕末太陽傳』のような「手配師成り上がり喜劇」へ。しかし彼の独断専行が危険をはらみ出してからはサスペンスと化し、社内抗争に踏み切って以降はいよいよコンゲームが始まります。
守旧派を下し独裁を敷くかに思えた東松社長。しかし彼もまた速水の手のひらの上だったことが明らかになります。ここから再び「サラリーマン」ものへと回帰するのですが、聊か趣が違う。話の発端部は池井戸潤作品のような「社内・人間関係内で完結するマウント合戦」だったものが、終盤ではより広くシビアな色合いを増す。この点については、原作との比較絡めた話を後述します。
後半に行くほどシリアス一辺倒になるの?と問われれば答えはNO。社運を賭けた号の売上を見守る際にはファンタジー人間競馬(!?)が唐突に始まったり。公前での大博打をやり切り逃げるシーンではロメロ監督の『ゾンビ』もろオマージュが入ったり…と随所にユーモアも見えます。
③テンポの良さ
ジャンル転換を可能にするには、テンポの良さが不可欠です。
今作のテンポの良さには2つあり、一つ目が編集の抜群のキレ。中島哲也作品常連の技師と知りなるほど納得。
もう一点が美術・装飾のクオリティ。速水が成り上がっていく下りは伏線ポイントなので描写必須ながら、長々と尺を取るワケにもいかない。その中でリアリティが出るよう、実に手が込んでます。編集部のデスク周りや壁、ブックカフェの内装もさることながら、印象に残ったのは薫風社の出版物の数々ですね。
「小説薫風」の白無地タイトルの表紙はモロ「文藝春秋」だな、新生「Trinity」の文学×サブカル×グラビア表紙は「ダ・ヴィンチ」かな、謎の天才作家神座の文庫表紙絵は村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」辺りかな…と小ネタが仕込んである。
現実のイメージと二重写しになることで、すっと呑み込みやすい。ビジュアル的説得力は、小説には出来ない映画の強みですね。
④伏線回収
コンゲームである以上、意表を突く仕掛けは必須です。ですが、今作はどんでん返しそのものよりも伏線の丁寧さを評価したい。
https://magiclazy.diarynote.jp/202002282300477629/
https://magiclazy.diarynote.jp/202103180016269478/
上記2レビュー参考にして欲しいんですが、どんでん返しが後出しじゃんけんだったり、前後でキャラクターの脈絡が繋がらなくなるのは愚作です。一方の今作、2段構えのどんでん返しがあるのですが伏線も2段構え且つ破綻をきたしていない。
例を挙げましょう。若手小説家、矢代聖をプッシュすることになった「Trinity」誌。速水にイケメン青年路線で売り出され続け、本業そのもので評価されないことに矢代はいら立ちを募らせる。そこに宮藤常務は付け込み、一度は賞レースから外した彼を「小説薫風」で華々しくデビューさせようとする。しかし矢代は記者会見の席上、自分はゴーストライターであると暴露し薫風ブランドを地の底まで落とす。彼は速水の仕込んだスパイだった…という下りがあります。
一度目のどんでん返しのため、最初は速水に懐いていた矢代が徐々に彼を邪険にする仕草、Trinity内の内通者柴崎が速水に剣呑な目線を送るカットが仕込まれている。しかし同時に、2度目のどんでん返しのため矢代が自作への朱入れを申し込んで来る女性編集員をスルーするカットを序盤に(二度も!)仕込んであるんですよ。彼は作家面した役者なので文学の話をすればボロが出るからです。
どんでん返しの量や大きさを喧伝する賢しら映画って沢山あるじゃないですか?でも話の流れを止めず、後から見て改めて気づく自然な伏線を忍ばせる…そういうのが巧みなお話・演出なのでは?
⑤ラストの「騙し」
それではいよいよ、速水が仕掛けた最大の「騙し」の話に移りましょう。常務派を全て掌握し独走態勢になった東松の前に、前社長の息子惟高が現れます。彼はイチ読者として速水のファンになり内通していたと明かす。彼が東松に提示したのは海外資本との包括提携という名の買収。惟高と速水は先ず東松に常務派を潰させ、その東松を排除することで旧勢力を一掃する…という仕組みでした。
結局、小説薫風は廃刊、薫風社そのものも時間をかけ徐々に海外資本に吸収されていきます。「Trinity」誌は当分通販大手の独占買い取りの形で続くが、やがては電子オンリーの雑誌になっていく。
原作も映画も、最大のどんでん返しが速水による騙し。ですがそこには違いがあり、僕個人は映画の方が時流にあっている良いオチだと思っています。それでは両者を比べていきましょう。
⑥原作の騙し:業界変化
小説での速水は、Trinity誌の廃刊に抗えず退社…。しかし水面下では他業種から有能な人材を引き抜き、薫風社より魅力的な出版社「株式会社トリニティ」の社長として世に再び顔を出します。
労作だとは百も承知、企画の出発が2013年なのも分かった上で言いたいんですけど、このラストは個人的にちょっと古臭いかな…。ぼかして書くんですけど、原作の速水って幻●冬舎の見城●徹社長がモデルですよね?
元からバリバリの有能編集者だった人が起業、話題性と新奇さで書き手をかき集め、作家を作品ではなく人柄からプロデュースし、電子書籍に打って出る…。でもこれ、飽くまで新たな出版社の出現に留まっているんですよ。
⑦映画のラスト:業界構造変化
それでは映画はどうか。社長室談話のシーンでは「海外資本」と言いながら、Trinity編集部最後の会議シーンではちゃっかり「Amazon」の名を出しているように、薫風が身売りする相手はAmazonなのでしょう。実際、Amazonはここ数年で日本の出版業界を変えようと動き始めました。
劇中「独占買い取り」の言葉が出ましたが、Amazonは日本独特のシステム、「取次」を締め出し出版社から直接買い切り制を発表しました(まあ先行きは不透明ですが…)。
更に去年、書店に直に卸売りする事業を本格化するとも発表。出版社ー取次ー書店で成り立っていた業界システムごとぶち壊していく…。原作の「出版内での争い」よりも映画は「出版そのものを巡る争い」に話をシフトさせており、直近の時流に合ったアップデートであると思います。
⑧映画『騙し絵の牙』は、Amazonが支配するディストピアか?
それでは、20年後に出版社が全部Amazonに吸収されるかというと…素人考えですがそれは無いかと。(映画から脱線してちょいスンマセン!きちんと最後には話戻しますんで!)
約10年前、Amazon Kindleが日本上陸し電子書籍元年が叫ばれました。…が、2020~2021年現在、日本の電子書籍≒漫画であり、スマホ・タブレットで漫画アプリを通じて読む文化が定着しました。結局、電子書籍リーダーなど全く浸透しなかったのです(流石ガラパゴス!電子書籍の墓場!)。
或いは同時期、Amazonは「セルフパブリッシング」なるものを打ち出しました。今までは出版・取次・書店と中抜きされることで印税率は微々たるものでした。ところがAmazon様なら、著作を電子アップロードすれば全世界の人に直ぐ読んでもらえるんだ!印税率は驚異の70%!
当時、これで出版社は必要なくなるなんて論調もありました。…で、どうだったかは歴史が証明してます。ここ数年、Amazon以外でも電子書籍取次ビジネスが活発化していますが、あれは既に名のある作家が出版社の待遇に不満を持ち移籍するものです。
そもそもヒットは編集と宣伝=集権型インフラじゃないと無理なんです。Amazon kindle内でズブの素人がデビューし、ベストセラーまで駆け上がるのが当たり前になるなんてことは未来永劫ないです。
⑨グローバリズムとローカリズム
映画においても、速水は一人勝ちとはいきませんでした。薫風社の大改革で社を去った編集者、高野は実家の書店を継ぎ「出版も出来る書店」を立ち上げ。隠棲作家、神座に「復帰作は1冊三万円の超豪華本にさせてくれ」と持ち掛けます。最大効率化を図った速水とは正反対を取った高野。しかし神座は「難しいほど面白い」と快諾し速水の仕事をキャンセル。結果、このニッチ戦略は見事に成功し速水の鼻を明かすことになります。
インタビューで吉田大八監督が語るように、本作にはグローバリズムとローカリズムの背景がラストで立ち現れます。楽観視や誇張も承知のうえですが、(少なくともコンテンツ産業においては)ローカルが起死回生を成す余地もあるのではないか…。シビアさの中に、どこか希望の見える秀逸なラストだと思います。
⑩結びに
映画は(創作物全てに言えることですが)作者の手を離れ事象とシンクロすることがあります。『チャイナシンドローム』の公開直後にスリーマイル事故が起きたり。(構想から公開まで5年をかける)ディズニー映画で非白人文化を巡る作品が続いた時期に、トランプ大統領がアメリカを支配したり。
今作は(第一波で公開が1年延期したのを含め)コロナ禍とかち合った作品でした。コロナ禍はまさに、「業界内の食い合い」よりも「業界そのもの」を変える激震です。監督が「飲食業に限らずあらゆる業種に共通することではないか」と言うように、この映画は今の観客にリアルに届く。
「10年後も読み継がれる傑作」とは言いません。ですが「今観るべき」良作であるのは確かです。
はい、久々にたっぷり5千字評でした。Amazon~の下りでかなり膨らんだけど、構造変化の例でどうしても出さざるを得なかったので許してよろしこ!
新編集長の速水は斬新なアイディアと確かな根回しによって雑誌の改革を実現。「小説薫風」と「トリニティ」間の引き抜きに端を発した社内抗争の結果、宮藤を追い落とす事態に。しかし東松派に見えた彼の真意は別にあって…?
地味だけど普通に面白かったんで紹介。
①作品概説と前置き
原作は「罪の声」などで評価の高い塩田武士による同名小説。主人公を大泉洋にあてがきされた原作が、このたび大泉洋ら実力派俳優が多数出演し映画化。
監督は「桐島、部活辞めるってよ」始め日本アカデミー賞常連の吉田大八。限定された空間での群像劇の名手として有名。
クソほど言ってきたけど、原作再現度、キャラ改変の多寡で映画を測る積りは一切ないっす。飽くまで映画単体の評価をします。…そういうの好きな人は鬼滅にでも行って?
②脚本面(大筋のネタバレあり)
「素晴らしき世界」評でも言いましたが
https://magiclazy.diarynote.jp/202103100151575242/
エンタメ映画の面白さの一つに、ジャンル変化があります。物語の筋は繋がりながらも、作品のトーンが変わっていくために飽きが来ない。
今作は大きく言えば「コンゲーム」ものですが、
先代死後から廃刊危機に遭うまでの出だしは「サラリーマン」ものながら、速水が次々に奇手を打ち出してからは『幕末太陽傳』のような「手配師成り上がり喜劇」へ。しかし彼の独断専行が危険をはらみ出してからはサスペンスと化し、社内抗争に踏み切って以降はいよいよコンゲームが始まります。
守旧派を下し独裁を敷くかに思えた東松社長。しかし彼もまた速水の手のひらの上だったことが明らかになります。ここから再び「サラリーマン」ものへと回帰するのですが、聊か趣が違う。話の発端部は池井戸潤作品のような「社内・人間関係内で完結するマウント合戦」だったものが、終盤ではより広くシビアな色合いを増す。この点については、原作との比較絡めた話を後述します。
後半に行くほどシリアス一辺倒になるの?と問われれば答えはNO。社運を賭けた号の売上を見守る際にはファンタジー人間競馬(!?)が唐突に始まったり。公前での大博打をやり切り逃げるシーンではロメロ監督の『ゾンビ』もろオマージュが入ったり…と随所にユーモアも見えます。
③テンポの良さ
ジャンル転換を可能にするには、テンポの良さが不可欠です。
今作のテンポの良さには2つあり、一つ目が編集の抜群のキレ。中島哲也作品常連の技師と知りなるほど納得。
もう一点が美術・装飾のクオリティ。速水が成り上がっていく下りは伏線ポイントなので描写必須ながら、長々と尺を取るワケにもいかない。その中でリアリティが出るよう、実に手が込んでます。編集部のデスク周りや壁、ブックカフェの内装もさることながら、印象に残ったのは薫風社の出版物の数々ですね。
「小説薫風」の白無地タイトルの表紙はモロ「文藝春秋」だな、新生「Trinity」の文学×サブカル×グラビア表紙は「ダ・ヴィンチ」かな、謎の天才作家神座の文庫表紙絵は村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」辺りかな…と小ネタが仕込んである。
現実のイメージと二重写しになることで、すっと呑み込みやすい。ビジュアル的説得力は、小説には出来ない映画の強みですね。
④伏線回収
コンゲームである以上、意表を突く仕掛けは必須です。ですが、今作はどんでん返しそのものよりも伏線の丁寧さを評価したい。
https://magiclazy.diarynote.jp/202002282300477629/
https://magiclazy.diarynote.jp/202103180016269478/
上記2レビュー参考にして欲しいんですが、どんでん返しが後出しじゃんけんだったり、前後でキャラクターの脈絡が繋がらなくなるのは愚作です。一方の今作、2段構えのどんでん返しがあるのですが伏線も2段構え且つ破綻をきたしていない。
例を挙げましょう。若手小説家、矢代聖をプッシュすることになった「Trinity」誌。速水にイケメン青年路線で売り出され続け、本業そのもので評価されないことに矢代はいら立ちを募らせる。そこに宮藤常務は付け込み、一度は賞レースから外した彼を「小説薫風」で華々しくデビューさせようとする。しかし矢代は記者会見の席上、自分はゴーストライターであると暴露し薫風ブランドを地の底まで落とす。彼は速水の仕込んだスパイだった…という下りがあります。
一度目のどんでん返しのため、最初は速水に懐いていた矢代が徐々に彼を邪険にする仕草、Trinity内の内通者柴崎が速水に剣呑な目線を送るカットが仕込まれている。しかし同時に、2度目のどんでん返しのため矢代が自作への朱入れを申し込んで来る女性編集員をスルーするカットを序盤に(二度も!)仕込んであるんですよ。彼は作家面した役者なので文学の話をすればボロが出るからです。
どんでん返しの量や大きさを喧伝する賢しら映画って沢山あるじゃないですか?でも話の流れを止めず、後から見て改めて気づく自然な伏線を忍ばせる…そういうのが巧みなお話・演出なのでは?
⑤ラストの「騙し」
それではいよいよ、速水が仕掛けた最大の「騙し」の話に移りましょう。常務派を全て掌握し独走態勢になった東松の前に、前社長の息子惟高が現れます。彼はイチ読者として速水のファンになり内通していたと明かす。彼が東松に提示したのは海外資本との包括提携という名の買収。惟高と速水は先ず東松に常務派を潰させ、その東松を排除することで旧勢力を一掃する…という仕組みでした。
結局、小説薫風は廃刊、薫風社そのものも時間をかけ徐々に海外資本に吸収されていきます。「Trinity」誌は当分通販大手の独占買い取りの形で続くが、やがては電子オンリーの雑誌になっていく。
原作も映画も、最大のどんでん返しが速水による騙し。ですがそこには違いがあり、僕個人は映画の方が時流にあっている良いオチだと思っています。それでは両者を比べていきましょう。
⑥原作の騙し:業界変化
小説での速水は、Trinity誌の廃刊に抗えず退社…。しかし水面下では他業種から有能な人材を引き抜き、薫風社より魅力的な出版社「株式会社トリニティ」の社長として世に再び顔を出します。
労作だとは百も承知、企画の出発が2013年なのも分かった上で言いたいんですけど、このラストは個人的にちょっと古臭いかな…。ぼかして書くんですけど、原作の速水って幻●冬舎の見城●徹社長がモデルですよね?
元からバリバリの有能編集者だった人が起業、話題性と新奇さで書き手をかき集め、作家を作品ではなく人柄からプロデュースし、電子書籍に打って出る…。でもこれ、飽くまで新たな出版社の出現に留まっているんですよ。
⑦映画のラスト:業界構造変化
それでは映画はどうか。社長室談話のシーンでは「海外資本」と言いながら、Trinity編集部最後の会議シーンではちゃっかり「Amazon」の名を出しているように、薫風が身売りする相手はAmazonなのでしょう。実際、Amazonはここ数年で日本の出版業界を変えようと動き始めました。
劇中「独占買い取り」の言葉が出ましたが、Amazonは日本独特のシステム、「取次」を締め出し出版社から直接買い切り制を発表しました(まあ先行きは不透明ですが…)。
更に去年、書店に直に卸売りする事業を本格化するとも発表。出版社ー取次ー書店で成り立っていた業界システムごとぶち壊していく…。原作の「出版内での争い」よりも映画は「出版そのものを巡る争い」に話をシフトさせており、直近の時流に合ったアップデートであると思います。
⑧映画『騙し絵の牙』は、Amazonが支配するディストピアか?
それでは、20年後に出版社が全部Amazonに吸収されるかというと…素人考えですがそれは無いかと。(映画から脱線してちょいスンマセン!きちんと最後には話戻しますんで!)
約10年前、Amazon Kindleが日本上陸し電子書籍元年が叫ばれました。…が、2020~2021年現在、日本の電子書籍≒漫画であり、スマホ・タブレットで漫画アプリを通じて読む文化が定着しました。結局、電子書籍リーダーなど全く浸透しなかったのです(流石ガラパゴス!電子書籍の墓場!)。
或いは同時期、Amazonは「セルフパブリッシング」なるものを打ち出しました。今までは出版・取次・書店と中抜きされることで印税率は微々たるものでした。ところがAmazon様なら、著作を電子アップロードすれば全世界の人に直ぐ読んでもらえるんだ!印税率は驚異の70%!
当時、これで出版社は必要なくなるなんて論調もありました。…で、どうだったかは歴史が証明してます。ここ数年、Amazon以外でも電子書籍取次ビジネスが活発化していますが、あれは既に名のある作家が出版社の待遇に不満を持ち移籍するものです。
そもそもヒットは編集と宣伝=集権型インフラじゃないと無理なんです。Amazon kindle内でズブの素人がデビューし、ベストセラーまで駆け上がるのが当たり前になるなんてことは未来永劫ないです。
⑨グローバリズムとローカリズム
映画においても、速水は一人勝ちとはいきませんでした。薫風社の大改革で社を去った編集者、高野は実家の書店を継ぎ「出版も出来る書店」を立ち上げ。隠棲作家、神座に「復帰作は1冊三万円の超豪華本にさせてくれ」と持ち掛けます。最大効率化を図った速水とは正反対を取った高野。しかし神座は「難しいほど面白い」と快諾し速水の仕事をキャンセル。結果、このニッチ戦略は見事に成功し速水の鼻を明かすことになります。
Amazonのようなグローバル企業が成長する一方、生き残るために企業努力を重ねる出版社と同じく、小さな書店にも必死の戦いがあるはずです。…(中略)…そこで速水の裏事情を描かない代わりに、高野の背景に「リアルな場の存続をかけた問題」を置こうとしました。
インタビューで吉田大八監督が語るように、本作にはグローバリズムとローカリズムの背景がラストで立ち現れます。楽観視や誇張も承知のうえですが、(少なくともコンテンツ産業においては)ローカルが起死回生を成す余地もあるのではないか…。シビアさの中に、どこか希望の見える秀逸なラストだと思います。
⑩結びに
映画は(創作物全てに言えることですが)作者の手を離れ事象とシンクロすることがあります。『チャイナシンドローム』の公開直後にスリーマイル事故が起きたり。(構想から公開まで5年をかける)ディズニー映画で非白人文化を巡る作品が続いた時期に、トランプ大統領がアメリカを支配したり。
今作は(第一波で公開が1年延期したのを含め)コロナ禍とかち合った作品でした。コロナ禍はまさに、「業界内の食い合い」よりも「業界そのもの」を変える激震です。監督が「飲食業に限らずあらゆる業種に共通することではないか」と言うように、この映画は今の観客にリアルに届く。
「10年後も読み継がれる傑作」とは言いません。ですが「今観るべき」良作であるのは確かです。
はい、久々にたっぷり5千字評でした。Amazon~の下りでかなり膨らんだけど、構造変化の例でどうしても出さざるを得なかったので許してよろしこ!